日本と韓国と朝鮮の友好をすすめます・・日朝協会です。アジアと世界情勢を観る。

日本と韓国と朝鮮の歴史・現在から、
平和な未来を切りひらくために....
ご入会ください。1ケ月¥500

自民党への配布資料では、SPY7などの契約を解除すれば「サンクコスト(回収できない経費)が発生」すると説明。“もう後戻りできないのだから支払いを続けるしかない”と開き直り、破滅的な支出に突き進む

2021-07-11 | 米日韓軍事同盟・軍事演習に反対!

イージス・アショア」破綻 断念後も負担277億円

既成事実化狙う

防衛省、破滅的支出に突進

 防衛省は昨年6月に陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)の配備を断念した後も導入経費を支払い続け、今年3月で277億円に達したことが分かりました。代替策の「イージス・システム搭載艦」の総経費は1兆円を超える可能性もあり、与野党から批判が出ています。同省は支払いの継続で代替策を既成事実化し、後戻りできない状況に持ち込む狙いです。(竹下岳)


 防衛省によれば、「イージス・アショアとして支払った額」は▽17年度=米政府などからの情報取得費約27億円▽18年度=基本設計や地質測量経費約5・4億円▽19年度=イージス・システム本体の取得費約97億円、レーダー取得費約65億円、その他0・6億円―となっています。

 20年度に入り、政府は陸上イージスの配備断念に伴い、本体取得費の支払いを停止しました。ところがレーダーへの支払いは停止せず、前年度の65億円とあわせ、144億円を支払っています。その他経費とあわせ合計277億円を米側や国内企業に支払い済みだとしています。

 防衛省が取得を進めているレーダーは、米軍需企業ロッキード・マーチン社製の「SPY7」です。SPY7はまだ試作品もできていないものですが、同省は導入に固執。陸上イージス断念後も、直ちにSPY7の「利活用」を表明しています。その背景として、米ミサイル防衛庁がSPY7導入で不当な働きかけを行った可能性が指摘されています。

 SPY7を艦船に搭載する「イージス・システム搭載艦」は、総経費で陸上イージスを大きく上回ります。しかし、自民党への配布資料では、SPY7などの契約を解除すれば「サンクコスト(回収できない経費)が発生」すると説明。“もう後戻りできないのだから支払いを続けるしかない”と開き直り、破滅的な支出に突き進もうとしています。

「イージス・システム搭載艦」 既に“座礁”

金額示せず 艦の設計図もまだ

自衛隊元幹部からも相次ぐ異論

 防衛省は、秋田、山口両県への配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)に代わり、米ロッキード・マーチン社製のSPY7レーダーを搭載する「イージス・システム搭載艦」を採用する方針を決めました。6月18日の自民党国防部会では、米海軍が採用したレイセオン社製のSPY6レーダーと比較して、性能・経費ともに優れていると説明しましたが、その内容は欺瞞(ぎまん)に満ちています。

疑惑解消されず

 防衛省は2018年6月~7月にかけて、SPY7と6を比較選定し、性能・経費両面で「より高い評価を得た」として、SPY7を選定しました。しかし、米海軍が既に採用していたSPY6ではなく、試作品さえできていないSPY7の選定には疑問が相次ぎ、1970年代の自民党政権とロッキード社の癒着・汚職事件になぞらえ、「第2のロッキード事件」との見方も広がりました。

写真

(写真)防衛省が衆院外務委理事懇に提出した、グリーブス米ミサイル防衛庁長官と防衛省・西田整備計画局長(いずれも当時)の会談議事録。内容は黒塗りされています

 決定打となったのが、日本共産党の穀田恵二議員の2月9日の衆院予算委員会での追及です。レーダー選定直前に、米ミサイル防衛庁のグリーブス長官(当時)が防衛省を訪れ、ロッキード社製レーダーの採用で圧力をかけたとの証言を暴露したのです。岸信夫防衛相も長官の訪問を認め、「ロッキードありき」との批判が高まりました。

 こうした経緯を踏まえ、防衛省は自民党国防部会への説明資料で「米海軍の協力を得て、SPY6…に関する情報を収集」したと説明。「探知距離・高度や同時対処能力など」でSPY7が優れているとしています。米海軍を持ち出して、「公平性」の演出を図ったとみられます。

