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5・18遺族会のキム・ヨンフン会長は「41年がたった今でも5・18の真実は完全に明らかになっていない。与野党と全国民が力を合わせ、5・18の真相究明に力を貸してほしい」と述べた。

2021-05-19 | 韓国の民主化は進んでいく。

光州の5月、民主と統合を叫ぶ

登録:2021-05-18 08:32 修正:2021-05-18 12:48
 
5・18光州民主化運動から41年 
追悼祭など各所で行事 
「国民の力」の二人の議員、初の公式招待
 
41年目の5・18民主化運動記念日を翌日に控えた17日、光州市北区の国立5・18民主墓地で開かれた追悼祭に遺族会の招待で参加した「国民の力」のソン・イルチョン議員(左端)とチョン・ウンチョン議員が遺族と会っている/聯合ニュース

 17日、光州北区(クァンジュ・プック)の国立5・18民主墓地で、5・18遺族会主催の第41周年追悼祭が開かれた。追悼式には「国民の力」所属のチョン・ウンチョン、ソン・イルチョン議員が、保守系政党議員としては初めて遺族会の招待で出席し、注目を集めた。

 5・18民主化運動記念日(5月18日)を翌日に控え、国立墓地に眠る5月光州民主化運動の英霊を偲んで毎年行われる追悼祭で、5・18遺族会のキム・ヨンフン会長は「41年がたった今でも5・18の真実は完全に明らかになっていない。与野党と全国民が力を合わせ、5・18の真相究明に力を貸してほしい」と述べた。

 5・18団体が公法団体に転換(設立)することを可能にした「5・18民主有功者礼遇および団体設立に関する法律」の可決に協力した点を評価され、追悼祭に招待されたチョン・ウンチョン議員は「追悼祭に招待してくださったことに感謝したい。今回の追悼式が『国民統合』の第一歩になることを願う」と明らかにした。ソン・イルチョン議員も「光州の犠牲がなかったら、自由な空気を吸うことはできなかった」とし「今後も国民の力が光州、全羅道地域に歓迎されるよう力を尽くす」と述べた。

 この日午後7時30分~夜10時、光州5・18民主広場など錦南路(クムナムロ)一帯では前夜祭が開かれた。「5月時代と目を合わせ、世代と足並みをそろえる」をテーマにした前夜祭では、ミャンマーや香港など現在進行形のアジアの民主化闘争を見通し、1980年5月の光州を再現して称える演劇・公演が行われた。特に、フランス革命を背景にしたミュージカル『レ・ミゼラブル』の公演チームが光州を訪れて公演し、注目を集めた。

 木浦(モッポ)、羅州(ナジュ)、和順(ファスン)、霊岩(ヨンアム)など全羅南道の各地でも5・18光州民主化運動から41年目を記念する行事が行われた。この日午前11時、務安郡三郷邑(ムアングン・サムヒャンウプ)の全南道庁前広場で開かれた5・18記念式で、ムン・ギョンシク記念行事委員長は「新軍部の内乱に立ち向かった光州を支援するため、木浦、羅州、和順、霊岩など全羅南道の各地から武器を持ってデモに向かうなど大同団結した」とし「現代史の節目のたびに奮然として立ち上がった南道の伝統を受け継いでいこう」と述べた。

 
17日、保守系団体「ターンライト」がミン・ビョンドゥ、ソル・フ、イ・ヘチャンの前・現職議員の顔を載せた横断幕を設置し、「5・18有功者名簿の功績内容を公開せよ」との集会を開いている=キム・ヨンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 「『5・18は北朝鮮軍が犯した犯罪行為』と妄言を述べた教授に代わって謝罪したい」として、慶尚北道慶州市(キョンジュシ)の威徳大学総学生会所属の学生15人がこの日光州を訪れ、5・18自由公園(旧尚武台営倉)を訪問し、国立5・18民主墓地を参拝した。また、大邱では518番の市内バスがこの日から23日までの1週間、正面に「達光同盟(大邱と光州の連帯)で共存・協力する大邱-光州」「平和で一つになる5・18民主化運動」「2・28と5・18で一つになる大邱-光州」などのスローガンを掲げて運行する。

 政界はこの日、それぞれ異なるメッセージを発した。共に民主党のソン・ヨンギル代表は、党最高委員会で「最後まで道庁を死守し、民主主義のために闘って亡くなった多くの方々の犠牲を忘れない」とし「5・18は大韓民国の民主主義を守る力」と強調した。

 国民の党のキム・ウンヘ議員は「改憲をするなら、5・18精神を憲法前文に入れるべきだ。いつか憲法を改正するとき、韓国が継承する誇らしい歴史遺産として4・19の隣に5・18が並んで置かれることを願う」と主張した。一方、野党の大統領選候補であるユ・スンミン前議員は「5・18精神は韓国の憲法第1条にある民主と共和の精神」とし、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領と共に民主党は過去4年間、5・18精神を損ねてきた」と批判した。

 キム・ヨンヒ、アン・グァノク、ペ・ジヒョン、キム・ギュヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

国会本会議を開き、在席251人のうち賛成240票(反対2、棄権9)で公職者利害衝突防止法を可決した。国会議員利害衝突防止法の国会法改正案も、在席252人のうち賛成248票(棄権4票)で議決された。

2021-05-01 | 韓国の民主化は進んでいく。

利害衝突防止法、8年間にわたる審議の末、韓国国会で成立…

公職者190万人が対象

登録:2021-04-30 04:45 修正:2021-04-30 07:30
 
国会議員の利害衝突防止を内容とする国会法改正案も可決
 
今月29日午後、ソウル汝矣島の国会で、第386回国会(臨時会)の第4回本会議が開かれている/聯合ニュース

 職務関連情報を活用した公職者の私益追求の防止を目的とする「公職者利害衝突防止法」(利害衝突防止法)が法案発議から8年で国会本会議で成立した。国会議員が議政活動を通じて利益を得られないように制限する国会法改正案も賛成多数で可決された。

 韓国の与野党は29日、国会本会議を開き、在席251人のうち賛成240票(反対2、棄権9)で公職者利害衝突防止法を可決した。国会議員利害衝突防止法の国会法改正案も、在席252人のうち賛成248票(棄権4票)で議決された。

 利害衝突防止法は2013年、「不正請託および金品などの授受禁止に関する法」(別名キム・ヨンラン法)と共に政府案に提出されたが、職務関連性の概念が曖昧であるなどの理由で、8年間にわたり発議と廃棄を繰り返した。国民権益委員会が昨年6月に発議した法案も、常任委での審議に進展がみられなかったが、先月、韓国土地住宅公社(LH)職員の土地投機疑惑が持ち上がったことを受け、審議に拍車がかかった。

