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「従軍慰安婦」という表現は1993年4月河野洋平官房長官が発表した「河野談話」にも使われた。河野談話は、「慰安婦」の動員や生活における強制性を明確にした。

2021-04-30 | 大日本帝国軍隊の慰安婦制度が原因

日本政府が「従軍慰安婦」より「慰安婦」が適切と閣議決定したわけは

登録:2021-04-29 05:41 修正:2021-04-29 07:13
 
強制性を帯びており、不適切と判断、教科書に反映される見込み 
「強制徴用」や「強制連行」も「徴用」と表記すべき
 
平和の少女像=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 日本政府が「従軍慰安婦」や「強制徴用」の用語が強制性を帯びているとし、使用するのは不適切だという答弁書を閣議決定した。代わりに「慰安婦」と「徴用」という用語を用いることが適切という公式見解を示した。右翼の主張を受け入れたもので、小中高の教科書に反映されるとみられる。

 日本政府は、日本維新の会の馬場伸幸衆院議員が「従軍慰安婦」という用語には軍によって強制連行されたという意味が込められていると質疑したことに対し、27日の閣議で「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切だ」という答弁書を決定したと、読売新聞が28日付で報道した。

 日本政府は、朝日新聞が朝鮮半島で「慰安婦」を連行したと証言した吉田清治(2000年死亡)の証言が虚偽だと判断し、2014年に関連記事を全文または一部を取り消したことなどを考慮し、「従軍慰安婦」という表現が「誤解を招く恐れがある」と指摘した。しかし、当時、朝日新聞は「吉田証言」に信用性がないとしても、女性たちが本人の意思に反して「慰安婦」として連れて行かれたのは変わらない事実だと強調した。「従軍慰安婦」という表現は1993年4月河野洋平官房長官が発表した「河野談話」にも使われた。河野談話は、「慰安婦」の動員や生活における強制性を明確にした。

 日本の右翼勢力は「慰安婦」の強制性を消すために様々な方法で圧力を行使してきたが、今回、政府がそれに応えたわけだ。右翼団体の「新しい歴史教科書をつくる会」は、教科書から「従軍慰安婦」という表現を削除するよう求めてきた。現在、日本の中学の社会(歴史)や高校の歴史総合教科書の一部に「従軍慰安婦」という表現が含まれている。日本政府関係者は読売新聞に「今回の閣議決定は今後(教科書)検定に反映される」と述べた。

 もちろん、最近韓国でも「従軍慰安婦」という用語は使われていない。ただし、その理由は日本とは全く異なる。「軍隊に従い、戦場に出る」という意味の「従軍」が被害者が自発的に慰安婦になったという誤った認識を植えつけることを警戒し、この用語を使用していない。代わりに、日本軍の責任を明確に表現するため、「日本軍慰安婦」と表現している。国連報告書は、日本軍慰安婦を「性奴隷」と規定した。

 日本政府はまた、閣議で、日帝強占期(植民地時代)に朝鮮半島出身の労務者を連れて行き、強制労働に従事させたことについても、「強制徴用」や「連行」の代わりに「徴用」という用語を使うのが適切だと決定した。日帝強占期の歴史専門家たちは労務動員・徴用や「慰安婦」などについて、当事者に事実上選択の自由がない状況で行われたと指摘してきた。

キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国社会の慢性的問題は韓国国内に来ている海外コリアンに対する嫌悪という感情を生む。だが、これらの問題はかつて、韓国人を真っ先に不幸にしてきた社会的病弊だったことを忘れてはならないだろう。

2021-04-29 | 資本主義という体制そのものが問われている

[朴露子の韓国・内と外]“同胞”たちを差別する国

登録:2021-04-27 21:05 修正:2021-04-28 10:14
 
「母国」に帰還して、罪もないのに拷問室に連行された在日同胞が耐えた苦痛は筆舌に尽くしがたいものだった。ところが“カネ”がすべての価値の基準になる新自由主義時代、そして米中が尖鋭に対立する中で、韓国の世論が米国に傾倒する地政学的葛藤の時代に、もう一つの「国民的他者」になったのは、低賃金地域である延辺から来た中国国籍の同胞たちだ。最も激しい差別を日常的に体験するマイノリティ集団として、障がい者、性的マイノリティ、セトミン(脱北住民)と共に、「朝鮮族」と呼ばれる中国同胞が浮上したのだ。
 
 
                                        イラストレーション=キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 20年余り前、私は韓国のある私立大学でロシア語講師として働いていた。ロシア語科で私は唯一の外国人だったが、同じ大学の英文科にはネイティブスピーカーの教授が10人余りいた。彼らの中に黒人は1人もおらず、私の知る限り、その当時は他の大学にも黒人出身のネイティブスピーカーの教授はほとんどいなかった。米国社会の人種差別パターンを、韓国の大学でもそのまま見習った結果でなかったかと思う。ネイティブスピーカーの教授の大多数は中産層の白人であり、幾人かは二世の在米同胞出身だった。米国で生まれ育った彼らの英語は、白人ネイティブスピーカーの教授と何の違いもなかった。ところが、彼らと話してみると、彼らによって「両親の故郷」である韓国で就職することがどれほど大変だったのかがよく分かった。大学や塾で在米同胞が白人ネイティブスピーカーに比べて“劣等な”存在として扱われていた。彼らと話を交わして、韓国で最も差別を受ける外国人の範ちゅうに在外同胞が属するという事実を初めて知った時、大きなショックを受けた。その当時も「民族」のような用語は広く使われていたが、実際は海外の韓民族こそが韓国国内で冷遇されがちだったのだ。

 近代に入って朝鮮半島は「離散」の地になった。植民地時代の抑圧、そしてその後の深刻な貧困は、本国の総人口に比べて東アジアで最も多いディアスポラを産んだ。海外に暮らすコリアンは、朝鮮半島の総人口の約10%に達するが、それは中国の総人口に対する海外華僑の割合や日本の総人口に対する日系人の割合(それぞれ約3%)、海外で暮らすベトナム人の割合(約4.4%)よりはるかに高い。東アジアではコリアンこそが「離散の民族」になった。ところが、「離散したコリアン」に対する朝鮮半島の二つの国家の態度はいつも好意的であるとばかりは言えなかった。彼らは一方では経済次元として切実に必要な「資源」だったが、もう一方では、南北いずれにもみられる総動員式の兵営秩序に合わない「異質分子」だった。その結果、朝鮮半島の二つの国家との関係において彼らがこうむった被害は少なくなかった。

 6・25戦争(朝鮮戦争)以後に労働力と外貨を切実に必要とした北朝鮮は、1959年から在日朝鮮人を受け入れ始めた。1980年代中盤までに9万3300人を超える在日同胞が北朝鮮に渡った。一方では、彼らにとって北への送還は日本社会での深刻な差別から抜け出す道だった。しかし他方では、異質な社会で生きて来た彼らをまともに受け入れるほど北朝鮮社会の寛容度は高くなかった。適応に失敗した事例が相次ぎ、不平・不満を露骨に吐露する人々には弾圧が加えられた。ところが、同じ時期の韓国でも在日同胞が体験した受難は決して少なくなかった。根本的な理由はまったく同じだった。はるかに自由な異質世界で生きて来た人々を、一つの大きな兵営のような韓国社会がまともに包容するわけがなかった。同胞企業のロッテグループのような会社が1960~70年代に韓国に進出した時には、朴正煕(パク・チョンヒ)政権から全幅の支援を受けたが、多くの在日同胞の「母国帰還」は悲劇で終わった。1970~80年代、母国留学生など韓国に滞在した在日同胞がかかわった各種の「スパイ事件」は319件も発生したが、多くの場合は拷問による自白強要のようなねつ造された事件だった。「母国」に帰還して、罪もないのに拷問室に連行された在日同胞が耐えた苦痛は筆舌に尽くしがたいものだった。

