▲送信者注/2012年最初の朝鮮関係ニュースとなります。
”悲しみを勇気と力に”変えて、一層頑張って
この間日本を離れ帰ってくるやいなや、税関での悪意に満ちた何の益も取り扱いに晒されるし、警視庁公安部による総聯傘下団体に対する不当強制捜査の報
に接するし、又離れていたからこそ余計に感じるのですが、この国の報道機関による、年々酷くなって評するにも値しない天動説的情勢観の朝鮮半島情報道・
解釈にあいかわらず接するし、
”ああ、これが私と私たちを取り巻く日本社会の現状だな~~”との慨嘆を禁じえない、今日この頃です。
唯一方では、様々に勇気付けられる声そして動きにも接します。
だからこそ、この2012年、様々に意味深い今年に、”悲しみを勇気と力に”変えて、一層頑張って行こうとも決意しますし、させられます。
遅くなりましたが、今年も何かと宜しくお願い致します。
▲「目次」
①--壱 【全文】 朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話
①--弐 【全文】 米国務省スポークスマン 報道発表文
①- 第三次朝米高位級会談、何が討議されたのか?
② 【ブリーフィング全文及び訳者解題】 党代表者会議をなぜ開催するのか? 北朝鮮、携帯電話100万台突破と大型スーパー登場に「隠されたコード」/鄭昌鉉・月刊紙「民族21」代表、国民大兼任教授
③-【記事及び要請文全文】 NGO団体が国連委に要請へ 「高校無償化」、人種差別撤廃条約に違反
③- 警視庁公安部、総連傘下団体など強制捜索 前代未聞、常軌逸した暴挙 政治弾圧に同胞・活動家ら怒り
①--壱 【全文】
朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話(朝鮮中央通信日本語版 2.29)
朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマンは、朝米高位級会談が進行されたのと関連し、29日朝鮮中央通信社記者が提起した質問に次の通り答えた。
朝鮮民主主義人民共和国と米合衆国間の3次高位級会談が23日と24日中国で進行された。
会談にはキム・ケグァン外務省第1副長官を団長でする朝鮮代表団と、グリン・デービス国務省対朝鮮政策特別代表を団長でする米国代表団が参加した。
2011年7月と10月に行われた二度の高位級会談の連続過程である今回の会談では、朝米関係改善のための信頼造成措置と朝鮮半島の平和と安定保障、6者会談再
開と関連した問題が真摯に、また深く論議された。
朝米双方は9.19共同声明履行意志を再確認し、平和協定が締結される前まで停戦協定が朝鮮半島の平和と安定のための礎石になるというのを認めた。
双方はまた、朝米関係を改善するための努力の一環として、一連の信頼造成措置を同時に取ることに合意した。
米国は、朝鮮をこれ以上敵対視せず、自主権尊重と平等の精神で両方の業務関係を改善する準備ができている、ということを再確言した。
米国は、文化、教育、スポーツなどの様々な分野で人的交流を拡大する措置を取る意志を表明した。
米国は、朝鮮に24万tの栄養食品を提供し、追加的な食糧支援を実現するために努力することにし、双方はこれのために行政実務的措置を即時に取ることに
した。
米国は、対朝鮮制裁が人民生活など、民需分野を標的としないという事を明確にした。
6者会談が再開されれば、我々に対する制裁解除と軽水炉提供問題を優先的に論議することになるだろう。
双方は、対話と交渉の方法で、朝鮮半島の平和と安定を保障し朝米関係を改善して、非核化を実現していくことが、双方の利益に符合するということを確認
し、会談を継続していくことにした。
我々は、米国の要請により朝米高位級会談に肯定的な雰囲気を維持するために、実りある会談が進行される期間、核試験と長距離ミサイル発射、寧辺ウラン濃
縮活動を臨時中止し、ウラン濃縮活動中止に対する国際原子力機構の監視を許容することにした。
※関連《米朝協議での合意、中国政府「両国の関係改善を歓迎する」(サーチナ 3.1)》
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0301&f=politics_0301_010.shtml
①--弐 【全文】
米国務省スポークスマン 報道発表文(聯合ニュース 2.29)
米国代表団は第3次米朝対話を終えて北京から帰国した。 北朝鮮は対話の雰囲気を改善して非核化に対する意志を見せるために長距離ミサイル発射、核実験
およびウラニウム濃縮活動を含んだ寧辺(ヨンビョン)での核活動に対するモラトリアム履行に同意した。
北朝鮮はまた、寧辺(ヨンビョン)ウラニウム濃縮活動に対するモラトリアムを検証・監視し、5Mw原子炉および関連施設の不能化を確認するためのIAEA視察
団の復帰にも同意した。
