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最高裁は特約の成立要件を制限し借主の原状回復特約からの救済を図る

2006年09月11日 | 敷金と原状回復
(問)2005年12月16日の新聞に「通常損耗は借主に負担義務なし最高裁が初判断」と大々的に報じられたが、どんな判断があったのか。

(答)東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」は「通常損耗や経年変化などの修繕費は、家賃に含まれているとされており、貸主が負担するのが原則です」と説明している。この原則に反して、これらの修繕費用を借主に負担させる特約を「原状回復特約」という。借主にとっては、この特約は家賃の二重払いを強いるものである。
 問題の裁判は通常損耗を含む「原状回復特約」の有効性に関して争われた。
 貸主である大阪府住宅供給公社は特約に基づいて、敷金約35万円から修繕費30万円を差引いた。借主は「契約時の説明が不十分で、特約に合意したつもりはない」として敷金約30万円の返還を求めた。
 それに対して最高裁は「通常損耗に係る投資資本の減価の回収は、通常減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行なわれている」と指摘し、通常損耗は家賃に含まれるという原則が確認された。この原則に反する「原状回復特約」が認められる条件は「通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、」そうでない場合は「賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」とされた。最高裁は、それらの条件が認められないと通常損耗を含む原状回復義務を賃借人に負担させることは出来ないという初判断を示した。その上で、敷金から通常損耗分を差引いた大阪府住宅供給公社に敷金を返還する義務があると認定し、その返還額を特定するために大阪高裁に差戻した。
 従来から下級審の判例は、特約が成立するためには(1)特約によって通常の義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識していること(2)賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていることが必要であるとしている。意思表示理論を用い、「原状回復特約」に対して特約の成立条件に制限を設け、その要件を充たさない場合、特約は無効とされた。
 今回の最高裁判決は、これらの下級審の判例理論を追認したものである。

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