霜後桃源記  

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「原発の安全神話」復活か

2023-02-16 05:43:49 | 社会
    岸田総理は原発を推進する方向に政策転換しているにもかかわらず、昨日の
予算委員会では「原子力規制委員会の基準に適合したものでなければ運転出来
ない。」と、あたかも安全に配慮しているかのような答弁している。 
   しかし、原子力規制委員会のメンバーは原発推進論者が多いため、看板通り
の役割りを果たしてくれるかどうかは甚だ疑問となっている。
 一昨日の毎日新聞の社説を読んで、改めて「その感」を強くした。
 関連して、今朝の「余録」の後半部分も抜粋して紹介したい。


 (昨日の朝の積雪は僅かで除雪は不要だった)

毎日新聞社 社説(2023.2.14)
「原子力規制行政 透明性欠如が不信招いた」 

 原子力規制行政の使命は安全の確保だ。それを担保する組織の独立性が疑わ
れる事態が起きた。
 原発の運転期間延長を巡り、原子力規制庁の職員が、推進側の経済産業省資
源エネルギー庁の担当者と面談を繰り返していた。
 昨年7月から9月にかけて7回に及び、電話でのやりとりも約30回に上った。
問題なのは、原子力規制委員会に直ちに報告されず、約2カ月後になったこと
だ。
 東京電力福島第1原発事故後、規制と推進を一つの官庁が担当していたこと
への反省から新設されたのが規制委である。活動原則に「独立した意思決定」
「透明で開かれた組織」を掲げる。
 それを支えるのが事務局である規制庁の役割だ。規制委を差し置いて推進側
と接触することは「なれ合い」と受け取られかねない。
 運転期間の見直しは岸田文雄首相が昨夏、関係省庁に検討を指示した。「原
則40年、1回に限り20年延長できる」と定める法律の改正が焦点となった。

 規制庁は面談でエネ庁から法改正に関する情報提供を受け、規定撤廃を前提
に内部で検討した。
 法改正に当たって関係省庁が連絡を取り合う場面はあるだろう。だが今回
は、規制と推進の分離に関わる問題でありながら、透明性を欠いていた。
 規制庁側は検討に際して「エネ庁とのすり合わせはしていない」と強調する
が、面談の記録はなく実証できない。
 検討の過程で作った内部資料は公表したものの、法改正のメリットやデメリ
ットなどに関する記載は「国民の間に混乱を生じさせる」と黒塗りにした。
エネ庁から提供された資料は公開しなかった。
 報告の遅れについて規制委は「不適切だった」と指摘し、推進側との面談は
記録するよう内規を変えた。当然の対応である。
 規制庁は発足から10年がたち、「推進側と一線を画す」という初心が忘れら
れかけている、と懸念する声がある。昨夏以降は、トップ3を経産省出身者が
占める体制になっている。
 岸田政権は原発の再稼働や運転延長、新増設などに前のめりな動きが目立
つ。規制当局には、これまで以上に安全最優先の姿勢が求められる。

毎日新聞 社説 (2023.2.16)
「原子力規制委の多数決 議論不足では信頼されぬ」

 東京電力福島第1原発の事故後、歴代政権が掲げてきた「脱原発依存」の方
針転換につながる節目である。専門家の意見が割れる中での決着は「拙速」と
批判されても仕方あるまい。
 原発の運転期間を「最長60年」と定めた法律の改正を、原子力規制委員会が
了承した。
 5人の委員のうち1人が最後まで反対する中、異例の多数決となった。
 結論を急いだ背景には、他の法案と一括して今国会で審議したいという政府
の意向がある。
 規制委は岸田文雄政権の指示を受け、昨年10月に議論を始めた。ベースにな
ったのは、2020年にまとめた見解だ。運転期間を「規制委が意見を述べる事柄
ではない」と結論づけていた。
 経年劣化の度合いは原発ごとに異なる。一律に運転期間を定めるより、その
時々の厳しい審査が使命だとの考え方である。
 ただ、運転期間ルールは老朽原発から廃炉にし、脱原発を目指す意思表示と
受け止められてきた。
 規制委の議論最終盤、石渡明委員が反対を表明した。安全審査などで原発が
止まった期間を運転期間から差し引き、実質的に60年を超える運転を可能にす
るという手法に疑義を唱えた。
 「審査が延びるほど古い原発を動かすことになる」と懸念を表明したが、
「新たな審査制度によって安全は強化される」との意見が大勢を占めた。
 山中伸介委員長は「議論は尽くされた」と強調する。だが議論の進め方に関
しては、改正に賛成した委員からも批判が出た。
 杉山智之委員は「外から出された締め切りにせかされてじっくり議論できな
かった」と苦言を呈した。伴信彦委員は「60年超(の審査)をどうするかが後
回しで違和感を覚える」と注文をつけた。
 「独立した意思決定」を活動原則に掲げる規制委が、他の要因に左右されて
議論を急いだり、生煮えの結論を出したりすることがあってはならない。熟議
が必要なら、他の法案の提出を待ってもらえばいいだけのことだ。
 日本は今も、福島の事故で出された「原子力緊急事態宣言」下にある。安全
を追求し続けることでしか、国民の信頼は得られない。規制委の姿勢が問われ
ている。

毎日新聞「余録」(2023.2.16)後半部分

 第二次大戦が政治と科学の関係を見直す契機になった。米大統領に原爆開発
を進言したアインシュタインは「大きな過ち」と悔やんだ。軍部に協力した日
本の学術界が戦後、政治からの独立を求めたのも自然な流れだった▲政治の側
も科学に配慮した。原子力基本法には日本学術会議が提唱した「公開、民主、
自主」の3原則が盛り込まれた。しかし、近年、科学を政治の下に置くかのよ
うな動きが続く▲学術会議の歴代会長がそろって会員選考に第三者を関与させ
る政府の改革方針に異を唱えた。一方、原子力規制委員会は地質学の専門家の
反対を押し切り、60年超の原発の運転を可能にする法改正案を多数決で承認し
た。「せかされて議論した」という声が漏れた▲フェイクニュースや陰謀論が
氾濫し、大多数の学者の意見が一致する地球温暖化やワクチンの有効性まで政
治問題化する国もある。知見が政治に否定され、科学者が「それでも地球は動
く」とつぶやく時代の再来はごめんだ。

コメント (1)
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