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文在寅(ムン・ジェイン)大統領が6日、顕忠日の記念追悼式典で「最近明らかになった軍隊内の低質な給食の事例と、無念な死を生んだ兵営文化の悪習については、国民の皆さまに申し訳ない」と述べた。

2021-06-07 | ヘイトスピーチは、絶対許せない

文大統領、顕忠日の追悼で新大久保駅転落事故に言及し

「韓日協力の精神として復活」

登録:2021-06-07 08:38 修正:2021-06-07 09:48

 

第66回顕忠日追悼の辞
 
 
文在寅大統領と夫人の金正淑女史が今月6日午前、ソウル市銅雀区の国立ソウル顕忠院で開かれた第66回顕忠日追悼式に出席、顕忠塔で殉国先烈および護国英霊に対して黙祷している/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が6日、顕忠日の記念追悼式典で「最近明らかになった軍隊内の低質な給食の事例と、無念な死を生んだ兵営文化の悪習については、国民の皆さまに申し訳ない」と述べた。

 文大統領はこの日、ソウル銅雀区(トンジャック)の国立ソウル顕忠院で開かれた第66回顕忠日追悼式に出席し、「報勲は今この瞬間、この地で国を守ることに献身する人々の人権と日常を完全に守ること」と述べた。さらに「軍将兵の人権だけでなく、士気と国家安保のためにも(兵営文化の悪習を)必ず正す」と約束した。

 文大統領は、大韓民国は「先烈の愛国心」によって貧困の克服と人権・民主主義の発展につながったと強調した。続いて「コロナ克服のために生活の不便さに耐えている国民、防疫とワクチン接種の現場で献身して最善を尽くしている防疫・医療スタッフもまたこの時代の愛国者だ」と感謝の意を伝えた。

 文大統領は中長期で服務した除隊軍人が生計の心配なく求職活動ができるよう「除隊軍人転職支援金」の導入を強調した。また「5月に光州がついに民主化の実を結んだように、『ミャンマーの春』も必ず来るだろう」と述べ、ミャンマー国民に友愛と連帯の意を表した。

 文大統領は先月開催された韓米首脳会談とミサイル指針終了指針に言及し、「米国を含む国際社会と宇宙分野の協力を拡大し、独自のロケット開発を通じて大韓民国の新しい宇宙時代を切り開く」と述べた。続いて「バイデン大統領と私は強力な『ワクチン同盟』でコロナを共に克服することにし、対話と外交が朝鮮半島の非核化と恒久的平和を実現する唯一の道ということで意見が一致した」とし「朝鮮半島の非核化と恒久的平和のために再び大きな一歩を踏み出せるよう準備する」と明らかにした。

 今月11日に英国で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)で韓米日首脳会議を推進している文大統領は、「2001年に東京の電車駅の線路で国境を越えた人間愛を実現した美しい青年イ・スヒョンさんの犠牲は、いつか韓日両国の協力の精神として復活するだろう」と強調した。20年前、電車の線路に落ちた日本人を助けるために犠牲になった留学生のイ・スヒョンさんの例を挙げ、日本に側に対話のシグナルを送ったものとみられる。

ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

1923年の関東大震災の際、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という噂が広がった事件を真似たものと見られる。

2021-02-16 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
地震発生後、日本で
「朝鮮人が福島の井戸に毒を入れた」というデマまで

登録:2021-02-16 06:45 修正:2021-02-16 07:34


13日深夜の地震以降、SNSで広がる 
「通報しよう」差別発言に積極的に対処する動きも

      

「朝鮮人が福島の井戸に毒を入れるのを見ました」という書き込みがツイッターで広がった=ツイッターよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「朝鮮人が福島の井戸に毒を入れるのを見た」

 福島県沖でマグニチュード7.3の地震が発生した13日午後11時以降、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にこのようなとんでもないデマが流れた。1923年の関東大震災の際、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という噂が広がった事件を真似たものと見られる。当時、このような根拠のない誹謗で虐殺された朝鮮人だけで6661人(「独立新聞」記録)に達するという。

 毎日新聞は「今回の福島地震をめぐっては、またも差別的な発言やデマ、不確実な情報がインターネットやユーチューブなどで飛び交った」とし、「災害のたびに同じような現象が起きている」と、15日付で報じた。外国人に対する差別発言は今回も繰り返された。「東日本大震災当時、外国人が略奪したことを思い出す」や「被害地域は注意しなければならない」と書かれたツイッターがあちこちに広まった。また別の人は「特に朝鮮人と中国人の犯罪が目立つ」と書き込んだ。

 SNSではまた、今回の地震が「安倍晋三前首相が起こした人工地震」というフェイクニュースも話題になった。同紙は「地下核実験などで地震が起きることはあるが、今回のような大規模地震は人工的に起こすことが不可能だ」とし、「荒唐無稽な投稿」だと報道した。

      

韓国では2019年「平和の少女像」が展示された愛知トリエンナーレの芸術監督として知られる津田大介氏は「悪質な差別扇動。皆さん通報しましょう」と積極的な対応を呼び掛けた=ツイッターよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 災害がある度にフェイクニュースが広がり、不安な心理状態でこれを信じる人も多い。2011年3月の東日本大震災では、「外国人犯罪が横行している」というデマが広まった。専門家が被災地域の宮城県仙台市の市民を調査した結果、80%以上が「そのニュースを信じた」と答えた。刑事事件になったケースもあった。2016年の熊本地震では、「動物園からライオンが逃げた」という虚偽の情報をツイッターに書き込んだ人が業務妨害で逮捕されている。

 デマの拡散を防ぐため、積極的に対処しようとする動きも現れている。特に差別発言に対しては「通報しよう」という声が高まり、虚偽の情報を掲載した人が自ら内容を削除するケースも相次いでいる。韓国では2019年に「平和の少女像」が展示された愛知トリエンナーレ芸術監督として知られる津田大介氏は問題のツイートをリツイートし、「悪質な差別扇動。皆さん通報しましょう」とツイッターに書き込んだ。彼のフォロワーは150万人に達する。津田氏の意見に同調する人も増えている。津田氏は「ソーシャルメディアの影響力が強くなり、(過去よりも)差別を扇動する内容が増えている」と述べた。
キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

日本の東京弁護士会は30日、人権を守るために活動した人の功績を称える東京弁護士会人権賞の受賞者に在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さん等を選定したと発表した。

2020-12-01 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
差別に立ち向かった

在日コリアン3世の崔江以子さん、「人権賞」受賞

登録:2020-12-01 08:14 修正:2020-12-01 10:17


      

在日コリアン3世の崔江以子さんが2016年6月5日、川崎市で行われたヘイトデモを阻止した後、市民たちに話しながら涙を流している=川崎/聯合ニュース

 日本の東京弁護士会は30日、人権を守るために活動した人の功績を称える東京弁護士会人権賞の受賞者に在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さん(47、多文化総合教育施設「川崎市ふれあい館」在職)等を選定したと発表した。

 東京弁護士会は「崔さんは、日本社会の差別に長年直面し苦しんできた高齢の在日コリアン一世や子どもたちをヘイトスピーチ(特定集団に対する公開的差別・嫌悪表現)から守ろうと、自分の名前を公けにして様々な諸活動を先頭に立って行ってきました」と評価した。

 崔さんをはじめとする人々の努力で、在日コリアンが多く住む川崎市は昨年12月、日本で初めてヘイトスピーチに対し罰則を設けた条例である「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」を制定した。
キム・ソヨン記者dandy@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