 これに関して、イージス・レーダー選定疑惑に関する野党合同ヒアリングに出席した坂上芳洋元海将補は見解を公表し、SPY7が性能で優位だといえる「具体的な根拠がない」と批判。米海軍が本当にSPY7を推奨したのか疑問視し、「部局・階級氏名・調整結果などを記した米海軍との議事録を公表すべきだ」と求めています。

 経費をめぐっても、説明資料は、SPY7が「相対的に安価」だとしています。しかし、あくまでSPY6との比較にすぎず、実際の金額については「数値化困難」などとして明らかにしていません。岸氏も国会で「説明責任を果たす」と答弁していながら、閉会まで一切明らかにしませんでした。防衛省は陸上イージスを大きく上回る「総額9000億円超」との報道を否定しておらず、実際は1兆円を超えることは確実です。

 しかも、イージス・システム搭載艦はSPY7の搭載に特化したもので、能力面でも疑問の声が相次いでいます。ある自衛隊元幹部は、現場が望まない兵器の導入で「孫子の代まで負担を押し付けるのは痛恨の極み」だと述べます。

計画大幅遅れも

 米海軍のSPY6は24年に初期運用能力(IOC)を獲得し、実戦配備される予定です。一方、SPY7について説明資料は、「順調に進んでいる」と述べるだけで、設計・試験・開発のどの段階にあるのか全く示していません。それにもかかわらず、SPY7の方が「早く納入される」と断定しています。

 防衛省はその根拠として、ロッキード社がSPY7と類似の技術を使って開発し、米アラスカ州に配備される次期固定式警戒管制レーダー「LRDR」が今年、IOCを獲得する予定だと説明しています。しかし、米政府監査院は今年4月の報告書で、LRDRの配備日程が1年以上遅れるとの見通しを示しています。

 そもそも、LRDRとSPY7は電波を発するブロックが異なるなど「全くの別物」(前出の坂上氏)です。

 それに加えて、迷走しているのが「艦」の選定です。当初は最新鋭のイージス艦「まや」型をベースにする見通しでしたが、長期間、洋上で安定的に運用するため、「多胴船」型案も浮上。検討に時間がかかっています。

 防衛省は5月、「イージス・システム搭載艦の検討に関する技術支援役務」など3件について、三菱重工業、ジャパン・マリンユナイテッド、三井E&S造船と計約16億円で契約を締結しましたが、契約期間は22年4月および23年3月までとなっています。「艦」の選定・設計に相当の時間がかかる可能性もあり、22年度概算要求への計上は困難視されています。

 それでも1面報道のように、防衛省はレーダー導入経費だけは粛々と支払い続けているのです。

中止以外にない

 陸上イージスが破綻したのに、「何が何でもロッキード社のレーダー」という呪縛にとらわれ、つじつま合わせを繰り返し、時間も経費も浪費している―これが事の真相です。イージス・システム搭載艦は、設計図さえできていないのに、既に“座礁”しています。これ以上、傷口を広げないため、計画を中止する以外にありません。


 イージス・アショア 米軍が主導する「ミサイル防衛」網の一環。トランプ前米政権の“米国製武器爆買い”要求を受け、安倍前政権が2017年12月に2基の導入を決定。秋田・山口両県の自衛隊演習場への配備を決めたものの、ブースターが演習場外に落下する可能性があり、20年6月に配備を断念。同年12月、陸上イージスで使用を予定していたSPY7レーダーを搭載する「イージス・システム搭載艦」の導入を閣議決定。


「こうした動きは米国と日本でジョー・バイデン政権と菅義偉政権が発足してからも続いた」と報道した。

2021-07-02 | 米日韓軍事同盟・軍事演習に反対!

