【ソウル澤田克己】
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は2日、新年演説を行い、「北朝鮮が誠実な態度を取るならば、新たな時代を共に開いていくことができる。対話を
通じて相互不信を解消し、共存共栄の道を進まねばならない」と北朝鮮に対話を呼びかけた。
李大統領は、昨年末に北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が急死したことで「朝鮮半島情勢は新たな転換期に入っている」という認識を示し、
「もっとも緊要な目標は朝鮮半島の平和と安定だ」と語った。ただ同時に、北朝鮮が武力挑発してくる可能性は残っていると指摘。挑発には「強力な対応を取
る」とくぎを刺した。
〈本の紹介〉 ピョンヤンの夏休み 柳美里さんの新刊目で、肌で、感じた「祖国」
講談社、1500円+税、TEL 03・5395・3622 朝鮮新報より
作家・柳美里さんにとっての、もう一つの「祖国」、朝鮮民主主義人民共和国。偏見にとらわれることなく、柳美里自身が見た「北朝鮮」の姿は何か。本人
撮影による写真と共に綴られる、3度の訪朝を記録した本格紀行ノンフィクション。在日2世として日本に育った著者にとって、自らのアイデンティティーを
探る試みは、これまで大作「8月の果て」で結実していたかのように思える。だが、そのルーツをさかのぼり、ベールに包まれた朝鮮民主主義人民共和国の内
実を、自らの目で、肌で、足で追う作業は、彼女にとって当然の帰結だった。
2008年から3回にわたって著者は朝鮮を訪れた。2度目までは一人で、そして3度目は10歳の息子・丈陽、そして16歳年下の同居人男性という「奇妙な家
族」で向かった。この作品は、柳さんのアイデンティティーを探る記録であるのと同時に、「家族」と「故郷」の内実が解き明かされる刺激的なノンフィク
ション。
柳さんは、他者と話したり、他者と親しくしたりするのが苦手で、それが高じて精神のバランスを崩し、20数年、社会とは一定以上の距離を置いてきたとい
う。そんな作家が、朝鮮では、初めて出会った人々と穏やかな信頼関係を結び、会話し、思索を重ねていった。「つまり、自分と外界のあいだに鉄のシャッ
ターをおろして孤立しているわけだが、祖国に滞在した十日間はシャッターを開けて、他者と交流することができた」結果、誕生したのが本書なのだ。
「拉致問題以降、日本のテレビや新聞雑誌は国民の感情的偏見に迎合するかたちで偏った情報を垂れ流し、いまや左右声を合わせて『犯罪国家・北朝鮮』への
制裁を叫ぶという最悪の状況になってしまった」と書く柳さん。そして、「日本こそ、霧の国なのだ」と。
…情報という濃霧がもうもうと立ち籠めているこの国でも、自分という軸をぶらすことなく、自分の頭で考えようとしているひとたちは少なからず存在し、わ
たしも物書きの端くれとして、霧の中で「誰のものでない正義」を探し求めようと思っている…。
そして、ロラン・バルトの言葉を引用する。「私は見る、私は感ずる、ゆえに、私は気づき、見詰め、考えるのである」と。
本書の副題は「わたしが見た『北朝鮮』」だが、そこから見えてくるのは、実は北を叩きながら、根っこから腐り、崩れゆく、日本の政治、社会、メディアな
どの救いようのないありようなのかもしれない。(公)
( 朝鮮新報 2011-12-19 10:56:32 )
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