米国は様々な分野にわたって北朝鮮の行動にまだ深い憂慮を持っている。 しかし今日の発表は上記憂慮中の一部を扱うことにより、制限的ではあるが重要な
進展を反映している。
私たちは栄養支援24万トンと共にこのような支援伝達時要求される徹底した監視問題を進展させるために必要な行政的な細部事項を確定するために北朝鮮と
協議を持つことにした。
下記事項は2.23~24の北京での協議であがった内容である。
-米国は対北朝鮮敵対意思を保有しておらず、相互主権尊重と平等の精神に立って両者関係を改善する措置を取る準備ができているということを再確認す
る。
-米国は9.19共同声明遵守意志を再確認する。
-米国は1953年停戦協定を韓半島平和・安定の基礎として認める。
-米朝両側の栄養支援チームは近日中に会い、行政的な細部事項を確定する。 支援対象を特定している米国のプログラムは最初24万トンの栄養支援で構成さ
れて、持続的な必要性に基づいて追加支援の可能性を残している。
-米国は文化、教育、スポーツ分野などで人的交流を増大させるための措置を取る準備ができている。
-米国の対北制裁措置は北朝鮮住民の日常生活に対する制裁を目標にするのではない。
※関連①《U.S.-DPRK Bilateral Discussions(米・国務省)》
http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2012/02/184869.htm
※関連②《North Koreans Agree to Freeze Nuclear Work; U.S. to Give Aid(N.Y.タイムス) 》
http://www.nytimes.com/2012/03/01/world/asia/us-says-north-korea-agrees-to-curb-nuclear-work.html?_r=1&hp
①-
第三次朝米高位級会談、何が討議されたのか?(朝鮮問題深堀りすると 2.27)
23,24日の両日に行われた朝米第3次高位級会談が終わりました。何が討議され,どのように終わったかについて公式の発表がないまま朝米が別れまし
た。日本の報道によると、朝鮮のウラン濃縮問題とアメリカの対朝鮮食料支援問題について討議が行われ意見の接近を見たようだといいます。
事際のところどうだったのでしょうか。その糸口は会談を行った当事者であるアメリカ国務省のデービス対北特別代表の記者会見での発言内容とこれまでの会
談の内容からから類推するしかありません。
デービス特別代表は記者会見でウラン濃縮(UEP)問題を含む重要なイッシューについて次のように発言しました。
「UEPを含めた非核化問題、非拡散問題、人道主義問題、人権などについてすべて論議したし、日本と我々全てが憂慮する拉致者問題も話した。」「北朝鮮
が周辺国との関係を改善し特に朝鮮半島でよりよい南北関係をもたらすために努力すべきだという話もした」と言っています。つまりあらゆる問題について協
議したと言う事です。
本質的な問題に入る前にデービスが「北朝鮮が周辺国との関係を改善し」と言っていることについて一言付言します。今朝鮮が周辺国と関係改善が出来ていな
いのは唯一日本だけです。したがってデービスの発言は正確ではありません。韓国は自ら関係を断ち切ったのですから朝鮮に求めるのは筋違いです。
本題に入ろうと思います。まずこれまでの協議について俯瞰してみましょう。アメリカはこれまで6者会談の前提として北南対話の実現、「非核化の前提措
置」として朝鮮のUEP中断、IAEA査察の受け入れ、核とミサイル事件の中断などを要求してきました。
これに対して朝鮮側はアメリカの朝鮮敵視政策の放棄、その具体的な問題点として、侵略的米韓軍事演習の中止、朝鮮休戦協定の平和協定への変更、駐韓米軍
の撤退、などを要求してきました。食料支援問題についてはアメリカが脈絡のないまま食料支援問題について投げかけてきたので,北側はすでに合意を見た支
援規模と内容を遵守することを要求してきました。(2月22日号のブログ記事で明らかにしています)
それがいつの間にかUEP中断問題と食用支援の交換というように問題がすげ替えられ、あたかもそれが北側の要求のように喧伝されてきました。従って
UEPと食料のトレードでもあるかのような日本のマスメディアの論調は最初から間違っているのです。この間違った視点から今回の会談を見るので結局、も
のごとの本質を見ることができないまま記事が量産されたわけです。
では今回の会議をどのように見ることができるのでしょうか。管理人はデービスが「寧辺UEPを含ひ非核化問題、非拡散…について議論した」と発言してい
る点に注目したいと思っています。
特に突如現れた「非拡散問題」が議論されたという点は管理人も想像できなかったことです。アメリカ政府内ではこれまでも重点を「核活動の停止か,非拡散
問題」かを巡って意見が分かれてきたことはご承知の通りです。ところが今回の会談で「非拡散」がテーマの一つになったと言う事です。順序で言えば「非拡