 冷戦が終わってからは「総連系と関連があるかもしれない」という在日同胞に向けられた疑いのまなざしはある程度やわらいだ。現政権期には韓国国籍でない朝鮮籍の在日同胞の母国訪問も可能になるなど、種々の進展があった。ところが“カネ”がすべての価値の基準になる新自由主義時代、そして米中が尖鋭に対立する中で、韓国国内の世論が米国に傾倒する地政学的葛藤の時代に、もう一つの「国民的他者」になったのは、低賃金地域である延辺から来た中国国籍の同胞たちだ。大韓民国で今最も激しい差別を日常的に体験するマイノリティ集団として、障がい者、性的マイノリティ、セトミン(脱北住民)と共に、「朝鮮族」と呼ばれる中国同胞が浮上したのだ。

 1970~80年代の在日同胞に向けられた視線と同じように、中国同胞を凝視する韓国国家と多くの住民の視線は二重的であり自己矛盾的だ。一方では、1970~80年代の韓国経済にとって在日同胞の「財力」が必要だったように、今日の韓国経済にとって中国同胞の「労働力」は必須だ。帰化者などまで含めれば、現在韓国に滞在する中国同胞は約80万人、すなわち中国国内の朝鮮族コミュニティ全体の3分の1以上だ。ここまで多くの中国同胞が韓国に来ている理由は簡単だ。それだけ韓国人たちが回避しようとする職種で彼らの労働力が切実に要求されるためだ。しかしもう一方では、反共産主義の狂気の時代に母国に来た在日同胞がいともたやすく「朝総連系連座者」にされたように、多くの韓国人は朝鮮族を、「同盟国米国」の敵と認識される中国という「国家」の延長であり一部分であるとみなそうとする。結局、新冷戦の二本の軸の間に「挟まった」中間的存在になった朝鮮族は、極度に困難な境遇に置かれることになるわけだ。中国国内でも比較的貧しい地方である東北三省の出身である彼らは、韓国を経済的生存の次元で必要とするが、同時に多民族国家中国の少数者として当然「人民」共同体の一員として認められるために中国に対する帰属意識を表わさなければならない立場だ。“「民族」と「国家」が同一視される国で育った韓国人たちにとっては、帝国型国家において一つの少数民族が政治・文化的に生存するために行わなければならない苦闘とはどんなものなのか、理解するのが難しいかもしれないが、理解しようとする努力さえみられないことが問題だ。

 理解しようと努力する代わりに、むしろ露骨な差別が幅をはびこる。この差別は文化的側面と階級的側面を兼ね備えている。画一主義指向が強い兵営型国家である韓国では、韓国的「標準」と異なる朝鮮族の言語や日常的行動が異質視される一方で、特に韓国内でも主に低賃金下層労働階級を連想させる喫煙や大声で歌を歌うなどは蔑視的凝視の対象になる。結局、「国家」と「個人」、ないし「マイノリティ集団」の間の識別の足りなさ、「違い」を受け入れようとする姿勢の欠如、そして階級的差別のパターンなど、韓国社会の慢性的問題は韓国国内に来ている海外コリアンに対する嫌悪という感情を生む。だが、これらの問題はかつて、韓国人を真っ先に不幸にしてきた社会的病弊だったことを忘れてはならないだろう。

 
//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大学教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

1月8日の第一次訴訟判決は、国際人権法上の「被害者中心主義」を積極的に反映した歴史的判決だ。

2021-04-28 | 大日本帝国軍隊の慰安婦制度が原因

日本軍「慰安婦」問題解決全国行動

日本軍『慰安婦』問題解決全国行動は、日本軍「慰安婦」問題解決のために全国各地で活動してきた団体と個人が集まって結成したネットワークです

<全国行動抗議文>

日本軍「慰安婦」被害者の願いを無視し、 「被害者中心主義」の流れを後退させた4・21判決を糾弾する!

4/27/2021

 4月21日、日本政府を訴えた日本軍「慰安婦」被害者と遺族による第二次訴訟において、韓国・ソウル中央地裁が1月8日の第一次訴訟とは真逆の判決を下したことに、私たちは失望と怒りを押さえることができない。

 どちらの判決でも、日本政府を韓国の裁判所では裁けないという「主権免除」の壁を超えられるのかどうかが争点となった。1月8日の第一次訴訟判決は、「慰安婦」問題を人道に反する重大な人権侵害事件と認定し、被害者が最終的手段として選択した民事訴訟にまで慣習国際法上の規則である「主権免除」を適用することは裁判を受ける権利を保障した韓国憲法および国際人権規範に符合しないとして、人権救済を優先する「人権例外」を認めて原告に勝利をもたらした。国際人権法上の「被害者中心主義」を積極的に反映した歴史的判決だ。

   これに対して今回の第二次訴訟判決は、「現在の慣習国際法とこれに関する最高裁判所の判例によって」と主権免除を適用し、その結果、日本政府の責任を問うという訴訟そのものが成立しなくなり、原告の訴えを「却下」した。「慰安婦」被害者の尊厳回復に一切言及せず、「韓国の外交政策と国益に潜在的影響を及ぼす事案」として国益を優先させ、「人権の最後の砦」としての責務を放棄した司法の責任は大きい。「慰安婦」問題の解決を後退させる最悪の判決である。

 さらに、第二次訴訟判決で「日韓合意」(2015年12月)を「女性らへの救済手段として今も有効」であると指摘したが、これを断じて受け入れることはできない。第一次訴訟判決では「日韓請求権協定と日韓合意は、被害を受けた個人に対する賠償を包括できない」としており、真っ向から対立する判断だ。合意の検討を行った文在寅政権は、「慰安婦問題の真の解決にはなり得ない」という政府方針を発表している。国連人権委員会も声明「日韓合意は重大な人権侵害に関する国家責任の基準に合致していない」(2016.3.11)を出し、様々な国連人権機関も「合意」の問題点を指摘していることを無視してはいけない。

 また、判決は韓国政府に「追加的な外交交渉を円滑に行う」ことを求めているが、まず司法自らが人権を中心とする新しい国際法の流れの歴史に一歩を印す判決を出し、政府が毅然として被害者中心主義で問題解決を実行できるようにその役割を果たすべきであった。日本政府は「慰安婦」問題の歴史を歪曲し、「最終的かつ不可逆的に解決した」と強硬に主張し続け、ベルリン・ミッテ区で見られたように外交方針として少女像設置妨害にやっきになっている。第一次訴訟判決に激しく反発した日本政府をとりなすかのような判決は、到底受け入れられるものではない。

 私たちは、第一次訴訟判決が切り拓いた「主権免除の人権例外」の流れを強く支持する。これまで不可視化され不処罰のまま放置されてきた、紛争下で国家による性暴力被害を受けた少女や女性が勇気と希望を手にする日が早く来ることを願う。9ヵ国410人の法律専門家も第一次訴訟判決後、共同宣言「国際法の未来を切り開く歴史的な判決」を出した。国際秩序の流れは国家から人間へと変化しつつあるし、止められないのだ。

 私たちは、日本軍「慰安婦」問題解決の当事者である日本政府が歴史を否定する恥ずべき行為を直ちに中止し、被害者に対して不法行為の責任を前提とした謝罪と賠償手続きを直ちに履行するよう求める。

