恒例の正方形ダイアリーカバーの打ち合わせに3人でル・ボナーさんを訪れました。
店を閉めてから行くので六甲アイランドに着くのは8時頃になってしまいます。
夜の六甲アイランドは行き交う人も少なく、所々照らされているライトの輝きがかえって物悲しく見えます。
周辺のお店の灯りが消えて真っ暗な中、ル・ボナーさんの灯りだけがあって、この街で繁栄している数少ないお店のひとつであることを象徴しているような風景だと、夜訪ねるたびに思う。
松本さんが当店に来て下さったりして、何度も会っているけれど、ル・ボナーさんを訪れるのは1年振りです。
毎年のダイアリーカバーの製作の用事がなければ、なかなか六甲アイランドに来ることがないと言うと寂しいし、用事がなくても松本さんに会いに来ればいいと思うけれど、仕事の邪魔をしたくないとか色々考えてしまいます。
打合わせ前に近くの中華料理屋さんで食事をしながら世間話をしました。
私も、その思い出で一生生きていけると思うほど楽しかったし、松本さんもあの旅行は楽しかったと言ってくれる松本さん、分度器ドットコムの谷本さんと行ったドイツ~チェコ~イタリア旅行の話は毎回しているけれど楽しい。
こういうところで言うべきことかどうか分からないけれど、当店が立ち上がる10年前以前から助けてくれていた松本さんに対しての私の感情は複雑です。
心から慕っていて、会えばとても楽しいし、いつまでも話していたいので常に関わっていたいと思う。
でも何かを作ってもらったり、仕事を頼むことは面倒をかけているような気がして、申し訳なくてとても言いにくい。
松本さんはご自身のお仕事で手一杯で、仕事がなくて困ることなどない。
独立系鞄職人界のヒーローで、カリスマだけど、苦労して今の地位を築いてきたことを知っているので、仕事に困っていない今はマイペースで好きな仕事だけをやってもらいたいと思う。
本当は毎年お願いしているダイアリーカバーも面倒を掛けていて、松本さんに甘える形で作ってもらっているので、心苦しいけれど、これがなくなるのも寂しい。
そこには身内に対する心の葛藤しかなく、良い物を作るなどプロとしての意識とか、それを求めているお客様の存在はなくて、聞く人が聞いたら何でそんなことを思うのか分からないかもしれない。
しかし、そんな仕事の建前も、プロフェッショナルの肩書も松本さんとの関わりにおいては捨てる。
革の保管室で面白そうな革を松本さんが広げてくれて、その話を聞いているのは楽しい。
いつまでもそうやって聞いていたいけれど、そういうわけにもいかないので、松本さんが勧める革の中で私も今回はこれを使いたいと思うものを選びました。
夜が更けて、さらに寂し気になった六甲アイランドを出る時、いつも後ろ髪引かれるような気持になります。
でもまた松本さんに会うために訪れたいと思います。