国務委員長が重体という米メディアの報道に関連し、「重篤な状態ではないと判断される」と明らかにした。

2020-04-21 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
中国共産党「金正恩委員長、重篤でないと判断」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.04.21 13:43

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        金正恩委員長
中国共産党の関係者は21日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が重体という米メディアの報道に関連し、「重篤な状態ではないと判断される」と明らかにした。

ロイター通信によると、共産党対外連絡部の関係者は該当報道の真偽を問う質問に対し、このように答えた。中国共産党所属の対外連絡部は北朝鮮との連絡を取る主要機関。

米CNN放送はこの日、米当局者の言葉を引用し、「金委員長が手術後に重体」という情報に米国政府が注目していると報じた。

これに先立ちデイリーNKも20日、北朝鮮内部の情報筋を引用し、金委員長が12日、心血管系の手術を受けたと伝えた。デイリーNKは、金委員長が執権後に太陽節(金日成主席の誕生日)錦繍山太陽宮殿参拝に出席しなかったのは初めてだと伝え、身辺異常説が浮上していると説明した。

こうした報道に関し、韓国の青瓦台(チョンワデ、大統領府)は「金委員長の健康不安説に関して確認する内容はない」としながらも「現在のところ北の内部に特異動向は識別されていない」と明らかにした。統一部側も「公式に言及する事項はない」と述べた。

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「差別発言には最高50万円の罰金」  罰則盛り込んだ条例は日本初   

2020-02-02 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
「殺せ」と叫ぶヘイトスピーチデモ隊に“オール川崎”で対抗
登録:2020-02-01 22:50 修正:2020-02-02 08:33


差別と闘い勝った人々 
 
「差別発言には最高50万円の罰金」 
罰則盛り込んだ条例は日本初 
 
165団体、市民ネットワークが参加 
表現の自由を憂慮し罰則に躊躇する 
市当局と市議会の説得に成功 
 
在日同胞3世の崔江以子さんが率先 
ヘイトデモ隊の町内進入を阻み 
日本の国会で被害を証言 
「初めは恐くて避けて通っていたが 
支援してくれる日本市民に力をもらう」


          
          
ヘイトスピーチ反対運動の主役である崔江以子氏(左)と三浦和人氏が9日午後、ハンギョレとのインタビュー後に「ふれあい館」の前でポーズを取った。多文化総合施設ふれあい館は、条例制定運動の先頭に立った「ヘイトスピーチを許さない」かわさき市民ネットワークの産室だ//ハンギョレ新聞社

「何人も、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」「この規定(差別的言動解消)による市長の命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する」

 日本の川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」の核心内容だ。あらうる種類の差別禁止を明示しているだけでなく、特にヘイトスピーチ(嫌悪発言)に対しては罰金刑を規定している。日本では最初であり、在日韓国人に対するヘイトスピーチを抑止する効果が期待される。条例を作った力は川崎市民だった。韓国では差別禁止法が2007年から毎度発議されているものの、未だ国会を通過できずにいる。人権条例も障害者差別禁止条例など特定懸案に限定されていたり、保守的宗教団体などの反対で性少数者に対する差別禁止の部分が抜け落ちていたりする。

 川崎条例を作る先頭に立ってきた4人に会った。崔江以子(チェカンイジャ)ふれあい館館長と三浦和人「市民ネットワーク」事務局長とは9日にふれあい館で、神原元弁護士とソン・ヘヨン弁護士とは8日に川崎市の自分たちの法律事務所でインタビューした。

 「本当は私もすごく恐かったんです。恐くて公開的にヘイトスピーチ(嫌悪発言)に対抗することはしんどかったのです。でも日本の市民たちが先に立ち上がってくれて、力強く支援してくれたので私の小さな声を大きく出せる勇気をもらいました」

 差別発言を処罰する内容の川崎市条例(「差別のない人権尊重のまちづくり条例」、以下「川崎条例」)を作った主役のひとりである崔江以子(46・敬称略)ふれあい館館長は、市民の力だと強調した。差別的な言動をする人に最高50万円の罰金を賦課できるよう定めた川崎条例は、日本で最初であるだけでなく、世界の人権運動史にも記録される内容だ。日本ではこれまで「ヘイトスピーチ解消法」(2016)や、大阪市条例(2016年)など差別禁止と関連した法律や条例が幾つもあったが、宣言的な内容であったり、処罰規定がなく実効性が弱かった。処罰規定は表現の自由を侵害しかねないという憂慮のために乗り越えがたい障害物と考えられていた。川崎市は、多くの討論と審議の末に嫌悪発言を制御できる処罰条項を条例に入れた。躊躇し苦悩する市当局と市議会を動かした力は市民だった。

 「2013年にヘイトスピーチが川崎駅前で初めて開かれました。その時、そこを偶然に通り過ぎると集会に遭遇しましたがすごく恐いと思いました。200人近く集まった人々が「韓国人を殺せ」と叫ぶのを現場で直に見聞きしたので本当に恐かったんです。東京でそのような嫌韓集会が開かれるというニュースのマスコミ報道に接した時とは次元が違いました。それで、その後は集会が開かれる場所を避けて通りました」

連座座り込みで町内への進入を阻む

 しかし、そういう見ぬフリは決して正解ではないということをほどなくして悟ることになった。嫌韓デモを主導した右翼団体は、2015年11月8日にヘイトスピーチ集会を静かな住宅街の桜本で開くことにした。川崎市南部の海側に位置した桜本は、在日同胞がたくさん暮らすコリアタウンだ。仕事を探して川崎工業地帯に集まった朝鮮半島出身労働者が、日帝強制占領期から住み着き代々暮らしてきた地域だ。在日同胞3世の崔江以子もここで生まれ育った。「日本浄化デモ第1弾」と銘打った集会名称が示すように、この地域に暮らす在日同胞が彼ら右翼の攻撃目標であることが明確に示された。

          

在日同胞3世の崔江以子さんは、川崎市だけでなく日本全域でヘイトスピーチ反対運動の象徴的人物だ。彼女は2015年から自身が暮らす桜本に押しかける右翼の集会を先頭に立って阻み、日本の国会でヘイトスピーチによる被害状況を証言し、2016年ヘイトスピーチ解消法の制定に重要な役割を果たした。崔さんが2016年6月5日、川崎市で開かれたヘイトデモを阻んだ後、同僚市民に話しながら涙を流している/聯合ニュース

 桜本を守ろうと立ち上がった人は、当時ふれあい館の館長だった三浦和人(65)だった。彼は、1978年から桜本の社会福祉法人「青丘社」(理事長 ペ・ジュンド)で仕事をしている。1970年代初め、日本国籍でないという理由で就職を拒否された在日同胞2世パク・ジョンソク氏の「日立闘争」裁判を支援し、青丘社を作った故イ・インハ牧師と縁を結んだのが契機だった。1973年に設立された青丘社は、保育園を運営し在日同胞だけでなく日本人労働者など地域住民の子供を一緒に世話するなど、初めから共生を実践した。川崎市が1988年に多文化総合教育施設であるふれあい館を作り、青丘社に委託し運営を任せたのは、こうした経歴のためだった。ふれあい館もスタート時から在日同胞と日本人、中国人、フィリピン人など地域に居住する多様な市民が共に使う、日本でも珍しい多文化共生空間だ。「誰もが力いっぱい暮らせるように」がふれあい館のスローガンだ。「ヘイトスピーチのデモ隊が桜本をターゲットにした契機は、2015年9月にあった在日韓国人ハルモニ(おばあさん)の戦争反対集会でした。そのデモがインターネットで広く知れ渡り、すばらしいという反応が多かったが、お前たちの国に帰れという攻撃もありました。右翼たちは、ハルモニが暮らす町内を攻撃対象にしたのでしょう。私は彼らが桜本に攻めてくるという話を集会の3日前に聞きました。子供たちとハルモニを守るために、まずデモ隊が町内に入ってくるを阻まなければならないと考えました。ハルモニのデモの応援に出てきた市民200人余りに連絡して、人を集めました。ハルモニを応援してきたので町内を守るのは自然なことでした」(三浦)

