shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

灼熱のミニスカ・ダイナマイト!! / 黛ジュン

2010-04-11 | 昭和歌謡
 60年代ガールズ歌謡を語る上で黛ジュンの存在を避けて通ることはできない。彼女こそが私の大好きな “一人GS” の第1号と言われており、彼女の出現によってそれまでの純粋な歌謡曲にロック・サウンドが本格的に導入され、その後の中村晃子やいしだあゆみといった歌謡ポップス・シンガー百花繚乱の時代を迎えることになったのだ。
 前にも書いたように私がヒット曲で覚えているのはピンキラ「恋の季節」からなので、当然ながらリアルタイムで彼女の歌を聴いた記憶がなく、2年前に昭和歌謡に興味を持ってから後追いで聴き始めたのだが、ベスト盤 CD が何種類も出ていて何を買うか迷った挙句、有名なヒット曲とカヴァーをほぼ網羅したお買い得盤「灼熱のミニスカ・ダイナマイト!!」をチョイス。全40曲入りの2枚組で彼女のヒット曲を完全網羅している上に、私の好きな曲のカヴァーも数多く収録されており、特にビートルズ・ナンバーが3曲も入っているのが嬉しい(^.^)
 彼女は “ビートルズが歌えて美空ひばりのこぶしを持つ” 稀有なシンガーで、その個性的な歌声とパンチの効いた歌唱スタイルがロック・コンボ風アレンジと見事にマッチして大ヒットしたのが東芝からのデビュー曲A①「恋のハレルヤ」だった。サビのメロディーもめちゃくちゃ覚えやすく、ついつい “ハレルヤァ~♪” と口ずさんでしまう。伴奏のブラックストーンズのビートがふらつくのも何のその、見事な一人二重唱を聴かせるところなんかめっちゃカッコイイ(^o^)丿
 スプートニクス風のイントロに涙ちょちょぎれる哀愁歌謡の 2nd シングルA③「霧のかなたに」、意表を突いたコーラスのイントロから絵に描いたような一人GSへとなだれ込み、ファズ・ギターが要所要所をビシッとキメる 3rd シングルA⑥「乙女の祈り」、レコード大賞を受賞した “ハワイアン・ロック” の 4th シングルA⑪「天使の誘惑」と、ヴァラエティーに富んだシングル4連発は当時東芝でビートルズを担当していた高嶋ディレクターのアイデアだという。曰く “ビートルズのリリース方法にヒントを得、同じタイプの曲を並べないようにした。” とのこと。とにかくシングル曲ではこの4曲と、そこはかとなく漂う哀愁がたまらないB⑤「雲にのりたい」が断トツに素晴らしい。
 カヴァー曲ではビートルズのA⑧「キャント・バイ・ミー・ラヴ」とA⑭「ツイスト・アンド・シャウト」が筒美京平アレンジでスタジオ録音、B②「デイ・トリッパー」が宮川泰アレンジでライヴ録音と、それぞれのアレンジャーの個性が出たヴァージョンに仕上がっているが、どちらも彼女の抜群のリズム感を存分に楽しめるトラックで、言うことナシの名曲名演だ(^o^)丿 それ以外にも、弾けるようなダイナミズムに圧倒されるA④「ダンス天国」、ミコたんを彷彿とさせるA⑩「砂に消えた涙」、余裕しゃくしゃくで貫録さえ感じさせるヴォーカルが圧巻なA⑳「フジヤマ・ママ」やB⑩「ステューピッド・キューピッド」と、彼女の持ち味を活かす楽曲が選ばれているあたりにも洋楽担当ディレクターの手腕が光っている。
 邦楽のカヴァーではまるで自分のオリジナル曲であるかのように見事な歌声を聴かせるB④「黄昏のビギン」やB⑦「夕陽が泣いている」なんかめっちゃエエのだが、やはり美空ひばりのカヴァーB⑭「真っ赤な太陽」に尽きるだろう。実はこの曲、4曲入りEP盤の収録曲として録音されたものの、美空ひばりと日本コロムビア・サイドから “女王の芸能生活20周年の記念曲をカヴァーすることはまかりならん!” (←何でやねん!)とクレームがつき、プレスまでされていたのに結局はオクラ入りとなったという、いわく付きのナンバーだ。この曲自体、まるでジュンのために書かれたような和製ポップスで、両者を聴き比べてみても、私は絶対に黛ジュン・ヴァージョンの方が良いと思う。ひばりが競作を怖れた気持ちがよくわかる、ジュン屈指の名唱だ。
 ロック/ポップス・ファンにとって、黛ジュンは60年代に活躍したシンガー達の中でも最も馴染みやすい一人だろう。そんな彼女の魅力が満載のこのアルバム、黛ジュンを聴かずしてガールズ歌謡を語るなかれ、と言いたくなるような大名盤だ。

真赤な太陽・・・黛ジュン


恋のハレルヤ・・黛ジュン


天使の誘惑 / 黛 ジュン


キャント・バイ・ミー・ラヴ


ツイスト・アンド・シャウト


デイ・トリッパー
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