元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

7月の予定と夏休み臨時休業8月2日(月)~5日(木)のお知らせ 

2010-07-06 | 仕事について
明日、谷本さんと東京出張に出ます。文具の展示会ISOTが東京ビックサイトで開催されるためですが、空き時間で都内のお店をいくつか見学もしてくるというのが上京の目的で、ここ数年恒例行事になっています。
もしかしたら、東京まで時間とお金を使ってわざわざ行かなくても、ヒントなど見つからないかもしれませんし、おそらく仕事はそのまま流れていくのだと思います。
しかし、そのような行事を作ることによって、生活の中にメリハリができることも確かです。私たちはこの東京行きを大切にしています。

7月16日(金)は延長営業日で、19時から21時まで、神谷利男さんを講師に招いた“FridayWorkshop 万年筆で描いて、色を塗ろう”を開催します。
参加費無料、予約不要ですが、万年筆(色付けをするため水に流れない顔料インクなら尚可)、スケッチブック(F2サイズ、B5サイズ程度)、水彩絵の具(自由)をご持参ください。
不明な点は当店(078-360-1933)にお問い合わせください。
ご参加お待ちしております。

7月31日(土)15時~17時 聞香会
若き香道師森脇直樹さんを講師に招いて、本格的な沈香の香りを楽しんでいただきます。カジュアルな雰囲気の中で良質な香を聞くことができるので、好評です。
参加無料、予約の必要はありません。万年筆とメモ帳をご持参ください。

8月2日(月)~8月5日(木) 誠に勝手ながら夏休みのため臨時休業いたします。
先日、ヨーロッパ旅行で長期不在にしたにも関わらず、申し訳ありません。恒例の夏休みとさせていただきます。期間中、インターネットショップの出荷は通常通りさせていただきます(万年筆の出荷は休業期間終了後)。

よろしくお願いいたします。

移動祝祭日(アーネスト・ヘミングウェイ 新潮社文庫)

2010-07-06 | 仕事について
時差ぼけで、日中急激に眠くなり、夜中から頭が冴えてしまい、朝方まで眠れない日が続いていました。
でも、悪いことばかりでもなく、頭の冴えた時間に本を読んだり、何か書いたりして過ごしていました。
ヨーロッパに旅立つ時、旅先の夜の時間や移動中に読もうとヨーロッパや旅をテーマにした文庫本を4冊持って行っていましたが、そんな暇はなく1行も読まずに持って帰ってきましたので、それらを読む時間ができました。
そんな中の1冊で、ヘミングウェイが修行時代を懐かしみ、晩年に思い返して書いた作品です。
仕事をし出したばかりの若かりし日や、まだ給料が少なくて貧しかった日々、でも愛情に溢れた幸せで素朴な時間を懐かしむ人は多いと思います。
ヘミングウェイもパリに渡ったばかりの若かりし日、売れる原稿もなく、貧しく小さなアパートで家族3人で慎ましく、でも幸せに暮していました。
しかし、原稿が高く売れ出し、仕事が増え始めるといろんな人が周りに現れるようになり、トラブルや誘惑が増え始めました。
素朴な幸せな暮らしは、少しずつ損なわれていき、家族の時間が少なくなっていきます。
家族への素朴で、幸せな時間を失うのと引き換えに、ヘミングウェイの名声は高まっていき、作家としての地位が確立されていきます。
人は、貧しくて、無名の時、そこにある素朴な幸せに気付かず、幸せの条件だと思い成功を夢見ます。
しかし、仕事の成功はただ仕事においてだけで、それが人生の幸福であるわけではないことを知ります。
何も変わらない生き方を望むか、覚悟して変化を受け入れるのか。そんな心の準備が、人生のターニングポイントでは必要になってくるのだと、作中の人物たちから感じます。
成功するにはタフでなければならず、そうでなければ劇的で波乱万丈な人生の中で行き続けることはできないと思うと、ヘミングウェイもタフになりきれなかったのだと思いました。
作中にヘミングウェイが、カフェを仕事場にして、ノートに執筆している姿がよく出てきます。
時には一心不乱に、時には街を行く人たちを観察しながら、愛用のノートに鉛筆で記述していくところは、想像するとワクワクして、愛用していたノートはどんなものだったのか、鉛筆ではなく万年筆だったことはないかなど勝手に想像しています。
カフェで集中して仕事している時、あまり好きでない知人に声をかけられて、大いに憤慨したという件は、その気持ちも分かりますが、笑えるところでもあります。
カフェで草稿したものを自宅の書斎でタイプ打ちして清書になるものもあれば、そのまま草稿としてノートのまま、寝かせるものもあります。
それは書いている時の本人にとって大した問題ではなく、ただカフェでコーヒーや酒をすすりながら、ノートに何か書いていれば仕事した気になれて、満足感を得られる。
作家とはそんな職業だったのだと羨ましくなったり、家族が気の毒になったりします。