散問題」は核武装が終了したときから浮上する問題であり、アメリカがそれを朝米高位級会談で論議のテーマに上げたと言うことは,何を意味するのでしょう
か。
答えは簡単明瞭です。朝鮮が核兵器保有国である事を認めるかどうかを迫られていると言う事です。ところがこれまでアメリカは朝鮮を核武装国とは認めてい
ません。つまり現実から目を背けてきたわけです。そしてやっと現実を認めたと言う事になりそうです(アメリカ政府の公式見解が出るまでは「仮に」という
ことになりますが)。それは衝撃的な変化です。朝鮮を核武装国として認めたという事は米朝協議の器,土俵が替わることを意味します。例えばIAEAの査
察などは雲散霧消するでしょう。
他方で北側の要求はそれだけではありません。朝米平和協定の締結問題がそれです。それは朝米関係正常化と、朝鮮半島の平和と安定実現の大前提です。
朝鮮の核問題はまさにこの問題と深くリンクしており、直接繋がる問題です。ところが現在この問題でアメリカが二枚舌を使っています。朝米高位級会談が行
われている中でも朝鮮をターゲットにした米韓合同軍事演習が繰り広げられています。デービス代表は「人道主義問題、人権などについてすべて論議」したと
明かしていますが,そもそも人道や人権と戦争が両立し得ないことは赤子にも分かる話です。実際アメリカのイラク、アフガン戦争が人道主義や人権を踏みに
じるものであったことはすでに明らかになっています。ましてやアメリカは会談中も朝鮮半島で戦争演習を繰り広げているのですから、二枚舌も良いことで
す。
ところで朝鮮国防委員会は25日に代弁人声明を発表し、「我が軍と人民は米帝の反共和国戦争策動が強まれば強まるほど反米決戦態勢を整え軍事的挑発と武
力増強、戦争演習策動を踏みつぶし、朝鮮半島の平和と安全の基本的障害物であるアメリカ侵略軍をこの地から追い出すための強度の高いたたかいに総進入す
るだろう」としながら「いつでもアメリカ侵略軍の本拠地と反共和国軍事巣窟をわが打撃圏内に収め、ぴくりともすれば一撃に踏みつぶすだろう」「核兵器は
アメリカの独占物ではない。アメリカの核兵器よりもより強力な戦争手段と誰にもない最先端打撃装備がある」「大洋の遠いところにアメリカ本土があるので
安全だと思うのであれば,それ以上の誤算は無い」「侵略者を踏みつぶすわが軍と人民の打撃の強度と打撃の境界線には限界がない」「本当の銃尻、戦争の味
がどういうものなのかを見せて上げるというのがわが軍と人民の不変立場だ」と圧迫しています。
日付を見るとの25日です。当然朝米高位級会談の朝鮮側代表団もこの内容を事前に正確に認識していたと考えられます。そして同じような強烈な軍事的圧迫
をデービス特別代表に伝えたはずです。
デービスが「突破口が開かれたか」という記者の質問に「そこまでは行っていない」と曖昧な答えしか出来なかったのかが理解できる箇所です。彼の判断の領
域を遙かに超える強烈な問題が浮上していたと思える箇所です。
一言で言って今回の第3次朝米高位級会談で朝鮮側は「最後通牒」と言っても良い強烈な軍事的圧迫を加え、アメリカに問題の根本的解決に臨む気があるのか
どうか決断を迫ったと言う事です。ここに今回の会談の醍醐味があるのではないかと管理人は判断しています。
② 【ブリーフィング全文及び訳者解題】
党代表者会議をなぜ開催するのか? 北朝鮮、携帯電話100万台突破と大型スーパー登場に「隠されたコード」/鄭昌鉉・月刊紙「民族21」代表、国民大兼任教授(スーパーゲームズワークショップエンタティメント 3.1~ プレシアン 2.22)
【ブリーフィング訳文】
北朝鮮が4月中旬に再び党代表者会議を開催する。2010年9月に金正恩(キム・ジョンウン)後継者を党中央軍事委副委員長に選出して19ヶ月ぶりだ。北朝鮮は
具体的な日程と議題について言及しなかったが、
今回の会議で金正恩副委員長を党総書記及び党政治局常務委員、党中央軍事委員会委員長に推戴するものと予
想される。また、一般的には4月頃に開かれる最高人民会議では金副委員長が国防委員長に選出される可能性が大きい。
党規約と北朝鮮憲法によれば党総書記が党中央軍事委委員長を兼職し、国防委員長が最高司令官を兼職する事になっている。金正恩副委員長が昨年末の金正日
(キム・ジョンイル)委員長の死後に最高司令官へ推戴されたのに続き、今年4月に総書記及び党中央軍事委員長、国防委員長に全て推戴(選出)された場
合、制度的に単一指導体制を完成させられる基盤を備える事になる。
北朝鮮は今年1月1日新年共同社説で「党事業において主線としてつかんで行かねばならない事業は、今日もこれからも党の唯一的指導体系を強固に打ち立てる
事」とし「我々は全党を、指導者の意思に無条件従うという一つの意思で貫かれた純潔なる組織思想的全一体へと強化発展させていかねばならない」と明るみ