「米日、中国との衝突に備えた秘密の軍事訓練シミュレーション実施」

登録:2021-07-02 06:28 修正:2021-07-02 07:50
 
フィナンシャルタイムズ「日本、米国に台湾戦争シナリオ共有要請も」
 
 
米海軍艦艇が昨年、日本自衛隊との共同演習「キーンソード」を行っている=米海軍ホームページより//ハンギョレ新聞社

 米国と日本が台湾問題による中国との衝突の可能性に備え、「ウォーゲーム」(軍事訓練シミュレーション)をしているという報道が出た。

 英国のフィナンシャルタイムズは1日(現地時間)、匿名の消息筋6人の話として、このように報じた。同紙は「米国と日本の軍事当局者たちが、ドナルド・トランプ前政権末期に台湾問題をめぐる衝突可能性に備えて真剣に計画を立て始め、この中には最高秘密扱いの机上訓練も含まれている」と報じた。同紙はまた消息筋3人の話としてし「こうした動きは米国と日本でジョー・バイデン政権と菅義偉政権が発足してからも続いた」と報道した。これに先立ち1月に秘密解除されて公開されたトランプ政権時代の米国政府文書にも「台湾を含む『第1列島線』を防衛する」と明記されていた。

 日本は米国に「米国の台湾戦争計画について共有してほしい」と要請したが、米国防総省は段階別に協力を強化することに集中する時だとして異議を申し立てたと同紙は報じた。ただし、同紙によると、元米国当局者の一人は「両国の究極的な目標は米日同盟を通じて台湾と関連した統合された戦争計画を立てること」だと述べた。

 消息筋6人のうち2人は、米軍と日本の自衛隊が南シナ海で災害救援訓練と称して共同演習を行ってきたと伝えた。トランプ政権時代に米国防総省インド太平洋安保担当次官補を務めたランダル・シュライバー氏は同紙に「我々(米日)が行うこの(災害救援)訓練のうち、かなりの部分は(軍事演習として)代替できる」と述べた。水陸両用訓練のような内容が「災害救援シナリオ」に含まれているが、これは台湾海峡や尖閣諸島紛争に「直ちに適用できる」と同氏は説明した。シュライバー氏の発言は、南シナ海で行っている災害救援訓練が軍事演習を標榜しているわけではないものの、中国との衝突に備えた軍事演習の側面があるという意味だ。

 米国は以前にも自衛隊の役割拡大を要求してきた。ただし、交戦権の放棄と軍隊保有禁止を規定し「平和憲法」とも呼ばれる現行の日本国憲法のため、自衛隊の役割は制度的に限られていた。これに対し、安倍晋三元首相は違憲論争にもかかわらず、2014年の憲法解釈の変更と2015年の安保法制改正を通じて、「集団的自衛権」(日本が直接攻撃を受けなくても、日本と密接な関係にある他国が攻撃を受けた時、実力行使に出られる)の行使を可能にした。これにより、自衛隊の役割拡大に歯止めをかけていた既存の制度的規制はかなり崩れた。

チョ・ギウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

さらに、将来的にはグアムなど「第2列島線」にも、第1列島線内を攻撃する長距離ミサイルを配備するとしています。

2021-05-05 | 米日韓軍事同盟・軍事演習に反対!

第1列島線 米軍ミサイル攻撃網

自衛隊動員が前提

対中国念頭に日米軍事同盟強化

 米国と中国という二つの覇権主義大国による対立が激化する中、4月16日の日米首脳会談では、「対中国」を念頭に日米軍事同盟の「一層の強化」が確認されました。米軍は既に、九州沖から琉球諸島、南シナ海にいたる「第1列島線」に、日米一体のミサイル攻撃網を想定していることが判明しました。このまま米中軍事対立に巻き込まれ、国土を戦場にするのか。日本の進路が問われます。


図:第1・第2列島線と米「太平洋抑止イニシアチブ」

 第1列島線、第2列島線 中国の軍事戦略上の概念であり、主に米軍からの「防衛」ラインとされていますが、公海や他国の領海に線を引いたものであり、法的な根拠はありません。米国も対中戦略文書でしばしば言及しています。

 「太平洋抑止イニシアチブ」(PDI)と銘打った基金が、今年1月に米議会で成立した2021年度国防権限法に盛り込まれました。その狙いは、「対中国」を想定した米軍の能力向上と同盟網の強化にあります。米インド太平洋軍は22~27年度の6年間で約274億ドル(約3兆円)を要求しています。

 同軍が昨年、公表したPDIの予算要求資料は、「有効な抑止がなければ、中国やロシアが地域における米国の権益を奪い取るだろう」と指摘。「優勢を取り戻す」と表明し、あからさまな覇権争いを宣言しています。

