魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

蛍の宿は

2012年06月28日 | 話の畑

蛍の季節も、もう終わりだろうか。
今年はどこにも蛍を観に行かなかった。

もう、三十年以上も昔になるが、ちょうど今ごろの季節だったと思う。
パーティーの後、山間の村に帰る人を送って行った。
前年、初めて送って行った時、漆黒の山道に無数の蛍が煌めいて、恒星間飛行をしているような体験をした。

「もう、蛍飛んでる?」と、たずねると、
「たぶん・・・」と、たいして興味が無い様子だった。珍しくもないのだろう。

「スゴい蛍が観られる」と言うと、参加者が2人増えた。
一時間ぐらい走って、国道から脇道に入ると、チラホラと蛍が光り始め、川沿いの道に出ると、夜霧の中がクリスマスのイルミネーションのように煌めいている。

幻想的な霧と光の中を抜けて、家まで送り届けると、再び霧の中に引き返した。

もう一時近くになっていたので、かなり減っているようだったが、それでも、あちこちで光っている。
少し獲って帰ろうと言うので車を駐め、1人を残して、2人、霧の道に降り立った。ライトを落とすと、真っ暗な雲海の中だ。

てんでに、道の端で光る蛍を捕りに行くと、大きな雑木の葉で源氏蛍が息をつくように光ったり消えたりしている。
簡単に捕まるので、ビニール袋に入れながら、ふと、見ると、やけに光が強いやつがいる。

『これはすごいな!』と、上に手を伸ばそうとして、ハタと止まってしまった。光が瞬かない!?
ジッと見据えるのだが、暗い上に深い霧で、蛍の姿がよく見えない。
しかも何か、蛍の柔らかな黄色の光とは違い、金色に輝いているのだ。

そのうち、なぜかワケも無く、不気味になってきたので、
「もう、帰ろう」と声を掛けて、車に乗り込んだ。

発進しようとしていると、助手席でジッとしていた一人が、
しぼり出すような、小さな声で
「あれ、何?」

言われて、窓越しに川の上を見ると、濃い霧の中に、白装束に白髭の、人らしきものが立っている。
何だろうと、目を凝らそうとすると、白い影が、すーっと近づいて来る。
「ギャーッ」と、後ろの席から声が上がったのをきっかけに、闇雲に発進すると、そのまま、5分ぐらい走り続け、街路灯の明かりがあるところまで、バックミラーも見なかった。
背筋が凍り付くとはこのことだ。体中がシビレて汗びっしょりだった。

三人とも、
「こっちに来たあ」と、放心状態になって、言い合った。

あまりのことだったので、翌日、明るいうちに、もう一度行ってみた。
(さすがに、そのままもう一度、引き返す気にはなれなかった)
霧の無い昼間に来てみると、何も存在しない川面の空間だ。
霧の塊がそう見えたのだろうが、それにしても、三人共が「白装束の老人」を見たと認識していたことだけは事実だ。

「霊」を感じるのは、体調のせいだと思っている。
体調が万全ではない時。成長期の子供や病人、健康障害のある人は、そういうものに遭遇しやすい。正常な大人でも、疲労や睡眠不足などで体調が崩れると、「霊体験」に遭遇する。(鏡に

蛍事件の時は、深夜、夏の霧の中で身体も冷えていたのだろう。
体調不全、体温低下などの時は、無自覚の不安感がとりつき、「霊」の世界が近くなる。

一人でPCのディスプレーに向かっていると集中し、いつしか、周囲と隔絶された世界に入り込んでいる。

今は

あなた一人ですか

あなたの後ろの人

誰ですか~


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