にした事がある。したがって北朝鮮は今回の党代表者会議を党機能の強化と金正恩中心の指導体系を確立させるのに活用するものと展望される。金正恩時代を
公式宣布する会議となる訳だ。
党中央委員会政治局委員と候補委員、党中央委員の一部交代も予想される。死亡した趙明禄(チョ・ミョンロッ)政治局員、朴正淳(パッ・チョンスッ)政治
局候補委員はじめとして、金正日委員長の葬儀委員名簿から外れた朱相成(チュ・サンソン)元人民保安部長、洪錫亨(ホン・ソッキョン)元党書記などが対
象だ。新任の李明洙(リ・ミョンス)人民保安部長の政治局入りが有力であり、内閣教育委員長から昇進した金勇進(キム・ヨンジン)副総理、党統一戦線部
副部長から異動した李光根(リ・グァングン)朝鮮合営投資委員長、最近昇進した事が確認された金スンス内閣教育委員長、崔グァンジン内閣財政相などの党
籍地位も高まるものと見られる。最近労働党の専門部署責任者級に対する人事が断行されたという説がある為、今回の党代表者会議の時に交代した人士達の
面々が確認出来るかもしれない。また北朝鮮は党規約を一部改定して金正日委員長の業績を追加するだろう。
もちろん最も大きな関心は、党代表者会議が金日成主席の誕生日100周年を前後して開かれるだけに、金日成-金正日時代を評価して金正恩時代を象徴する新
しい政策路線が出るかどうかに注がれている。金正日委員長は1990年代後半3年間の遺訓統治を終えて総書記に就任した後、国家戦略として「強盛大国建設」
を提示した事がある。
だが我々が期待する画期的な改革開放路線は登場しないだろう。今年に入って連続的に軍部隊を訪問している金副委員長の歩みを見た時、今回の党代表者会議
でも先軍路線と強盛大国建設路線の継承を強調する事だろう。特に朝米関係と南北関係が停滞しており、6ヶ国協議の成果が不透明な状況で北朝鮮が新しい経
済開発路線を公式的に打ち出すのは負担が大きい。金正恩副委員長は「社会主義原則を確固として固守しながらも最大限の実利を保障出来るようにする事、こ
れを経済部門では核として握り締めていかねばならない」と語ったと伝えられる。金正日委員長が2002年に社会主義経済管理改善措置(7.1措置)を断行しな
がら打ち出した原則と正確に一致する内容だ。
ただ今年の新年共同社説で提示されたように「知識経済強国建設」が金正恩時代を特徴付ける政策方向へと強調される可能性は高い。これと関連して在日本朝
鮮人総連合会機関紙「朝鮮新報」は今年の新年社説を解説しながら「経済建設では従前のように軽工業と農業を『主攻戦線』と見なして、ここで革新を引き起
こして行く事を強調したが、次の段階の目標も提示した」として「『我々式の知識経済強国』を打ち立てるという事」がそれだと指摘した。
2009年に後継者として本格的活動に出た金副委員長は「長期的に持続可能な経済発展モデル」に深い関心を表明したという。一般的には持続可能な発展モデル
の計画とは、対外貿易構造と産業構造の改善を通じて持続的に成長出来る経済的基盤を構築する事だ。北朝鮮はこの為に制限された地域を経済特区という名で
開放したり、投資与件を改善する事で外資誘致の為に努力している。またCNC(コンピューター数値制御技術)に代表される科学技術の発展を通じた産業構造
の高度化を志向している。北朝鮮はこれを「知識経済強国」表現している訳だ。今年に入って北朝鮮が金勇進教育委員長を副総理に昇進させ、教育委員長に金
スンドゥ理科大学総長を任命したのも「知識経済強国」建設を現実化する為の科学技術人材養成へ積極的に出るという政策方向を示唆したものである。
注目すべき題目は北朝鮮式に表現される抽象的な政策方向ではなく、2008年の金正恩副委員長登場以後に北朝鮮内部で進行している実際的な変化の姿だ。
代表的なものとしては先の2月初に北朝鮮の携帯電話普及台数が3年目にして100万台を突破した。
一言で「通信革命」と言うに値する。2008年12月北朝鮮逓信省はエジプトの通信会社であるオラスコム社と合同で移動通信会社高麗リンクを設立した。翌年で
ある2009年に北朝鮮の携帯電話加入者数は9万人に達し、2010年には43万人を超えて5倍ほどに激増する。2011年にはまた2倍を超えて90万人を突破し、今年2月
初にはついに加入者数100万人を超えた。2008年末に初めて携帯電話サービスが開通した時には良くて数万台程度が売れるだろうという予測を完全に飛び越え
る数値だ。
北朝鮮内の携帯電話サービス提供範囲も徐々に拡大し、平壤(ピョンヤン)をはじめとする14ヶ所主要都市と86の小都市にサービスが提供されている。通常、
1990年代後半の北朝鮮電話普及台数は100万台を超えたと伝えられる。これを勘案すれば北朝鮮は有線電話普及よりも「第3世代移動通信」へと直行する方式を
選択した訳だ。
特に若年層の間で携帯電話が大きな人気を集めている。最近ノーチラス研究所(The Nautilus Institute)が発表した報告書によれば、平壤に居住する20-50
