shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

木綿のハンカチーフ / 太田裕美

2008-12-29 | 昭和歌謡・シングル盤
 私がまだ音楽を聴き始めて間もない中学生だった頃、洋楽こそがすべてだった。ビートルズ、ポール・マッカートニー&ウイングス、カーペンターズ、アバ、クイーン、イーグルス... 彼らの音楽があれば他には何も要らなかった。部屋にはビートルズのポスターを貼り、学校の勉強そっちのけでミュージックライフや音楽専科といった洋楽関係の雑誌ばっかり読んでいた。しかし自分の部屋を一歩出ると聞こえてくるのは歌謡曲やニューミュージック(懐かしいなぁこの言葉)といった邦楽ばかり。とにかく洋楽命だった私にとって、当時の邦楽は唾棄すべき存在であり、聴くに値しないモノと決め込んでいた。今から振り返ると、カッコつけて音楽を聴いていた生意気な時代だったのだ。
 当時の私はまだステレオ・コンポすら持っておらず、あったのは電蓄レコード・プレイヤーと原始的なカセット・レコーダー、そしてAMラジオだけだった。だから新曲の情報源は自ずとラジオの深夜放送になってくる。そこでDJが紹介してくれるクイーン、キッス、エアロスミスらの新曲にコーフンしながらも、本来ならばダサイはずの邦楽曲の中に自分の心を惹きつけてやまない魅惑のメロディーを見つけて戸惑ってしまうことも少なくなかった。それは自分にとって認めがたい現実であり、何とか無視しようと頑張っていたのだが、ある時そんな私を屈服させるような大名曲に出会ってしまった。それが太田裕美の「木綿のハンカチーフ」である。
 覚えやすいメロディーに彼女のキュートで舌ったらずな萌え萌えヴォーカル、そして何よりもストーリー性の高い歌詞は抗しがたい魅力に溢れていた。当時の邦楽の世界においては常識破りともいえる4番まである長い歌詞を使って、田舎と都会で遠距離恋愛をしながらも少しずつ心が離れていってしまう男女の微妙な心境の変化を見事に描き切っており、しかも1コーラスの前半で男性の、後半で女性の心境を歌うという一種の対話形式を取り入れているところが斬新でインパクト絶大だった。試しにこの曲を途中でフェイド・アウトして平気でいられるだろうか?否である。何十回何百回と聴いて歌詞のストーリー展開は知っているはずなのに、彼女の声でラスト・コーラス「ねえ~涙拭く木綿のぉ~ハンカチーフくぅださい~♪」を聴かないとスッキリしない。これはもう、見事に術中にハマッた感ありだ(笑) 結局、松本隆=筒美京平という稀代の名コンビが生んだ昭和の大名曲が、頑なだったロック小僧(つまり私です)のミエを木っ端微塵に打ち砕いてしまったというわけだ。
 幸いなことに今ではジャンルに関係なく幅広く音楽を楽しめるようになったが、これは偏見や先入観を捨てて自分の感性のみを信じて音楽を聴くようになったきっかけとして忘れられない1曲だ。
太田裕美 木綿のハンカチーフ

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2 コメント

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太田裕美 (goigoi)
2009-03-03 17:35:09
shiotch7さん、はじめまして♪

わたしが、生まれて初めて買ったLPが
木綿のハンカチーフ収録の
太田裕美「心が風邪をひいた日」
でした。

LPというトータルなつくりのものに
大人の世界を垣間見たきがして
胸をどきどきさせました。

なぜ太田裕美だったのか
今も活躍している彼女は
やはり才能があったのですね。
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ヴァージョン違い (shiotch7)
2009-03-03 21:02:54
goigoiさん、こんばんは♪
コメントありがとうございます。

初めて買われたLPが太田裕美とは
何だかちょっと嬉しいです(笑)
このアルバムはシングルの後に買ったので
いきなりの「木綿」のヴァージョン違いに
面食らった覚えがあります。
今の耳でシンプルなアルバム・ヴァージョンを聴いた後に
大衆向けにリメイクされたシングル・ヴァージョンを聴くと
とっても興味深いモノがありますね。

彼女がこれまで歌い続けてきたメロディを
一点に凝縮させたようなB-2「水曜日の約束」が
たまらなく好きです。
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