 同日可決された利害衝突防止法は、公職者が職務上知り得た秘密を活用し、財産上の利益を得た場合、7年以下の懲役刑または7千万ウォン(約690万円)以下の罰金刑で処罰する内容が含まれている。規制対象は立法・司法・行政府や地方自治体の公務員と公共機関の役職員らが190万人だ。

 これらの団体は、私的利害関係者を対象に許認可や工事業務、裁判、捜査などの職務を遂行することになった事実が分かれば、14日以内に機関長に申告し、これを回避しなければならない。LHなど不動産関連公共機関の公職者は、本人をはじめ配偶者や直系家族の不動産取引も申告しなければならない。内部情報を活用した投機の可能性を遮断するためだ。

 同日、ともに可決された国会法改正案は、公職者利害衝突防止法には含まれていない国会議員の私的な利害関係が絡んだ常任委の割り当てを制限することなどを内容としている。国会議員の議政活動で発生しうる利害衝突を防止するのが目的だ。

 これに先立ち、無所属のパク・ドクフム議員(当時セヌリ党、現国民の力所属)は国会国土交通委員会の幹事を務めていた2012年、自身の一家が経営する建設会社が被監査機関から3千億ウォン台の工事を受注したことで、物議を醸した。ソン・ヘウォン元議員も文化体育観光委員会幹事を務めていた2017年5月、木浦市(モクポシ)都市再生戦略計画の資料を受け取り、甥などの名義で土地や建物を購入した容疑(腐敗防止法違反)で有罪を言い渡された。改正された国会法では、国会議員本人や配偶者、直系尊属と卑属の株式と不動産保有の現況と民間部門の業務活動の内訳なども国会倫理審査諮問会員会に登録するよう義務付けている。

 これに先立って、国会運営委員会の法案審査で与野党は国会議員の利害関係情報を非公開にすることで暫定合意したが、批判が相次いだことを受け、関連情報を公開できるように方針を変えた。

シム・ウサム、ペ・ジヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

 彼らは概して性平等、不平等解消、労働権保障、気候変動への対応、性的マイノリティ尊重、動物の権利(アニマル・ライツ)などを重視するが、各候補が強調する細部の内容には違いがある。

2021-04-09 | 韓国の民主化は進んでいく。

ソウル市長補選、

「フェミニスト候補」大挙…総得票率で今後の政局変えるか

登録:2021-04-07 09:33 修正:2021-04-07 15:28

 

4・7ソウル市長補欠選挙 
ホットイシューとして浮上した性平等
 
//ハンギョレ新聞社

 12人中5人。性平等を公約の前面に掲げた候補が、これほど多く出馬したことはなかった。

 パク・ウォンスン前ソウル市長のセクハラ事件の余波で行われる4月7日のソウル市長補欠選挙は、候補者による性平等政策対決が観戦ポイントの一つだ。支持率1%未満(リアルメーター基準)の少数政党・無所属候補たちではあるが、彼らの総得票率によっては2022年の大統領選挙と地方選挙に出馬する主要候補・政党の公約にも影響を及ぼし得る。

若い政治家たちの新しい時代、有権者の要求は多様

 記号6番のシン・ジヘ(基本所得党)、8番のオ・テヤン(未来党)、11番のキム・ジナ(女性の党)、12番のソン・ミョンスク(進歩党)、15番のシン・ジエ(無所属・チームソウル)候補が示した政治ビジョンと細部公約は、党の大きさや支持率だけでは評価できない意味を持つ。

 彼らは概して性平等、不平等解消、労働権保障、気候変動への対応、性的マイノリティ尊重、動物の権利(アニマル・ライツ)などを重視するが、各候補が強調する細部の内容には違いがある。

 年間ベーシックインカム(基本所得)300万ウォン支給を公約に掲げたシン・ジヘ基本所得党候補は「フェミニストソウル市長」になると意気込んでいる。公職社会の性暴力根絶、デジタル性犯罪の追放、ソウル市の性別による賃金格差・“ガラスの天井”をなくすことなどを公約に掲げた。特にシン候補は昨年12月、ソウル市長予備候補登録の時も、ソウル市内の25の保健所に妊娠中絶薬(ミフジン)を常時設置し、ソウル市に女性専門の公共病院を設立することを公約に掲げた。

 シン・ミンジュ基本所得党ジェンダー政治特別委員会委員長は「基本所得は、誰かの娘、誰かの妻ではなく女性が自分の名前で受け取る福祉であるため、家父長制からの脱皮につながる。これまで家庭で犠牲になった女性たちが福祉を享受できる個人として尊重されるという面から、わが党の基本所得政策は意味がある」と述べた。昨年、全国民に支給された第1次新型コロナ災害支援金は、世帯主が申請して支給を受けるという構造だった。大半が世帯主は男性である状況で、世帯主でない女性たちを排除したという指摘があった。

 「差別のないソウル」を掲げたソン・ミョンスク進歩党候補は、労働権とジェンダーの観点を結びつけた。ソウル型職場内性暴力被害者への失業手当支給▽30人未満の事業場にセクハラ・性暴力実態調査および予防教育義務化▽雇用上差別行為禁止条例に雇用性差別禁止条項を明示などを公約に掲げ、雇用での性平等を強調した。

 ソウル市長候補と女性安全副市長、性平等副市長、性的マイノリティ副市長など6人の副市長候補がチームとして出馬したシン・ジエ無所属候補とチームソウルは、地方自治体首長の権力分散に力点を置いた公約を提示した。彼らは「帝王的な市長の権力を分け、協力する政治で市政を担う」と述べた。また、分野ごとの副市長のポストは全て女性で埋めると約束した。市長直属の独立機構としてジェンダー暴力専門機関を設置し、自治警察制と連携した性暴力への対応体制をまとめるなどの政策を公約として掲げた。

 全ての公約を全面的に女性政策としてまとめた候補はキム・ジナ女性党候補だ。キム候補は「女性一人でも暮らしやすいソウル」というスローガンを掲げ、女性の安全、住居、雇用、医療、校内暴力の5大公約を提示した。既成政党がこれまで女性有権者のための公約として育児とケアなど家庭内での女性のための政策、仕事・家庭の両立のための制度を強調してきたのとは差別化された点だ。キム候補は、政界の主要ターゲットの有権者として浮上したことのない「非婚女性のための政治」を約束した。

 
先月31日、ソウル東大門区の選挙管理委員会である職員が4・7ソウル市長補欠選挙の投票用紙を見せている/聯合ニュース

 性的マイノリティの人権を前面に出した候補も登場した。オ・テヤン未来党候補はソウル市全域を「性的マイノリティ自由都市」と宣言し、同性結婚家族支援条例の制定と、就任後すぐに「マイノリティ庁」新設などを約束した。オ候補は性平等について、男女という二つの性に対する平等ではなく、すべての性アイデンティティの尊重としてアプローチし、性的マイノリティ政策でひときわ優位を示した。