歳代人口の60%が携帯電話を使う。この報告書は「商人層だけでなく20-30歳代の若い世代達にも携帯電話が必須品として定着している」とし「多くの若者達
が携帯電話なしには暮らせないほど」と評価した。最近平壤を訪問したある海外同胞も「息子と娘のおねだりに勝てず経済的に無理をしてでも携帯電話を買っ
てやる家が増えている」として「携帯電話普及によって業務の効率性や連絡の迅速性が過去に比べて驚くほど変貌した」と語った。携帯電話以外にもコン
ピューター(ノートブック)、デジタルカメラ、DVDプレイヤー、MP3などの電子機器普及が素早く拡散している。これを通じて北朝鮮の若いネチズン(ネット
市民層)達はコンピューターを利用した資料検索と情報交流に慣れてきており、海外情報もたやすく接するようになった。
一方で、「通信革命」と共に平壤に「光復(クァンボッ)地区商業中心」などの大型スーパーマーケットが登場しながら流通分野でも「革命的変化」の兆候が
現れている。
最近開店した大型スーパーマーケットや普通江(ポトンガン)商店など専門商店は市場経済領域を計画経済領域に吸収しようという北朝鮮当局の試みにして、
物資供給を拡大する為の措置と見る事が出来る。実際にこれら商店の価格は「市場の価格よりも安く、他の国営商店の価格よりも高く設定された」と伝えられ
る。国営商店網を通じた物資供給不足のせいで、高いがやむなく市場へ行くしかなかった住民達の足取りをつかむという措置だ。国家が保障する信用のある商
品をいつでも市場より安く買えるなら、敢えて市場に行く必要がなくなる。市場価格も自然と落ちる事だろう。
現在はスタート段階だが北朝鮮当局の構想通りに大型スーパーマーケットと専門商店達が平壤の各区域をはじめとして各都市に広がった場合は北朝鮮の商業流
通網が画期的に変化し、1990年代以後爆発的に成長した市場経済領域は大きな打撃を受ける可能性が高い。我々が期待するものとは反対だが、北朝鮮式「流通
革命」という訳だ。
特に最近現れている通信と流通分野の変化が2009年の金正恩副委員長が後継者として本格的に活動し始めた時点から可視化しているという点が注目される。金
正恩時代の北朝鮮経済政策方向を示唆しているものだ。もちろんこのような北朝鮮の政策が成功する為には相当な期間が必要なものと予想される。平壤の中心
部から始まる「流通革命」が平壤の外郭と主要都市に拡散する為には時間が必要だからだ。
また流通体系の成功的な変化の為には持続的な物資供給、特に商品価格の基準となる米価安定が何よりも必要となる。そうした点で新しく開店した光復地区商
業中心や大型商店達で米をはじめとする生活必需品を市場よりも安い価格で安定的に販売出来るかどうかが非常に重要だ。北朝鮮はとりあえず中国など海外資
本を誘致してこれを解決しようとしているようだ。
これまでの3年間に朝中国境地帯を中心に造成されている経済特区、北朝鮮内部で吹く通信と流通分野の変化の風は北朝鮮住民達の生活と意識を変化させてい
る。年毎に中国を訪問する北朝鮮の人々の数が急増しており、中東やロシアに派遣される労働者達の数も増えている。高い携帯電話を購入して使用し、新しい
デジタル文化に適応する購買力ある消費層が北朝鮮で成長しており、これらが金正恩時代を後援する核心階層として登場しているのだ。
北朝鮮は先軍路線と経済開発路線の平行推進が可能だと判断しており、南や外部世界は改革開放なしには経済成長も不可能だと展望する。結果は時間が教えて
くれるだろう。重要なのは希望事項ではなく現実に現れる政策だ。そうした点から見るならば、今度の4月党代表者会議では金正日時代の路線継承に強調点を
置きながら慎重に北朝鮮内部の変化を需要または促進する金正恩時代のカラーを示唆する政策方向が出て来る事もあり得るだろう。
一線から退いて党代表者会議準備過程に参加している李スヨン(元ジュネーブ大使だった李徹 リ・チョルの別名 訳注)元朝鮮合営投資委員会委員長がどの
ような経済路線を建議するかも目を引くテーマだ。
もちろん時が早過ぎると判断して、北朝鮮が党代表者会議で新しい経済政策を押し出さなくとも、対外的には門戸をより幅広く広げる方向でなされる対外交流
強化と海外資本誘致、経済特区拡大などの措置は持続されるものと予想される。
▲上記ビリーフィングの原文記事は次の通り http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=40120221164457§ion=05
お読みになった通りである。金正恩が後継者として登場してから北朝鮮の経済改革開放路線が速度を増している事が良くお分かりいただけよう。それを象徴す
るのが最近の携帯電話普及や大型商店の出店だ。
こうした変化の兆候を見逃さない事が今の北朝鮮という国を知るのに重要な要素である。いつまでも「餓死者が大量に出ている」「金正恩は瀬戸際外交も継