 具体策の第1に掲げているのが、「第1列島線」への「残存性の高い精密打撃網」の配備です。巡航ミサイル・トマホーク(海軍)やスタンドオフミサイル(射程延伸型、空軍)、高機動ロケット砲システム(HIMARS、海兵隊)などをあげ、全軍で長距離精密兵器やレーダー網の強化などを進めるとしています。

 さらに、将来的にはグアムなど「第2列島線」にも、第1列島線内を攻撃する長距離ミサイルを配備するとしています。

 重大なのは、第1列島線の「精密打撃網」は、「増強された同盟国の地上配備兵器の参加」が前提とされていることです。南西諸島への配備が進んでいる自衛隊のミサイル部隊の動員を想定していることは明らかです。

 防衛省は奄美、宮古、石垣に陸自ミサイル部隊配備を進め、沖縄本島への配備も検討。射程を大幅に延ばした12式地対艦誘導弾をはじめ、極超音速誘導弾や高速滑空弾など最新鋭の長距離ミサイル開発に乗り出し、沖縄などへの配備を狙っています。さらに、22年度から空自へのスタンドオフミサイル(JSM)の配備が始まります。

 こうした憲法違反の敵基地攻撃能力が、米軍の対中軍事戦略に組み込まれようとしているのです。

台湾海峡問題への覚悟迫る米国

安保法制廃止いよいよ重要

 米インド太平洋軍「太平洋抑止イニシアチブ」の予算要求資料は、「第1列島線」にミサイル攻撃網を配備する目的について、「接近阻止・領域拒否(A2AD)能力を覆す」ためのものだと説明しています。

ミサイル網の目的

 A2ADとは、ミサイルや戦闘機、潜水艦、電子妨害網などを重点配備し、そこから先への敵の侵入を阻止する能力です。

 米国防総省の「2020年版中国軍事力報告」は、「台湾有事」(中国による台湾の軍事侵攻)が発生した場合、中国は「いかなる第三者の侵攻も打ち破る能力を開発している」と指摘。「米国の防衛計画者は、こうした能力を“A2AD”と呼んでいる」と述べています。さらに、「中国のA2AD能力は、第1列島線において最も堅固である」としています。

 つまり、A2ADとは第一列島線、とりわけ台湾への接近を阻止する能力であるというのが米側の見解です。

 こうした能力を構築するきっかけになったのは、第3次台湾海峡危機(1995年7月~96年3月)です。中国は初の台湾総統選を妨害するため、連日、台湾近海にミサイルを発射。これに対して米軍は同年3月、2個空母戦闘群や爆撃機を台湾海峡に急派し、中国を威圧しました。

 米国は54年から台湾と軍事同盟を結び、中国と国交を正常化して同盟を破棄した後も、国内法である「台湾関係法」に基づき、関与を継続しています。

 米軍の介入は中国に衝撃を与え、台湾海峡への接近を阻止するための戦力増強が図られました。90年代後半から「空母キラー」である潜水艦を大増強。98年には自前の空母保有に着手しています。

 今日、米軍が空母を台湾海峡に接近させるのは容易ではありません。そのため、第1列島線の外から攻撃可能な長距離ミサイル網を整備しているのです。

日本も参戦可能に

 第3次台湾海峡危機は日本政府にも波紋を広げました。日米安保条約に基づく共同作戦の検討に入るべきだとの意見(96年3月15日、梶山静六官房長官)も出されましたが、海上自衛隊元幹部は、当時の自衛隊は法的にも能力面でも限界があり、「同僚はみんな黙っていた。話題にすることを避けていた」と証言します。

 しかし、今は全く異なります。1面報道のように、既に日本は地上・洋上・航空いずれからも攻撃可能な長距離巡航ミサイルやF35ステルス戦闘機など、中国のA2AD網に対抗しうる敵基地攻撃能力の導入に着手しています。

 さらに、米軍の海外での戦争への自衛隊の参戦を目的とした安保法制=戦争法があります。

 岸信夫防衛相は3月22日の記者会見で、台湾海峡問題について問われ、「防衛省・自衛隊としても、あらゆる事態に備えて、わが国の法令の範囲内で適切に対応できるように、不断に検討をしている」と述べました。

