魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

闇夜の声

2012年01月25日 | 話の畑

ハーン(小泉八雲)の「怪談」に、
横着者のお姫様が爪楊枝を畳のすき間に差していたら、夜中に爪楊枝の小さな精霊達が騒ぎ立てるという話があった。
また、「怪談」には、親に死に別れ、強欲な質屋にすべて取り上げられた幼い兄弟が、「お前寒かろ」「兄さん寒かろ」と言いながら凍え死んだ声が、一枚の布団から聞こえるという話もある。

先日、風邪気味なので、早く寝ようと横になった。と言っても、丑三つ時の2時前だった。

電気を消して、寝入りかけた頃、何か小さな声が聞こえる。
「・・・○×゜△〆□×○?ヾ∞〃・・・」
『あれっ』と思って、耳を澄ますと聞こえなくなる。
気のせいかと思い、眠ろうとすると、また、聞こえてくる。
耳を澄ますと、聞こえない。

そんなことを、2~3回繰り返しているうちに、すっかり目が覚めてしまった。
横になったまま、辺りを窺うが、何の物音もしない。
ハーンの「怪談」を思い出して、
『何かの精霊だろうか?』と、ふと、期待する。
妖怪にしては、声が微かで可愛らしすぎる。
しかし、楊枝もなにも、思い当たるふしはない。

『アホなこと考えてないで、寝なくては』と、再び寝入ろうとすると、
「・・・△〆○ヾ∞×゜?□×○〃・・・」
また、聞こえ始めた。

今度は、身体を起こして電気を点けてみた。寒い夜更けの部屋は、静まりかえっている。
所在なく、再び布団をかぶった。

「・・・〃□×〆○ヾ∞×!△゜?〃・・・」
また何か言っているが、どうにも聞き取れない。聞こうとすると聞こえなくなる。
『もう、相手にしないぞッ!』と、構わず寝ることにした。

眠気が増すにつれ、だんだん声が大きくなってくる。
なんだか、言っていることが聞き取れそうになってきた。

その時、ハッと気がついた。

何だ、気管支が鳴っているのだ。寝息とはタイミングのずれた時に、微かに微かに鳴っている。
音を聞こうと緊張して、息を潜めると、鳴らなくなる。眠りに入り、力が抜けると鳴り始める。だから、寝入る直前に最大値になったというわけだ。

電気もなかった時代には、こんな夜更けの体験も、妖怪になったのだろう。
翌朝、目覚めると、風邪気もスッキリ収まっていた。


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