27日の院内勉強会の案内です。是非ご参加下さい。
(赤石)
「一日も早く「慰安婦」問題の解決をもとめる市民と議員の集い
韓国憲法裁判所決定と韓国政府による協議要求をどう受け止めるか」
韓国憲法裁判所決定の内容と、それが日本に及ぼす効果などについて、
9月27日、
山本晴太弁護士を福岡からお招きして緊急の院内勉強会をおこないます。
この問題と関連して緊急来日した韓国挺身隊問題対策協議会の尹美香代表も、
韓国の最新状況を報告します。
この決定言い渡し後の9月18日、請求人のお一人、キム・オクスンさんが亡くなりました。
2006年7月5日に109名いた請求人が、5年の間に48名亡くなり、決定言い渡し時には請求人は61名となっていました。
キム・オクスンさんの死去で、さらに、生存する請求人は60名となってしまったのです。
まさに、時間がありません。日本軍「慰安婦」問題解決の最後とも言えるチャンスです。是非ともご参加ください。
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一日も早く「慰安婦」問題の解決をもとめる市民と議員の集い
韓国憲法裁判所決定と韓国政府による協議要求をどう受け止めるか
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日時:9月 27日(火) 12:00~13:30
場所:衆議院第1議員会館 国際会議場
東京都千代田区永田町1-7-1
東京メトロ 丸ノ内線/千代田線 国会議事堂前駅
有楽町線/半蔵門線/南北線 永田町駅
講師:山本晴太弁護士(福岡県弁護士会所属、関釜裁判代理人)
緊急報告:尹美香(韓国挺身隊問題対策協議会 常任代表)
2011年8月30日、韓国の憲法裁判所は、韓国政府が日本軍「慰安婦」被害者の賠償請求権に関し
具体的解決のために努力していないことは「被害者らの基本権
を侵害する違憲行為である」との注目すべき決定を出しました。
日本軍「慰安婦」被害者が日本国に対して有する賠償請求権が「日韓請求権協定」第2条第1項
(「完全かつ最終的に解決」条項)によって消滅したのか否かに関する日韓両国間の解釈上の紛争を、
同協定第3条が定めた手続(①まず外交上の経路を通じて解決する、
②それができなかった場合には仲裁委員会をつくる)に沿って解決していない韓国政府の不作為が、
違憲であると宣告したのです。
これを受けて、韓国外交通商省は9月15日、政府間交渉の開催を日本政府に公式に求めました。
この韓国憲法裁判所の決定、これに伴う韓国政府の協議提案を、日本政府はどう受け止めるべきなのか。
日本軍「慰安婦」裁判で唯一の勝訴判決「下関判決」を勝ち取った山本晴太弁護士をお招きして、
韓国憲法裁判所決定の内容、決定後の韓国政府および韓国国会等の動き、
それが日本に及ぼす効果などについて、お話を伺います。
また、緊急来日した韓国挺身隊問題対策協議会の尹美香常任代表から、
韓国の動きについてホットな報告をしていただきます。
共催:戦時性暴力問題連絡協議会/日本軍「慰安婦」問題解決全国行動2010
(問い合わせ)03-3686-1954
憲法裁判所決定要旨
事件番号: 2006한마788
事件名: 大韓民国と日本国間の財産および請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定第3条 不作為違憲確認
宣告日: 2011.08.30
終局結果: 認容
決定要約文:
憲法裁判所は2011年 8月30日、裁判官 6(違憲):3(却下) の意見で、請求人らが日本国に対し持つ日本軍慰安婦としての賠償請求権が、「大韓民国と日本国間の財産および請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(以下「この事件の協定」)第2条第1項によって消滅したのかどうかに関する、韓・日両国間の解釈上の紛争を、上記協定第3条が定めた手続きにより解決しない被請求人の不作為は、違憲であることを確認するという決定を宣告した。