 今回の選挙は、20~30代の若い女性が政治の前面に出た点も特徴だ。基本所得党のシン・ジヘ候補と進歩党のソン・ミョンスク候補は1987年生まれ、無所属のシン・ジエ候補は1990年生まれだ。女性の党のキム・ジナ候補と未来党のオ・テヤン候補は40代だが、20~30代をターゲット有権者としている。

「合計10%だったとしても有意義」 VS 「実質的な力としては惜しい」

 性平等を前面に掲げた候補が多数登場したことは肯定的だが、政治的影響力を発揮できるかどうかについては意見が分かれる。韓国女性政治研究所のキム・ウンジュ所長は「今回の補欠選挙が行われる背景には性の不正義問題があるため、各政党は本来掲げた価値に性平等を結びつけるのは避けられない状況だ。既得権の政党の女性政治とは違う政治ビジョンを語っている」と述べた。キム所長は「性平等という共通の価値をもってなぜ候補が複数出るのかというが、それだけ女性たちの要求と熱望が多様であることを示している。少数政党の合算票が全体の10%程度になれば、既得権の政界を揺さぶることができる数値だ」と付け加えた。

 現実的な限界も大きい。「ジェンダー政治研究所 女・勢・連」のクォン・スヒョン代表は「若い政治家たちがフェミニズムを掲げて出馬する現象は非常に鼓舞的だが、一つの結集した姿ではなく、事実上票が分散するかたちだ。当選の可能性の中で未来を論じるには至らず惜しい」と述べた。クォン代表は「各候補は巨大政党の主な候補と対決し、自分の特徴とカラーを示さなければならないが、今は討論会すらも群小候補同士で別々に行う。候補らがもっと大きな影響力を発揮できなくする構造的な問題がある」と指摘した。

キム・ミヒャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 

韓国補欠選挙、与党惨敗…瞬く間に覆った民意

登録:2021-04-08 08:55 修正:2021-04-08 09:04

 

ソウル・釜山市長選、野党のオ・セフン、パク・ヒョンジュン圧勝 
国民の力、大統領選まで1年を控え与党牽制に「動力」
 
7日午後、オ・セフン国民の力ソウル市長候補がソウル汝矣島の国民の力党本部に設けられた開票状況室で、4・7補欠選挙の出口調査結果を眺めながら両手を上げて喜んでいる=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 野党「国民の力」の圧勝だった。オ・セフン・ソウル市長候補とパク・ヒョンジュン釜山市長候補は4月7日の補欠選挙で、共に民主党のパク・ヨンソン、キム・ヨンチュン候補を大差で制した。民主党の「検証攻勢」と最後の涙の訴えも、政権審判論の前では力にならなかった。国民の力は今回の選挙を機に、2016年第20代総選挙以来の「全国選挙4連敗」の流れを断ち、大統領選挙を1年後に控えた重要な時点に支持層の再建と与党牽制の動力を期待できるようになった。

 8日午前1時現在、ソウル市長選挙(開票率75.0%)でオ・セフン候補は57.3%の支持を得て、パク・ヨンソン候補(39.5%)を17.8%ポイントリードした。開票率96.7%の釜山市長の場合、パク・ヒョンジュン候補は62.9%を得て、キム・ヨンチュン候補(34.2%)と28.7%ポイント差をつけた。これに先立ち、韓国放送(KBS)、文化放送(MBC)、SBSの放送3社が参加した共同予測調査委員会(KEP)の共同出口予測調査では、オ候補が59%を得てパク候補(37.7%)を21.3%ポイントリードした。パク・ヒョンジュン候補は64%を得て、キム・ヨンチュン候補(33%)をほぼ2倍の差でリードした。

 この日の開票結果と出口調査、そして世論調査の公表禁止期間直前に実施された各種世論調査は、それほど変わらない。先月30~31日、ハンギョレとKスタットリサーチがソウル市民1012人を対象に行った世論調査で、オ候補は54.4%、パク候補は33.5%を記録。同期間、他の世論調査でもオ候補とパク候補の差は15~20%ポイントほど開いている。釜山の調査でも、パク・ヒョンジュン候補はキム・ヨンチュン候補より常に20%ポイントほど上回る流れを維持した。不動産政策の失敗と混乱で累積した不満に、公職者の不適切な行動が重なり、与党に背を向けた民意がついに回復されなかったものとみられる。

 昨年の総選挙で「汎与党勢力180議席」の圧勝を収めてからわずか1年で有権者らの冷徹な審判を受け、民主党は混乱と衝撃に陥っている。特に、あと1年も残っていない大統領選挙を控えて、民主党は党・政府・大統領府の刷新と新しいリーダーシップの構築作業、政策の力量強化などの宿題を抱えることになった。2011年にオ・セフン市長(当時)の中途辞任から、10年間ソウル市政を民主党に渡していた国民の力は、「首都奪還」を起死回生の踏み台にし、次期大統領選を控えて政界再編と基盤固めに突入するものとみられる。当選が確実になった翌午前12時、国民の力党本部を訪れたオ候補は「胸にのしかかる重い責任感を持て余している」とし、「この重要な時期に私に再び働く機会をくださったのは、山積した課題を巧みに早いうちに一つずつ解決し、苦痛の中にいる多くのソウル市民を守れという至上命令として受け入れる」と述べた。イ・ナギョン民主党常任選挙対策委員長はこの日夜、立場文で「国民の選択を謙虚に受け入れる。選挙で現れた民意を胸に刻み、反省して革新する」と明らかにした。

 この日の補欠選挙の投票率は、午後8時の最終時点で55.5%と暫定集計された。ソウルは58.2%、釜山は52.7%だった。

ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

ベトナム戦争当時に行われた韓国軍の民間人虐殺事件と関連して、国家情報院(国情院)が持つ情報を公開すべきだという最高裁判所(大法院)の最終判断が出た。

2021-03-30 | 韓国の民主化は進んでいく。

「ベトナム戦争での韓国軍による民間人虐殺資料を公開せよ」

最高裁で最終判決

登録:2021-03-26 10:01 修正:2021-03-26 11:09
 
昨年4月21日、民主社会のための弁護士会(民弁)のベトナムTF関係者らがソウル中央地裁前でベトナム戦争での韓国軍民間人虐殺国家賠償請求訴状に関する記者会見を行っている/聯合ニュース

 ベトナム戦争当時に行われた韓国軍の民間人虐殺事件と関連して、国家情報院(国情院)が持つ情報を公開すべきだという最高裁判所(大法院)の最終判断が出た。国情院は判決主旨に従って当該資料を公開すると明らかにした。