 韓国では、名乗り出た240名の日本軍「慰安婦」被害者のうち、生存者は15名となった。今回の裁判の原告で、生存被害者は4名である。多くの被害者が積み重ねてきた30年におよぶ訴えと努力が一日も早く実現するよう、私たちはあきらめることなく前に進む。

                                       2021年4月28日

                                日本軍「慰安婦」問題解決全国行動


韓国政府と与党としては、国民の力など保守側が賛成するなら、北朝鮮報道・出版物の開放措置に否定的である理由がない。

2021-04-28 | 朝鮮民主主義人民共和国

韓国で「金日成回顧録」出版…

北朝鮮の報道・出版物の完全開放への呼び水となるか 

登録:2021-04-27 06:18 修正:2021-04-27 08:47
 
 
「民族サランバン」が韓国で出版した『世紀と共に』第1巻の表紙=民族サランバン提供//ハンギョレ新聞社

 故金日成(キム・イルソン)朝鮮民主主義人民共和国主席の回顧録『世紀とともに』(全8巻、以下「金日成回顧録」)の国内出版・販売をめぐる論議は、韓国社会の意味深長な変化を示している。突出的に発生した今回の事態が、北朝鮮の報道・出版物の完全開放につながるかどうかに注目が集まっている。

 代表的な変化の動きは、野党の「国民の力」から現れた。最高裁(大法院)が「利敵表現物」と判断した金日成回顧録『世紀とともに』の出版・販売・購買行為を国家保安法違反として処罰せず、そのまま放置する方針を決めたのだ。国民の力は韓国社会で「国家保安法の守護者」を名乗ってきた政治勢力にルーツを持っており、こうした前向きな反応は過去の前例に照らしてみても、予想を完全に覆すものだ。韓国政府と与党としては、国民の力など保守側が賛成するなら、北朝鮮報道・出版物の開放措置に否定的である理由がない。

 「国民の力」の前向きな態度の扉を開いたのは、1980年代に学生運動に身を投じていたハ・テギョン議員だった。ハ議員は韓国での金日成回顧録の出版が初めて報じられた後、自身のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)アカウントに「金日成回顧録に騙される人はいない。高まった国民意識を信じ、表現の自由を積極的に保障しよう」というタイトルの書き込みを掲載した。ハ議員は「北朝鮮と関連した情報をすべて統制しなければならないというのは国民を子ども扱いすること」だとし、「国民を信じて表現の自由をより積極的に保障しよう」と提案した。また「北朝鮮の本を禁止しながら、果たして韓流を禁止する北朝鮮を非難できるだろうか」としたうえで、「北朝鮮が韓流を禁止しても、我々は北朝鮮の出版物を認めることで、自由民主主義体制の優越性を誇示しよう」と呼び掛けた。「国民意識」を信じて「表現の自由」を保障することで、「体制の優越性を誇示しよう」という主張だ。

 
 
      ハ・テギョン国民の力議員のフェイスブックよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 ハ議員が開けた風穴は、国民の力の公式見解へと発展した。22日、国民の力のパク・キニョン副報道官の名前で、「金日成が主人公である荒唐無稽な小説、それ以上でも以下でもない」という題の公式論評が発表されたのだ。国民の力は同論評で、今回の金日成回顧録の国内出版が「北朝鮮での荒唐無稽な金日成の偶像化の実体を広く知らせる呼び水になるだろう」とし、「大韓民国の国民意識と体制の優越性を信じて国民に判断を任せよう」と提案した。これにより、国民の力の公式見解が金日成回顧録の出版・販売・購買行為を国家保安法によって規制するのではなく、“放置すること”に決まった。

 野党第一党の国民の力が積極的かつ前向きな動きを見せている一方、与党の共に民主党は金日成回顧録の国内出版について26日現在までまだ論評を出していない。国家保安法の改廃に積極的な民主党の慎重な対応は、国家保安法をめぐる理念攻防の揮発性を意識した意図的な“沈黙”といえる。

 与党の民主党が“沈黙”を選んだ一方、“沈黙”が不可能な韓国政府は“静観”の構えだ。政府は「出版の経緯などを調べ、統一部レベルで取るべき措置があるかどうかを検討する」という22日の統一部当局者の匿名の論評以降、これと言った反応を示していない。イ・ジョンジュ統一部報道官は26日の記者会見で「市民団体などが回顧録の販売・配布禁止仮処分を裁判所に申し立て、警察も関連調査を進めていると聞いている」とし、「統一部レベルで取るべき措置があるかどうか調べている」と述べた。

 行政の主体である政府、立法権を持つ与党と野党第一党が、以前と違って前向きで慎重な態度を示している中、突如現れた今回の金日成回顧録が誰も予想できなかった北朝鮮の報道・出版物の完全開放に向けた呼び水となるかどうか、注目される。

 1日に「図書出版民族サランバン」(代表キム・スンギュン)が金日成回顧録を韓国で出版した事実は、21日夕方に「聯合ニュース」で初めて報道された。教保文庫、Yes24、アラジンなど韓国を代表するオンライン書店を通じて販売が始まったという事実が明らかになったことで、「国家保安法違反」をめぐる論争が巻き起こった。社団法人「法治と自由民主主義連帯」は「金日成は戦争犯罪者であり、反人道犯罪者」だとして、24日、ソウル西部地方裁判所に同書の販売配布禁止仮処分申立書を提出した。ここまでは、これまでこのような類の議論の際にいつも目にした見慣れた反応だ。

 議論の広がりを受け、国内の書店で最大手の教保文庫は25日、「顧客を保護する」との理由で、販売中止の方針を発表した。「最高裁が利敵表現物と判断した本を購入した読者も処罰され得るという点を考慮し、顧客保護の観点から新規注文を受けないことにした」というのが教保文庫側の説明だ。ただ教保文庫側は「政治的な問題や判断とは関係なく、顧客の立場を最優先に考慮した措置」だとし、「裁判所や刊行物倫理委員会の判断が下されれば、これによって新規注文再開の可否を決定する予定」だと付け加えた。

 教保文庫の販売中止は、金日成回顧録を「利敵表現物」と判断した2012年7月の最高裁判決を意識した措置だ。しかし、多くの人が誤解しているのとは異なり、金日成回顧録など「利敵表現物」という裁判所の判断が下された北朝鮮の報道・出版物の所持だけでは国家保安法違反として処罰されない。「利敵表現物所持」処罰規定の国家保安法第7条(称賛・鼓舞など)は、「反国家団体やその構成員、またはその指令を受けた者の活動を称賛・鼓舞・宣伝または同調する(利敵)行為をする目的で、文書や図画、その他の表現物を製作・輸入・複写・所持・運搬・配布・販売または取得した者」を「懲役刑」で処罰できるように規定している。要するに「利敵行為をする目的」が証明されない限り、国家保安法違反で処罰できない。実際、最高裁は2015年11月、「労働新聞」の記事を個人ブログに非公開で掲載し、『金日成選集第1巻』などを持っていたとして起訴されたシナリオ作家の事件について、「利敵行為をする目的は認められない」として、無罪判決を下した。

 憲法裁判所も2018年4月の憲法訴願事件で、裁判官9人のうち5人の多数意見として、「流布・伝播行為自体を処罰することで利敵表現物の流通および伝播を十分に遮断できるため、その段階に至らない所持行為を事前に処罰することは過度な規制」だとし、「反対者や少数者を抑圧する手段として誤用・乱用され得る」との判断を示した。ただし当時、憲法裁はこうした意見が違憲決定の定足数(6人)に達せず、利敵表現物所持罪に資格停止を併科するのは違憲だとして提起された憲法訴願事件で、国家保安法第7条(称賛・鼓舞など)に対して「合憲決定」を下した。憲法解釈に関しては最高権威を持つ最高裁判所と憲法裁の解釈が変化を見せているという傾向も、北朝鮮の報道・出版物の完全開放への道がそれほど遠くはないことを示す徴候といえる。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