我が国の憲法第10条、第2条第2項、および前文と、この事件の協定第3条の文言に照らしてみる時、被請求人が上記第3条により紛争解決の手続きに進む義務は、憲法に由来する作為義務として、それが法令に具体的に規定されている場合といえることで、請求人らの財産権および人間としての尊厳と価値という基本権の重大な侵害の可能性、救済の切迫性と可能性などを考慮する時、被請求人にこのような作為義務を履行しない裁量があるということはできず、現在まで被請求人が紛争解決手続きの履行という、上記作為義務を忠実に履行したとは見られないので、結局、被請求人のこのような不作為は憲法に違反し、請求人らの基本権を侵害するということである。
これに対し、この事件の協定によって請求人らが日本国に対する損害賠償請求権を行使できなくなった損害を完全に補償する責任を負う、と合わせて宣言しなければならないという、チョ・テヒョン裁判官の認容補充意見、および憲法第10条、第2条第2項、憲法前文の規定、この事件の協定第3条に基づいては、請求人らに対し国家がこの事件の協定第3条に定めた紛争解決手続きに進まなければならない具体的な作為義務が発生するとは見られないので、この事件の憲法訴訟審判請求は不適法で却下しなければならないという、裁判官イ・ガングク、裁判官ミン・ヒョンギ、裁判官イ・ドンフプの反対意見がある。
□ 事件の概要および審判の対象
- 事件の概要
○ 請求人らは、日帝によって強制的に動員され、性的虐待を受けて慰安婦としての生活を強要された「日本軍慰安婦被害者」らで、請求人らが日本国に対し持つ日本軍慰安婦としての賠償請求権が、「大韓民国と日本国間の財産および請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(条約第172号、以下「この事件の協定」という)第2条第1項によって消滅したのかどうかに関して、日本国は上記規定によって請求権がすべて消滅したとし、請求人らに対する賠償を拒否しており、大韓民国政府は請求人らの上記賠償請求権は、この事件の協定によって解決されたものではないとの立場なので、韓日両国間にこれに関する解釈上の紛争が存在するのであるから、被請求人としては、この事件の協定第3条が定めた手続きにより、上記のような解釈上の紛争を解決するための措置を取る義務があるのだが、これを全く履行しないでいると主張し、2006.7.5. このような被請求人の不作為が請求人らの基本権を侵害し、違憲という確認を求めるこの事件の憲法訴訟審判を請求した。
- 審判の対象
○ この事件審判の対象は、請求人らが日本国に対し持つ日本軍慰安婦としての賠償請求権が、「大韓民国と日本国間の財産および請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」第2条第1項によって消滅したのかどうかに関する、韓・日両国間の解釈上の紛争を、上記協定第3条が定めた手続きにより解決しない被請求人の不作為が、請求人らの基本権を侵害するのかどうかであり、これと関連した上記協定の内容は以下のとおりである。
大韓民国と日本国間の財産および請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定
(1965.6.22.締結、1965.12.18.発効)
-----------【訳注】----------------
日本名:
日韓請求権並びに経済協力協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)
以下の協定文は、内容上の差異がないことを確認し日本語の協定文から引用した。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html
データベース『世界と日本』
日本政治・国際関係データベース
東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室 より引用
第二条
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
第三条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。
□ 決定理由の要旨