承」「金正男が新しい指導者になる事もあり得る」「張成択が第一人者に浮上するだろう」「朝中国境地帯で大量虐殺」といった怪しげな情報ばかりにとらわ
れていてはいけない。要するにアジアプレスやデイリーNKやリムジンガンといったメディアはすでに2周3周遅れもいい所であり、これらを読んでも時代に取り
残されるだけである。高い金払ってリムジンガンを読むという行為は、要するに金をドブに捨てているに等しいという事だ(笑)。
やはり北朝鮮に関して最も正確で鋭い分析をしているのは、結局太陽政策や南北首脳会談を実現させた南の良心的な北朝鮮学者達だという事に尽きるだろう。
それらの記事や論文の多くが日本で翻訳紹介されていない状況は本当に悲劇的で不孝だと思うが、日本人で真に北朝鮮との真摯な友好や平和を築きたいと望む
方ならば、自分でもそれらを読んだり知る努力を出来る限りして欲しいと思う。そうした優れた知識が平和を築く原動力となり、最終的には自分達の身を守る
事にもつながる。真に人々の身を守るのは決して軍備や戦争ではない。
③-【記事及び要請文全文】
NGO団体が国連委に要請へ 「高校無償化」、人種差別撤廃条約に違反(朝鮮新報 2.27)
「高校無償化」制度の対象から朝鮮学校のみが除外されている問題で、人種差別撤廃条約違反として、3つのNGO団体(外国人学校・民族学校の制度的保
障を実現するネットワーク、在日本朝鮮人人権協会、反差別国際運動日本委員会)が24日、国連人種差別撤廃委員会に日本政府に対する早期警告と緊急行動を
要請した。
要請書は、朝鮮学校は日本の植民地支配による産物であるにもかかわらず、政府は正規の学校として認めず、さまざまな制度差別を受けてきたことや、外交
上の理由で「無償化」制度から除外し、さらには各地自体で補助金の停止またはカットするという事態を引き起こしていることなどを問題点として指摘。
朝鮮学校の「無償化」制度からの除外は、特定の民族に対する明らかな差別であり、条約違反であることを明確に示すことなど、制度適用と自治体による補
助金の復活を促す勧告を要請した。
以下、要請書全文(日本語訳)。
早期警告と緊急行動手続に基づく国連人種差別撤廃委員会への要請
朝鮮学校に対する高校無償化からの排除と補助金停止・削減について
2012年2月24日外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク在日本朝鮮人人権協会反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)
1.はじめに
私たちは、在日朝鮮人の子どもが置かれている状況に関して、人種差別撤廃委員会による早期警告と緊急行動を要請する文書を提出する。私たちは、日本の中央政府が朝鮮学校に「高校無償化」を適用せず、国庫による財政的支援を怠り続け、また、5つの都府県が朝鮮学校への補助金を停止あるいは削減している現状が、人種差別撤廃条約第5条(e)()の教育権の平等な保障に違反し、かつ、貴委員会の早期警告と緊急行動の指針のうちのひとつ((a)社会的・経済的指標による証明された、著しく持続的な人種的差別の型(繰り返し)の存在)に該当すると考えるものである。
2.問題点
在日朝鮮人は日本による朝鮮植民地支配を原因として日本に渡航し、日本の敗戦後も様々な困難のもとで日本に定住せざるをえなかった民族的マイノリティである。在日朝鮮人は、植民地支配下で奪われた、自らの言語や文化を継承するため、日本による植民地支配からの解放後、日本各地に自力で民族学校を設立した。
しかし、日本政府は朝鮮学校を正規の学校として認めず、中央政府からの財政援助が一切ないこと、大学入学資格、税制上の優遇措置等、さまざまな制度的差別を加えてきたが、朝鮮人コミュニティーは、それらの差別に屈せず現在まで60年以上朝鮮学校を維持してきている。現在も幼稚園から大学まで、全国の約70校で、国籍にかかわらず、約1万人の朝鮮民族の子どもたちが学んでいる。
2010年4月、日本の中央政府は、家庭の状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が高校段階の教育を受けることができるようにすることを目的として、高校無償化法を施行し、日本にある公立高校の授業料を徴収しないこととし、私立学校、そして外国人学校の生徒にも、公立高校授業料に相当する金額を支給するとした。法制定以降、すでに33の外国人学校の生徒たちが就学支援金を受給したにも関らず、朝鮮学校の生徒たちは未だ適用から排除されており、受給していない。
委員会が、2010年2月の日本審査の際に、高校無償化法の制定に際し、朝鮮学校を排除するべきことを提案している何人かの政治家の態度につき、子どもの教育に差別的効果をもたらす行為として懸念を表明し、「教育機会の提供において差別がないよう確保すること、ならびに、締約国の領域内に居住する子どもが就学および義務教育の修了にさいして障害に直面することのないよう確保すること」を勧告した。しかし、日本政府はその勧告を完全に無視している。日本政府は朝鮮民主主義人民共和国と日本間の外交問題を理由として、朝鮮学校の子どもたちを差別している。朝鮮学校の生徒たちのみ授業料への支援がないために、朝鮮学校への進学や進級を断念せざるをえない子どもも多く、マイノリティーの教育権が侵害されている。