 最高裁3部(主審=イ・ドンウォン最高裁判事)は25日、イム・ジェソン弁護士が国情院を相手取って起こした情報公開拒否処分無効確認訴訟で、原告勝訴の判決を下した原審を確定したと発表した。これに先立ち、原審はイム弁護士が公開を要求した情報に対し、「大韓民国政府が虐殺事件に関して関係者を調査したかどうかなど、歴史的事実を確認できる史料として意味があり、公開する価値が認められる」と判断した。最高裁判所もこのような判断が正当だと見て、国情院の上告を審理不属行で棄却した。審理不履行とは、原審判断に問題がないとして、本案審理を行わず上告を棄却する制度だ。

 イム弁護士は2017年11月に訴訟を起こした後、今回の最高裁の判決まで約4年間、国情院と法廷で争わなければならなかった。イム弁護士が情報公開を要求したのは、1968年2月に韓国軍によって発生したベトナム「フォンニィ・フォンニャット村民間人虐殺」事件の中央情報部(国情院の前身)の調査内容が書かれた文書リストだ。一審と二審は情報公開が正当だと判決を下したが、国情院は「当該資料が公開されれば、国家の重大な利益を著しく害する恐れがある」とし、「調査当事者のプライバシーが侵害される可能性がある」などの理由で公開を拒否してきた。

 国情院は今回の判決によって関連情報を公開するという意思を明らかにした。国情院の関係者はこの日、ハンギョレの電話インタビューで「情報公開のための諸般の手続きが進められており、(関連手続きが)完了し次第、確定判決の趣旨に沿って処理する予定だ」と述べた。

 これによって、政府がこれまで沈黙してきたベトナム戦争での韓国軍民間人虐殺事件の真相を究明する道も開かれるものとみえる。現在、ソウル中央地裁では「フォンニィ虐殺事件」被害者のグエン・ティ・タンさんが大韓民国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟が進行中だが、政府は「被害の事実は信じられない」として、韓国軍の加害事実を認めていない。「フォンニィ・フォンニャット事件」とは、韓国軍青龍部隊がベトナム中部のフォンニィ・フォンニャット村の住民70人余りを殺害した事件を指す。中央情報部は1969年11月、各小隊長3人など中隊幹部を調査した後、尋問調書や報告書などを残していたことが分かった。イム・ジェソン弁護士は「(中央情報部の)調査文書リストを確認し、実際の文書内容も情報公開請求で明らかにする」と述べた。

チャン・イェジ、チョ・ユニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

「海外の複数の国が、児童・青少年性搾取物に対する規定だけがあり、成人性搾取物に対する問題意識がない。国が被害映像を削除している国は、韓国とオーストラリアだけだ」と語る。

2021-03-16 | 韓国の民主化は進んでいく。

「トラウマになるほど衝撃的」…

デジタル性搾取物を削除する人たち

登録:2021-03-16 03:18 修正:2021-03-16 08:29
 
[チョ・ジュビン検挙1年]デジタル性犯罪被害者支援センター
 
ゲッティ・イメージバンク//ハンギョレ新聞社

 「他の犯罪は、加害者が捕まり処罰されれば被害が一段落するのに、デジタル性犯罪はそうではない。無限の空間で無限の加害が行われます。一人の加害者が数十年の刑を受けても、オンライン空間には数多くの別の加害者が残っています。彼らのハードウェアに被害映像がずっと残っていて、いつでもサイトにアップされます。被害が無限に繰り返されるのです」

 女性家族部傘下の韓国女性人権振興院には「デジタル性犯罪被害者支援センター」がある。Aさんは支援センターでデジタル空間に広がった性搾取物などの被害映像を削除する業務を担当する。

 デジタル性犯罪は日増しに進化する。デジタル空間に隠れた加害者たちは、誰かが楽しむためにSNSにアップした写真を加工して、性搾取物として流布する。人工知能技術を用いたディープフェイク違法映像は、私たち全員を潜在的被害者リストに載せている。テレグラムn番ルーム事件の加害者チョ・ジュビン(博士ルームの運営者)が昨年3月16日、警察に逮捕された。1年が過ぎた。チョ被告には、一審で合計懲役45年の刑(性搾取物流布40年、犯罪収益隠匿5年)が言い渡された。2カ月後に逮捕されたn番ルームの最初の開設者「カッカッ」ことムン・ヒョンウク被告の一審も判決のみを残している。

 n番ルーム事件でデジタル性犯罪に対する警戒心は高まったが、隠れた加害者集団の大きさを考慮すれば、捕まった数人は巨大なデータの中の小さな「ウイルス」にすぎない。Aさんは「オンライン上の空間にいる巨大な加害者たちは、単にチョ・ジュビンがミスを犯して捕まったと認識している」と話した。彼らの世界では、45年間この社会でオフライン状態になったチョ・ジュビンを「まるで英雄のように考えている」というのだ。

 「オンライン空間に浸っている加害者たちは、警察に逮捕され刑務所に行くことを、まるで一度死んでも蘇ることのできる一種のゲームのようなものだと考えています。処罰されることを全く恐れていません」

 テレグラムn番ルーム事件が韓国社会に残した衝撃と大衆の関心は時間の経過とともに消えていったようだが、無限大に複製されるまた別のn番ルームとの戦いは現在進行形だ。本紙はデジタル性犯罪の実態を毎日目で確認し、デジタル空間で製作者や流布者と果てしない戦いを繰り広げる「性搾取物を消す人々」に会った。

 
テレグラム性搾取共同対策委員会は10日、ソウルの世宗文化会館前で、n番ルームの最初の開設者ムン・ヒョンウク被告(カッカッ)の一審判決を前に記者会見を開いた=テレグラム性搾取共同対策委員会提供//ハンギョレ新聞社

 Aさんは、2018年4月のデジタル性犯罪被害者支援センター開設時から、性搾取物の削除支援業務をしており、もうすぐ4年目に突入する。同支援センターでは被害者の通報があると、流布範囲の把握▽緊急削除支援(各プラットフォームへの削除要請、放送通信審議委員会への遮断要請、警察に提出する証拠資料の作成)▽再流布モニタリングなどを行い、迅速な削除を最優先とする。有害サイトを事前にモニタリングし、性搾取物映像がアップされれば、すぐに削除する。

 支援センターはこの3年間で、月平均約9000件(2021年1月現在)の削除支援サービスを提供した。昨年は約12万5000件を削除した。1日平均で340件の被害映像を削除したわけだ。これまでに支援センターに助けを求めた被害者だけでも2000人あまりにのぼる。

違法撮影映像、トラウマを感じるほど衝撃的

 「被害撮影物を探すためにアクセスするサイトには、被害者の撮影物だけがあるわけではありません。本当にどっさり…動物虐待の映像があるケースもあります。加害者は次第に刺激的な映像を望むようになるため、性暴力映像、特に被害者を虐待する映像が増えています。加害者が加虐に面白さを感じるんだなと思うような映像が多いです」

 Aさんは、業務時間中ずっと有害サイトを見ていなければならないため、とてもつらいと語る。特に、公共の場での違法撮影物は、被害者が撮影されたことを全く知らないため、通報もされないままネット上をさまよっているという。