○ 憲法前文、憲法第10条、第2条第2項と、この事件の協定第3条の文言に照らしてみる時、被請求人が上記第3条により紛争解決の手続きに進む義務は、日本国によって強行された組織的で持続的な不法行為によって、人間の尊厳と価値を深刻に毀損された自国民らが賠償請求権を実現できるように協力し保護しなければならない憲法的要請によったこととして、その義務の履行がなければ請求人らの基本権が重大に侵害される可能性があるので、被請求人の作為義務は憲法に由来する作為義務として、それが法令に具体的に規定されている場合といえるだろう。
○ 特に、我が政府が直接日本軍慰安婦被害者らの基本権を侵害する行為をしたことではないが、日本に対する賠償請求権の実現、および人間としての尊厳と価値の回復に対する障害状態を招いたところは、請求権の内容を明確にしないで「すべての請求権」という包括的な概念を使って、この事件の協定を締結した我が政府にも責任があるという点に注目するならば、その障害状態を除去する行為に進まなければならない具体的義務があるということを否認するのは難しい。
○ 被請求人はこのような作為義務を履行せず、請求人らの基本権を侵害した可能性があるということであるから、適法要件はすべて整えたと認められ、実際に被請求人の不作為が請求人らの基本権を侵害したのかどうかは、本案に進んで判断しなければならない。
○ この事件の協定第2条第1項の対日請求権に、日本軍慰安婦被害者の賠償請求権が含まれるのかどうかに関して、韓・日両国間に解釈の差異が存在し、それが上記協定第3条の「紛争」に該当するということは明らかなので、被請求人としてはこの事件の協定第3条による紛争解決の手続きにより、外交的経路を通じて解決し、そういう解決努力を使い尽くした場合、これを仲裁に回付しなければならないことが原則といえる。
このような紛争解決手続きに進まなかった被請求人の不作為が請求人らの基本権を侵害し、違憲かどうかは、侵害される基本権の重大さ、基本権侵害の危険の切迫性、基本権の救済可能性、作為に進む場合、真の国益に反するのかどうかなどを総合的に考慮して、国家機関の基本権の拘束性に当てはまる裁量権行使範囲内として見なすことができるのかどうかにより決定される。
○ 日本国によって広範囲に強行された反人道的犯罪行為に対し、日本軍慰安婦被害者らが日本に対し持つ賠償請求権は、憲法上保障される財産権だけでなく、その賠償請求権の実現は、無慈悲に持続的に侵害された人間としての尊厳と価値および身体の自由を事後的に回復するという意味を持つものであるから、その実現を遮るのは、憲法上財産権問題に限定されず、根源的である人間としての尊厳と価値の侵害と直接関連がある。したがって侵害される基本権はかなり重大だ。
○ また、日本軍慰安婦被害者は皆高齢であり、これ以上時間を遅滞する場合、日本軍慰安婦被害者の賠償請求権を実現することによって歴史的正義を立て直し、侵害された人間の尊厳と価値を回復することは永遠に不可能となりえるので、基本権侵害救済の切迫性が認められ、この事件の協定の締結経緯、およびその前後の状況、一連の国内外の動きを総合してみる時、救済の可能性は決して小さいとはいえない。
国際情勢に関する理解を土台にした戦略的選択が要求される外交行為の特性を考慮するといっても、被請求人が不作為の理由として前面に掲げる「消耗的な法的論争での発展可能性」とか「外交関係の不便」という、非常に不明瞭で抽象的な理由を聞いて、基本権侵害の重大な危険に直面した請求人らに対する救済を冷遇する妥当な理由とか、真剣に考慮されなければならない国益だと見なすことは困難だ。
【以下の青書きを赤書きに訂正】
○ 以上のような点を総合すれば、結局、この事件の協定第3条による紛争解決の手続きに進むことだけが、国家機関の基本権拘束性に当てはまる裁量権行使という理由で被請求人の不作為によって請求人らに重大な基本権の侵害を招いたということであるから、これは憲法に違反する。
○ 以上のような点を総合すれば、結局、この事件の協定第3条による紛争解決の手続きに進むことだけが国家機関の基本権羈束性に当てはまる裁量権行使だということであり、被請求人の不作為によって請求人らに重大な基本権の侵害を招いたということであるから、これは憲法に違反する。
原文
○ 이상과 같은 점을 종합하면, 결국 이 사건 협정 제3조에 의한 분쟁해결절차로 나아가는 것만이 국가기관의 기본권 기속성에 합당한 재량권 행사라 할 것이고, 피청구인의 부작위로 인하여 청구인들에게 중대한 기본권의 침해를 초래하였다 할 것이므로, 이는 헌법에 위반된다.