 日本共産党の穀田恵二議員は4月21日の衆院外務委員会で、「検討」している法令に、安保法制の一環である(1)重要影響事態法(米軍への後方支援)(2)集団的自衛権の発動要件である「存立危機事態」を定めた事態対処法―が含まれるか質問。中山泰秀防衛副大臣は「含まれている」と認めました。

共同声明の危険性

 最終的に、日本が台湾海峡問題への覚悟を迫られたのが、4月16日の菅義偉首相とバイデン米大統領の日米首脳会談です。共同声明は「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及。1969年11月の佐藤・ニクソン共同声明以来、52年ぶりに日米首脳の共同文書に「台湾」を明記したのです。

 69年の共同声明は、72年5月に予定されていた沖縄の施政権返還後も、在沖縄米軍基地から台湾に自由出撃できることを事実上、容認したものですが、今回の共同声明は、それにとどまりません。

 声明は「日本は…自らの防衛力を強化することを決意した」と明記。「対中国」の文脈で大軍拡・能力強化を誓約したのです。安保法制に基づいて自衛隊が参戦する、過去最大規模の軍事費をさらに増やす―そうした可能性を含んだ今回の共同声明は、より危険な内容になっています。

 大軍拡ストップ、安保法制廃止がいよいよ重要になっています。


キム副部長の談話は、米国のアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官の韓国訪問の前日であり、日本訪問の当日の朝に合わせて発表された。

2021-03-17 | 米日韓軍事同盟・軍事演習に反対!

[ニュース分析]北朝鮮、

ブリンケン長官の訪韓前日に韓国を攻撃、米国に警告

登録:2021-03-17 05:35 修正:2021-03-17 08:37
 
キム・ヨジョン副部長、韓米軍事演習非難する談話で 
「3年前の春の日に戻るのは容易ではないだろう」
 
北朝鮮のキム・ヨジョン朝鮮労働党中央委員会副部長(右)と実兄の金正恩国務委員長=板門店/韓国共同写真記者団//ハンギョレ新聞社

 キム・ヨジョン朝鮮労働党中央委員会副部長は16日、今月8日に始まった韓米軍事演習を「共和国(北朝鮮)を狙った侵略的な戦争演習」だとし、「赤い線(レッドライン・超えてはならない一線)を超える腑抜けな選択」だと批判した。

 キム副部長は「3年前の春が再び戻ってくることは難しい」と題した個人談話で「戦争練習と対話、敵対と協力は両立できない」としたうえで「対南対話機構である祖国平和統一委員会(祖平統)」と「金剛山国際観光局をはじめ、(交流協力)関連機構もなくす問題を検討している」と明らかにした。さらに「南朝鮮当局がさらに挑発的に出るなら」という前提で、「(2018年9月19日)北南軍事分野合意書の破棄に関する対策も予見している」と述べた。南北関係を対話と交流協力がなかった対決の時代に、状況の展開によっては軍事的対立と衝突の時期に逆戻りすることもあり得るという脅しだ。

 キム副部長の談話は、米国のアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官の韓国訪問の前日であり、日本訪問の当日の朝に合わせて発表された。「南朝鮮当局」を主な非難の標的にしているものの、キム副部長の談話が北朝鮮政策の見直しを進めているジョー・バイデン政権に向けた“メッセ―ジ”の意味を持っていることを裏付けている。実際、キム副部長は談話で「米国の新政権にも一言忠告する」とし、「今後4年間、ぐっすり眠りたいなら、最初から眠りを妨げるような真似はしない方がいい」と述べた。これは「強対強、善対善の原則で米国に対応する」という金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記の第8回党大会演説(1月5~7日)の対米政策基調を背景に、対象を「米国の新政権」に特定した北朝鮮側の初めての公開発言だ。

 キム副部長の談話は、2019年2月のハノイでの第2回朝米首脳会談の失敗後、「南北関係を揺さぶり、米国を動かす」という金正恩総書記の対南・対米政策基調の延長線上にある。しかし「同盟重視」と「韓日米三角協力の強化」を掲げてきたバイデン政権が、南北関係の悪化にもかかわらず北朝鮮と積極的に交渉に乗り出す可能性は非常に低い。金正恩総書記の狙いがどうであれ、「南北関係を犠牲にした対米アプローチ」はむしろ朝米関係のさらなる悪化につながり、朝鮮半島情勢に暗い影を落としかねない。米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は15日(現地時間)、定例会見で、バイデン政権が北朝鮮に接触を図ったが、北朝鮮は応じなかったという最近のメディア報道を確認し、「外交が最優先」だと繰り返し強調した。