「人を人種で分類したり、分けることは良くないと思います。 虹のようにすべての色を組み合わせてより美しくしていかなければなりません」

2021-04-27 | 韓国文化

アカデミー受賞のユン・ヨジョン

「虹のように色を組み合わせて美しく」、差別を一喝

登録:2021-04-27 06:15 修正:2021-04-27 08:11
 
アカデミーのオンライン記者懇談会で
 
アカデミーオンライン記者懇談会の動画よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「人を人種で分類したり、分けることは良くないと思います。 虹のようにすべての色を組み合わせてより美しくしていかなければなりません」

 映画『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞した俳優ユン・ヨジョンは25日(現地時間)、米国映画芸術科学アカデミーが主催したオンライン記者懇談会でこのように発言した。

 ユン・ヨジョンは同日、韓国人俳優としては初めて、アジア人俳優としては『サヨナラ』(1957)のナンシー梅木(本名・梅木美代志)以来二人目としてアカデミー賞の演技賞を受賞した。

 ユン・ヨジョンは最近のアジア映画の躍進とハリウッドの多様性の拡大について「虹にも7つの色がある。(虹のように)様々な色があることが大事だ」と強調した。さらに「男性と女性で区分したり、白人と黒人、黄色人種で分けたり、同性愛者と異性愛者で分類したくない」としたうえで、「私たちは皆温かい心を持った平等な人間だ。互いを理解し、受け入れなければならない」と訴えた。

 『ミナリ』の制作者であり、ハリウッドスターのブラッド・ピットが助演女優賞のプレゼンターを務め、自分の名前を呼んだことについて、ユン・ヨジョンは「彼は私の名前をちゃんと発音してくれた。たくさん練習したことが分かった」と冗談を交え、感謝の気持ちを伝えた。

 「ブラッド・ピットと映画を撮るとしたらどんなジャンルを選ぶか」という質問に対し彼は「英語もあまりできないし、年を取りすぎているので、そんなことは夢にも思わない。実現不可能な夢なので、答えようがない」としながら、笑った。

 また「今夜、私は他の候補者たちより運が良かった」とし、「韓国俳優に対する米国の歓待ではないかと思う」と述べて謙遜した。

ソ・ジョンミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

「トランプ政権が残したもの(シンガポール共同宣言)の上に『互いに信頼できるロードマップ(非核化のスケジュール)』を作らなければならないという具体的な方法論まで提示した。

2021-04-26 | バイデン大統領を追う

米「対北朝鮮政策の見直し結果」めぐり、

韓米日の水面下の綱引きが長引くか

登録:2021-04-26 07:17 修正:2021-04-26 08:56
 
仲栽する米国を挟み韓日が対抗する形 
韓国当局者、米国の対北朝鮮政策の公開について 
「下半期に持ち越されることはないだろう」
 
文在寅大統領が大統領府の常春斎でニューヨーク・タイムズのインタビューを受けている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 近く公開される米国政府の「対北朝鮮政策の見直し」の結果をめぐり、韓日米当局間の激しい水面下での争いが続くものとみられる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最近、メディアのインタビューを通じて韓国政府の立場を強い口調で明らかにし、最終結論を導くための最後の詰めが長引いている形だ。

 米国務省のジャリナ・ポーター副報道官は23日(現地時間)、定例会見で「対北朝鮮政策の見直しの結果が数週間内に出てくるとの話から1カ月が過ぎ、韓国大統領が5月末に訪米する時まで米国政府は待つだろうという予測も出ている。両者に関係はあるのか」という質問に対して「私たちには見直しに関する具体的なタイムテーブルはない。バイデン政権は対北朝鮮政策を徹底的に省庁間で検討し進めている」と述べた。文大統領の米国訪問後に見直しの結果が公開されるのかという質問には即答を避け、予想よりもう少し時間を要することがあり得るという趣旨で答えたのだ。

 米国務省の記者会見でこのような質問が出てきたのは、文大統領が21日付のニューヨーク・タイムズのインタビューで、ジョー・バイデン政権の対北朝鮮政策について自身の意見を強い口調で明らかにしたためとみられる。文大統領はインタビューで「米国と北朝鮮が1日も早く向き合うことが、問題を解決する最も重要な出発点」だとしながら、両国が非核化措置とそれに対する対価を「同時に」取り交わす「漸進的かつ段階的」な方法による非核化を推進するべきだと主張した。さらに「トランプ政権が残したもの(シンガポール共同宣言)の上に『互いに信頼できるロードマップ(非核化のスケジュール)』を作らなければならないという具体的な方法論まで提示した。

 文大統領がインタビューに臨んだのは、16日に開かれた米日首脳会談を通じて対北朝鮮政策に対するバイデン大統領の最終判断が日本側に傾くことになるのを懸念したためとみられる。実際、前日の15日の記者会見でホワイトハウスの高官は、両首脳が対北朝鮮政策の見直しの結果を「締めくくる機会を得るだろう」(have a chance to put the pinishing touch)とし、結果がまもなく出てくることを強く暗示した。日本の菅義偉首相の米国に対するアプローチを、米国で最も強い影響力を持つメディアのインタビューを通じてけん制したわけだ。

 米日首脳は16日の首脳会談を通じて「新たな時代における米日グローバル・パートナーシップ」というタイトルの共同声明を発表した。この声明によると、両国は今後の北朝鮮に対するアプローチについて、北朝鮮への国連安保理決議の順守の要求▽(朝鮮半島非核化ではなく)北朝鮮の非核化▽地域の平和と安全のための抑止力の強化(韓米、日米合同演習の強化)▽拡散防止など四つの原則に合意した。しかし、意見の違いも観察された。菅首相は会談後の記者会見で米日が「すべての種類の大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルに対する『完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄』(CVID)に合意した」と明らかにしたが、この内容は声明には含まれなかった。中間に立つ米国の腕をそれぞれ取り、韓国はシンガポール共同宣言を基盤とした漸進的かつ段階的な非核化、日本は北朝鮮が強く拒否するCVIDの方向に引きよせている形だ。

 文大統領のインタビューが公開された翌日の22日、ノ・ギュドク朝鮮半島平和交渉本部長は、米国務省のソン・キム東アジア太平洋次官補代行に対し電話協議に取り組んだ。この事実を伝える外交部の報道資料には「最終段階にある米国の対北朝鮮政策の検討について、韓米間の緊密な協力と共助が行われているという点を確認した」という表現が出てくる。大統領がインタビューで明らかにした韓国の立場を、実務者レベルで再び強調したものとみられる。

 しかし、米国が韓国の意向をどこまで受け入れるのか、期待どおり文大統領の訪米後まで検討結果の公開を持ち越すのか、いまだ不透明だ。外交部高官は「(見直しの結果は)数日内ではないが間もなく出てくるはずだ。韓米首脳会談後となると下半期まで持ち越されることになり、遅すぎる。その前には出てくるだろう」と予測した。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

若者は新しいモノが大好きで、良いモノに対する自分の思いや体験談を他の人にシェアすることをとても好む。

2021-04-25 | 中国を知ろう

中国の若者たちに人気の「三坑」カルチャーとは?

