東京多摩借地借家人組合

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防火地域・準防火地域で建物は境界線からどのぐらい離して建築したらよいか

2008年12月15日 | 増改築と修繕
(問)借地が15坪と狭いので、敷地一杯に建てたいと思い、建設会社に相談した。ここは防火地域であり、建築基準法で外壁が耐火構造の建物の場合、隣地境界に接して建てられると言われた。そこで鉄骨3階建の建物を境界ギリギリに建て始めたところ、隣家に境界から50㎝以上離して建てるよう要求された。要求に従わなければならないのか。(答)建物をどの程度離して建てるべきかについては、その地方の慣習に従う(民法236条)。そのような慣習がない場合は民法の規定によって、境界から50㎝以上離すことが原則となっている(民法234条)。この距離は土台敷または建物側壁の固定的突出部分(例えば出窓)と境界線との最短距離をいうとされている。 ところが建築基準法では「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」(建築基準法65条)と規定している。この規定は明らかに民法の50㎝以上の距離規定に反するものである。 問題は民法の規定に反していても、防火・準防火地域では外壁が耐火構造の建物であれば、境界線に接して建てることが許されるのか。換言すれば、民法と建築基準法とのどちらの規定が優先するのか。 民法では境界から50㎝以上離さない規定違反建築は、建築に着手してから1年以内又は完成前であれば、建築変更や差止めが出来ると規定している(民法234条2項)。 これに関係する事例(境界から50㎝以内の建物の収去請求訴訟)では、民法と建築基準法のどちらが優先するのかが争点となり、一審の大阪地裁、控訴審の大阪高裁は、相隣者の同意や民法236条の慣習等の合理的な理由がないから建築基準法の適用は認められないとして、建物の一部収去の請求を認めた。 これに対して、上告審は、「建築基準法65条は、民法234条1項の規定が排除される旨を定めたものと解するのが相当である」(最高裁平成元年9月19日判決)として、建築基準法は民法の特則という立場から民法に優先すると明確に判断した。耐火外壁の建築物に限り、隣地境界に接しての建築を許可する趣旨とした。結論、判例に従えば隣家の要求に従わなくてもよい。(東京借地借家人新聞より)



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