転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



就職して最初に入ったアパートは、今で言う、ワンルームだった。
新築ではなかったし、単身者用の、ごく安い物件だったが、
曲がりなりにも固有の湯沸かしと風呂とトイレのある部屋を借りられたのは、
「ああ、これが社会人になるってことなのね(T.T)」
と感動するほど、私には素晴らしいことだった。

なにしろ、学生時代は六畳一間の間借りで、
湯沸かし無し・エアコン無し、トイレ共同・ピンク電話共同・洗濯機共同、
電子レンジ不可・電気ストーブ不可でコタツのみ可、
風呂はついてなくて銭湯通い、・・・という生活だったのだから。

尤も、このアパートに落ち着くまでには、借りる前から紆余曲折あった。
そもそも、知人のツテで頼んだ不動産屋さんの物件だったのだが、
その不動産屋さんが、知人からの紹介の段階で私を男だと勘違いしていて、
実際に私が現れたら「女だったのか!」と驚かれた、という経緯があった。

「アナタが、おいやでなければ、まあ、いいんですけど」
と言う不動産屋さんに案内されて、現地に行ってみたら、
なるほど、そのアパートは、私以外の住人は全員男性で、
しかも、建設会社○○組○○作業所の人たちだった(たらり)。
いかに神経の太い私と言えど、当時は22歳、女子大卒業直後だ。
正直、おにーさんたちの出入りするアパートには、引いた。
しかし、安くてバス停の真ん前で、まあ古くないし、良い物件だった。
ので、数分間、思案したのち、結局、決めた(ごくり)。
もう明後日が初出勤で、あんまり時間も無かったのだ。

入居したら、まず、部屋の汚いことにはビックリだった。
私も小汚い人間だし、学生時代ずっと古い下宿に居たくらいだが、
この部屋は、流し台も風呂も磨かないとやってられなかった。
何より、最初からトイレが詰まっていたのには笑った。
大家さんに苦情を言って、費用はむこう持ちで清掃して貰ったのだが、
中から、コンビニ弁当の容器や割り箸が出てきたということだった。
前の住人は、そーゆーヤツだったのだ、とこれでわかった(--#)。

若い単身者ばかりで、隣近所との付き合いは無かったのだが、
私の斜め前の部屋の男性は、よく夜中に、酔っぱらって帰宅し、
違う部屋のドアをがんがん、ばんばん、叩いて、
「入れてよーーー」「あけてくれよーーーー」
と半泣きで叫んでいた。私もやられたことがあった。
一寝入りした、午前2時とか3時とかに、こういうことをされると、
怖いよりも、うるさすぎて、殺意を覚えたものだった。

また、窓を開けていると、下からシンナーの香りが漂って来たことも
数回、あった。私がラリったら、どないすんねん(--#)、と思った。
これは住人がやっていたのか、付近の不良中学生がやっていたのか、
確かめなかったから、定かではなかったけれども。

そのような日常で、私は次第に、ストレスを募らせていた。
それで、ある日のこと、便器に空手チョップを食らわせて割ってやった、
・・・わけではない。念のため。

聖飢魔Ⅱのミサの翌日、寝ぼけ眼で歯を磨いていたとき、
私はうっかりと、コップを便器の真上に落としてしまった。
いわゆる3点ユニットというタイプで、
トイレと洗面所とお風呂が、全部一カ所にまとめられていたので、
洗面台の鏡を見ながらコップを取ろうとして、手がすべって、
コップが、すぐ右横にあったトイレを直撃してしまったのだった。
コップは陶器のマグカップで、それが落下したとき、
トイレのほうは、運悪く、フタも便座も、上げてあった
(女性ひとり暮らしなのに、どうして便座まで上げてあったのか、
と、後でこの話をしたとき友人が違う論点で大騒ぎしたことを、
そういえば思い出した・爆)。

案の定、派手に割れた。高い音とともに、マグがこなごなになった。
あっちゃ~!
と思ったが、やっちゃったものは仕方がなかった。
ユニットバスで、素足で入る場所なのだから、このままでは危険だと、
私はすぐ掃除にかかった。

で、最初、床に気を取られて、その破片を拾っていたのだが、
ふと見ると、カップとは関係ない、
妙に分厚い破片がたくさんあることに、気づいた。
え、これって、何の破片・・・・(^_^;)?
・・・・・見たら、便器が、それなりに大きく欠けていた(爆)。
これには、さすがのニブい私も、唖然とした。
割れた便器なんか見たのは、生まれて初めてだったのだ。

欠けたのは、上辺というか、縁の一部で、便座をかぶせれば、
一応、使用には耐える感じだった。と、そのときは、思った。
だいたい、一日の大半は仕事で外に出ているのだから、
朝晩の使用にさえ問題がなければ、欠けていたっていい、
と私は大胆にも考えた。

が、細心の注意を払って、そっと使っていたにも関わらず、
欠けた箇所からの無数のひび割れが、日々進んでいき(駄洒落ではなく)
だんだんと、亀裂が、下のほうまで届き始めた。
水漏れは、時間の問題だった。
このまま放置していて、ある日のこと、ぱかーんとフタツに割れたら。
そして、もし、それが使用中だったら。
・・・・大惨事だ(T.T)。

私は観念して、再び、大家さんのところに行った。
また私で、またしてもトイレの話なので、大家さんは苦笑し、
次に、便器を割ったと聞いて絶句した。
「そんな人、初めてです」
と大家さんは目をパチクリさせ、部屋まで見に来て、
「こりゃー、全部、取り替えるしか、ないね」
と力無く、笑った。仕方がないから私も笑った。

翌日、工事は業者さんが来て半日で完了したが、○万円だった。
私の初ボーナスの半分近くが、トイレ修理代に、なった。

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