大好きなアーティストのデモ・テイクやアウトテイクを聴いてみたいと思うのはファンなら当然のことだろう。ましてやそれがビートルズのようなレジェンド・クラスになると、その珠玉の名曲たちがどのようにして生まれ、形を変えていき、完成をみたのか、又、どこでどんな魔法がかけられたのか知りたくなるのが人情というものだ。そしてそんなファンの渇望を満たしてくれたのが例のアンソロジー・プロジェクトで、NG集を公式発売するかのような行為に対して賛否両論はあったものの、ファンとしては垂涎モノの音源が一杯聴けてめちゃくちゃ嬉しかった。少なくとも私は他のバンドのつまらない新譜を聴くぐらいなら、ビートルズのアウトテイクスを聴く方がずっと楽しい。
今でこそネットが発達してそういった音源にも接しやすくなったが、アンソロジー以前の70年代~80年代にはブートレッグ、いわゆる海賊盤に頼る他なかった。しかし海賊というだけあって神出鬼没、変幻自在にファンの弱味を突いてくる。同内容のモノをジャケットを変えて出すとか、内容とは違うタイトルをデッチ上げて希少盤を作るとかは朝メシ前で、海賊たちに対抗するには正確な情報収集が不可欠だった。私は雑誌のブート特集記事やブート広告をコピーしてノートに整理し(笑)、内容や音質評価の高いものを中心に買っていった。ビートルズの全キャリアを通して最も膨大な量のアウトテイクが生み出されたのは世に言う “ゲット・バック・セッション” で、この時期の音源を元にして作られたブートは数知れないが、そんな中でも特に大当たりだったのがこの「スウィート・アップル・トラックス」である。
このアルバムは海賊盤には珍しいカラージャケットに抜群の音質、そして何よりも2枚組見開きジャケット(!)で90分オーバーという凄いヴォリュームに圧倒された。中身は1969年1月2日~9日のトゥイッケンナム・フィルム・スタジオでのリハーサルを収めたアウトテイク集で、ビートルズが試行錯誤を重ねながら音楽を創造していく現場の空気をものの見事に捉えている。
A面では①「トゥー・オブ・アス」が映画の前半で聴けるアップ・テンポのロックンロール・アレンジ・ヴァージョンなのが嬉しい。完成形であるアコースティック・ヴァージョンよりも遙かにドライヴ感に溢れ、何よりもロックしている。フィル・スペクターはあのアルバムで彼なりにエエ仕事をしたとは思うが、彼の犯した唯一にして最大のミスはビートルズはロック・バンドなんだということを失念していたことだろう。⑤の「ノー・パキスタンズ」は「ゲット・バック」の原型で、イギリス国内に大挙押し寄せてきたパキスタン人労働者達が人々の仕事を奪い失業率が上がっているとして彼らの強制送還を目論んだイギリス政府を痛烈に皮肉った歌。 “自分たちが元居た場所へ帰れ” とはこれまた強烈な歌詞だが、ポールのヴォーカルのハジケっぷりはそれに輪をかけて凄まじい。超ハイ・テンションで吼えまくっているのだ。間髪を入れず⑥「ゲット・バック」へとなだれ込むタイミングもめっちゃカッコ良く、今度はジョンがノリノリで、勢い余って出だしを間違えるところなんか生々しくってゾクゾクしてしまう(≧▽≦)
B面はまだまだ未完成な曲の断片集といった感じで、研究資料としては面白いが通常リスニングにはあまり向かない。C面は何と言っても①「レット・イット・ビー」にトドメを刺す。ポールが “C, G, A, F...♪” と、コード進行を始めとする曲の構成をメンバーに説明しながらこの曲を練り上げていく様子が見事に音溝に刻まれており、フェイクを入れたメロディーを色々試してみたり、様々な試行錯誤を重ねたりしながらコーラス・パートを発展させていくところなんか、めちゃくちゃ面白い。ビートルズ・マジックの一端を垣間見れる必聴のトラックだ。③「グッド・ロッキン・トゥナイト」は後にポールがアルバム「アンプラグド」で取り上げる爽快なロックンロール・ナンバーだが、ここではジョンがメイン・ヴォーカルでそこにポールが絡んでいくという涙ちょちょぎれる展開がたまらない。