 第2次世界大戦を経験した在日同胞ハルモニ40人余りは、2015年9月に川崎で安倍政権が当時推進していた集団的自衛権関連法案に対して「戦争は絶対に嫌だ」「平和が一番だ。子供たちを守れ」などのスローガンを叫び反対デモを行った。日本全域で平和デモが真っ最中の時期だったが、戦争を経験したハルモニが行ったこのデモは話題になった。三浦は20年前からハルモニたちと様々な活動を共にしてきた。

 その日、極右デモ隊15人程度が桜本の入口に来た時、三浦の呼びかけに呼応して街頭に出てきた市民は150人を超えた。彼らの反対デモによりヘイトデモ隊は進路を変えざるをえなかった。1次対決で敗北した極右デモ隊は、2カ月後の2016年1月末に戦列を整えて「日本浄化デモ第2弾」と銘打ち再び桜本に攻め込んだ。今回は極右デモ隊が60人余りに増えていたが、三浦と崔江以子たちが先導する反対デモに参加した市民は1千人に達した。反対デモ隊は、肩を互いに組み、道路の真ん中に横たわり、彼らの町内進入を再び阻んだ。

          

2016年6月5日、川崎市中原区の平和公園に集まった日本市民数百人が、道路の向い側にいる右翼に向かって「嫌悪集会をもうやめろ」と叫んでいる。「共に生きよう」と書かれた大型横断幕と「ヘイトスピーチを許さない」と書かれたプラカードが見える=キル・ユンヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 「デモ隊が初めて桜本に来た時、すぐ目の前で「殺せ」、「殺す」という声を直に聞きましたが、それ自体が大きなショックでした。2回目のデモが予告された時は、これを前もって阻まなければとの思いで、市に集会の許可をしないよう要求しました。すると、法がないので助けてあげられないと言われました。当日現場では警察が「このデモは許可を受けているので認めるほかはない、これを阻もうとするお前たちが違法だ」として、私たちを叱責しました。その時が最も大変でした。私たちを守るべき相手から、守ってはもらえないんだなと思い、本当にショックでした」(三浦)

「ルールがなければ作らなければ」子供たちの要求

 崔江以子と共に長男(当時中1)も右翼の1次および2次桜本攻撃の時に反対デモに合流した。両親の引き止めにもかかわらず現場に出てきた息子は、在日同胞の母親と日本人の父親の隣に立って「差別はやめて共に生きよう、桜本には絶対に入ってこないでください、お願いです」と泣いて叫んだ。崔江以子母子が涙で訴えたヘイトスピーチ反対闘争は、日本全域で大きな反響を呼び起こした。ヘイトスピーチ解消法を審議した参議院法務委員会は、2016年3月22日に崔江以子を東京に呼び、川崎のヘイトスピーチ被害状況を聴取した。崔江以子の陳述は「ヘイトスピーチ解消法」(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)の通過(2016年5月24日)に大きな力になった。

 「ヘイトデモをする人々の良心を信じて、差別を止めて共に生きようとラブコールを送りました。しかし、彼らは多くの警察官の保護を受けながら、『一人残らず日本から出て行くまでじわじわと真綿で首を締めてやる』と、デモを先導する人について桜本に向かってきました。『韓国、北朝鮮は敵国だ、その敵国人に対して死ね、殺せというのは当たり前だ、皆さん堂々と言いましょう、朝鮮人は出て行け、ゴキブリ朝鮮人は出て行け、朝鮮人は空気が汚れるから朝鮮人は空気を吸うな』と叫ぶ人々が、私たちの町で警察の保護を受けながら押し寄せてきました。その時の私の気持ちは殺されたも同然でした」(崔江以子、2016年3月22日参議院証言)

 ヘイトデモとインターネットでの嫌悪発言がいくら激しくとも、市や警察の保護を受けるられないということを悟った崔江以子と三浦は、市民の力に期待する側に方向を定めた。彼らの要求に165団体が呼応して「ヘイトスピーチを許さない、かわさき市民ネットワーク」(2016年1月、以下「市民ネットワーク」)が結成された。著名な元老要人の関田寛雄(91・青山学院大学名誉教授)がすみやかに会長を引き受け、三浦和人と山田貴夫が事務局長を引き受けた。山田貴夫は「日立闘争」の時から在日同胞の人権改善に力を注いできた。

 … 「2回目のヘイトスピーチ攻撃を受け対応する中で、結局市民の力ではじき返さなければならないと考えました。外からの攻撃に対して、この町に住む人の皆が一つになって対応しなければならない、そのためには皆がまとまれる会が必要と考えました。この運動の成功のためには、政治的にならず「オール川崎」(All Kawasaki)精神が重要だと思いました。(三浦)

 市民ネットワークは、2016年6月5日の3回目の桜本攻撃など何回も川崎で開かれたヘイトスピーチデモと極右の講演会などをほとんど阻んだ。こうした実力行使だけでなく、市民ネットワークは完全に差別発言を阻む条例制定というさらに大きな目標を立てた。

 「ヘイトデモ隊が桜本に攻め込む時『ここに暮らす人々がヘイトデモは来ないで欲しいと言っているのに、彼らはなぜ来るのか」と私たち地域の青年と子供たちが尋ねました。「それを阻むルールがないからだ」と言うと、「それなら大人たちがルールを作れば良いのではないか」と反問したのです。その言葉を聞いて「そうだ、私たちがルールを必ず作るから」と約束しましたよ」(崔江以子)

          

差別発言を処罰する内容の川崎条例を作った主役のひとりである三浦和人氏(左)と崔江以子氏が9日午後、川崎市桜本のふれあい館でハンギョレとのインタビューをしている=キム・ジョンチョル先任記者//ハンギョレ新聞社

市民の64%が「処罰条例」に賛成

 条例を作るために市民ネットワークは、2016年の発足時から市民学習会を組織した。学習会には一度に200人ほどの市民が参加して、国際人権法や表現の自由と関連した勉強をした。これを支援するために専門家である数人の弁護士も市民ネットワークに参加した。人権弁護士として有名な神原元(53)とソン・ヘヨン(47)が代表的だ。神原元は2013年2月に東京の新大久保で開かれた嫌韓デモを目撃した後、カウンターズ活動に積極的に参加してきたし、韓国でも翻訳された『NOヘイト!』を書いた。ソン・ヘヨンも神原とともに2013年6月からヘイトスピーチデモの不法を監視する現場活動を行った。2人は、日本軍慰安婦被害者訴訟も応援している。神原は故キム・ハクスン・ハルモニの慰安婦証言を日本で初めて報道した植村隆・元朝日新聞記者が右翼論客を相手に起こした訴訟の弁護も受け持っている。

 「桜本に右翼が来てデモを行う時、私たちはそれを直接阻みに行ったのでなく参観しに行きました。弁護士はそうした現場には腕章をはめて行きます。もちろん私たちが腕章をはめているので、人々はここには弁護士もいるんだねと注意するようになります。右翼を牽制する役割にもなると言えます」(ソン・ヘヨン)