 今回の談話は、対外用メディア「朝鮮中央通信」だけでなく、異例にも労働党中央委機関紙「労働新聞」や「朝鮮中央放送」などを通じて、内部にも大々的に報じられた。韓米に対する“警告”とともに、内部の政治的需要も考慮したものと見られる。人民にも公表されたことから、“言葉”を“行動”に移す後続措置につながる可能性が高い。

 
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官が今月15日(現地時間)、ホワイトハウスで記者会見を行っている。サキ報道官は同日の定例会見で、バイデン政権が北朝鮮と接触を図ったが反応を得られなかったと明らかにした=ワシントン/AP・聯合ニュース

 これは昨年6月の対北朝鮮ビラをめぐる北朝鮮側の行動を思い出させる。当時、北朝鮮側は一部脱北者団体の「対北朝鮮ビラ散布」を問題視し、「キム・ヨジョン談話」(6月4日)→開城(ケソン)南北共同連絡事務所建物爆破(6月12日)→朝鮮人民軍総参謀部報道官による4大軍事措置発表(6月17日)→金正恩委員長の「対南軍事行動計画保留」(6月24日)で、南北関係を揺るがした。さらに平壌市党委員長など各界各層の労働新聞の連鎖寄稿や、朝鮮社会主義女性同盟などの「抗議群衆集会」で韓国に対する敵がい心を煽った。

「9・19軍事合意」破棄の場合は南北・朝米関係にも暗雲

 今回も、労働新聞への連続寄稿と抗議群衆集会が続く可能性がある。対外環境の悪化と「三重苦」(制裁、新型コロナ、自然災害)でさらに悪化した経済状況、「自力更生式の正面突破戦」の長期化などによる人民の不満のはけ口として、対南敵がい心を煽るものとみられる。「対南政策の内部政治化」だが、南北関係に回復しがたい傷を残す恐れがある。

 キム副部長が談話で予告した対南措置の中で朝鮮半島情勢に戦略的含意を持つ内容は、対南対話と交流協力機構廃止の脅しよりは、朝鮮半島における平和の“安全弁”の役割を果たしてきた9・19南北軍事合意を破棄するという警告だ。9・19軍事合意破棄の処置が実行されれば、文在寅(ムン・ジェイン)-金正恩時代の南北関係の地形を根本から揺るがし、朝鮮半島情勢全般に波紋を広げる危険性がある。

 北朝鮮は昨年6月、対北朝鮮ビラについても「名ばかりの南北軍事合意の破棄」(6月4日のキム・ヨジョン談話)に言及し、非武装地帯(DMZ)の監視警戒所(GP)の再建や境界地帯の軍事訓練再開など、人民軍総参謀部報道官の発表で軍事合意の破棄を予告したが、金正恩中央軍事委員長の指示で実行を保留した。今回もキム・ヨジョン副部長は祖平統と金剛山国際観光局の廃止を「最高首脳部に報告した状態」であり、実行が差し迫っていることをほのめかしながらも、「軍事合意書の破棄」は「南朝鮮当局がさらに挑発的に出るなら」という但し書きをつけていったん先送りする形をとった。

 しかし、北朝鮮が西海(黄海)北方限界線(NLL)近隣の海岸砲射撃再開など、様々な9・19軍事合意違反行為で実質的な破棄の段階に入る可能性もあるという見通しも示されている。韓国政府の元高官は「米国の制裁のため、核実験や大陸間弾道ミサイル試験発射のような戦略的軍事行動を金委員長が選択するのは難しい状況」だとし、「米国を動かすカードとして、9・19合意の破棄行動に出ることも考えられる」と述べた。他の高官は「北朝鮮は韓国への攻勢が朝米関係の悪化につながるという点を忘れてはならない。また韓米政府は早急に包括的対北朝鮮交渉案を用意し、朝鮮半島平和プロセスを再稼動しなければならない」と述べた。

イ・ジェフン先任記者、ワシントン/ファン・ジュンボム特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)