漢服、女子高生の制服、ロリータファッションの人気広まる

人民網日本語版 2021年04月20日10:23
 

ショッピングサイトにおいて、「漢服」の検索数が「シャツ」を超え、女子高生(JK)のスカートが数日で30万枚売れるなど、これら漢服とJKの制服、ロリータファッションという3種類が今、ハマってしまうとお金をどんどんつぎ込むことになるという意味から、中国で「三坑」(3つの穴という意味)と呼ばれ、一部のマニアの間だけでなく、幅広い人気を集め、年間の売上高が100億元(1元は16.65円)を超える市場に成長している。北京青年報が報じた。

ニッチな消費者から幅広い消費者へと広がり見せる「三坑」カルチャー

この「三坑」カルチャーは当初、特定のグループの間で流行していたが、ここ数年の間に幅広い人々から注目されるようになり始め、細分化されたアパレル産業の新たなジャンルを形成している。ショッピングサイト・淘宝には、漢服やJK制服、ロリータファッションなどを販売するショップが1000軒近くあり、大人気になっている。過去1年、漢服やJK制服、ロリータファッションを代表とする「三坑」市場で、購入者がそれら商品を「爆買い」したことで、その売上高は100億元に達している。

他のジャンルと異なり、「三坑」の消費者はリピート率が高く、お気に入りのショップ1軒、または数軒で頻繁に購入し、淘宝店の会員グループや画像付きレビューなどで、他の購入者と意見を交換したりして、1軒のショップが同じ趣味を持つ人が集まるたまり場にさえなっている。

そして「三坑」を販売するショップのオーナーもこうしたカルチャーのマニアであることが多い。こうしたオーナーは、トレンドや人気の傾向をよく観察している。「三坑カルチャー」の発展について、業界関係者は、「新型コロナウイルスの影響で、ボトルネックに直面してはいるものの、前途は明るい。00後(2000年代生まれ)、ひいては10後(2010年以降生まれ)の若者が入ってくると、市場はさらに拡大するだろう」との見方を示す。

JK制服を代表とする「三坑」市場の人気は過熱の一途をたどり、「三坑カルチャー」が形成されていることは、若者が他の人の目を気にせずにそれらファッションを楽しむようになっていることや若者の親らがそのようなファッションに対して、寛容な姿勢を示すようになっていることと密接な関係がある。

漢服マニアが毎年10%のペースで増加

漢服マニアの多くは90後(1990年代生まれ)、95後(95‐99年生まれ)、00後などの若者で、平均年齢は22歳から34歳。漢服ブランド「清水溪漢初」の共同創始者・湯威さんは、「中国の経済や文化が発展するにつれて、若者は中国の文化に対する自信を高め、漢服を着たり、中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな国産商品を使ったりすることは、胸を張れることだと考えるようになっている。また、若者は新しいモノが大好きで、良いモノに対する自分の思いや体験談を他の人にシェアすることをとても好む。そのため、若者の親や教師なども漢服や中国文化の要素が詰まった商品を好むようになり、トレンドになっている」と分析する。

「清水溪漢初」オンラインショップより

漢服界のメディア「漢服資訊」の統計によると、漢服の会員だけでも453万人が登録し、毎年10%以上のペースで増加を続けている。漢服関連の事業者数も急増中で、2014年の196軒から、2017年には655軒、2020年には1518軒にまで増加し、毎年、2ケタペースで増加している。

湯さんは、今後の漢服市場の発展に対して、楽観的な見方を示し、「漢服は元々、マニアックなジャンルではなく、中国文化の一部。漢字や中国語、中国医学、食事用の陶器と同じだ。どんな大衆的なものでも、初めはユーザーが少ない。例えば、スマートフォンや新エネ車、今話題の人工知能、モノのインターネット(IoT)などもそうだ。中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな商品が社会消費財全体に占める割合は現在、10%未満で、まだまだ発展の余地とチャンスがある。社会各界がさらに注目し、応援することを願っている」と語る。

 

中国の若者たちに人気の「三坑」カルチャーとは? (2)

漢服、女子高生の制服、ロリータファッションの人気広まる

人民網日本語版 2021年04月20日10:23
 

コーディネートしやすいJK制服が女子学生の間で人気に

JK制服は通常、洋服やセーラー服に分類されており、その種類にはシャツや合服、セーター、ワンピース、ブレザー、コートなどがあり、それにネクタイやリボンといった付属品もある。これらは「三坑」の中では最も安価な部類になる。ロリータファッションや漢服と比べると、JK制服はデザインがシンプルで、コーディネートしやすいというのも、多くの若い女性の間で人気となっている理由だ。また、学生の間で流行するため、大ヒット商品が登場しやすい。マニアは一線都市と二線都市に集中していて、年齢は18歳から24歳。その人気は拡大して、三線都市から五線都市にまで波及し、低年齢化も進んでいる。

姫系ロリータがアニメファンの間で人気に

ロリータ専門店・圓点点小姐洋服社より

花柄のレース生地にリボンや蝶結びのリボンが付いたスカートといったようなお姫様のようなスタイルが、ロリータファッション。姫系ロリータのほか、クラシカルロリータ、ゴシックロリータなどのジャンルもある。中国のマニアは北京や成都、重慶など経済が発展した都市や一線都市、二線都市に集中している。年齢は16歳から25歳で、女子高生や女子大生、就職したばかりの若い女性などが中心となっており、アニメファンで、新しいモノを寛容に受け入れる世代だ。

ロリータ専門店・圓点点小姐洋服社のオーナーで、メインデザイナーの練さんは、「今後5年から10年の間、市場はさらに拡大するだろう。中国は人口が多く、ニッチ市場だとしても、そのマニアの数も非常に多い」と展望する。現在、三線都市、ひいては県級市でも市場のニーズを満たそうとロリータファッションを仕入れている店が増えている。そのため、圓点点小姐洋服社も、業界の垣根を超えて、ミュージカルやアニメなどと提携を展開し、共に発展していく計画だ。(編集KN)

「人民網日本語版」2021年4月20日


『4・3、米国に問う』の著者、ホ・ホジュンは、日本の植民地から解放されてから米軍占領下で起きた済州島民虐殺事件の過程で、米国がどのような役割を果たしたのかを執拗に問い続け、その痕跡を辿っていく。

2021-04-24 | 国民弾圧・戦争への道ゆるさず!

[書評]

済州4・3虐殺において米国はどんな役割を果たしたか

登録:2021-04-23 08:39 修正:2021-04-23 10:32
 
 
              『4・3、米国に問う』ホ・ホジュン著(ソンイン・3万4000ウォン)//ハンギョレ新聞社

『4・3、米国に問う』 
ホ・ホジュン著/ソンイン・3万4000ウォン

 20世紀、世界史的な熱戦が終わり、冷戦が始まった時に起きた済州(チェジュ)4・3事件は、韓国現代史においても特に痛ましい傷跡として残っている。2003年10月、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が初めて大規模な犠牲に対する公式謝罪を行い、2018年には文在寅(ムン・ジェイン)大統領が4・3犠牲者追悼式典に出席したが、依然として4・3の性格と犠牲をめぐる論争は終わっていない。

 『4・3、米国に問う』の著者、ホ・ホジュンは、日本の植民地から解放されてから米軍占領下で起きた済州島民虐殺事件の過程で、米国がどのような役割を果たしたのかを執拗に問い続け、その痕跡を辿っていく。4・3事件が起きた1948年は、第二次世界大戦終了後、共産主義と資本主義陣営の勢力拡大に向けた対立が熾烈に繰り広げられた時期だった。米軍は地政学的に特殊な位置にある済州島を「イデオロギーの戦場」と捉えていた。5月10日に朝鮮半島の南側だけで単独政府を樹立することに反対していた済州島民の闘争は、韓国に親米政府を立てようとした米軍にとっては目の上のたんこぶのようなものだった。米軍は4・3武装蜂起の背景には北朝鮮とソ連の指図を受けた共産主義者がいるとみた。

