日本と朝鮮民主主義人民共和国が「国交」を結べば
日本と北東アジアの平和と安定が大きく前進します。
2012年4月14日(土) 日朝協会第3回全国理事会
1、 はじめに
世界で日本が承認している国・地域は194(2012年3月19日現在)です。日本が承認していない国・地域は、台湾、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)その他ですが、承認している国のうち国連に入っていない国は、バチカン、コソボ共和国及びクック諸島です。
北朝鮮は国連に加盟し、イギリス・ドイツ・イタリアをはじめ162カ国が国交を結んでいます。世界保健機関(WHO)はじめ国際機関や、東南アジア地域の平和、安定、協力の諸原則を定めている東南アジア友好協力条約(TAC)に加盟しているなど、世界の中では、北朝鮮は他の国と変わらないごく当たり前の国として認められています。しかし日本・大韓民国(韓国)・アメリカ・フランスなどが、国交を結んでいません。
日朝協会は、南北朝鮮の国連同時加盟により、韓国が「朝鮮における唯一の合法的な政府である」(日韓条約第3条)と規定する根拠となっている国際連合総会決議第195号(III)自体が実質的に無効となっていること、同時に日朝平壌宣言が締結されて10年目を迎えその実現が望まれていることを踏まえ、今年を、日朝自由往来・国交正常化を実現する運動強化年と位置づけ、今後検討する署名運動を始め、講演会など各種の催しや政府・国会への請願・要請など、今年以降、創意ある取り組みを展開されますよう、心からよびかけます。
2、日本と大韓民国や中華人民共和国は、こうして国交が正常化されました。
第二次世界大戦後日本と中国や韓国も長い間国交が結ばれていませんでした。韓国の場合は、1951年から予備会談が始まり、延べ14年間に及ぶ政府間交渉の結果、1965年、朝鮮植民地支配が清算されないなど多くの問題を残しながら日韓基本条約が結ばれ、国交が正常化されました。しかし、当然のこととして北朝鮮は、含まれていませんでした。
中国とは、米国の中国接近政策を受け日本政府は急遽、1972年に日中共同声明に署名し、引き続く交渉の結果、1978年日中平和友好条約が結ばれ、国交が正常化されました。
3、北朝鮮は、このような国です。
日本のすぐ隣にあり、古代から現代に至るまで歴史的にも長いつながりのある朝鮮半島の、おおむね北緯38度線以北で面積は約12万平方メートル余り、人口は約2390万人、首都は平壌、気候は寒冷で、亜寒帯に属しています。おもな資源としては石炭や鉄鉱石、タングステンなどがあり、経済の活性化に重点を置いた政策がすすめられています。北朝鮮の学校教育制度は、すべて無償で満5歳から幼稚園(就学前教育)1年、小学校4年、中学校6年の11年制の義務教育があり、高等教育には、2~3年制の高等専門学校、3~4年制の単科大学、4~6年制の総合大学などがあります。
平壌では故金日成主席生誕100年である2012年を控えて建設ラッシュの様相を呈しており、中国資本が大量に投資しています。大学生や軍人なども総動員され、アパートの建設が進められていますが、資金や資材が不足していると言われています。平壌では市民生活の向上や大規模な工事が進められている一方、地方では電力や住宅、相次ぐ自然災害などで食糧など物資が不足しているとも報道されています。
政権については、2011年12月金正日総書記の死去により、金正恩氏が4月11日朝鮮労働党第3回代表者会
で第一書記に就任し、続いて13日最高人民会議で国防第一委員長に選任されました。しかし政治の基本はかわらないだろうと言われています。国交が結ばれていないため直接正確な情報が入らないため、冷静に見守らなければなりません。
4、現在、日本が国交正常化を阻んでいる主な理由は
アメリカは、米韓軍事同盟・米日軍事同盟(安保条約)を結び、北朝鮮を敵国と位置づけていたからです。さらに、1950年から始まった朝鮮戦争は、国連軍(主として米軍)と中国軍・北朝鮮軍による休戦協定が1953年に結ばれており、平和条約は無く現在も「戦争状態」にあると言えるのです。
休戦協定からすでに、60年近くになり、アジアにおける戦争の火種をなくすためにも日本と北朝鮮の国交正常化の話し合いを早く始めなければなりません。
日朝平壌宣言が締結されたからの10年、日本では相変わらず、在日米軍「抑止力」論に基づく中国・北朝鮮「脅威」論が政府、マスコミにより振りまかれていますが、六者協議(6カ国協議)などによる話し合い解決の方向性以外に北東アジアの平和と安定があり得ないことは自明の事柄です。しかしながら、日本政府は経済制裁を課し繰り返し継続しています。また拉致問題解決も、国交正常化の話し合いの中で解決していくことが日朝平壌宣言の合意です。拉致問題解決なくして国交正常化はないとの政府見解では、拉致問題解決の見通しもありません。