日本人の三浦和人も主役
市民ネットワークの結成と運営を主導
「警察のヘイトデモ保護にショック
町は自ら守ろうと条例運動」
神原元、ソン・ヘヨンの二人の弁護士
「差別発言の処罰事例が積もれば
不法の認識が広がり抑止効果を出すだろう」
草案公開後、ヘイトデモはなく
別の条例でツイッター脅迫犯に
昨年末30万円の罰金賦課も

          

ヘイトスピーチ反対運動の先頭に立ってきた日本の人権弁護士、神原元氏が8日午後、川崎市にある自身の事務室でハンギョレとのインタビューをしている=キム・ジョンチョル先任記者//ハンギョレ新聞社

 神原とソン・ヘヨンは、右翼の3回目の桜本集会(2016年6月)を控えて、他の弁護士3人と共に桜本の半径500メートル以内でのヘイトスピーチデモを禁止せよとの内容の接近禁止仮処分申請を出した。横浜地裁川崎支所は、その年の6月2日「ヘイトスピーチデモは『ヘイトスピーチ解消法』に違反する行為であり、表現の自由を越えた違法行為」として市民の手をあげた。市民ネットワークの活動に力づけられて、福田紀彦川崎市長も3回目の集会を控えてヘイトスピーチデモ隊の公園使用を許可しなかった。デモ隊は、集会場所を桜本からしばらく離れた中原区の平和公園前路上に変えざるをえなかったが、それも市民の力で遮断された。「2016年5月にヘイトスピーチ解消法が作られ、差別的発言をしてはならないということを人々が理解し始めたが、その法にはこれを禁するための強制条項や処罰がない理念法でした。大阪市条例にも処罰規定はありませんでしたね。私たちは川崎条例に罰則規定を必ず入れるべきだと考えました。それでこそ人々が差別や嫌悪発言は不法ということを認識し、それに対する恐れができて、実質的な抑止効果を出すことができます」(神原)。市民ネットワークは、条例の内容に処罰規定が入らなければならないという内容で4万人の署名を集め、2018年11月市議会に提出した。しかし市は、条例の概要を発表(2019年3月)する時も「実効性を確保する措置を工夫」すると言及しただけで、罰則規定を含ませるか否かについては今後検討を進めるとして曖昧な態度を取った。これに対して市民ネットワークは、差別発言に対する処罰規定を含ませ、インターネットでのヘイトスピーチ対策を強化することを要求する意見書を市に提出した。数日後、神奈川県弁護士会も同じ内容の声明を発表した。これにより昨年6月24日に発表された条例草案には処罰規定が入った。条例発表後、川崎市に提出された市民の意見1万8千件余りのうち64%がこの草案に賛成した。ついに昨年12月12日、川崎市議会は自民党議員まで含めた全員賛成で条例を通過させた。罰則条項は今年7月から施行される。

「脅迫のために外出時は子供と離れて歩く」

 「オール川崎」を前面に出した市民ネットワークが、市民の呼応を得れば得るほど右翼の妨害も熾烈だった。彼らは「川崎に穴があけば日本全体に穴があく」として、ヘイトスピーチ反対運動の核心人物に対する攻撃に焦点を合わせた。第一のターゲットは、川崎の求心点であり全国的な象徴に浮上した崔江以子だった。右翼らは、桜本を守りに出た彼女の息子も無慈悲に攻撃した。彼らは匿名の陰に隠れられるインターネットを主に活用した。ツイッターとインターネットのコメントなどを通して「ゴキブリ」「ウジ」などの嫌悪発言をするかと思えば、「庭で使うナタを買う」「川崎のレイシストが刃物を買うから通報を」という内容で露骨な脅迫もした。彼らの執拗な脅迫に、崔江以子はめまいや難聴、不眠症に苦しめられた。彼女は家の前の表札を外し、、家にかかってくる電話は受けようとしなかった。また、ショッピングなど外出をする時は、子供から遠く離れて歩いた。他人のように振る舞って、差別主義者の攻撃があっても子供を守るためだった。

 「インターネットコメントなどは気にしない方が良いと助言を受けたことがあるが、気にしないわけにはいきません。『死ね』というコメントがあれば夜も眠れませんでした。件数がいくら多くても慣れることはなく、一件一件にするどく傷つきます。そしてインターネットの被害は現実社会で他の形になって現れます。インターネットでプリントした私の顔に、ゴキブリのイラストを貼り付けて郵便で送ってきたりもします。また、ゴキブリの死骸が家に配達されてきたりもします」。(崔江以子、2018年6月2日川崎自治体職員組合での講演)

 殺害脅迫をした「極東のこだま」という名のツイッターユーザーは、警察の捜査で藤沢市に住む50代の男性であることが分かった。彼は一時検察の不起訴処分で法の網をすり抜けるかに見えたが、神奈川県の「迷惑行為防止条例」違反疑惑で昨年12月27日、結局裁判所から30万円の罰金刑を宣告された。長男を攻撃した大分県居住の60代男性も、昨年1月に9千円の罰金を宣告された。

 「執拗なインターネット攻撃に、正直言って生きることを放棄したいと思った瞬間もありました。しかし、いくら多くの攻撃を受けても、止めることはできませんでした。なぜなら、私は皆の希望だったので、中間で倒れることも止めることもできませんでした。前だけ見て前へ進むしかなかったんです。必ず日本の良心が通じるはずだと、社会正義が通じるはずだと信じました」(崔江以子)

 神原元とソン・ヘヨンも右翼の集中攻撃を受けている。右翼らは、日本弁護士連合会に2人を懲戒してほしいという請求を3千通以上出し、このうちの720人は昨年初めに2人を相手取り7億2千万円の訴訟を提起した。2人は720人を相手に対抗訴訟を提起して戦っている。また、桜本のヘイトスピーチデモ(2016年1月)を主導した右翼人物4人は、昨年11月に神原が自分たちの集会を妨害したと主張して、合計440万円の損害賠償請求訴訟を提起した。

          

2017年7月16日、川崎市の平和公園近隣の路上で市民が「共に幸せに」という横断幕を持って、道の向かい側のヘイトスピーチデモ隊を眺めている。この日、ヘイトスピーチデモ隊は市民に詰め寄られまもなく解散してしまった=チョ・ギウォン特派員//ハンギョレ新聞社

149人の弁護団の弁護を受ける弁護士

               

川崎のヘイトスピーチ反対運動//ハンギョレ新聞社

 「神原を反ヘイトスピーチ運動の象徴と考えて、右翼らが彼を打ち砕こうとしています。しかし、こうした動きを放っておいてはならないとして、多くの弁護士が支援し共に対応しています。結局、私たちが勝つでしょう」(ソン・ヘヨン)

 同僚弁護士149人が神原を応援するために大規模弁護団を設けた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領を描いた映画『弁護人』を彷彿させるもので、日本では殆ど見られない現象だ。この訴訟の1次弁論が1月21日、横浜地裁川崎支所で開かれた。

 「初めてヘイトスピーチに反対する仕事をしてみたら、韓日の歴史のようなことを勉強でき、より多くのことを学ぶことになりました。強制徴用や慰安婦問題を知ったし、韓日関係を良くするためにも日本が植民地支配の歴史に対して反省しなければならないということも分かりました。在日韓国人が受けている差別をなくすことや、反ヘイト運動も今後ますます熱心にしなければなりませんね」(神原)

