東京多摩借地借家人組合

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明渡し訴訟で組合員が地裁・高裁で勝訴 家主の立退き料による正当事由の補完認めず

2013年03月28日 | 明渡しと地上げ問題
 昭島市東町に住むWさんは、隣に住む家主から明渡しを請求され、原審の東京地裁に続いて東京高裁でも家主の明渡し請求は棄却され、Wさんの全面勝訴で決着しました。
 Wさんは、家主の父親から昭和34年から木造瓦葺居宅一棟を借り、塗装業を営むと同時にWさんの長男が居住し、Wさんは隣の借家で生活していました。平成22年の9月に明渡しを請求され、3年近く調停・裁判が続きました。 Wさんは、組合の顧問弁護士を代理人に立て、明渡しを闘いました。

 家主の明渡し理由は、建物が50年以上経ち老朽化している。家主の高齢の母親の生活の援助をするために、Wさんの借家を取壊し自宅を増改築する必要がある。明渡しの正当事由が認められない時には、正当事由の補完として立退き料100万円支払うと主張しました。

 Wさんは、明渡しを拒否する理由としては、①築後50年を超えているが、自分で修繕を行い、建物としては使用には何らの支障はない。②昭和34年から塗装店営み、場所を移動すれば長年の顧客を失う。敷地に塗装道具を置く倉庫もあり車の駐車もでき、赤字決算で別に駐車場や倉庫を借りることになれば、経費面で経営が成り立たなくなり、廃業に追い込まれる。③Wさん夫婦とも高齢で持病があり、住まいの隣に住む長男から日常生活の援助を受けている。「本件建物の高度必要性に鑑みると、金額の多寡にかかわらず、金銭的な補償によって正当事由が補完されるものではない」と反論しました。

 昨年4月の東京地裁の判決では、Wさんの主張が全面的に認められ、家主の請求は棄却され、Wさんが勝訴しました。しかし、家主は控訴し、裁判は東京高裁で継続しました。
東京高裁では今年の1月17日に判決が下り、Wさんが再び勝訴しました。

 高裁判決は、地裁判決を補正し、「なお、控訴人(家主)は、口頭弁論終結後、立退料を100万円から300万円に増額するとして、弁論の再開を申し立てている。確かに、義母の安らかな居住先を確保し、その介護又は援助に伴う負担を和らげるため、できる限り高額の立退料を支払って正当事由を満たそうとする控訴人側の事情には酌むべき点がある。しかしながら、既述のとおり、本件建物の明渡しは、事実上○○塗装店の廃業をもたらし、被控訴人(Wさん)らの生活が立ちゆかなくなる恐れが大きいこと、現在の負担や将来の不安はさりながら、現状においてひとまず義母の介護又は援助は可能であることなど照らすと、上記の増額された立退料の提供も、前記結論を左右するに至らず、弁論公開の要を認めない」と付け加えました。

 裁判の口頭弁論終結後、家主側は立退料を100万円から300万円に引き上げて、弁論の再開を求めましたが、高裁の裁判官はこれを認めず、立退き料を増額しても明渡しが認められなかった意義のある判決です。正当事由が正面から争われた裁判ですが、「明渡しをすればWさんは塗装業を廃業せざるを得なくなり、生活が成り立たなくなる」としたWさんの事情が大きく斟酌された裁判でした。
(東京多摩借組ニュースより)

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