shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

プレイバック・パート2 / ノーランズ

2010-04-15 | Cover Songs
 前回は大好きなアン・ルイスが入っている山口百恵カヴァー・アルバムをご紹介したが、 “百恵トリビュート” としては実はもう1枚愛聴している盤がある。純粋な昭和歌謡からは逸れてしまうが、何とあのノーランズが1991年にテイチクからリリースした逆カヴァーの珍盤「プレイバック・パート2」である。
 ノーランズといえば我々40代の人間にとっては非常に懐かしい存在で、1980年に「ダンシング・シスター」を大ヒットさせ、その後も「セクシー・ミュージック」etc のヒットを飛ばし、特に日本で人気が高かったイギリスの姉妹グループだ。1982年以降はヒットらしいヒットもなく音楽シーンから姿を消していたが、1990年代に入って山口百恵のカヴァー盤「プレイバック・パート2」、小泉今日子のカヴァー盤「なんてったってアイドル」、そしてキャンディーズや中森明菜ら数組のシンガーをカヴァーした「淋しい熱帯魚」と逆カヴァー・アルバムを連発し、日本限定ながら見事カムバックを果たしたのだ。この “逆カヴァー3部作” の中では、二匹目のドジョウ狙いがミエミエの「なんてったってアイドル」と統一感も必然性も何もない「淋しい熱帯魚」の2枚に比べ、最初に出た「プレイバック・パート2」が断トツに素晴らしい。
 トラックリストは①「イミテーション・ゴールド」、②「横須賀ストーリー」、③「秋桜」、④「プレイバック・パート2」、⑤「夢先案内人」、⑥「ロックンロール・ウィドウ」、⑦「ひと夏の経験」、⑧「いい日旅立ち」、⑨「乙女座宮」、⑩「さよならの向こう側」という全10曲。まずはインパクトの強い①とたたみかけるようにアップテンポの②で “おぉ、コレはオモロそうや(^o^)丿” とリスナーの興味を引き、箸休めのようにスローな③で一息つかせ、百恵の代名詞というべき④で再加速... 実に巧妙に考え抜かれた曲配置である。聴き慣れた歌謡曲のヒット・ナンバーが次から次へと英語で歌われるのが実に新鮮だ。
 ⑤、⑥、⑦と原曲のイメージを壊さずに巧くノーランズ・ヴァージョンへと仕上げられているし、そろそろバラッドが欲しいなぁ...と思うこちらの気持ちを見透かしたかのように名曲⑧が颯爽と登場、しっとり感溢れる歌声で癒される。軽快な⑨を経てもうこれしかないというクロージング・ナンバー⑩でシメるという実に見事な流れである。アルバム1枚まるごと一気呵成に聴けてしまい、38分23秒がアッという間に過ぎ去っていく。
 このアルバムは2005年に百恵引退25周年を記念して新たにメンバー二人のコーラス・ハーモニーをオーヴァーダブし、ジャケットも差し替えて「ノーランズ・シング・百恵2005」としてソニーから再発されているが、どう考えてもエンディング曲としか思えない⑩を1曲目に配するという滅茶苦茶な曲順に改悪されているので、そっちしか知らない方はぜひこのオリジナル盤の曲順で聴いてみることをオススメする。「ビートルズ赤盤」や「自家製ダブル・ファンタジー」の時にも書いたが、曲の配置というのはアルバムのイメージを決定付ける重要な要素なのだ。
 ノーランズと山口百恵という意表を突く組み合わせで成功したこのアルバム、これから暖かくなってきて友達と遠出のドライヴに行く時なんかにさりげなく BGM として流せばウケること間違いなしの1枚だ。

NOLANS - PLAYBACK Part2


Imitation Gold