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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

インクのにじみ

2011-07-05 | 仕事について

子供の頃(今も)習字が下手だったので嫌で仕方ありませんでした。

筆は柔らかくて書きにくいし、墨はすりが甘いとにじんでしまう。

今ならもう少し毛筆も楽しめるような気がしますし、堀谷先生のペン習字教室は行書になって難易度は上がったけれどとても楽しい。

子供の頃許せなかったにじみが万年筆ではあまり気にならないし、むしろ少しにじんだ方がインクが伸びるような感覚が味わえます。

手紙など少しにじむくらいが、私の字は一番きれいに見えると思っています。

全くにじまない紙は、自分の拙い文字がそのまま出てしまうので、書いていて恥ずかしい。

万年筆を使ってみて、一番良いと思ったところはインクのにじみによって、自分が書いた文字でも雰囲気というか味のようなものが出るところでした。

ボールペンで書いた私の字は下手とか汚いという手書きの文字を判定する等級とは別の不愉快さがあって、それはセンスを全く感じさせない文字ということになるのかもしれない。

その文字によって自分という人間を判断されると誰も仕事を頼んでくれなくなるかもしれません。

万年筆を使ってみて、自分の書いた文字がにじみによって少しはきれいに見える、あるいは味わいを感じることができるようになったことが一番嬉しく思いました。

インクのにじみは主に紙とインクの相性で、その組み合わせによって、にじみの度合いが決まります。

私の知る限り一番にじむのはモールスキン(最近はモレスキン)のノートとパイロットのインクとの組み合わせ。
どのインクでもにじみにくいのは当店のオリジナルノートにも使っているツバメのクリーム紙。
どの紙ににもにじみにくいインクはペリカンのブルーブラック。
どのインクでもあまり影響を受けず(多少は受けます)インクが出てくれるのは、ペリカンの万年筆。

など紙とインクの関係、インクと万年筆の関係など様々な組み合わせがあります。

でも自分で使うものは、これでなくてはいけないという組み合わせなく、こだわりなく使っています。