5、北朝鮮との間に、往来の自由・国交の正常化を要求する理由は
「国家」としての要件が認められれば、どの国とも国交を結ぶのが近代社会のルールであり、世界人権宣言を守る基本でもあります。国交がなければ外交チャンネルでの懸案事項の話し合いによる平和解決も望めません。
北朝鮮とは、国交も直接往来の自由も認められておらず、日本人は他国でビザを取得して入国しなければなりません。在日の皆さんの自由往来の保障も制限されているのです。
人の往来が認められれば、直接北朝鮮の様子を知ることが出来ます。文化、スポーツの交流も出来ます。大使館の交換で、直接情報が入ってきます。
同時に北東アジアに残る軍事同盟を終結し非核平和の地域にすることが、世界から期待されています。
日朝協会は、日本政府に対して、日本国民の権利として直ちに北朝鮮との間に往来の自由を認めること、さらに国交の正常化を行うことを要求しています。
すでに日本と北朝鮮の間には、話し合いの道筋や内容も決められ合意が出来ています。それが「日朝平壌宣言」です。合意された内容を実行するために日朝政府間の話し合いを、急いで無条件に進めてほしいと思います。
6、日朝平壌宣言には主に次のようなことが決まっています。(詳細は資料を参照)
2001年9月11日「同時多発テロ」があり、アメリカの報復戦争の強硬は「悪の枢軸」と決め付けた国々に、先制攻撃を辞さないという『覇権主義』の暴走でした。小泉内閣は発足当時八割前後の支持率を記録しましたが、アメリカ追随政治と世界的不況が広がる中で、国民の支持を失っていきました。北朝鮮との間では、日朝協会の一貫した国交正常化要求や拉致問題の解決をという世論の高まりの中で、両国の利益に合致する方向で慎重な準備がすすめられ「日朝平壌宣言」に実を結びました。
①2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開する(10月を最後に中断)
日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明
②植民地支配などへの痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明
財産及び請求権を相互に放棄
経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議
在日朝鮮人の地位に関する問題
③国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認
④北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力
ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向
日朝平壌宣言とそれを国際公約とした2005年9月19日第4回6カ国協議共同声明の内容を実行することによって、日本は、平和憲法を生かしてアジア諸国との平和的な交流を一層広めることが出来ます。
さらに北朝鮮との国交正常化は、南北朝鮮の対話・「休戦協定」の停止と「南北平和条約」の締結へと発展し、北東アジアの平和と安定に大きく寄与することは間違いありません。
そうして軍事費の削減で、関連諸国民の暮らしの向上に役立つことでしょう。
どうか、日朝協会の提案にご協力いただき、ともにアジアと世界の平和に貢献する取り組みにご参加いただくよう呼びかけます 。
日朝平壌宣言
平成14年9月17日
小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。
両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。
1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。
2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。
3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。
4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。
双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。
日本国 朝鮮民主主義人民共和国
総理大臣 国防委員会 委員長
小泉 純一郎 金 正日
2002年9月17日
平壌