 川崎条例の草案が発表された以後、川崎ではヘイトスピーチデモが一度もない。ふれあい館にかかってくる非難の電話も、脅迫年賀状事件が起きるまでは一度もなかった。インターネット上の嫌悪発言は今もあまりに多くて、まだその効果を感じることはできませんが、罰金事例が積もって行けば、これも大きく減るだろうと反ヘイトスピーチの戦士たちは予想している。

 「川崎地域自体が特別です。在日韓国人が40年余りにかけて社会活動をしてきたし、そうした経験が蓄積されて共生と協力の雰囲気が作られています。反ヘイトスピーチ運動の過程を見ても、被害当事者が発信すれば、それに共感した人々が集まって結果を作り出しました。人と人をつなぐ連帯の力が川崎には確実にあります」(三浦)

 年賀状脅迫事件が知らされて、「人種差別撤廃基本法を要求する議員連盟」所属の与野党議員7人が1月23日夕方、東京から駆け付けてふれあい館を訪問した。彼らは警察の迅速な捜査と適切な対策樹立を促した。川崎市民の連帯した力が感じられる場面だ。
川崎/キム・ジョンチョル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

日本の川崎市が、「ヘイトスピーチ」を行う人を処罰する条例を、日本の地方自治体では初めて本格的に進めている。

2019-11-26 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
川崎市、処罰付きの「ヘイトスピーチ」禁止条例案を提出
登録:2019-11-26 08:49 修正:2019-11-26 11:19


通過すれば日本国内で初の処罰規定付きの条例

          

2017年、神奈川県川崎市の平和公園で市民たちが「共に幸せに」と書かれたプラカードを持ってヘイトスピーチ反対デモを行っている=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 日本の川崎市が、「ヘイトスピーチ」を行う人を処罰する条例を、日本の地方自治体では初めて本格的に進めている。

 「共同通信」は、首都圏にある神奈川県川崎市が25日、定例市議会でヘイトスピーチを繰り返す人に最大50万円の罰金を科す条例案を提出したと報じた。

 川崎市は在日コリアンが多数居住する地域で、在日コリアンを狙ったヘイトスピーチが頻繁に発生している。川崎市の条例案の名称は「差別のない人権尊重のまちづくり条例案」で、川崎市内にある公共の場所で、特定の国や地域のルーツを持つ人々に対して差別的な言葉や行動をするいわゆる「ヘイトスピーチ」を禁止する内容だ。違反が3回繰り返された場合、50万円の罰金刑に処することができるよう定めている。

 違反者にはまず条例の順守を勧告し、それでも違反行為が繰り返されれば氏名や住所などを公表する内容も盛り込まれている。勧告・命令を出したり、氏名を公表する場合は学者など専門家の意見を聞くよう手続きを規定した。福田紀彦川崎市市長は、市議会で全会一致の条例案の可決を目指すことを明らかにした。また「人権尊重のまちづくり推進のため、丁寧に議論を深め、市民の意思に沿った条例制定に取り組む」と述べた。条例案は来月12日に成立するかどうかが決まる見通しだ。

 日本政府は嫌韓ヘイトスピーチが横行していることを受け、2016年に中央政府レベルでヘイトスピーチ対策法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)を制定した。しかし、同法は加害者を処罰する規定のない「理念法」という限界があった。東京都など自治体レベルでも差別禁止関連条例が制定されたが、これまで処罰規定付きのものはなかった。
東京/チョ・ギウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

「国籍や民族などの属性を一括(ひとくく)りにして『病気』や『犯罪者』といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう」

2019-09-07 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
「嫌韓」あおり報道と決別を
“過ち繰り返さぬ” 新聞労連が声明


 日本新聞労働組合連合(新聞労連)は6日、「今こそ、『嫌韓』あおり報道と決別しよう」と呼びかける南彰委員長の声明を発表しました。「他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう」「国籍や民族などの属性を一括(ひとくく)りにして、『病気』や『犯罪者』といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう」と訴えています。

 テレビの情報番組でコメンテーターの大学教授が韓国への憎悪や犯罪を助長する発言を行ったことや、大手週刊誌が「怒りを抑えられない韓国人という病理」という特集を組んで批判を浴びたことをあげ、この週刊誌の広告が新聞各紙に掲載されるなど、新聞も記事や広告、読者投稿のあり方が問われていると指摘しています。

 「日韓対立の背景には、過去の過ちや複雑な歴史的経緯がある」とのべ、「『国益』や『ナショナリズム』が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない」「時流に抗(あらが)うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない」としています。

 「排外的な言説や偏狭なナショナリズムは、私たちの社会の可能性を確実に奪うものであり、それを食い止めることが報道機関の責任だ」と強調。時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している仲間を全力で応援する、と表明しています。

朝鮮半島危機を利用し、政権の地盤を固め、憲法改正、軍事大国化を進めようとする安倍政権の思惑だ。

2018-02-03 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
情勢緩和求める国際世論に逆行/北南関係改善を妨害する日本

北南朝鮮は平昌オリンピックを平和オリンピックにするための様々な努力を続けている。北南和解と平和への歩みを国際社会が支持する一方、日本政府は依然として「北朝鮮脅威」を煽り、周辺諸国に対し「北への圧力」への同調を求め続けている。その背景にあるのは、朝鮮半島危機を利用し、政権の地盤を固め、憲法改正、軍事大国化を進めようとする安倍政権の思惑だ。
「圧力強化」路線を固持
                 
東京・文京区にある東京ドームシティアトラクションズの周辺で行われた「ミサイル避難訓練」に反対する市民たち(1月22日、連合ニュース)

北南関係改善への強い意志を表明した金正恩委員長の新年の辞をきっかけに、北南高位級会談、実務会談が行われ、硬直した北南関係が急速に和解ムードへと転換した。国際社会も北南対話を朝鮮半島情勢緩和の動きとして歓迎し、好意的な反応を示している。

日本はこのような国際社会の動きに逆行し、情勢緩和を妨害している。現在、北南関係改善の動きに水を差す日本国内の論調は、大きく2つに分けられる。

第1に、北南の和解を目的とした対話を是とせず、「北の非核化のための対話」を求める論調だ。

「対話のための対話では意味がない。北朝鮮に検証可能で不可逆的な方法で核・ミサイルの廃棄にコミットさせ、具体的な行動を取らせることが必要だ。それがあって初めて意味のある対話になる」(1月7日、NHK番組での安倍首相の発言)、「対話のための対話ではなく、北朝鮮の政策転換が重要」(1月9日、小野寺五典防衛相とマティス米国防長官の電話会談)、「ほほ笑み外交に目を奪われてはならない。圧力を緩和したり北朝鮮に報いたりするべき時ではない」(1月16日、バンクーバーでの20カ国の外相会合、河野太郎外相の発言)などの発言は、従来の圧力路線に固執する政府対応そのものといえる。

第2に、「対話や合意の裏には北の戦略がある」と疑念を呈す報道などがある。

北南高位級会談の合意(1月9日)に関する全国紙5紙の社説は、一様に政府の「圧力強化」路線を支持し、日米南の結束強化を求める一方、朝鮮の北南和解への歩みに対し、懐疑的な視線を投げかけた。

日経は1月11日付社説で「北朝鮮への疑念拭えぬ南北対話の再開」と題し、「北朝鮮が韓国を利用して包囲網に風穴をあけ、核開発を続ける時間と資金を確保しようとしているとの疑念はやはり拭えない」と主張。読売は1月11日付社説で「(北が)『五輪参加』のカードを切って、韓国を取り込む戦術を本格化させた」とした。

