元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

台湾風景

2019-10-25 | 仕事について

自分で言うのも何だけれど、結構感傷的に物事を思うことが好きな方だと思う。

ふと見かけた風景から、そこで暮らす人々について思った時に胸が痛くなるような感情がよく湧いてくる。

先週末4日ほど台湾に行っていた。

遊びではなくちゃんとした仕事で行ったので、気楽な気分ではなく、それなりのプレッシャーを感じていた。

仕事で旅に出る時、何らかの成果を持って帰らなければいけないというプレッシャーがあって、のんびりしていられないし、食べ歩くわけにもいかなかった。

そんな合間でも見た景色に心はいつも動かされていた。

台北101という88階以上が展望室になっている高いビルに上がった。

地上380mから台北の街を見下ろす。

台北は表通りは近代的なビルが建ち並ぶ大都会のイメージが強いけれど、一つ路地を入ると古い、とても古い建物が密集していて、101から見ると古い地域が大部分を占めていることがよく分かる。

一部のエグゼクティブが新しいビルで仕事して、ほとんどの庶民は古く、低い建物の中で日々の暮らしを必死で、でも前向きに維持しようともがいていると勝手に想像するとこの風景が忘れられなくなる。

101では多くの人は記念撮影に忙しく、その前の景色を見て考え込む様子もない。こんな景色を見て、心が乱されるようなことは皆はないのだろうか。

台南に向かう高鐵(新幹線)の車窓からも新しい街と古すぎるくらい古い街のコントラストが強烈な景色をいくつも、街があるごとに見た。

格差という言葉が台湾にいる間中何度も頭から離れなかった。

富める者と庶民。新しい場所と置き去りにされた場所。

そのコントラストが強い台湾の景色に心を大きく揺さぶられ続けていました。

台湾は格差を気にせずにダイナミックに発展してきたのだろう。

それに対して日本は格差を良しとはしなかったので、そのスピードは遅かったのかもしれない。けれど、それが日本で、日本人特有のバランス感覚なのかもしれないと、台湾の景色を見て初めて日本についてそんなふうに思った。

台湾から帰ってきてまだ数日しか経っていないけれど、とても時間が経ったように思うし、こうやっていつもの生活に戻っていると、夢だったのではないかとさえ思えます。

それだけ一人で歩き回った台湾の旅は、その時には夢中で、何か成果を持って帰らないといけないというプレッシャーもあって、楽しいという自覚すらなかったけれど、忘れられない時間になったと思う。