元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

母校での講義

2018-07-05 | 実生活

毎日店に行って、店の仕事はしていましたが、それ以外のことが何もできていませんでした。

それは母校神戸学院大学の取り組みである、産学連携講座の講師をすることになっていて、その準備に忙しかったからでした。

講義の内容は、自分の仕事について話すというものでした。

話す内容、原稿はずっと前にできていましたが、今考えると当たり障りのないつまらないものでした。

講義2週間前に思いついたアイデアがあって、準備し直そうと思ってからは、ひとつひとつのことを考え抜いたので、時間がいくらあっても足りず、それからが忙しかったけれど、やり直してよかったと思います。

はじめのままだと、素人が90分延々と話し続けて生徒の方を全員眠らせてしまうことになっていたかもしれない。

お陰で寝る人もなく(私からは分からなかった?)、私語をする人も一人もおらず、終了15分前に話終わって、質疑応答に入るという、何となくカッコはついたものになりました。

でも、準備中もう二度とこんな話は受けないと思っていたのに、終わると次はもっと上手くできるかもしれないと思い始めるのは、バカだからなのかもしれない。

今回の準備で、自分が27年前に大学を卒業してから今までを振り返って、どうして自分が今ここにいるのか、当店がなぜ10年以上やってくることができたのかを分析する時間になりました。

店を始めて、もちろん長く続けたいと思って、そのつもりでやってきたけれど、そんなことはどのお店もそのつもりでやっている。

どこが良くて、どこが他と違っていたのか考え抜くことは今までできていなかった。

もちろん運がよかったのだと思うけれど、それだけで片付けることのできるものでもない。

就職した時、自分はこのまま家と会社の往復を淡々としながら、たまにコンビニで雑誌を立ち読みすることが楽しみの生涯を送るのだと諦めていました。

そんな自分がどうして今万年筆店をしているのか、当店がどうしてまだ立っているのかを講義を聴きに来てくれた大学生の人たちに話すためには答えを見つけなければいけませんでした。

無意識ではそう思っていたいたけれど、ちゃんと言葉として答えを見つけることができたことは本当に大きな収穫だったと思います。

母校に恩返しできるのならと引き受けた講義でしたが、実はこの時間は自分のためにあったことに気付きました。

 

講義を終えた時に、仕事を抜けてわざわざ来て下さっていた同窓会長にそのことを話したら、それもこの取り組みの狙いで、この講義をすることで自分の半生や仕事を振り返って、考えてもらうことで、今後の仕事の役に立ててもらいたいという狙いもあるとのこと。

勉強していたのは学生さんだけでなく、自分でもあったのだと、心から感謝しながら27年振りに訪れて、様変わりして、どこに何があるのか分からなくなっている母校をを後にしました。