「文大統領は核・ミサイル問題での危機打開にもつなげたいと意欲を見せるが、成果を焦れば北朝鮮の術中にはまりかねない」(毎日、1月10日付社説)、「北朝鮮は国際的な孤立から逃れるためにまず、最も手っ取り早いと考える南北関係の改善に手をつけようとしている。五輪に選手団だけでなく高官や応援団を送るというのも、そのための戦術と見ざるをえない」(朝日、1月11日付社説)、「日米韓、そして国際社会が一致して、対北圧力をかけ続けるべき時だ。かつて対話への『希望』は失敗を重ねてきた。韓国には現実を見据えてもらいたい」(産経、11日付主張)

分断の原因である日本の植民地支配の責任を顧みることなく、70年の分断状況を強いられた民族へのひとかけらの想像力もない一連の主張。その根底には、いまだ克服されることのない根深い朝鮮民族への蔑視感情があり、長年の「北朝鮮バッシング」や「北核脅威論」を煽る中で麻痺した日本の言論状況がある。
朝鮮半島危機を利用

北南関係改善を妨害する日本の意図はどこにあるのか。

朝鮮半島と日本の関係性を振り返ると、そこには、日本が朝鮮の分断と戦争を利用し、利益を得てきた歴史がある。50年代には、朝鮮戦争の勃発により、米軍から日本国内への兵器・物資・サービスなどの発注が急増する中で、日本には後の高度成長につながる「朝鮮特需」がもたらされた。それは、今日、軍国主義復活の活路を朝鮮半島の緊張状態に見出そうとする動きへとつながった。半世紀に及ぶ対立と反目の歴史を乗り越え、総聯と民団が2000年の北南首脳合意の精神に基づき手をとった歴史的な「総聯・民団5・17共同声明」発表(2006年)の際にも、日本のメディアはこれを誹謗・中傷する報道を繰り返し、和解と和合の動きを妨害しようと躍起になった。

憲法改正を目論む安倍政権の下で、その動きはさらに露骨なものとして表れている。

朝鮮の「朝・日交流協会」は論評(1月26日)を発表。朝鮮半島の緊張を煽る日本の思惑について、安倍政権が北南関係と朝鮮半島情勢の変化を「自らの政治的運命を左右する重要な要因」と見なしていると指摘。「朝鮮半島の情勢不安と軍事的緊張の激化は、(安倍政権が目論む)憲法改正にこれ以上ない名分を与えるものである」と述べた。

昨年、森友・加計問題で支持率を落とした安倍政権は、衆議院解散・総選挙を強行し、「北朝鮮脅威論」に乗って圧勝を収めた。「北の脅威」を強調することで、国民の不安を高め、軍備拡大を実現。新年度予算には、陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」や敵基地攻撃能力への転用の恐れがある巡行ミサイルの導入が盛り込まれた。

総裁選を9月に控え、政権の地盤を固め、悲願の憲法改正へと歩みを進めたい安倍首相の思惑は、年頭の記者会見(4日)にも如実に表れた。記者会見の冒頭で述べられたのは「北の脅威」。「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力の強化に取り組む」「北朝鮮の政策を変更させるため、国際社会と連携して力強い外交を展開する」と軍備拡大と圧力外交が強調された。

1月22日には、都内で初めてミサイル避難訓練が実施され、16日には、NHKが「北朝鮮ミサイル発射」と誤報を配信するなど、国民の不安が煽られる状況も続いている。

朝鮮半島情勢を取り巻くパワーバランスが大きく変化し、北南の和解が進めば「北の脅威」と朝鮮半島の緊張状態を利用し「軍国化」を推し進める安倍政権は、その名分を失い、政治的岐路に立たされることになる。官民一体となり「朝鮮バッシング」に熱を上げる光景は、急変する朝鮮半島情勢に対応できず、国際社会で孤立する日本の焦燥感の表れと言える。

民族和解の流れを妨害するこのような日本政府の動きを、朝鮮のメディアは強く非難している。

朝鮮中央通信の論評(1月24日付)は、「対朝鮮圧力」を強める日本政府の対応を「北南関係改善の流れを害そうとする卑劣で悪辣な策動」とし、その根底にある「(朝鮮に対する)極度の敵対感と病的拒否感」の存在を指摘。「北南関係が改善し、朝鮮半島に平和が訪れれば、(日本は)『集団的自衛権』の行使や憲法改悪の口実を失うことになる」と強調した。

(金宥羅)

「在特会」桜井元会長は、李さんを「朝鮮人のババア」と蔑視する発言をした。これに対し李さんは2014年、550万円を賠償せよとの訴訟を起こした。

2017-12-03 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
ヘイトスピーチに対抗した在日同胞、勝訴確定

登録 : 2017.12.01 21:47 修正 : 2017.12.02 07:13


日本最高裁、在日同胞の李信恵さん勝訴判決 
「在特会元会長は77万円を賠償せよ」 
右翼サイトの運営者に対しても訴訟中

               
在日同胞フリーライターの李信恵さん//ハンギョレ新聞社
 在日同胞のフリーライターが、極右・嫌韓団体である「在特会」(在日特権を許さない市民の会)の元会長を相手に起こした損害賠償請求訴訟で勝訴が確定した。

 日本の最高裁判所は29日、在日同胞の李信恵(リ・シネ)さん(46)が桜井誠元在特会会長を相手に起こした訴訟で、77万円を賠償せよとの原審を確定した。

 李氏は、在特会の嫌韓デモが猛威を振るうと、これを批判する文を繰り返しオンラインニュースサイトなどに投稿したが、桜井元会長は、李さんを「朝鮮人のババア」と蔑視する発言をした。これに対し李さんは2014年、550万円を賠償せよとの訴訟を起こした。

 大阪地方裁判所は昨年、1審判決で桜井元会長が「嘘を垂れ流している」、「朝鮮人のババア」と表現したことは、「社会通念上許される限度を超えた侮辱に該当する」と判決し、2審の大阪高裁も「女性差別も含まれた複合差別」と判断した。

 李さんは、自身を侮辱するオンラインコメントを集めて掲載した右翼インターネット サイト「保守速報」の運営者を相手に2200万円を賠償せよとの訴訟も提起した。先月、大阪地方裁判所は、サイトの運営者は200万円を賠償せよと判決した。「保守速報」は、自分たちはインターネットコメントを集めて見せるいわゆる「まとめサイト」に過ぎないと主張した。だが裁判所は、運営者がコメントの順序を調整したり、色を付けて強調するなど、意図的編集があったと見た。

東京/チョ・ギウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

京都市の龍谷大・深草キャンパスで、講演会:排外主義的なデモが各地で繰り返されるなど未だ多くの課題を残している。

2017-04-27 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
排外主義根絶の課題探す/
講演会「ヨーロッパにけるポピュリズムとヘイトスピーチ規制」


講演会のようす

9日、京都市の龍谷大・深草キャンパスで、講演会「ヨーロッパにおけるポピュリズムとヘイトスピーチ規制」が行われた。

昨年6月、日本ではヘイトスピーチ対策法が施行され、差別扇動行為を禁止する法律がようやく法制化されたが、排外主義的なデモが各地で繰り返されるなど未だ多くの課題を残している。