□ 認容補充意見(裁判官 チョ・テヒョン)の要旨
○ 法廷意見に付け加え、大韓民国はこの事件の協定によって、請求人らが日本国に対する損害賠償請求権を行使できなくなった損害を完全に補償する責任を負う、と宣言しなければならない。
□ 反対意見(裁判官イ・ガングク、裁判官ミン・ヒョンギ、裁判官イ・ドンフプ)の要旨
1. 憲法規定、憲法解釈、この事件の協定第3条の文言を総合しても、国家の請求人らに対する「憲法から由来する作為義務」は導き出すことはできない。
○ 行政権力の不作為に対する憲法訴訟が適法なためには、公権力の主体に「憲法から由来する作為義務」が特別に具体的に規定されていなければならないが、上記の作為義務の導き出しの根拠は、憲法の明文、憲法の解釈、法令の規定の3つだ。
○ ところが、ここで留意しなければならないことは、憲法の明文規定上、憲法解釈上、法令上導き出される公権力主体の具体的作為義務は、「基本権の主体の国民に対する」義務でこそあるということだ。そうしてこそ、「これに基づいて、基本権の主体が行政行為ないし公権力の行使を請求できることにも、公権力の主体がその義務を怠って」基本権の侵害を受ける可能性があるためだ。
○ まず、憲法第10条の国民の人権を保障する義務、第2条第2項の在外国民保護義務、憲法前文中「3.1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統を継承」するという部分は、国家の国民に対する一般的・抽象的義務を宣言したことや、国家の基本的価値秩序を宣言したことだけであり、その条項自体から、国家の国民に対する具体的な作為義務が出てくることはないということで、これは我が裁判所の確立された判例でもある。
○ 次に、この事件の協定第3条が「法令に具体的に作為義務が規定されている場合」に該当するのかが問題であるが、この事件の協定は韓・日両国が当事者になって、相手方に対し負担することを前提に締結された条約なので、この事件の協定第3条に基づいた両国の義務は、自国国民に対し負担する義務ではないので、「この事件の協定第3条の紛争解決の手続きに進めと自国政府に対し要求できる権利を該当国国民に付与する内容」の文言が、この事件の協定のどこにもない以上、「我が政府が請求人らに対し負担する作為義務」は導き出すことはできない。
2. この事件の協定第3条に規定されたところでは、この事件の協定の解釈に関する紛争を、外交上の経路を通じて解決したり、仲裁手続きに回付するのは「義務事項」ではなく、しかも「具体的な」作為義務に該当することもない。
○ この事件の協定第3条は「外交上の経路を通じて解決する」(第1項)、「仲裁を要請する公式書簡を受領した日から……仲裁委員会に決定のため付託する」となっているだけで、「必ず」外交的解決手続きに進まなければならなかったり、「必ず」仲裁手続きを申請しなければならないという「義務的」内容は記載されてはいない。そして、上記協定第3条に記載された外交的解決、仲裁回付要請は、我が政府の「外交的裁量事項」に該当するという先例(憲法裁判所2000.3.30.98헌마206決定)もあるのだが、多数意見は結論的に上記先例と反対の判断をしながら、先例とこの事件は区別されると誤解している。
○ この事件の協定第3条がいう「外交的解決義務」という内容を調べてみても、これは国家の基本権保障義務、在外国民保護義務と同様に、国家の一般的・抽象的義務水準に過ぎないだけで、決して「具体的な」作為を内容とするものではない。また、その履行の主体や方式、履行程度、履行の完結可否を司法的に判断できる、客観的判断基準を用意するのが難しい高度な政治行為領域として、憲法裁判所の司法審査の対象とはなるが、司法の自制が要求される分野に該当する。履行内容が具体的なのかどうかは問わず、条約に記載されているという理由だけで、憲法裁判所が政府に漠然と「外交的努力をしろ」という義務を強制的に賦課するのは、憲法が外交行為に関する政策判断、政策樹立および執行に関する権限を行政府に付与している、権力分立原則に反する素地さえある。
3. 法廷意見の解釈は、憲法と法律の規定、憲法的法理解釈の限界を越えることである。
○ 日本によって強制的に慰安婦として動員された後、人間の尊厳と価値まで根こそぎ剥奪されたこの事件の請求人らの基本権を救済しなければならない切迫した心情を考えれば、いかなる方法でも国家的努力をすべて行えば、という願いは、私たち皆、切実である。だが、憲法と法律の規定およびそれに関する憲法的法理解釈の限界を越えてまで、被請求人にその外交的問題解決を強制することはできない。これは権力分立の原則上、憲法裁判所が守らなければならない憲法的限界である。