東京多摩借地借家人組合

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ペット可の契約で入居したが退去時のペットの損耗修復費の支払いは必要なのか

2010年11月12日 | 敷金と原状回復
(問)「ペット飼育」が許可されたマンションで、入居時から2年間猫を飼っていた。先月そこを退去したが、敷金が全く還ってこない。理由を尋ねると、「猫による室内の破損・汚損が多数あり、それらの原状回復費用として敷金から控除したので、返還する敷金はない」と回答してきた。
 「ペット可」のマンションにおいて、飼育による費用負担の特約も無いのに原状回復費用は借主の負担になるのか。

(答)原状回復費用に関して大多数の判例は、「建物賃貸借において、賃借人が退去の際に負担する原状回復費用は、賃借人の故意・過失による建物の毀損や通常を超える使用による損耗等については賃借人が負担する」という見解である。賃借人の「原状回復義務には、特約のない限り、通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は、賃貸人が負担すべきである」(最高裁平成17年12月16日判決)。
 ペット飼育による一般的に生ずる破損・汚損については、「通常損耗」と言えるので、ペット飼育による費用負担に関する特段の定めがない限り、修復費用は賃貸人の負担となる。
 では「特段の定め」とはどのような特約をいうのか。例えば、①「ペット消毒」特約を定めた事例では、脱臭処理の「クリーニング」(5万円)を原状回復費として認めた(東京簡裁平成14年9月27日判決)。②退去時の美装工事を定めた特約の事例では、猫の飼育による室内の脱臭処理費(2万5000円)を原状回復費用として認めた(京都簡裁平成16年7月1日判決)。
 特段の定めが無い場合は、最高裁が指摘するように、「賃貸物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて支払いを受けることにより行われる」(前記最高裁判決)。このように、「ペット可」を謳う賃貸マンションの場合、ペット飼育による通常損耗による原状回復費用は、賃料の中に織り込まれているのが一般的であり、修復費用を賃借人が支払うことは不当な家賃の二重払いになる。
 結論、「ペット可」の賃借物件の場合、通常のペット飼育に関係する破損・汚損は原状回復の対象にならないので、修復費用を借主が負担する義務はない。


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