『気が遠くなる未来の宇宙のはなし』より 子ども宇宙・孫宇宙が生まれる未来 未来予想 1861億年後‥新たな「子ども宇宙」が誕生する?
宇宙は無数に存在する、という宇宙像は、こんにち「マルチバース」という言葉で表現されています。マルチバース(multiverse)は、ユニバース(universe、宇宙)という言葉の「uni(単一)」を「multi(複数、多数)」に置き換えた造語です。
宇宙がたくさんある、無数にある、などというのは、あまりにSF的な考えに思われるかもしれません。ですがマルチバースという言葉は、この10~15年ほどの間で、初期宇宙や宇宙の誕生を研究している科学者に限らず、かなり一般的に知られるようになっているのです。
その理由の1つは、最新の宇宙論として注目されている「ブレーン宇宙モデル」が、マルチバースの存在を予言しているからです。無数の宇宙の姿を思い描いているのは、インフレーション理論だけではないのです。
ブレーン宇宙モデルは「私たちの宇宙は、10次元または11次元時空の中を漂う膜のような存在である」という仮説です。私たちが通常認識している時空は、空間が縦・横・高さの3次元、時間が1次元の、全部で4次元の時空です。ですがブレーン宇宙モデルでは、空間はさらに6つないしは7つの見えない次元、専門的には「余剰次元」を持っていると考えます。私たちが余剰次元を認識できないのは、私たちを構成する物質が4次元時空の中に「閉じ込められている」からです。
私たちの存在は、言ってみれば紙の上に描かれた「漫画の登場人物」のようなものです。紙の上すなわち2次元の中は自由に行き来できますが、3次元方向には移動できません。これと同じく、私たちも、宇宙の中にあるすべての物質も、さらには宇宙そのものも、空間3次元、時間1次元の4次元時空の「上」に貼りついていて、余剰次元の方向には進めないのです。ただし例外があって、重力を伝える素粒子である「重力子」だけは、余剰次元の方向にも伝わることができます。
こうして私たちの4次元宇宙の「外側」には、10次元または11次元という高次元時空が広がっています。余剰次元を認識できる存在から見れば、私たちの宇宙は高次元時空の中に浮かぶ薄膜(ブレーンと呼ばれます)のように見えることでしょう。これがブレーン宇宙モデルです。
わずか15年前に提唱されたこの新たな宇宙モデルが注目を集めているのは、このモデルが「超ひも理論(超弦理論)」を基礎にしているからです。超ひも理論は、自然界に存在する4つの基本的な力(重力、電磁気力、原子核の中で働く「強い力」と「弱い力」)を統一的に説明するための理論で、究極の物理理論と目されています。相対性理論と量子論を統合した量子重力理論の完成も、超ひも理論の成功が鍵を握っています。そして、超ひも理論では時空の次元が10または11だと考えているので、これをもとにしたブレーン宇宙モデルも高次元時空の存在を仮定しているのです。
では、高次元時空の中に存在する薄膜は1枚だけ、私たちの宇宙だけなのでしょうか。もちろん、そうした必然性はありません。ブレーン宇宙モデルでは、一般に複数の「膜宇宙(ブレーン宇宙)」が存在しています。つまり、マルチバースの存在を予言しているのです。ただし、インフレーション理論におけるマルチバースと違うのは、膜宇宙同士は完全に切り離されているのではなく、「重力波」を使って情報交換ができることです。これは、重力子が余剰次元を伝わるためです。でも、重力子以外のすべての素粒子は膜宇宙から離れることはできないので、ほかの膜宇宙を実際に訪問したり、物質を交換したりすることはできません。
宇宙は無数に存在する、という宇宙像は、こんにち「マルチバース」という言葉で表現されています。マルチバース(multiverse)は、ユニバース(universe、宇宙)という言葉の「uni(単一)」を「multi(複数、多数)」に置き換えた造語です。
宇宙がたくさんある、無数にある、などというのは、あまりにSF的な考えに思われるかもしれません。ですがマルチバースという言葉は、この10~15年ほどの間で、初期宇宙や宇宙の誕生を研究している科学者に限らず、かなり一般的に知られるようになっているのです。
その理由の1つは、最新の宇宙論として注目されている「ブレーン宇宙モデル」が、マルチバースの存在を予言しているからです。無数の宇宙の姿を思い描いているのは、インフレーション理論だけではないのです。
ブレーン宇宙モデルは「私たちの宇宙は、10次元または11次元時空の中を漂う膜のような存在である」という仮説です。私たちが通常認識している時空は、空間が縦・横・高さの3次元、時間が1次元の、全部で4次元の時空です。ですがブレーン宇宙モデルでは、空間はさらに6つないしは7つの見えない次元、専門的には「余剰次元」を持っていると考えます。私たちが余剰次元を認識できないのは、私たちを構成する物質が4次元時空の中に「閉じ込められている」からです。
私たちの存在は、言ってみれば紙の上に描かれた「漫画の登場人物」のようなものです。紙の上すなわち2次元の中は自由に行き来できますが、3次元方向には移動できません。これと同じく、私たちも、宇宙の中にあるすべての物質も、さらには宇宙そのものも、空間3次元、時間1次元の4次元時空の「上」に貼りついていて、余剰次元の方向には進めないのです。ただし例外があって、重力を伝える素粒子である「重力子」だけは、余剰次元の方向にも伝わることができます。
こうして私たちの4次元宇宙の「外側」には、10次元または11次元という高次元時空が広がっています。余剰次元を認識できる存在から見れば、私たちの宇宙は高次元時空の中に浮かぶ薄膜(ブレーンと呼ばれます)のように見えることでしょう。これがブレーン宇宙モデルです。
わずか15年前に提唱されたこの新たな宇宙モデルが注目を集めているのは、このモデルが「超ひも理論(超弦理論)」を基礎にしているからです。超ひも理論は、自然界に存在する4つの基本的な力(重力、電磁気力、原子核の中で働く「強い力」と「弱い力」)を統一的に説明するための理論で、究極の物理理論と目されています。相対性理論と量子論を統合した量子重力理論の完成も、超ひも理論の成功が鍵を握っています。そして、超ひも理論では時空の次元が10または11だと考えているので、これをもとにしたブレーン宇宙モデルも高次元時空の存在を仮定しているのです。
では、高次元時空の中に存在する薄膜は1枚だけ、私たちの宇宙だけなのでしょうか。もちろん、そうした必然性はありません。ブレーン宇宙モデルでは、一般に複数の「膜宇宙(ブレーン宇宙)」が存在しています。つまり、マルチバースの存在を予言しているのです。ただし、インフレーション理論におけるマルチバースと違うのは、膜宇宙同士は完全に切り離されているのではなく、「重力波」を使って情報交換ができることです。これは、重力子が余剰次元を伝わるためです。でも、重力子以外のすべての素粒子は膜宇宙から離れることはできないので、ほかの膜宇宙を実際に訪問したり、物質を交換したりすることはできません。