 「トイレの違法撮影がすごく多くて。それを見て自分がトラウマを感じるほど衝撃を受けて…飲食店に行った時にトイレの風景を覚えておく習慣がつきました。トイレに行くたびに、ここに植木鉢があるんだって覚えておくんです。後で削除業務をする時、その植木鉢のあるトイレなのか、自分が撮影されていないか、そんな確認をする強迫観念まで生じたんです」

 
テレグラム性搾取共同対策委員会は10日、ソウルの世宗文化会館前でn番ルームの最初の開設者ムン・ヒョンウク被告(カッカッ)の一審判決を前に記者会見を開いた=テレグラム性搾取共同対策委員会提供//ハンギョレ新聞社

 Aさんとともに性搾取物の削除業務を担当してもうすぐ4年目になるBさんは、この仕事を始めてから写真そのものを撮らなくなったと言う。友人と会った時、旅行に行く時も同じだ。最近撮った唯一の写真は、職場で職員たちと撮った団体写真。「友達のスマホに私の顔が写真として保存されていて、ハッキングされたりクラウドにアップロードされたりしたら、どんな方法でも盗用されうるという不安が大きいんだと思います」

 支援センターの職員たちは、「感情労働者保護法」の保護対象だ。支援センターが開設されて間もなく、相談員や削除担当者たちはトラウマのカウンセリングを受けるようになった。「2018年に予算を確保し、それから職員は1対1の心理相談を受けています。これが大きな助けになっています。さもなければとっくに辞めていたと思います」(Aさん)

チョ・ジュビンを「ブランド」と考える加害者たち

 Bさんは、チョ・ジュビンやムン・ヒョンウクらが逮捕され、デジタル性犯罪が公論化された時「最も腹が立った」と話す。「衝撃的だったのは、彼らがつかまると、被害映像がより早く広まるんです。捕まると彼らの名前が有名な商標となり、他の加害者たちが『俺、これ持ってる』と自慢したり…。捕まっていない人たちは、チョ・ジュビンよりましな人たちではありません」

 被害映像物の流布者の中には、ハッキング能力を持つ者もいる。支援センターもいつでも標的になりうるという。Bさんは「そのためセキュリティーに万全を期している」と言う。

 幼い頃からスマートフォンを扱い、コーディングを学ぶ若い世代は、デジタル技術には慣れているのにデジタル倫理を学ぶことができずにいると、Aさんたちはもどかしさを吐露する。韓国言論振興財団メディア研究センターは、メッセンジャーの団体チャットルームで違法撮影物を得たり、流布を目撃したりした時、どのように行動したかを尋ねた(2019年、1000人)。「黙って一人で見た」(64.9%)、「そのまま放っておいた」(51.5%)との回答が多かった。「写真や映像を品評した」(38.7%)、「他人に再転送した」(18.6%)、「ダウンロードした」(11.9%)も多かった。「警察などに通報した」は2.6%だけだった。

 「依然として人々は、デジタル性犯罪を物理的暴力に比べて軽く考えています。多くの人は強姦と聞くと大変驚きますが、流布と言われれば大したことではないと考えます。自分がオンライン上に何かアップしたことを、流布だとは考えられずにいるということでもあります」(Bさん)

 ここ数年で法は厳格化されつつある。今年1月に性暴力防止法が改正され、違法撮影物の流布被害に対して削除支援を要請できる人の範囲は、当事者から代理人にまで拡大された。先月、国会は青少年性保護法を改正し、オンラインで児童・青少年に性的行為をするよう誘引する「オンライン・グルーミング」行為を処罰する根拠を設けた。同時に、児童・青少年性搾取物の製作・輸出入罪の公訴時効も廃止された。

 
「かわいいね」「どこの学校?」「写真送ってくれる?」「会おうか?」「映像アップするぞ」青少年に性犯罪加害を加える言葉たち=ゲッティ・イメージバンク//ハンギョレ新聞社

 BさんとAさんは、これからがより重要だと強調する。加害者がきちんと処罰される判例を残すことが重要だからだ。Bさんは「n番ルーム事件の影響で、これまで国会に長く係留されていたデジタル性犯罪関連法が最近になって多く改正された。法こそ改正されたものの、きちんとした加害者処罰につながるのか、まだひやひやしている」と語る。「処罰がきちんなされるようにするには、きちんとした判例を残さねばなりません。さもなければ、今後登場するデジタル性犯罪がきちんと処罰できません」

 n番ルーム事件の中心的加害者に似た手法で性搾取物を製作・流布した者に対する処罰は、低い水準にとどまるケースが多い。大邱(テグ)高裁は昨年6月、児童・青少年性搾取物1300編あまりを製作・流布した疑いで起訴されていたP被告に対し、一審より6カ月軽い懲役2年6カ月を言い渡した。同じ容疑で起訴されていたS被告に対しても、一審では懲役2年6カ月の実刑だったものの、控訴審では執行猶予付きの判決が言い渡された。

人手は増えたものの、契約雇用のため連続性は保障されず

 今や隠しカメラによる撮影は「違法撮影」、リベンジポルノは「デジタル性犯罪」と言い直されている。青少年性保護法上のわいせつ物は「性搾取物」に名称が変わった。数年の間に、デジタル性犯罪の深刻さが広く認識されるようになったからだ。しかし、国際協力のない国内法の強化だけではデジタル搾取物の流布を防ぐことはできない。Bさんは「昨年からは海外サーバーの重要性を強調している。流布から捜査と処罰に至るまで、国際協力が切実に求められる」と述べる。Aさんは「海外の複数の国が、児童・青少年性搾取物に対する規定だけがあり、成人性搾取物に対する問題意識がない。国が被害映像を削除している国は、韓国とオーストラリアだけだ」と語る。

 女性家族部は今年1月、デジタル性犯罪の被害者を迅速に支援するため、支援センターの削除業務人員を既存の17人から39人へ増やした。BさんとAさんは、人員を増やすのも重要だが、被害映像の迅速な削除のために絶対に必要なのは、業務の連続性の保障だと言う。「22人が補充されたものの、教育期間などを除けば、数カ月働いただけで1年の契約が終わる」というのだ。被害撮影物という敏感な情報を扱う業務であるため、セキュリティ教育などを徹底的に行うことから、教育期間は長い方だが、業務に習熟する頃には契約が終了してしまうため、被害者への支援が難しいという。Bさんは「被害映像の削除は技術だけでできるものではない。一つの事件をずっと担当してきた人によって削除ノウハウが蓄積される。しかし数カ月で人が入れ替わってしまうと引継ぎも容易ではない」と語った。

