上野の東京都美術館で開催されている「ターナー展」を鑑賞しました。展示作品とともに掛けられていた解説を読んで、ターナーについて3つのことを学びました。①当時、風景画は歴史画に比べて低く見られていたので、風景の中に歴史的な情景を盛り込んだ絵を描いたこと。②ナポレオン戦争に対する戦意高揚のため、戦闘の場面を描いたこと。③ターナーが国内外各地の風景を描いたのは、旅先で絵を描くことを評価する当時の風潮と関係があること。ターナーの絵を観る機会はこれまで何度かありましたが、この3点については日頃の勉強不足のせいで知りませんでした。さて、ターナーの数々の作品を観ながら思ったことは、次のようなことでした。都市化、工業化の中で英国の風景が変わりゆく中、ターナーは失われていく美しい風景を、あるいは都市の汚れた姿と対極にある風景を残しておきたかったのではないか。それはひょっとすると、日本の古くから伝わる習俗を、近代化の過程で失われてしまう前に記録しようとした宮本常一の精神とも相通ずるものがあるのではないか。さらなる飛躍を許してもらえるならば、ハインリヒ・ハイネが「流刑の神々」や「精霊物語」でキリスト教によって排除された古来の神々、特にアニミズムの神々を慈しんだこころの奥底には、ターナーや宮本常一と同じ気持ちがあったのではないか。全く持って単なる思いつきの域を出ませんが、ふとそんなことを思いました。
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