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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

パソコンが壊れた

2006-10-03 | 万年筆
もう治りましたが、パソコンが壊れてしまい、修理に出していました。
ウイルス対策ソフトも更新して、新しいものをインストールしていましたし、メモリの容量もなるべく空けるようにするために、いらないものは消すようにしていましたが、ある日突然電源が入らなくなってしまいました。
しばらく、パソコンのない生活が続いていました。
企画書など、仕事の文章も手書きになり、そうやって書いてみると今までいかにパソコンというものに使われていたのかと思いました。
A4の用紙に文字が埋まらなければ、フォントを大きくしたり、レイアウトを移動させたり、内容と違うことに神経を使っていたような気がします。
そして手書きで清書までしてみると、万年筆と思考のリズムが合ってくるのがわかりました。そんなことを初めて経験し、万年筆を使う本当の醍醐味を知ったような気がしました。そして、パソコンは信用できないという思いも新たになりました。

自分流に生きる

2006-10-03 | 万年筆
休日を利用して、年の離れたお友達のKさんのお宅をお邪魔しました。
Kさんのお家は田んぼが広々と広がる田園地帯の一番奥、小高い山の麓にありました。
田はほとんどが稲刈りが済んでいて、鷺や雀が降りてきて何かをついばんでいました。あぜ道には彼岸花がたくさん咲いていました。
そんな季節感をたっぷりと感じることができる場所でしたが、Kさんはこの地ではよそ者だと言いました。
Kさんは満州で生まれましたが、終戦と同時にお父様の故郷であるこの地で家族で暮らしだしました。
大陸から引き揚げてきたKさんたちを小学校の同級生はいじめました。陰湿ないじめがされているのも関わらず、先生も見て見ぬ振りをしました。
そんなことがあったことも理由で、Kさんはこの地に愛着が持てないまま、大学に進学し、そのまま新聞記者として全国を飛び回る生活に入っていきました。
定年まで第一線の新聞記者として勤めた後、強いて言えば故郷と言えるこの地に帰ってきて、作家として、文学講座の講師をしたり講演をしたりしています。
そんな話を聞きながら、自分らしさを持ち続けて、強く生きたKさんの人生に触れました。自分流でも自信を持って歩き続ける。そんな生き方を教えてもらいました。

結論

2006-09-26 | 万年筆
ある万年筆メーカーの展示会に行き、師と仰いでいる人の講演を聞くことができました。
彼は私の短いペンのキャリアの要所要所に現れて、その都度方向性を示してくれたり、ヒントをくれたりします。
今回の再会でもやはり大いに影響される所がありました。
元々冷めた性格のせいか、あまり人に影響されることもなく、人を尊敬することもないですが、彼だけは別で、なぜか私は彼の言葉をいつまでも覚えていて、それを指針になっていることがあります。
昨年はペンの調整の極意を伝えられ、それを自分なりに消化できているように思います。
その講演会での内容は何度も聞かされたことばかりでしたが、彼は明らかに私に向かって話していました。
話の内容以上に、何とか自分のできるやり方で、万年筆の文化をもっと大きくしたいという彼の姿勢に感動すら覚えました。
彼の姿を見て、お客様方の言葉を思い出し、自分が唯一できることでもっと世の中の役に立ちたいと思いました。
誰よりも信頼できるある人から今の私の「あまりよくない」と言われた現状では、世の中の役に立っているとは言い難く、何らかの結論を出さなければ何も変わらないと思っています。

遠野物語

2006-09-25 | 万年筆
柳田国男氏が遠野の人たちの話をまとめた民話集です。
街の人はこの本を読んで、これらの話をただの迷信だとか錯覚だと思われるかもしれませんが、自然にかなり近い所で暮らす人々にとって、河童や化け狐、狼、たたり、神隠し、狐つき、妖怪など本気で信じられていることです。
岩手県の山の中にある遠野を訪れた時、この本の存在を知り、街に帰って来てから読み始めました。
語り部から淡々と語られる話を読みながら、山に囲まれた遠野の風景が思い起こされました。
長野の閉鎖的な辺境の村で、私が子供の頃聞かされたり、聞こえてきた大人たちの不思議な話と遠野物語には似たような話がたくさんありました。
観光や通りすぎただけでは分からない、暗い人間の因縁や自然界との交渉から生まれた話が日本全国にあるのだと思いました。