キム・ミヒャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

警察は事件を不起訴の意見を付して検察に送致したが、検察が補完捜査を要請し、警察が再捜査に乗り出したという点で注目される。

2021-02-25 | 韓国の民主化は進んでいく。
韓国検察総長の義母の「利権介入疑惑」、
補完捜査をソウル中央地検が要請

登録:2021-02-24 10:06 修正:2021-02-24 12:17


「納骨堂の詐取介入」告発事件 
警察、昨年末に不起訴の意見を付したが 
検察の要請で1カ月後に再捜査 
 
ソウル警察庁、告発人を再び呼び出し 
義母の横領・詐欺容疑を再捜査 
義母の知人の法曹ブローカーも捜査へ

      

昨年11月、ユン・ソクヨル検察総長がソウル瑞草区の最高検察庁に出勤している/聯合ニュース

 警察が最近、ユン・ソクヨル検察総長の義母のC氏(75)が数千億ウォン台の納骨堂詐取に介入した疑いなどに対する再捜査に着手したことが、23日に確認された。C氏がいわゆる「法曹ブローカー」と共謀し、名義株を横領する方法で納骨堂事業の詐取に介入したという告発事件の捜査だ。これに先立ち、警察は事件を不起訴の意見を付して検察に送致したが、検察が補完捜査を要請し、警察が再捜査に乗り出したという点で注目される。

 ソウル地方警察庁の反腐敗公共犯罪捜査隊は、検察の補完捜査の要請を受け、同事件の告発人のN氏(69)を1月27日に再び呼び出して調査した。ユン総長の義母のC氏が現在裁判を受けている私文書偽造関連の疑いの他に、検察が補完捜査を要請した横領・詐欺の疑いに対する再捜査を始めたもの。警察はまた、C氏の知人で「法曹ブローカー」とされるK氏(82)の弁護士法違反の疑いについても再捜査に着手した。警察は納骨堂事業関係者に対する参考人調査も進めている。

 ユン総長の義母のC氏の納骨堂詐取介入疑惑は、昨年1月、N氏が警察庁に告発状を出して一度捜査が進められた。当時N氏は、自分がC氏の名義貸しを受けた株式の10%を、C氏が法曹ブローカーのK氏に違法譲渡するなどの手口で納骨堂事業をだまし取ったと主張していた。またN氏は、納骨堂の詐取疑惑のほか、2013年にC氏が同業者のA氏と京畿道城南市島村洞(ソンナムシ・トチョンドン)の土地を購入する際、350億ウォン台の通帳残高証明書を偽造したという疑惑と、C氏が約5億ウォンの債務がある法人の財政状況を偽って自分に譲渡した容疑(詐欺)なども告発した。

 当時捜査を担当したソウル地方警察庁知能犯罪捜査隊は、約1年の捜査の末、昨年12月18日に不起訴(却下)の意見で事件を検察に送致した。警察はC氏が2013年に不動産競売で通帳残高証明書を偽造した疑い(私文書偽造)ですでに裁判を受けている点を却下理由に挙げた。送致当時、残高証明書偽造の疑いで裁判中だという理由で告発状に書かれた他の事件まで不起訴送致したことをめぐり、見逃し捜査だという議論も起きた。これについて警察関係者は、「世論の関心が高かった残高証明書事件が強調されて生じた誤解にすぎない。当時、ほかの疑惑についても多方面から調査した」と説明した。

 しかし、検察が事件終結の代わりに補完捜査を要請し、事件は別の局面に入った。ソウル中央地検刑事3部(ホ・インソク部長)は先月8日、警察に残高証明書偽造事件のほかC氏と関連する残りの告発の件全てに対する補完捜査を要請した。捜査が再開されると、N氏は警察にK氏を私文書偽造、偽造調査文書行使などの疑いで追加で告訴した。N氏は2016年11月にもソウル松坡(ソンパ)警察署にK氏を私文書偽造などの容疑で告訴している。警察は翌年3月、ソウル東部地検に起訴意見で事件を送検したが、2018年2月、検察は証拠不十分のためK氏を不起訴処分にした。

 現在、残高証明書偽造の疑いで裁判を受けているC氏は、2013年から2015年にかけて京畿道坡州(パジュ)療養病院を同業者3人とともに経営し、数十億ウォンの療養給付を不正受給した疑いでも在宅起訴され、別の裁判を控えている。この事件をめぐる疑惑について、本紙はC氏に数回電話をかけメッセージを残して立場を尋ねたが、連絡が取れなかった。
イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

朴槿恵政権時代の身元情報資料も出てきている」とし、「国会議員、自治体首長、文化界、労働界など、全方位的に(査察が)行われていた」と述べた。

2021-02-24 | 韓国の民主化は進んでいく。
「李明博、朴槿恵政権の国家情報院、違法査察文書20万件」
登録:2021-02-24 01:56 修正:2021-02-24 07:45


キム・ギョンヒョプ国会情報委員長が記者会見 
「朴槿恵政権での査察は公訴時効前」

      

キム・ギョンヒョプ国会情報委員長が23日、国会情報委員長室で李明博政権時代の国家情報院による査察などの懸案について、記者懇談会を行っている/聯合ニュース

 李明博(イ・ミョンバク)政権時代の国家情報院による政治家査察問題について、共に民主党所属のキム・ギョンヒョプ国会情報委員長は「国情院による違法査察は朴槿恵(パク・クネ)政権時代まで続けられ、非正常に収集された文書の数は約20万件に及ぶと推定する」と述べた。ファン・ギョアン元自由韓国党代表も大統領権限代行時代に違法査察情報の報告を受けていたのではないかとの疑惑も提起された。

 キム委員長は23日午前、国会で記者懇談会を開き、「2009年に査察の指示が下されて以降、中止せよとの指示は確認されていない、というのが先週の国情院長の回答」とし、「文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足して国内の情報組職が改編されるまで続いたと推定する」と語った。キム委員長は「すでに情報公開請求した人々の要求にしたがって(文書)検索を行った結果、朴槿恵政権時代の身元情報資料も出てきている」とし、「国会議員、自治体首長、文化界、労働界など、全方位的に(査察が)行われていた」と述べた。

 国情院は、非正常に収集された文書の数を約20万件と推定している。キム委員長は「情報公開を請求した人たちに対し、1人当たりの身元情報文書が少なくとも3~4件、多い時は10件あまり提供されていることからして、査察対象者数は2万人を超えるのではないかと推定する」と述べた。

 キム委員長は、ファン・ギョアン元自由韓国党代表が朴槿恵政権で大統領権限代行を務めていた頃に違法査察情報についての報告を受けていたはずだという疑惑も提起した。キム委員長は「報告先と明示されているのは民情首席、政務首席、大統領秘書室長で、首相が報告先となっている資料もあった」とし「国情院は大統領直属機関なので首相に報告する義務はないが、これは(ファン・ギョアン当時首相が)大統領権限代行時代に報告されたものではないかと思う」と主張した。

