東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

国交省のガイドラインを無視し、不当な原状回復特約を根拠にリフォーム代を請求 少額訴訟で敷金残額返還訴訟

2020年07月08日 | 敷金と原状回復
 八王子市石川町の共同住宅を今年の4月30日に退去した橋本さん(仮名)は、5月に管理する不動産会社から敷金精算明細者が送られてビックリしました。2年1ヵ月しか住んでおらず、退去時の立会いでも原状回復について何らの指摘もなかったにもかかわらず、敷金13万円からクリーニング費用、畳の表替え費用として税込みで8万5800円を差し引き、4万4200円しか戻らないと言われました。

 納得ができない橋本さんは、依然相談したことのある多摩借組に相談し、組合から橋本さんと連名で、特約条項の「借主の都合で解約の時、リフォーム代(畳、ふすま、障子、クロス等の張替え、クリーニング)の費用は、借主の負担として敷金より充当する」は消費者契約法に反し、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドラン」の賃借人に特別な負担を課す特約の要件、①特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在する。②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること。③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。以上の3要件にいずれにも該当せず、今回のリフォーム代の請求は認められない。敷金全額返金するよう通知しました。

 その後、不動産会社から組合に電話がありましたが、何と国交省のガイドラインは認めず、特約は有効の一点張り、裁判で家主と争うことになるがそれでもいいかと言っても、家主も承知しているとの返事でした。家主に対しても同様の文書を出し、最高裁判決(平成17年12月16日)も同封しましたが、不動産会社は敷金からリフォーム代を差し引いた残金4万4200円を組合に現金書留で送ってきました。

 橋本さんと相談し、話し合いによる解決は困難であるため、家主を相手に八王子簡易裁判所に敷金返還の少額訴訟を起こすことにしました。最高裁判決は、通常損耗に関する補修費用を賃借人が負担する旨の特約が成立していないとした有名な判決で、この判決を基にして国交省のガイドラインの中で特別な負担を課す特約の3つの要件が定められました。
 いまだに、このような不当な原状回復特約を結んでいる不動産会社がいることが驚きです。賃借人の使い方が悪くて建物や設備を汚損・破損させたなら別ですが、特約を根拠に敷金から勝手にリフォーム代を相殺するなど悪質であり、泣き寝入りすることなく最後は裁判所に訴えましょう。少額訴訟は費用も安く、誰でも利用できる制度です。書面の作成などご支援します。
(東京多摩借組ニュースより)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« URがコロナ関連支援策を発表 | トップ | 賃貸住宅の管理業務等の適正... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

敷金と原状回復」カテゴリの最新記事