D面は③「バック・トゥ・コモンウェルス」ではエルヴィスそっくりに歌うポールがとにかく面白い。ホンマに細かいとこまでよぉ特徴捉えてるなぁ...(^.^) 途中ジョンの合いの手にポールが吹き出すなど、実に和気あいあいとしたエエ雰囲気が伝わってきて嬉しくなってしまう。④「ホワイト・パワー / プロムナード」は実にカッコ良いブルース・ロックで、彼らがこの “クリームごっこ” を心底楽しんでいるのが分かる。この高揚感を維持したまま⑤「ハイ・ホ・シルヴァー」へと突入、「ヤケティ・ヤック」をも交えながらストレートアヘッドなロックンロールを聴かせてくれる。このノリはもう最高だ。続くは何とロック・スピリット溢れる⑥「フォー・ユー・ブルー」で、スペクター・ヴァージョンも大好きだが、コレを聴いてしまうとその差は歴然。やっぱりビートルズは最高のロック・バンドなのだ。ラスト曲は再び⑦「レット・イット・ビー」で、C-①に比べ、かなりまとまってきたなぁ、という感じがする。ポールが “Whisper the words of wisdom...♪” のパートを “Read the Record Mirror...♪” と替え歌にしている、いわゆるひとつの “レコード・ミラー・ヴァージョン” がコレだ。リンゴは相変わらずエエ仕事しとるし、ジョンのカウンター・メロディーにも唸ってしまう。
こうやって聴いてくると、寒々しい空気の中でダラダラと続けられ、口論の絶えなかったイメージがあるトゥイッケンナム・セッションにもビートルズがグループとして素晴らしい煌きを見せる瞬間がいくつもあったことが分かる。やっぱりブートはやめられまへんな(^o^)丿
ノー・パキスタンズ
今でこそネットが発達してそういった音源にも接しやすくなったが、アンソロジー以前の70年代~80年代にはブートレッグ、いわゆる海賊盤に頼る他なかった。しかし海賊というだけあって神出鬼没、変幻自在にファンの弱味を突いてくる。同内容のモノをジャケットを変えて出すとか、内容とは違うタイトルをデッチ上げて希少盤を作るとかは朝メシ前で、海賊たちに対抗するには正確な情報収集が不可欠だった。私は雑誌のブート特集記事やブート広告をコピーしてノートに整理し(笑)、内容や音質評価の高いものを中心に買っていった。ビートルズの全キャリアを通して最も膨大な量のアウトテイクが生み出されたのは世に言う “ゲット・バック・セッション” で、この時期の音源を元にして作られたブートは数知れないが、そんな中でも特に大当たりだったのがこの「スウィート・アップル・トラックス」である。
このアルバムは海賊盤には珍しいカラージャケットに抜群の音質、そして何よりも2枚組見開きジャケット(!)で90分オーバーという凄いヴォリュームに圧倒された。中身は1969年1月2日~9日のトゥイッケンナム・フィルム・スタジオでのリハーサルを収めたアウトテイク集で、ビートルズが試行錯誤を重ねながら音楽を創造していく現場の空気をものの見事に捉えている。