 キム委員長は「報告先が首相室となっている資料もあるということであって、どの時期かは確認できなかった」としながらも「違法査察情報の報告を受けたにもかかわらず、措置を取らなかったというのは深刻な問題だ。李明博政権時代の査察は公訴時効が過ぎているという話も出ているが、朴槿恵政権時代のものは、公訴時効までにはまだ時間が残っている」と話した。

 野党「国民の力」が「金大中(キム・デジュン)政権時代の国情院による盗聴事件」を持ち出して反撃に打って出ていることについては「当時の国情院の職員たちが慣行どおり行っていたもの」と一線を引いた。キム委員長は「金大中政権が発足して違法な盗聴や傍受は行うなとの公開発言があり、違法な盗聴や傍受の件数は非常に少なかった」、「当時のイム・ドンウォン、シン・ゴン両元国情院長の判決文を見ると、(違法盗聴・傍受を)積極的に防がなかったとして有罪判決を受けている」と述べた。
イ・ジヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

「慰安婦」被害者に対する歴史的事実はすでに国連をはじめとする国際社会の常識になっており、日本も一部認めたため、国際司法裁判所を通じて事実関係を認められなければならない段階ではない

2021-02-20 | 韓国の民主化は進んでいく。
「慰安婦」問題、
ICJ付託案が30年経てようやく出てきたわけは?(後)

登録:2021-02-19 06:17 修正:2021-02-19 09:00


          

平和の少女像=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

国際司法裁判所付託への期待

 日本軍「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさんは16日の記者会見で、「私はこれまでできる限りのことをしてきた」とし、「もはや方法がない。韓国政府が国際法で日本の罪を明らかにしてほしい。日本が過ちに気づき反省するよう国際司法裁判所(ICJ)の判断を受けてほしい」と訴えた。「日本軍慰安婦問題国際司法裁判所付託推進委員会」(以下推進委)側は、「慰安婦」制度の主体が日本政府という点を認めた1月のソウル中央地裁の判決を、日本政府が韓国国内の裁判所の判決にすぎないとして正当性を認めていないことから、権威あるICJに持ち込むことを提案した。また、この判決が「金銭賠償を命ずるにとどまり、日本の真の法的責任の認定、歴史教育への反映など被害者の人権救済は期待しにくい」という理由も挙げた。

 推進委側の法律検討を担当したシン・ヒソク博士(国際法)は「予断することはできないが、(ICJが)実体的に『慰安婦』制度が当時の国際法を違反した戦争犯罪として法的責任」を認める一方、「手続き的には個人賠償請求権は1965年の韓日請求権協定で放棄され、韓国裁判所は日本の主権免除を尊重しなければならない」と判断する可能性があると見通した。韓国の立場では被害者たちの個人賠償請求権は喪失するが、日本の法的責任は認められ、日本の謝罪、真相究明など法的義務が残るという主張だ。敗訴したとしても、「『慰安婦』制度に関する資料、証言などを過去(第二次世界大戦後、戦犯裁判である)ニュールンベルク裁判、東京裁判の時のように膨大な歴史記録で永久的に残すことができる」というは利点があると指摘した。シン博士は「韓国はICJで訴訟を起こした経験はないが、勝算がある」とし、2014年にオーストラリアが日本の過度な捕鯨を問題視して起こした「国際捕鯨取締条約違反」訴訟で日本が敗訴した事例や2019年4月に世界貿易機関(WTO)紛争解決機構が日本福島水産物輸入禁止関連事件で韓国勝訴した事例などを挙げた。

      

世界日本軍「慰安婦」メモリアルデーに迎え、2018年8月15日にソウル鍾路区旧日本大使館前で開かれた第1348回定期水曜集会の姿=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

国際司法裁判所への付託をめぐる懸念

 国際法の専門家らは、このようなアプローチに懸念や疑問を呈した。被害者は請求権協定にも個人賠償請求権が残っていることを前提に、日本の法的責任と賠償を要求してきたが、推進委の予測通りの判決が下された場合、国際司法裁判所の判断より“失うもの”が大きいと見ているからだ。

 キム・チャンロク慶北大学教授(法学)は今月16日、国際司法裁判所を通じて「慰安婦」制度が当時の国際法を違反した犯罪だという事実を確認したもらう代わりに、被害者の個人賠償請求権は請求権協定で放棄されて日本の主権免除が尊重されなければならないという判断を受け入れるなら、「弊害は実に深刻であろう」と懸念した。複数の法律専門家もこのような判断が下された場合、2018年の韓国最高裁(大法院)判決と1月のソウル中央地裁判決の意味を歪曲する結果をもたらすと警告した。「両裁判が請求権協定および国家免除を認めなかったため、国際法を違反している」という日本政府の主張を後押しする格好になり、これまで国内外で行ってきた努力を台無しにする恐れがあるという判断だ。また、日本政府の能動的な責任認定と謝罪という被害者の本質的要求は、この問題を国際司法裁判所に移しても解決されないという指摘もある。

 「慰安婦」被害者に対する歴史的事実はすでに国連をはじめとする国際社会の常識になっており、日本も一部認めたため、国際司法裁判所を通じて事実関係を認められなければならない段階ではないという点も、国際司法裁判所にこだわる必要がない理由に挙げられる。これに先立ち、「慰安婦」被害者問題は1994年、国際法律化委員会による「慰安婦・終わらない試練」報告書 (Comfort Women an unfinished Ordeal:『国際法から見た「従軍慰安婦」問題』に収録、日本政府の道義的、法律的責務を認める)▽1996年、国連人権委員会の「戦時における軍事的性奴隷制問題に関する朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国および日本への訪問調査に基づく報告書」(クマラスワミ報告:日本軍慰安婦を『軍事的性奴隷』とし、日本の法的責任の認定)▽1998年、国連人権委員会差別防止と少数者保護小委員会の「現代的形態の奴隷制:武力戦争下の計画的レイプ、奴隷制、奴隷に近い状況」報告書(マクドゥーガル報告書:日本政府の個人賠償及び「レイプ所」の設置・監督責任者訴追を提起)だけではなく、国連女性差別撤廃委員会(1994年、2003年、2004年、2009年・日本政府の責任の認定と賠償などを要求)と 国連拷問防止委員会(2007年)、市民的及び政治的権利委員会(2008年)などからも確認されている。

 韓国の政府関係者および多くの国際法専門家たちが韓日間の紛争の国際司法裁判所への付託に懐疑的である他の理由は、独島(日本名・竹島)問題のためだ。日本は1950年代から独島問題の国際司法裁判所への付託を主張してきた。韓国政府が「慰安婦」など歴史問題を提起しようとすれば、日本は独島問題も一緒に付託すべきだと主張している可能性が高い。これまで独島をめぐる領土問題の存在を認めない韓国政府の立場からすると、大きな打撃になりかねない。16日、推進委の記者会見を見守った彼らの心の底には、被害者女性の利益に合致する結果の導出のための十分な検討と戦略的判断が先に成されなかったという残念な気持ちがある。
キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