うるしの話

2006-09-20 | 万年筆
以前から興味がありましたし、自分の企画として検討している漆についてもっと知りたいという想いから、蒔絵で人間国宝になった松田権六氏の著書「うるしの話」(岩波文庫)を読みました。
勉強のつもりで読み始めた本でしたが、非常に面白い本で皆さんにおすすめします。
文章は非常に分かりやすく、人間国宝というと頑なで、難解な人物を想像してしまいますが、この本から感じられる松田権六氏はシンプルな、漆への情熱に生涯を捧げた普通の人でした。
恐ろしく腕の良い人で、職人というイメージがありますが、そんな小さな枠におさまらないバイタリティに溢れる漆研究家、漆コーディネーター、アーティストそして、指導者であったことがわかります。
その仕事の一部にダンヒルナミキでの蒔絵の仕事がペンの世界では有名ですが、戦争を挟んだ今から60年以上前に世界の中の日本を意識して漆の普及と品質の維持に努めた先見のある人の存在を知ることができました。

突然の回想?「残してきた想い」

2006-09-17 | 万年筆
まだ本当に子供だった頃、家族で旅行や夏休みの帰省の時、会えない彼女のことが気になってとてもセンチメンタルな気持ちになったことを覚えています。
父が運転するセダンの車窓から見える景色、ウォークマンのヘッドホンから聞こえるボウイや尾崎豊。(街にいる時は洋楽しか聴かないと公言していたのですが)
好きな人への想いを煽るような、聞きやすいメロディに分かりやすい歌詞。
今たまたまその時の曲を聴くとまるでその景色を彼女と一緒に見たような記憶がよみがえります。
好きな人を想いながら見る風景はとても美しく見えてしまいます。

タバコの銘柄とインクの色

2006-09-11 | 万年筆
黒っぽいインクの色ばかり使うようになってもう何年も経ちます。
それまで私はブルー、ブルーブラック、はもちろん、ボルドー、グリーン、ブラウンなど、あらゆる色のインクを使ってみたりして、結局自分は何色が好きなのか分からずにいました。
様々な色のインクをペンや書く内容によって変えるような粋な使い方もできず、どの色も自分に馴染みませんでした。
でも、だんだん自分の好きなものが分かってきて、今では黒インクをグレーで少し薄くしたものを主に使っていて、それで落ち着いたようです。
タバコの銘柄も若い頃は色々試してみましたが、ショートホープしか吸わなくなって、20年近くが経ちます。
どうやら私はシンプルでクラシックなものが好きなようです。

東北旅行3

2006-08-28 | 万年筆
今回の旅で印象に残った街がありました。秋田県の角館です。
武家屋敷が立ち並ぶ通りを観光のメインストリートにして、地元の伝統産業や、土産物、飲食店が江戸時代の武家町という同じテーマで統一された、一体感のある街作りがされていました。
一軒一軒の店がバラバラに近隣の店と差別化するのではなく、統一感を出すことにより、街自体を魅力的に見せ、観光客を集めるという手法で、成功しているように思いました。
駅前の観光案内所も充実した資料を揃えていて、街ぐるみの取り組みであることが分かります。
地方都市へ行った時、その寂れた様子に暗い気分になることがありますが、こんな風に活性化している街もあることを知りました。
こんな街にペンの店があってもおもしろいのではないかと思いました。

東北旅行2

2006-08-28 | 万年筆
岩手県と秋田県の境に八幡平という山があります。国道沿いの駐車場から歩いて、20分くらいで山頂に着いてしまうので、人間に侵されていない自然というわけではありませんが、その山頂付近の2つの沼の神秘的な様子が印象に残りました。
八幡沼は周りを湿地に囲まれ、よく観光案内などに出てくる美しい景色の一部になっています。ガマ沼は水のきれいな静かな場所でした。
人がいなくなった夜、何かが起こっているのではないかと思わせるような、自然の力を感じずにはいられない場所でした。
平安時代征夷大将軍坂上田村麻呂が東北平定を祝って、この山を八幡平と名付けたそうですが、簡単に手なずけられない自然の気難しさを感じました。

東北旅行

2006-08-26 | 万年筆
東北をドライブしてきました。
青森からレンタカーで秋田、岩手をドライブする3泊4日の旅でしたので、何箇所か回ることができました。
その何箇所かの中で特に心に残っている景色についてふれておきたいと思いました。
 
飛行機の出発時間が2時間も遅れましたので、青森空港から3時間以上もかかる下北半島の先端中央にある恐山に行くにはかなり無理がありましたが、海沿いの片側1車線の道を車を飛ばして何とかたどり着きました。
途中の下北の風景は、寒村という言葉がピッタリの寂しげに見える土地でした。打ち捨てられた農家(これは東北ドライブ中何度も目にしました)、閑散とした街、それらと鋭い対照を成している風力発電の大きなプロペラや原発の施設を表示する標識。
そんな道を3時間かけてたどり着いた恐山は最果ての地という言葉がピッタリの場所でした。
だだっ広い土地にかなり殺風景に建てられた寺院、溶岩石のいびつな丘のいたる所から吹き上がる湯気と硫黄臭の大気。
不気味なほど透明感がある静かな湖。
こんな場所が日本の中にあったということにショックを受けてしまいそうな、異様な雰囲気を漂わせていました。