 4・3事件に米国と米軍がどのように介入したのかを明らかにする著書や論文は、これが初めてではない。しかし、済州地域担当記者としてハンギョレに32年間勤務し、4・3問題に取り組んできた専門家ホ・ホジュンは、これまでの議論からさらに一歩踏み込む。米国の介入を明らかにするため、当時のメディア報道を発掘し、4・3当時済州島に勤めた米軍顧問官たちにも会い、当時米国が陣営間の対決の場で済州をどんな存在と認識していたのかを直接聞いた。結局「米国は済州島民の虐殺を、少なくとも幇助したか、助長したといえる」というのが彼の結論だ。

チョン・ジョンフィ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

「途中でガソリンを一度は入れなければならないが、ガソリンスタンドで攻撃されるのが怖くて(メリーランドに)行けない」と話したと伝えた。

2021-04-23 | いかなる差別もあってはならない
 

米知事の“韓国出身”妻

「娘がヘイトクライムを恐れてガソリンスタンドに行けない」

登録:2021-04-23 06:39 修正:2021-04-23 10:17
 
メリーランド州知事の妻ユミ・ホーガン氏、記者懇談会で 
「末娘、ガソリンスタンドで攻撃されるのを恐れてメリーランドに来られない」 
メリーランド州、韓国系元検事長をアジア系憎悪TFの責任者に
 
ラリー・ホーガン米メリーランド州知事の妻、ユミ・ホーガン氏が今月21日(現地時間)、アナポリスの州知事官邸で開かれた記者懇談会で発言している=ファン・ジュンボム特派員//ハンギョレ新聞社

 「その頃はまだ機が熟していませんでしたが、ようやく声をあげられる時期が来ました」

 米国メリーランド州のラリー・ホーガン知事の妻、ユミ・ホーガン氏(61)は21日(現地時間)、アナポリスにある州知事官邸で記者懇談会を開き、最近浮き彫りになっている米国内のアジア系への憎悪について、このように述べた。全羅南道羅州(ナジュ)で生まれ、20代の時に米国に移民したユミ氏は2004年、ホーガン州知事と結婚した。

 ユミ氏は「米国でアジアンが受ける差別は昨日今日のことではない。長い移民の歴史の中でずっと続いてきた」とし、「あまりにも深刻になっており、韓国系だけでなく全アジア系が共に声をあげなければならない」と語った。彼女はメリーランドから車で10時間以上離れたミシガン州に住む末娘夫婦が「途中でガソリンを一度は入れなければならないが、ガソリンスタンドで攻撃されるのが怖くて(メリーランドに)行けない」と話したと伝えた。

 米国に移民して42年目の彼女は「当時は子どもたちに『誰かが殴ってきたら、とりあえず殴られた方がいい。絶対先に手を出してはならない』と教えた」とし、「しかしこのまま我慢を続けたら、娘の次の世代まで(アジア系への嫌悪が)終わらないかもしれないと思い、勇気を出してアジア系に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)について声を上げている」と述べた。

 ホーガン州知事は最近、アジア系への憎悪に対応するタスクフォースを発足させ、韓国系のロバート・ホ元メリーランド連邦検事長を委員長に任命した。ユミ氏は「米国の韓国人がアジア系への憎悪に強力に対抗するためには、有権者登録をして政治的力を拡大し、地域社会のボランティア活動に積極的に参加して存在感を発揮することが重要だ」とし、(メリーランド州の)ファーストレディーとしてその役割を果たし続けると語った。

 ユミ氏は2001年の同時多発テロ当時、ムスリムが憎悪の対象になったことに触れ、「それが私たちに起きている。ドナルド・トランプ前大統領が(新型コロナウイルスを)『チャイナウイルス』や『カンフル(Kung Flu)』と呼びつづけ、人々の頭にそれが刻まれており、すべてをアジア系のせいにしている」と述べた。さらに「パンデミックが終わればアジア系への憎悪も収まるのではないかと思う」とし、「それまで私たちの安全を守るために力を合わせなければならず、その後もそうすべきだ」として連帯を呼び掛けた。

 ユミ氏は韓国が新型コロナワクチンを確保する問題について「自分の力で何とかできるようなものなら、ワクチンを韓国に届けたい。夫と共に私にできることをする」としながらも、ワクチンの管理は連邦政府が行っており、困難があると述べた。彼女は「ジョンソン・エンド・ジョンソンはメリーランドにも会社があるが、州政府ではなく連邦政府を取引している」とし、ワクチンの確保のために韓国政府も様々なところと接触したと聞いていると明らかにした。メリーランド州は、米全域に新型コロナ診断キットが不足していた昨年4月、韓国から50万回分の診断キットを独自で導入した。

 ユミ氏はホーガン州知事が24年の大統領選挙に出馬するかどうかについて「そうした問題については夫も多くを語らない。メリーランド州で最後まで最善を尽くし、その次にどうなるかはその時になってみないと、分からない」と答えた。ホーガン州知事は共和党所属だが、トランプ前大統領を批判してきた。

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

「つかまえて放してくれない、つかまえて放してくれないんです。日本の軍人が…。それでしかたなく泣きながらやられる。私が死ぬ前に必ず、せめて言葉ででも恨みを晴らしたいのです」

2021-04-22 | 大日本帝国軍隊の慰安婦制度が原因

30年の慰安婦闘争史で「最大の暗礁」…

日本政府による謝罪と賠償、行き詰まり

登録:2021-04-22 03:54 修正:2021-04-22 08:32
 
朴正煕政権の「65体制」の壁に阻まれ 
朴槿恵政権の「12・28合意」が結局足を引っ張る 
裁判所「被害者救済の代替手段存在」 
 
慰安婦のほか強制動員、汚染水 
悪材料は相変わらず 
政府「被害者の名誉回復に努力」原則論のみ 
韓日関係改善には当面影響しない見込み
 
21日、ソウル瑞草区のソウル中央地裁での判決後、イ・ヨンスさんが裁判所から出て来て立場を明らかにしている。同地裁民事合議15部はこの日、故クァク・イェナムさん、故キム・ボクトンさん、イ・ヨンスさんら被害者と遺族20人による日本に対する損害賠償請求を却下した/聯合ニュース

 「つかまえて放してくれない、つかまえて放してくれないんです。日本の軍人が…。それでしかたなく泣きながらやられる。私が死ぬ前に必ず、せめて言葉ででも恨みを晴らしたいのです」

 30年前の1991年8月14日、金学順(キム・ハクスン)さん(1924~1997)が日本軍「慰安婦」だったことを初めて実名告発した時、韓国社会は耐えきれない悲しみと羞恥心を感じた。以来、慰安婦被害者たちの苦しみに共感して、名誉を回復し、日本政府から正しい謝罪を引き出すことは、韓国社会が必ず達成すべき「時代的課題」となった。最初は女性たちが「業者に騙されて行ったもの」という不誠実な回答にとどまっていた日本政府は、1993年8月4日、慰安婦に対する軍の関与と動員の過程の強制性を認めた「河野談話」を出すことになる。

 韓日間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」とする1965年(韓日請求権協定の)体制の壁は、堅固で高かった。日本政府は1995年7月に「アジア女性基金」を設立してこの問題の解決を図るが、65年体制のため政府予算は投入できないと言い張った。慰安婦問題が国家犯罪であることを認めて「法的責任」を受け入れるのではなく、「道義的責任」を認めるにとどまったのだ。韓国社会は「法的責任」を認めないアジア女性基金を拒否し、いつ終わるとも知れぬ対日闘争に乗り出した。