他方、従来から中央政府は外国人学校に一切の財政支援を行っていないが、朝鮮学校が存在するすべての都道府県は朝鮮学校に補助金を支給してきた。しかし、中央政府による高校無償化からの朝鮮学校はずしに力を得て、日本における反朝鮮の人種主義が高まり、5つの都府県が補助金を停止または削減させるという新しい事態を引き起こすに至っている。大阪府の場合、補助金の停止により10校ある学校のほとんどは、4カ月の教職員の給料遅配などの財政危機に陥っている。
3.委員会に対する要請
本来、日本政府は、日本も批准している人種差別撤廃条約、自由権規約、社会権規約、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約等の国際人権諸条約の要請により、また、旧宗主国として植民地支配により民族の言語・文化の教育を奪った責任を償うべく、同じ民族の子どもたちとともに、その民族の言語・文化・歴史を学ぶ権利を保障する責務がある。朝鮮学校はまさに、このような民族的マイノリティーの教育権を保障する場である。
以上により、私たちは貴委員会に対し、敬意を込めて、早期警告と緊急行動手続において、下記の行動を行うよう、要請するものである。
a)日本政府に対し、朝鮮学校の「高校無償化」からの排除は特定のマイノリティーに対する明らかな差別であり、条約違反であることを明確に示すこと
b)日本政府に対し、この問題に関する委員会からの2010年3月の勧告第22パラグラフ履行のために、その後とられた措置について直ちに報告するよう要求すること
c)日本の中央政府に対し、朝鮮学校の「高校無償化」からの排除を直ちに見直し、その対象校とするよう要求すること
d)仮に日本政府が朝鮮学校の「高校無償化」からの排除を継続する場合は、その理由を明示するよう要求すること
e)日本政府に対し、朝鮮学校への補助金の削減・停止をとりやめ、少なくともこれまでどおりの補助金を支給するよう、地方政府と共に必要な措置を取ること、かつ、日本の学校との平等取り扱いの観点から、補助金増額も検討するよう要求すること
f)日本政府に対し、朝鮮学校をはじめとする外国人学校に対する制度的差別を見直し、日本の学校と同等の支援を行うよう法を整備し、マイノリティーの教育権を保障するよう要請すること
※関連《「高校無償化」 同胞青年、日本市民ら 文科省前でスタンディング抗議(朝鮮新報 )》
http://jp.korea-np.co.jp/article.php?action=detail&pid=52995
③-
警視庁公安部、総連傘下団体など強制捜索 前代未聞、常軌逸した暴挙 政治弾圧に同胞・活動家ら怒り(朝鮮新報 3.1)
警視庁公安部は2月28日、「外為法違反(無承認輸出)の関係先」との口実で、在日本朝鮮人科学技術協会(科協)と在日本朝鮮人体育連合会(体連)を強制捜索した。警官や機動隊約250人と武装車両など24台を動員し、朝8時に両団体の事務所がある朝鮮出版会館の入口と前の歩道を4時間以上も封鎖し、会館内をくまなく捜索した。同時に、総連東京・板橋支部と中外旅行社の事務所も強制捜索した。不当極まりない強制捜索に関係者は強く反発。同胞や活動家も悪質な政治弾圧に憤激している。(取材班)
「組織ぐるみ」演出
事件との関係性や捜索理由があまりに希薄で不当なため、当初は捜索を受けた団体の関係者や弁護士までもが当惑する程であった。しかし、4件の不当捜索の背景を総合的に分析する過程で、当局が別件の事件と同胞社会の繋がりを無理やりに結びつけて、あたかも組織ぐるみの犯罪であるかのような構図を描き、派手な捜索を演出したことが明らかになった。
これらの団体は、通常業務の一環として同胞や日本市民の訪朝の便宜を図っているが、訪朝した人物の日本での仕事内容やプライベートな人間関係まで関知する由もない。しかも「事件」とされたのは2009年のことだ。
今回の不当捜索は、朝鮮と総連に対する悪のイメージを日本社会全体に広めるにとどまらず、朝鮮に関わるものはすべて取り締まるべく、故意に「事件化」したものである。その被害は民間企業や不特定多数の一般同胞、日本市民にまで及んでいる。渡航の自由さえも侵害する悪質さだ。
この日、封鎖された朝鮮出版会館の外では、会館に出入りする団体の職員だけでなく、関東各地の同胞、活動家らが駆けつけ、不当な捜索に怒りのシュプレヒコールを上げた。
事件との関連はなし
