日韓レーダー問題にまどわされるな(追記あり)
徐台教 | ソウル在住ジャーナリスト。「コリアン・ポリティクス」編集長
12/25(火) 14:54
握手する安倍晋三首相と文在寅大統領。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
日本の防衛省が20日、22日と問題提起している、韓国哨戒艦レーダー照射問題。日韓両国の立場の溝が深まる一方のこの問題についてまとめた。結論は「冷静になれ」だ。
この案件を整理すると、日韓の立場の差がいたく目につく。
まずは、韓国国防部が24日の定例ブリーフィングで発表した内容を以下にまとめる。
・低空飛行する哨戒機に光学カメラを作動させただけ。電波の照射はなし。
・日本が問題視する射撃統制(火器管制)レーダーSTIRは使っていない。
・通信はKorea Coastとだけ聞こえて、海洋警察庁への呼びかけだと思った。
これに対し、日本の防衛省が25日に発表した内容は以下の通り。
・海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認
・(P-1が)低空で飛行した事実はない
・呼びかけはKOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971と英語で
見ての通り、両者の主張は見事なまでに180度異なる。
火器管制レーダーの使用有無、低空飛行の有無、呼びかけの内容の正否。すべてにおいて、食い違いがある。
通常、このような場合には、日韓の軍事当局間で解決するのが優先されるべきではないか。だが、今回の場合には防衛省が日本のマスメディアにリークすることにより、大きな騒ぎとなった。
しかし、冷静になって欲しい。日本のメディア従事者、特にテレビメディア従事者ならば分かっているはずだ。
今回のレーダー事件が、徴用工判決問題が下火のなか、新たに表れた「格好の視聴率メーカー」であり、これをプッシュする指示が本社から出ていることに。正直に認めたらどうか。
一方で、懸念もある。まず、このような問題は通常、軍事当局間で解決されるべき内容であるはずなのに、公論化されることにより、感情論が介入する余地を許した。世論への影響が大きい。
さらに、日韓当局間の信頼が底をついているようなイメージを植え付けたい印象すら受ける。
この結果がどうなるかは、火を見るより明らかだ。双方の市民のあいだに不要な感情的なしこりだけが残ることになる。
今の時点で日韓の市民が取るべき姿勢は、「事実を明らかにせよ」ということに尽きる。
その上で通常、こうした問題を解決するべきチャンネルが正常に稼働していないことを、日韓政府双方に問うこともできるだろう。
整理すると、まずは(1)ファクトチェック、(2)解決チャンネル稼働の有無、(3)解決チャンネルが稼働していない場合の理由解明などが挙げられる。
さらに、日本防衛省と韓国国防部についてこう質問するべきだろう。
「日韓は敵なのか」と。
(25日17時追記)
日韓で争点となっているのは、火器管制レーダーの照射有無だ。
ここで分かれるのが、このレーダーが「MW08」なのか、「STIR」なのかという点だ。
日本側は単に「当該照射が火器管制レーダーによるものと判断している」(22日の発表)としている。
一方、韓国側は24日のブリーフィングで「MW08」は「海上と空中を同時に見るもの」とし、「STIRは動作させていない」とした。なおかつ、「NW08」が火器管制レーダーである点について否定していない。
このことから、今回の騒動の内容における日韓の視点の相違はまず、「レーダー照射が『MW08』によるものなのか『STIR』によるものなのか」をはっきりさせるべきではないか。
さらにこの上で注意すべきは、韓国側が「わが軍は日本の哨戒機を追跡する目的でレーダーを運用したことはない」としていることだ。
そして、これに関する詳細な説明を要求する韓国紙の記者に対し、「詳細な内容が必要ならば別途説明する」とした点も見逃せない。
つまり、もっとも辻褄が合う答えとしては、「韓国側が『MW08』を使用し、それが日本の哨戒機にキャッチされた」というものではないだろうか。ここで何らかの技術的な明らかにできない問題が発生したのかもしれない。
とはいえ、韓国側は現在、「日本はSTIRを使用したと主張している」と明かしている。
まずは日本側がこの「火器管制レーダー」の正体について明らかにしてもよいかもしれない。
(追記おわり)