 状況が変わったのは、慰安婦問題は「65年協定に含まれない」という2005年8月の韓国政府の見解が出てからだった。では、なぜ政府はこの問題の解決に取り組まないのか! このような韓国社会の切迫した問いに、2011年8月、憲法裁判所が応えた。日本政府と交渉しない韓国政府の「ずうずうしい不作為」が違憲であることを宣言したのだ。以降、慰安婦問題は韓国政府が必ず解決しなければならない「外交課題として」歴史の前面に再浮上した。

 2013年からは、朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍晋三政権との間で凄絶な慰安婦外交が始まった。しかし、「中国の台頭」に韓米日は共同で対応すべきとする米国の圧力に押され、2015年末に朴槿恵政権は12・28(韓日慰安婦)合意を飲んでしまう。この合意を通じて安倍晋三前首相は、自分が認めるのが「法的責任」なのか「道義的責任」なのかを明らかにせずに「責任を痛感する」と宣言し、その延長線上でこれまで拒否し続けてきた10億円の政府予算支出を受け入れた。その代わりとして韓国政府が約束したのは、この問題の「最終的かつ不可逆的解決」だった。2016年末のろうそく集会で政権についた文在寅(ムン・ジェイン)政権は「この合意によって慰安婦問題が解決されてはいない」としつつも、2018年1月には「再交渉」は求めないと述べた。この時点ですでに慰安婦問題は、韓日両政府が「解決すべき」懸案ではなく「管理すべき」懸案として格下げされたのだ。

 その後、2021年1月8日、多くの人の予想を覆す判決が出た。裁判所が国際慣習法上の主権免除(国家免除)原則を破って、日本政府に慰安婦被害者への賠償を命じる判決(1件目の判決)を下したのだ。しかし文在寅大統領は新年の記者会見で、この判決について「少し困惑したのは事実」と述べ、裁判所は先月末、勝訴した原告が日本の国家資産を強制執行する道をふさいだ。

 そして裁判所は21日、2件目の裁判の判決で原告の訴えを却下した。裁判所は、1件目の判決においては慰安婦のような「反人権的不法行為」には適用できないと判断した主権免除の原則を受け入れ、「この事件の被害者たちに対する『代替的な権利救済手段』」である12・28合意が存在すると判断した。慰安婦問題の最終解決策として12・28合意を認めたのである。抗告の手続きは依然として残っているが、被害者が法的に救済される可能性は今のところかなり低くなった。慰安婦問題解決のための30年に渡る闘争史にとって、重大な分岐点となったのだ。

 この判決は、韓日関係改善の流れへと導くことはできないだろう。両国は依然として北朝鮮と中国に対する「戦略的な見解の相違」という根本的な問題を抱えており、強制動員被害者賠償判決などの積年の難題、福島原発汚染水の海洋放出という新たな悪材料で対立している。

 韓日両国政府は、判決に対する具体的な言及は控え、原則論的な立場のみを明らかにしている。外交部は「本日の判決に関する詳細内容を把握中であり、これに関する具体的な言及は控える」としつつ、「韓国政府は被害者中心主義の原則に則り、日本軍慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するために政府がなしうるあらゆる努力をしていく」と述べた。続いて、日本に対しては「慰安婦問題は、世界でも類を見ない戦時の女性に対する人権蹂躙かつ普遍的な人権侵害の問題であり、日本政府には、1993年の河野談話や2015年の12・28合意などで自ら表明した責任の痛感と謝罪、反省の精神に見合った行動を示すことを求める」と述べた。

 日本政府の反応は冷淡だった。加藤勝信官房長官は午前の定例記者会見で「内容を精査する必要があり、現時点で政府としてのコメントは差し控えたい」と述べるにとどまった。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

「日本政府が汚染水について科学的に証明された具体的な情報を韓国を含む国際社会に提供せず、汚染水は安全だと口でばかり言っているのは、国際社会の責任ある一員としての姿勢ではない」

2021-04-22 | 放射能被害からこどもを助けよう!

原子力専門家「日本の汚染水資料は信頼できない…

国際的な検証資料を確保すべき」

登録:2021-04-21 03:40 修正:2021-04-21 06:58
 
原子力研究所を訪れた科学技術情報通信部の次官に要請 
「韓国への影響の予測のために国際的検証資料の確保を」
 
科学技術情報通信部のヨン・ホンテク第1次官が20日午前、大田広域市儒城区の韓国原子力研究院で開かれた福島第一原発の汚染水放出に関する専門家との懇談会で挨拶している=科学技術情報通信部提供//ハンギョレ新聞社

 日本による福島第一原発の汚染水の海洋放出に関連し、韓国の研究機関の専門家たちが、日本の汚染水処理に関する資料の信頼性に疑問を提起し、国際的に検証された資料の確保に向けて努力するよう韓国政府に要請した。

 専門家たちは、20日に韓国原子力研究院を訪問した科学技術情報通信部のヨン・ホンテク第1次官との懇談会で「福島第一原発の汚染水の海洋放出がいつ、どれほど韓国に影響を及ぼすかを科学的に予測するためには、原発汚染水についての国際的に検証された資料の迅速な入手がカギとなる」とし、このように要請した。

 ヨン次官はこの日、日本の汚染水海洋放出計画に対応する関連研究の成果および今後の計画を点検するために原子力研究院を訪れ、関連分野の研究者グループの話を聞いた。

 懇談会に出席した研究者は、「日本政府が汚染水について科学的に証明された具体的な情報を韓国を含む国際社会に提供せず、汚染水は安全だと口でばかり言っているのは、国際社会の責任ある一員としての姿勢ではない」と口をそろえた。研究者たちは特に、「日本政府が先日発表した海洋放出計画を撤回し、約126万トンの汚染水が貯蔵されているすべての貯水タンクに対する全数調査をまず実施する必要がある」と主張した。

 懇談会において汚染水放出の韓国への影響を分析するための「シミュレーション開発の現状と今後の高度化の方向性」を報告した同院のソ・ギョンソク環境・災害評価研究部長は「日本は原発汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化したというが、それらの資料は信頼性がない。韓国への影響を予測するためのシミュレーションが実施できるよう、政府レベルでもう少し正確な情報を入手してほしい」と述べた。

 懇談会に出席した専門家は、現在日本の汚染水処理に用いられているALPSの性能問題も提起した。原子力研究院のソン・ジンホ博士は、「福島第一原発の汚染水を浄化するALPSは過去10年あまりの間にまともに作動していなかった時期もあり、一部の貯水タンクからは法的許容値の5倍から100倍にのぼる高濃度の核種が発見されたこともある」と語った。

 東京電力が2018年10月に作成した報告書を実際に見ると、汚染水処理に投入された3基のALPSのうちの2基が、一部の放射性物質の除去性能や性能の持続時間が不足しているとなっている。

 研究者の提案についてヨン次官は「今後、日本が原発汚染水海洋放出の細部計画を樹立すれば、放射能の放出濃度や排出期間などの具体的なデータを直ちに入手するよう努力するとともに、放射性物質の海洋拡散評価モデルを通じて、韓国の環境と国民の健康に影響がないか徹底的に分析し、検証する」と述べた。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

日本政府が十分な科学的根拠を示して情報を共有すること▽韓国政府と事前に十分に協議すること▽IAEAの検証過程で韓国の専門家の参加を保障することだ。

2021-04-21 | 放射能被害からこどもを助けよう!
 

