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屋根まで

2023年02月08日 | 日記・エッセイ・コラム

シャボン玉飛んだ~屋根まで飛んで壊れて消えた
童謡「シャボン玉」は、野口雨情が、生まれたばかりで死んだわが子への思いを歌ったものだと言われている。

日の丸ジェットが遂に消えた。日本人としては極めて残念だ。
関係当事者はもっと悔しいだろうし、経済的損失は想像も付かない。初飛行から何度も納期延期を繰り返し、遂に夢は「壊れて消えた」
素人にはどうなっているのかさっぱり解らないが、事業化ノウハウが無く、型式証明が取れなかったことが大きいという。
この顛末は、高度成長期後に日本企業が陥った悲劇の、集大成のように思える。

戦後生まれた企業は強い情熱で成功した後、優等生のサラリーマン社長が受け継ぎ、与えられたテーマを失点無く維持することだけを続け、勝負しない経営がジリ貧を招き、消えていった。
三菱は財閥系だから、維持の中に勝負の気概は込められているのだろうが、それでも、受験競争を勝ち抜いただけの優等生の時代になると、他の財閥系と同様に、隠蔽体質がボロボロと明るみに出始めた。
高度成長期は、サラリーマンでも戦争の生き残りで、捨て身の開発や経営が日本中に満ち満ちていたが、その後、粉飾決算が始まった頃から、保身と体裁だけに成り下がった。

三菱がジェット旅客機に手を出したのは、伝統とプライドだろうが、バブル後の日本企業の例に漏れず、事業は勝負ではなく、システムの管理運営だと考えていたのだろう。
もし、死活を賭ける勝負なら、先ず、結果から考える。勝つため何が最も大切なのか、ゴールから逆算し、勝負所を押さえて行く。
旅客機の勝負所は、買い手は当たり前だが、型式証明の認証が最大の山だ。YS11の時、どれほど苦労したかを「プロジェクトX」でも語っていた。
そして今回、断念に至ったのは、結局、認証問題だった。

事業化ノウハウが乏しかったと言うことは、認証の観点から開発されなかったと言うことだ。事故や故障ばかり起こしているボンバルディアでさえ、認証を通り、事業化している。どんなに美味しくても、曲がったキュウリは市場に出せないのなら、先ずまっすぐなキュウリを作る。不味くてもまっすぐなキュウリなら売れる。それがビジネスだ。
三菱ジェットはおそらく相当、美味いキュウリだっただろうが、規格が念頭に無かった。
日本の「ものづくり」は生きていても、それを世に出すプロデューサー、勝負師がいなかった。士農工商の伝統が「商」をおろそかにし、少しゆとりができれば、みな「士」=サラリーマンになりたがる。

決まった時に決まった大学に行き決まった時に就職する。二本差しならみな強い侍だと信じる。失敗すればプロジェクトの最中に、首をすげ替えるから、失敗から学ぶことが無い。強いリーダーシップは、失敗から鍛え上げられるが、それが無い、許されない。
システムの中で鍛え上げるゆとりは無いから、個々で試練を経た者が経営者になるべきで、昔の起業家はそうして育ったが、大企業は会社内で鍛えられると信じてきた。失敗は許されない優等生ばかりの企業内で。「ゆとりはダメだ」と言う人たちは、自分たちが何をしてきたか客観視できているのだろうか。

ビジネス規格で負けた日本だが、「ものづくり」が死んだわけではない。ルールや規格と関係ない分野、宇宙や兵器では、規格外れの力を発揮するだろう。
宇宙ビジネスは言うに及ばないが、常識外れの「防御」兵器を開発し、核やミサイルを無意味化して、核兵器を葬って欲しい。先ずは、自動「地雷除去システム」からだ。


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