公安がリークした情報をもとにした日本の報道では、中古コンピュータを朝鮮に不正輸出した事件と科協の関係性がことさら強調され、あたかも科協が朝鮮への科学技術の流出やミサイル関連機器の輸出に関与しているかのようにフレームアップされた。「事件」と科協は、実際にはまったく無関係にもかかわらず、国家権力とメディアが一体になって作り上げたデマによる風評被害が広がっている。
今回の捜索は、逮捕されたコンピューター販売会社社長が科協会員の名刺を持っていたことやメールのやりとりがあったことが発端となっているが、それらは事件とまったく無関係である。仮に個人的なつきあいがあるとしても、それをもって強制捜索が可能なら、一つの事件を持って日本全国すべての個人や団体にまで拡大捜索が許される権力乱用がまかり通ることになる。
科協の関係者によると、ある同胞会員と日本人の訪朝で科協が便宜を図った際、コンピューター販売会社社長がたまたま一緒になっただけで、科協会長にしても「(社長と)一度も会ったことも見たこともない」という。また、捜査員が科協事務所で躍起になって探していたメールは、同社長と科協の職員がたまたま総連板橋支部管内に住んでおり、地域同胞に配布する情報誌を作る際にやりとりしただけのもので、私用で科協のコンピューターが使われたに過ぎない。
日本のメディアが報じていない他3件は、中古コンピューター不正輸出とは別件だ。
ある同胞が2009年に訪朝する際、総連板橋支部が申請を受け付け、中外旅行社が航空券を手配した。これは言うまでもなく、それぞれ通常業務の一つに過ぎない。
その同胞が訪朝する際、務めていた貿易会社の社長の指示でコンピューター1台を朝鮮に持ち込んだことが事件化されているが、それによって渡航手続きを代行した団体や旅行社が捜索を受けるなど前代未聞だ。
体連に至っては、その同胞と同じ地域に住む体連の職員が問い合わせを受け、口頭で支部を紹介しただけだ。「こじつけるにしても、あまりに無理がある」と関係者は呆れ返っている。
人権無視した権力犯罪、狙いは朝鮮への人・金の流れ
公安当局は、捜索の正当性を保つため、同胞と総連が組織ぐるみでミサイル関連機器の輸出に関わっているかのような構図を作り上げ、それぞれの希薄な「関係性」を無理やりにつなげていった。その無理は捜索現場で明らかになった。捜査員は、電子機器や名刺ファイル、個人の手帳を押収するだけだった。「大山鳴動ねずみ一匹」とは、この日の公安部の「捜索劇」のようなことを示すものだ。
こうした事実から、公安の目的が捜索とは別にあると指摘せざるを得ない。
朝鮮出版会館には、武装した機動隊や警察車両が大量に動員された。捜査員は、朝鮮新報社をはじめ朝鮮出版会館に入っている別の団体や事業体の職員を全員締め出し、屋上から地下まで隅々まで見て回り、内部の構造や利用団体などを調べ上げ、すべて写真に収めた。彼らは、寒空の下、会館内に立ち入れず凍える活動家や女性、病人の体調不良にも耳を傾けず、救急車への搬送まで厳しく取り締まった。しかも、メディア各社には事前に捜索の事実を伝えており、わざわざカメラスペースまで用意していた。
これらの事実は、捜索の目的が総連各団体への弾圧、関連施設や活動家に対する諜報、それを合法化するための政治ショーにあることを物語っている。情報収集目的のためには違法な「事件化」もためらわない日本当局の権力犯罪を示すものである。
会館を管理する職員らは、「会館への不当な捜索と封鎖は3度目だが、以前にも増してやり方が汚くなった」と批判した。
一方、今回の総連傘下団体に対する強制捜索は、民主党が政権に就いて以来、初めてのことだ。朝米関係の進展による焦り、国内政治経済の不調から世間の目を逸らすためのパフォーマンスだとの指摘も上がっている。
「渡航の自由」侵害も
さらに深刻なことは、民間旅行社に対する大規模な不当捜索が敢行されたことだ。
中外旅行社事務所に対する強制捜索は2時間半に渡った。30人以上の武装警察官とクレーン車を含む7台の警察車両が事務所があるビル一帯を取り囲んだ。
朝鮮旅行を主に扱っている中外旅行社は、日本政府による対朝鮮経済制裁や差別的な再入国制度など朝・日間の複雑な情勢や手続きの煩雑さに適切に対応できるため、多くの同胞、活動家、日本市民に利用されている。朝鮮への持ち込み品などに関しても、口頭、文書で細かくアドバイスをしているが、実際に旅行者が持ち込む物について確認する義務も権利もない。旅行者の法令違反を口実に航空券を手配した旅行社を強制捜索するのは前代未聞の違法捜索であり、非常識極まりない暴挙だ。
同社への捜索は威圧的で、緻密かつ用意周到だった。その主な狙いは決済書類と、顧客の個人情報や渡航手続きのためのシステムが入ったPCサーバーだった。つまり、公安当局は人と金の流れを掴もうとしているのだ。
弁護士たちは、警察権力による民間企業への業務妨害、個人情報の違法収集であり、渡航の自由さえも侵害する暴挙、「国家的ないじめだ」と厳しく批判している。
顧客の渡航期限が相次いで迫る中、同社は一日も早く業務を再開するため、公安による不当な押収に対し準抗告を申し立てる予定だ。