韓国外相「日本の汚染水放出、

3つの条件とIAEAの手続きに従うなら反対せず」

登録:2021-04-20 04:56 修正:2021-04-20 07:10
 
情報共有や事前協議、韓国の参加 
チョン外交部長官、3つの要求事項を提示 
「中国やロシア、台湾などと対応策を協議」
 
チョン・ウィヨン外交部長官が今月19日、ソウル汝矣島の国会本会議で行われた政治・外交・統一・安全保障分野の対政府質問に答えている/聯合ニュース

 チョン・ウィヨン外交部長官が19日、日本の福島第一原発事故による放射性物質汚染水の海洋放出決定について、「(情報提供など)3つの条件が整えられ、(汚染水の放出が)国際原子力機関(IAEA)の基準に合う適合性手続きに従って行われるなら、あえて反対することはない」と述べた。

 チョン長官は同日午後、国会で開かれた対政府質問で、日本の汚染水放出に対する政府の反対の立場に変わりはないかというムン・ジンソク議員(共に民主党)の質問に対し、「反対するというよりは、韓国国民の健康と安全を最優先にし、3つ(の事項)を日本に一貫して求めている」と説明した。チョン長官が明らかにした3つの要求事項は、汚染水の放出に関して、日本政府が十分な科学的根拠を示して情報を共有すること▽韓国政府と事前に十分に協議すること▽IAEAの検証過程で韓国の専門家の参加を保障することだ。今のところ、提供された情報が不十分であり、汚染水の安全性を判断する根拠がないため、韓国が反対していると解釈できる発言だ。

 チョン長官は日本の放出決定に反発している中国やロシア、台湾などと協力して対応する計画はないのかという質問には、「太平洋沿岸国を中心に協議を進めている。すでに島しょ国16カ国は(韓国など)近隣5カ国と同じ立場を発表した」と答えた。さらに「米国も『日本政府の原発汚染水海洋放出問題はIAEAの適合性判定を受けなければならない』という基本原則においては韓国と同じだ。ただし、日本の放出決定発表後に行われた米側の発表内容は韓国政府の判断とは異なる部分が多く、政府も様々なチャンネルを通じて米側に韓国の立場を明確に説明している」と述べた。

 チョン長官はまた、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が言及した国際海洋法裁判所に提訴するなどについては「様々な実効的な対応策を全て検討している。司法的措置の内容も含まれている」と答えた。文大統領は14日の大統領府会議で、「日本の原発汚染水海洋放出決定に関連し、国際海洋法裁判所に暫定措置とともに提訴する案を積極的に検討」するよう指示した。

 一方、相星孝一・駐韓日本大使は同日、福島第一原発汚染水の海洋放出過程を検証するIAEAの調査団に韓国側の専門家が参加する案に対し、肯定的な立場を示した。相星大使は同日、ソウル貞洞(チョンドン)で開かれた韓中日3カ国協力事務局設立10周年写真展の開幕式後、「韓国側の専門家が調査団に参加できるのか」という取材陣の質問に、「我々(日本政府)はそう考えているが、それはIAEAと韓国政府が協議する事項」だと答えた。IAEAはすでに調査団への韓国の専門家の参加に対し、肯定的な立場を明らかにした。

キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

日本の決定が「透明」というのは理屈に合わない。「国際的に公認された核安全基準に合致する」という主張も慎重ではない。

2021-04-20 | 世界情勢を知ろう

[寄稿]福島原発汚染水の海洋放出をめぐる米日の危険な協力

登録:2021-04-19 05:20 修正:2021-04-19 08:22
 
     李ティンンティンㅣ北京大学教授

 今月13日、日本政府が福島第一原発の汚染水を海に放出することを公式決定した。米国務省は直ちに声明を発表し、日本の決定が「透明」で、「国際的に公認された核の安全基準に合致する」として、支持を表明した。国際社会はもとより、日本内部でも懸念と反対の声が高まっているのとは対照的だ。

 米国は世界で最も影響力の大きい国だ。福島第一原発汚染水の海洋放出は、海洋環境や食品安全、人類の健康に深刻な影響を及ぼし得る問題であるため、慎重かつ責任を持って、客観的な立場を維持しなければならない。しかし、米国務省が出した声明は、少なくとも2つの点で適切でないと言える。

 まず、日本の決定が「透明」というのは理屈に合わない。 放射能汚染水の海洋放出は、周辺国はもとより世界各国の安全と直結している。しかし日本は、事前にこれを関係国に通知しなかった。放出決定後も、放射能汚染水に関する十分な情報を提供しなかった。中国や韓国、ロシア、北朝鮮などが強く抗議したのもそのためだ。それだけではない。日本は5種類の汚染水の排出方式を比較したと主張しているが、企業の費用を考慮し、従来の汚染水の保管容量を増やす案は最初から外していた。これに対しては、日本国内でも合理性と正当性に対する十分な合意がなされていない。日本が汚染水の放出決定を公開し、これを米国と事前に協議したとの理由だけで、「透明な決定」とは言えない。

 いわゆる「国際的に公認された核安全基準に合致する」という主張も慎重ではない。福島第一原発事故は、これまで世界で発生した原発事故のなかで最も深刻なものの一つだ。正常な原発稼動によって生成された汚染水を放出する基準を単純に適用するには不確実性が高すぎる。放射性トリチウム(三重水素)のほかにも、一部の学者たちは海洋生物と海底沈殿物に簡単に溶け込めるルテニウム106やコバルト60、ストロンチウム90などの放射能同位体についても注目すべきだと指摘する。また、半減期が5700年に達する炭素14の大規模な放出による影響も予測が難しく、炭素14の測定の正確度を歪曲するなどまた別の悪影響に対する懸念の声もあがっている。

 すでに多くの指摘があったように、米国が日本寄りの偏った態度を示す理由は政治的かつ戦略的考慮によるものであり、日本の外交的準備作業ともつながっている。それに加え、日本のフレーム(問題を捉える枠組み)の設定も注目に値する。日本は、「放射能汚染水の海洋放出」という世界共通の環境安全問題を、経済的コストと汚染水処理技術の問題として再規定した。 さらに、少数国家と専門家集団が発言権を掌握している専門性と技術性をめぐる論争にすり替え、大多数の直接利害当事者たちを排除し、少数の支持をもとに自分の計画を推し進めている。

 このようなやり方は日本外交ではおなじみの風景だ。最も典型的な事例は、第二次世界大戦後の戦後処理問題で見られる。日本は第一次世界大戦処理の事例を参考にし、植民地に関する問題を平等な交戦当事国間の領土分割方式で処理することを米国に提案した。これを通じて、植民支配と侵略に対する清算問題を戦後処理という統一した枠組みの中に組み入れる国際法の根拠を作った。このようなやり方はその後、米国の地域戦略と合致してサンフランシスコ講和条約の骨組みとになり、さらに日本と周辺国の個別的正常化交渉の原則と方向を規定するようになった。慰安婦と強制徴用など、植民支配の清算問題もこのようなフレームのもとで注目されにくくなり、今でも北東アジアの和解と協力の大きな障害になっている。

 福島第一原発の放射能汚染水の海洋放出問題は、世界の環境安全と人類共通の命運がかかった問題だ。処理を誤ると、深刻な否定的影響を招く可能性がある。いかなる国にも、自国の利益だけを考えフレームの設定と発言権の優位をもとに他の利害当事者を迂回し、依然として不確実性が残っている決定を一方的に押し通したり、それを支持する権利はない。

 
//ハンギョレ新聞社
李ティンンティンㅣ北京大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)