講演会では、1960年にドイツのヘイトスピーチ対策法ともいえる刑法130条(民衆扇動罪が制定されて以降、差別扇動行為を厳しく規制してきた同国におけるヘイトスピーチ規制の現状についてハノーファー大学研究助手のマーティン・ザイファート氏が、近年旧東ドイツ地域を中心に反イスラムを訴える過激デモを組織する右翼団体「PEGIDA」についてベルリン自由大学研究助手のマルクス・ベルナーの両氏が報告。

日本における排外主義の流れと共通するヨーロッパの現状から、今後取り組むべき課題に迫った。

「民衆扇動罪―憲法と集会法に照らして」というテーマで報告したザイファート氏は、第二次大戦後、日本の憲法に値するドイツ連邦共和国基本法で、「人間の尊厳」を根本に規定したドイツにおいて、基本法5条で保護されている「表現の自由」と、ヘイトスピーチ規制法(刑法130条(民衆扇動罪)・集会法・国際刑法6条(民族虐殺))との関連から基本権がどのように制限されるのかを検討した。

またベルナー氏は、「ドイツにおけるポピュリズムと排外主義」というテーマで報告を行った。同氏は、「ドイツ人のための新たな選択」をうたい国内の反イスラム化を掲げた団体「PEGIDA」(西欧のイスラム化に反対する欧州愛国主義者)について、「現在ドレスデンやライプツィヒでは約3千人ほどの参加者たちが、毎週おさんぽと称して夕方に集まりデモをしている。規制する法律は存在するものの、ドイツでもポピュリズムに関する問題が深刻化している」として近年勢力を増す右翼団体へ警鐘を鳴らした。

講演後には全体討論が行われ、参加者たちは、日本でのヘイト煽動についての対策や課題について議論を交わした。

この日、司会・進行を務めた龍谷大の金尚均教授は、「今日の講演会は、ヘイトスピーチ規制が存在しながらも苦労するドイツと、規制法が施行された今もいまだ根強いヘイトスピーチが跋扈する日本の相違点と共通点はなにか、またどのような対処法があるのかを共有することが目的だった」とし、「現在横暴化している排外主義は、一定社会や未来に対する見通しのなさへの不安から、『美しい日本、美しいドイツ』が強調され、その不安をうずめるものとして外国への排他があるとみている。日本社会における排他的な攻撃がいかに問題があるかを今後もつきつめていきたい」と感想を述べた。

(韓賢珠)



日本と共通する排外主義の現状と対策/講演会「ヨーロッパにおけるポピュリズムとヘイトスピーチ規制」より

9日、龍谷大で行われた講演会「ヨーロッパにおけるポピュリズムとヘイトスピーチ規制」では、ドイツにおけるヘイトスピーチ規制の現状と、同国で近年排外デモを盛んに行い「新たな右翼」として注目される右翼団体「PEGIDA」についての報告があった。マーティン・ザイファート、マルクス・ベルナー各氏による講演の内容を紹介する。

最長で5年の刑事罰/マーティン・ザイファート・ハノーファー大学研究助手

ザイファート氏

ザイファート氏は、ドイツのヘイトスピーチ法ともいえる刑法130条(民衆扇動罪)の役割と、基本法5条で保護される「表現の自由」との関係について報告した。

世界でもヘイトスピーチを厳しく取り締まる国の一つとしてあげられるドイツでは、ナチス賛美やホロコースト否定のみならず、国籍、民族、宗教などを理由に特定の人々に対する憎悪の扇動、尊厳を傷つける行為をした者に対し、刑法130条(民族扇動罪(Volksverhetzung))が適用される。

「1960年、反ユダヤ主義再発防止のため制定された同法は、現在ヘイトスピーチを防ぐ防波堤として機能しており、最長で5年の刑事罰を課すことが可能である」と同氏はいう。

報告では、ドイツ基本法5条(表現の自由)について「『自由で民主的な基本秩序』に敵対する場合、言論の自由は『喪失』する」として、あくまでも保障される自由は、「民主的な基本秩序」に基づいたものであることに言及した。

また日本各地で組織されるヘイトデモとの関連から、基本法8条(集会の自由)についても触れ、「基本法『共通認識のもとに集まり、人々のコミュニケーションに依拠した運動ないし展開を示すもの』として集会を定義づけているが、重要なのは自由で民主的な秩序における集会、これに限り集会の自由が厚く保護される」と強調した。

しかし一方で、ドイツ基本法において広義に解釈される「表現(意見)」のなかには、「ドイツの政治的な秩序を破壊しようとする見解」や、「ナチス時代の思想を広めようとする見解」も、基本法の保護のなかに含まれてしまう現状がある。それを踏まえ同氏は、「既に明らかになっているナチスの暴力的な支配や大量殺人などを否定することは、明らかに不当である。意識して不法な事実を述べているため、表現の自由として評価されない」と断じた。

「集会法と基本法(表現の自由)、そして刑法(民衆煽動罪)は、非常に尊重に値すべき価値としてドイツでは存在する。日本の現状とは逆に、これにより政治的な議論のなかでも憲法に敵対的な見解を下火にならせる」
「新右翼」は典型的中流層/マルクス・ベルナー・ベルリン自由大学研究助手

ベルナー氏

ベルナー氏は、「ドイツにおけるポピュリズムと排外主義」をテーマに報告した。近年ドイツでは、「ドイツ人のための新たな選択肢」という党が躍進を続けるなか、東ドイツを中心にPEGIDAと称する「西欧イスラム化に反対する欧州愛国主義者」による運動が盛んに行われている。

過去への反省から政治的迫害を受けた難民を保護する義務を基本法に規定しているドイツは、難民を積極的に受け入れてきたが、近年イスラム国やテロ組織の活発化を受け、ドイツの一部の人々が、難民受け入れに批判的であり反イスラムの意識を強めている。その典型として上げられるのが、PEGIDAの台頭だ。

ベルナー氏は、14年10月、東ドイツの都市・ドレスデンでPEGIDAによる最初のデモが行われ、創始者ルーツ・バッハマンの呼びかけに当時300人以上が呼応し、以降支持者が拡大している現状について指摘した。

ドレスデンでは、PEGIDAによるデモが開催されて以降、ドイツの新保守主義系シンクタンク「国家政策のための研究所」の主宰を務めるクビツェック(Gotz KUBITSCHEK)がPEGIDAの参加者たちの理論的先導者として影響力を高めている。

同氏は、クビツェックの思想が「保守革命・新右翼」というイデオロギー的な拠りどころからきていると指摘。「クビツェックは、主たる敵をドイツにやってくる人々に向けているのではなく政治システムや民主主義に向け、デモの参加者たちに、大物政治家たちを侮辱することでこのような見方により引き寄せようとしている」と非難した。

さらに、日本の排外デモとも似通った様相を持つデモの参加者たちについて「新たな右翼」だと同氏は指摘しながら、「PEGIDAの支持者は、高い給料をもらい且つ学齢のある40代から60代の男性が大半を占めるドイツの典型的中流層だ。彼らは、学歴が低く若年層の暴力的な過激派の層とは異なる存在で年々勢力を増していっている」と述べた。

(韓賢珠)

「ヘイトスピーチは違法!」「ヘイトスピーチは犯罪!」防止法成立後の右翼の最初の集会 

2016-06-06 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
日本の市民が右翼ヘイトスピーチを阻止

登録 : 2016.06.06 01:53 修正 : 2016.06.06 06:23


5日午前、神奈川県川崎市の中原平和公園に集まったヘイトスピーチに反対する日本の市民が、道路向かい側にいる右翼たちに「嫌悪集会を止めろ」と叫んでいる。ヘイトスピーチ集会は20分で中断された=キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