A面では①「トゥー・オブ・アス」が映画の前半で聴けるアップ・テンポのロックンロール・アレンジ・ヴァージョンなのが嬉しい。完成形であるアコースティック・ヴァージョンよりも遙かにドライヴ感に溢れ、何よりもロックしている。フィル・スペクターはあのアルバムで彼なりにエエ仕事をしたとは思うが、彼の犯した唯一にして最大のミスはビートルズはロック・バンドなんだということを失念していたことだろう。⑤の「ノー・パキスタンズ」は「ゲット・バック」の原型で、イギリス国内に大挙押し寄せてきたパキスタン人労働者達が人々の仕事を奪い失業率が上がっているとして彼らの強制送還を目論んだイギリス政府を痛烈に皮肉った歌。 “自分たちが元居た場所へ帰れ” とはこれまた強烈な歌詞だが、ポールのヴォーカルのハジケっぷりはそれに輪をかけて凄まじい。超ハイ・テンションで吼えまくっているのだ。間髪を入れず⑥「ゲット・バック」へとなだれ込むタイミングもめっちゃカッコ良く、今度はジョンがノリノリで、勢い余って出だしを間違えるところなんか生々しくってゾクゾクしてしまう(≧▽≦)
B面はまだまだ未完成な曲の断片集といった感じで、研究資料としては面白いが通常リスニングにはあまり向かない。C面は何と言っても①「レット・イット・ビー」にトドメを刺す。ポールが “C, G, A, F...♪” と、コード進行を始めとする曲の構成をメンバーに説明しながらこの曲を練り上げていく様子が見事に音溝に刻まれており、フェイクを入れたメロディーを色々試してみたり、様々な試行錯誤を重ねたりしながらコーラス・パートを発展させていくところなんか、めちゃくちゃ面白い。ビートルズ・マジックの一端を垣間見れる必聴のトラックだ。③「グッド・ロッキン・トゥナイト」は後にポールがアルバム「アンプラグド」で取り上げる爽快なロックンロール・ナンバーだが、ここではジョンがメイン・ヴォーカルでそこにポールが絡んでいくという涙ちょちょぎれる展開がたまらない。
D面は③「バック・トゥ・コモンウェルス」ではエルヴィスそっくりに歌うポールがとにかく面白い。ホンマに細かいとこまでよぉ特徴捉えてるなぁ...(^.^) 途中ジョンの合いの手にポールが吹き出すなど、実に和気あいあいとしたエエ雰囲気が伝わってきて嬉しくなってしまう。④「ホワイト・パワー / プロムナード」は実にカッコ良いブルース・ロックで、彼らがこの “クリームごっこ” を心底楽しんでいるのが分かる。この高揚感を維持したまま⑤「ハイ・ホ・シルヴァー」へと突入、「ヤケティ・ヤック」をも交えながらストレートアヘッドなロックンロールを聴かせてくれる。このノリはもう最高だ。続くは何とロック・スピリット溢れる⑥「フォー・ユー・ブルー」で、スペクター・ヴァージョンも大好きだが、コレを聴いてしまうとその差は歴然。やっぱりビートルズは最高のロック・バンドなのだ。ラスト曲は再び⑦「レット・イット・ビー」で、C-①に比べ、かなりまとまってきたなぁ、という感じがする。ポールが “Whisper the words of wisdom...♪” のパートを “Read the Record Mirror...♪” と替え歌にしている、いわゆるひとつの “レコード・ミラー・ヴァージョン” がコレだ。リンゴは相変わらずエエ仕事しとるし、ジョンのカウンター・メロディーにも唸ってしまう。
こうやって聴いてくると、寒々しい空気の中でダラダラと続けられ、口論の絶えなかったイメージがあるトゥイッケンナム・セッションにもビートルズがグループとして素晴らしい煌きを見せる瞬間がいくつもあったことが分かる。やっぱりブートはやめられまへんな(^o^)丿
ノー・パキスタンズ
ビートルズのアルバムって色々あったのですね。
兄さま、筋金入りのビートルマニアやん。
>筋金入りのビートルマニアやん
とんでもおまへん。
筋金どころか、せいぜいエビの背ワタぐらいでっしゃろ(笑)
本物のマニア、コレクターの人らは
全然レベルがちゃいまんがな。
ワシなんかまだまだひよっこですわ。
ビートルズは色んな楽しみ方があって
ホンマにオモロイでんな!
やはり筋金入りのマニアに認定ですわ。
敬愛する同志のみなさんから
そこまで言っていただき
感謝感激雨霰です。
そのお言葉に恥じぬよう
ビートルマニア道を極めていきたいと思います!