防止法成立後の右翼の最初の集会 
公園使用認められなかったが道路使用は許可 

日本の市民と在日同胞1000人「共に生きよう」 
対抗集会開き20分で行進を阻止

 「ヘイトスピーチは違法!」「ヘイトスピーチは犯罪!」

 東京を出発した頃は小雨だった雨も、神奈川県の川崎市に着いた頃はすっかりやんでいた。5日午前10時、曇り空の下、川崎の中原平和公園には「ヘイトスピーチを許さない」と書かれたプラカードを持った1000人ほどの市民が集まっていた。予告されていた「日本浄化デモ」という名の「ヘイトスピーチ」(人種嫌悪集会)の取材のため川崎を訪れたが、そこで目にしたのは、嫌韓スローガンを叫ぶ日本の右翼ではなく、彼らを阻止するために首都圏の各地から集まって来た日本の市民たちだった。先月24日、「ヘイトスピーチ防止法」が制定されたためか、市民のスローガンは「ヘイトスピーチを止めろ」から「ヘイトスピーチは犯罪」に変わっていた。

 ヘイトスピーチ防止法は人種嫌悪集会を根絶できるのか。法成立後初めて集会の開催が予告された川崎の小さな公園に世間の関心が集まっていた。

 最近数日間、川崎市など日本の行政機関と右翼団体はイタチごっこを続けていた。右翼団体がヘイトスピーチを開くため、市内の公園の使用許可を申請すると、川崎市は先月30日、これを拒否した。川崎地方裁判所も2日、在日同胞が多く住む川崎区桜本一帯で集会を開かないようにさせる仮処分申請を受理した。ところが右翼団体は場所を中原区に移し、警察から道路使用の許可を得てしまった。

 公園に臨時に作られた演壇に、これまでヘイトデモ阻止運動に積極的に参加してきた在日同胞3世の崔江以子(チェカンイジャ)さん(42)の息子のネオ君(13)が上がると、日本の市民が暖かい歓声で迎えた。彼は「ヘイトスピーチを根絶するために、あの人たちも心から『ヘイトスピーチはやはり間違がっている』と思うようになることを願っている」と話した。彼の手には「共に生きよう、共に幸せに、共に安寧に」と書かれたプラカードが握られていた。

 集会が開始された午前11時近付くになると、ヘイトデモ参加者が一人、二人と姿を現した。「消えろ!」「君らのような人種差別主義者は恥を知れ!」と日本の市民たちの怒号が響いた。

 この日の集会に参加したオカ・ヨシノリさん(43)は「ハムケ(『共に』を意味する韓国語)、共に言おう『NO HATESPEECH』」と書かれたプラカードを持っていた。ハングル、日本語、英語が並べられたこのプラカードに、ハングルを書いた理由を尋ねると、彼は笑顔で「在日の友人に教えてもらった」と答えた。彼は茨城県にある職場で朝7時までの徹夜勤務を終え、この日の集会に参加するため電車に乗ってきた。オカさんは「ここに集まった私たちだけでなく、道を通る市民もヘイトスピーチに反対してもらいたちという思いでプラカードを作った」と語った。

 ヘイトスピーチに反対する市民の勢いに押されたヘイトスピーチの参加者約10人は、公園の向かい側にある木月交番の隣で警察の保護を受けていた。彼らは午前11時10分頃から予定通り行進を試みたが、反対する市民に車道を占拠され、20分後に「集会放棄」を宣言した。交番の前から当初予定していた行進コースを20メートルも出ていない状況だった。誰かが「市民の勝利」と叫んで歓声を上げた。いつの間にか少しずつ晴れて、雲の隙間から青空がのぞき始めていた。

 集会現場で会った『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』の著者、安田浩一氏は、「このように人種差別集会を阻止するのが正しい社会の姿だ。ヘイトスピーチをする人たちは愛国者たちではなく、地域社会の分裂を試み、地域社会を破壊しようとする者たちだ」と指摘した。

川崎/キル・ユンヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

人生を押さえ付けていた差別と暴力、日本の警察の不当な待遇など苦い記憶が一気に!

2016-02-20 | ヘイトスピーチは、絶対許せない
【グローバルアイ】
48年前の「金の戦争」と日本のヘイトスピーチ

2016年02月20日09時57分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]


1968年2月20日、ぴったり48年前だ。日本・静岡県清水市のあるクラブで銃声が鳴り響いた。ヤクザの親分と組織員ら2人が殺された。猟銃を発射した犯人は在日韓国人2世の金嬉老〔キム・ヒロ、実名・権禧老(クォン・ヒロ)、当時41歳〕。借りた金を返せと脅迫していたヤクザが「朝鮮人、汚い豚野郎」と言って悪口を浴びせたことから怒りが爆発した。金嬉老の人生を押さえ付けていた差別と暴力、日本の警察の不当な待遇など苦い記憶が一気に胸を駆け上がったのだろう。

銃とダイナマイトで武装した金嬉老は警察の追撃を避けて45キロ離れた寸又峡「ふじみや旅館」に逃れた。旅館主人の家族と宿泊客をとらえて88時間の人質劇を繰り広げた。記者を呼び入れて会見をしたり生放送電話インタビューもしたりした。放送局のヘリコプターは山奥の人質劇をリアルタイムで中継した。日本人の目と耳がすべてテレビに集中した。当時の事件が日本初の「劇場型犯罪」と記憶されている理由だ。92年、韓国では『金の戦争』という映画が製作されて劇場で上映された。

金嬉老は「朝鮮人の差別を告発するために事件を起こした」とし「朝鮮民族を侮辱した警察は謝罪しろ」と声を高めた。結局、静岡県警察本部長が公開謝罪した。人質劇は報道関係者の間に混ざって進入した警察の逮捕作戦で幕を下ろした。無期懲役を宣告されて金嬉老は31年間の獄中生活を経て99年に仮釈放された。釜山(プサン)に居を移し、2010年81歳で亡くなった。

人質としてとらわれた旅館おかみの望月英子さん(77)は38年ぶりである2006年にソウルで金嬉老に会った。「今はすべて許せる」と話した。「殺人犯ではあったが私たち家族に被害を及ぼさなかった」とし「子供3人には申し訳ないと言って2000円ずつお小遣もくれた」とした。望月さんは2010年旅館の一角に「金嬉老事件資料館」を開いた。だが、宿泊客が次第に減り、結局2012年に廃業した。最近は建物も売却された。

日本社会に警鐘を鳴らした「金の戦争」以降、半世紀が流れた。事件現場は消え、目につく差別は大幅に減った。問題は在日韓国人を依然として威嚇するヘイトスピーチ(特定民族・人種に対する嫌悪発言)。東京新宿などでは「朝鮮人は朝鮮に戻れ」とする極右団体デモが常時開かれている。先月、日本を訪問した国連の少数者問題特別報告官のリタ・イザック氏は「ヘイトスピーチが危険な理由はジェノサイド(集団虐殺)に変わりうるため」としながら「差別禁止法の制定が急務」と指摘した。

3年以上ヘイトスピーチ反対運動を主導してきた「差別反対東京アクション」の日本人広報担当者の植田祐介氏は「差別を趣味活動ぐらいに考えている右翼がいるが、これに相対して戦う日本人も少なくない」と話した。あわせて「差別を絶対に許さない社会をつくらなければならない」と強調した。金嬉老の不幸な人生はこれ以上繰り返されてはいけない。差別は怒りを生む。和合の新しい時代を期待する。

イ・ジョンホン東京特派員