今回の改正施行令は、暴力に苦んでこの世を去ったトライアスロンのチェ・スクヒョン選手の事件をきっかけとしてまとめられた。

2021-02-18 | 韓国の民主化は進んでいく。
文大統領
「学校から韓国代表全般に至るまで暴力根絶すべき」

登録:2021-02-17 03:10 修正:2021-02-17 08:20


      

文在寅大統領が16日、大統領府で開かれた画像国務会議で発言している=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 スポーツ界で暴力を受けるなどの人権侵害を受けた被害者が、加害者から直ちに分離され、保護を受けるための方策がまとめられた。

 大統領府は、16日に開かれたオンラインの国務会議において、スポーツ界での人権保護強化策を盛り込んだ「国民体育振興法施行令一部改正令」が承認されたことを明らかにした。改正施行令には、被害者が加害者から分離保護を受けられるよう、従来の申告・相談施設のほかに、臨時保護施設を設置することをはじめ、監視カメラ(CCTV)の設置、過料を科すことなどが追加された。今回の改正施行令は、暴力に苦んでこの世を去ったトライアスロンのチェ・スクヒョン選手の事件をきっかけとしてまとめられた。

 イム・セウン副報道官は「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、忘れかけた頃に繰り返されるスポーツ界の暴行、暴言、性的暴行、強制わいせつなどの事件に遺憾の意を示した」と述べた。また文大統領は「今回の国民体育振興法と施行令の改正を契機として、法と制度が現場でうまく作動し、学校から韓国代表課程全般に至るまで暴力が根絶されるよう、文化体育観光部をはじめとする関連省庁と機関は格別な努力をしてほしい」と要請したという。文大統領は前日にもファン・ヒ文化体育観光部長官に任命状を授与する際に、「暴力や体罰、強制わいせつ問題などのスポーツにおける人権問題が根絶されるよう、特段の努力を傾けてほしい」と述べている。
イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

A氏が落札した土地の元の所有者のK氏は、1945年8月10日に在朝鮮日本人からその土地を購入したが、これは米軍政庁法令に反する行為だった。

2021-02-05 | 韓国の民主化は進んでいく。
日本の敗戦後、日本人の財産は米軍政に帰属…
韓国憲法裁が「合憲」初判断

登録:2021-02-04 01:27 修正:2021-02-04 06:54


違法財産の還収・還元は個人財産権の保護より重要との趣旨

      

      憲法裁判所大審判廷=資料写真//ハンギョレ新聞社

 韓国の憲法裁判所は、日帝強占期(日本の植民地時代)に朝鮮半島において日本人が所有していた財産を、日本の敗戦後に米軍政に帰属させた法令に対して、合憲との決定を下した。解放政局における日本人所有財産の処分問題を扱った憲法裁の初の判断だ。

 憲法裁は3日、裁判官の全員一致により、日本人が所有していた財産に対する処分を扱った在朝鮮米国陸軍司令部の軍政庁法令(米軍政庁法令)条項を、すべて「合憲」と決定した。

 同条項が違憲かどうかは、2016年11月にA氏らが蔚山市中区(ウルサンシ・チュング)の土地を競売で落札したことから問題となった。この土地の所有権を取得したA氏は、中区がその土地を道路などとして使い続けたとして、不当利得金返還訴訟を起こした。しかし中区は、「この土地は国有財産」であり、A氏らは所有権を持たない人たちから土地を誤って取得したと主張した。

 A氏が落札した土地の元の所有者のK氏は、1945年8月10日に在朝鮮日本人からその土地を購入したが、これは米軍政庁法令に反する行為だった。同法令は、1945年8月9日をもって日本人が所有する財産に関する取引はすべて無効とし、日本人が所有・管理していた財産は、すべて米軍政庁に帰属すると規定している。K氏は1945年9月に所有権登記移転を終えているが、8月9日の時点で日本人の所有だったため、取引が禁止される帰属財産だったわけだ。A氏は、米軍政庁の法令が1945年9月25日に公布されたにもかかわらず、8月9日をすべての取り引きの無効の基準とすることは遡及立法禁止に反し、韓国人が日本人から取得した財産まで没収することは過剰禁止原則に反すると主張した。

 しかし憲法裁は、重大な「公益上の事由」があれば、遡及立法は正当だと判断した。憲法裁は「違法な韓日併合条約により、日本人が朝鮮で蓄積した財産を保全し移譲するという公益は、朝鮮半島内の私有財産を処分し、日本本土に撤収しようとしていた在朝鮮日本人や、彼らから財産を買収した人たちに対する信頼保護要請よりもはるかに重大だ」と説明した。違法に蓄積した財産を還収し、これを大韓民国に返すことの方が、当時日本人や彼らと取引した人々の財産権保護よりも重要だと考えたわけだ。

 遡及基準となった1945年8月9日は米国が長崎に原子爆弾を投下した日で、第2次世界大戦が終結し、日本の敗戦が明らかとなった日だ。日本の敗戦により、朝鮮半島に残っていた日本人の財産処分問題も、法的保障が不確実になった日だ。憲法裁は、このような混乱した状況においても、日本人が所有していた財産の自由な処分が可能だとの信頼があったとしても、これは「憲法的に保護するだけの価値がある信頼ではない」と判断した。日本の敗戦直後、日本人の財産を凍結し、毀損を防止したのは、その後樹立される大韓民国政府に委譲するためであるから、遡及を通じて成し遂げようとした公益は明らかだと憲法裁は判断した。
チャン・イェジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

、何よりも米国と国連の強力な対北朝鮮制裁が緩和されるか解除されない限り、北朝鮮への原発建設支援は夢想に過ぎず、不可能なプロジェクトだ。

2021-02-01 | 韓国の民主化は進んでいく。
「北朝鮮への原発建設支援疑惑」が偽りの争点である3つの理由
登録:2021-02-01 06:32 修正:2021-02-01 07:39

           

「朝米枠組み合意」に基づき、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が北朝鮮咸鏡南道新浦地区に建設した韓国型軽水炉核発電所の原子炉基礎コンクリート打設工事(2002年8月7日)の様子=KEDOホームページよりキャップチャー//ハンギョレ新聞社

 韓国政界で話題が沸騰しているいわゆる「北朝鮮への原発建設支援疑惑」は、典型的な“偽りの争点”だ。

 3つの理由が挙げられる。一つ目に北朝鮮への軽水炉(型原発)建設支援事業は米国を含む国際社会が長きにわたり「北朝鮮の非核化」補償策の一つとして提示してきたものだった。二つ目に、北朝鮮に原子力発電所を建設する事業は、南北当局レベルの協力事業として公式に提起されたり、協議されたことがない。三つ目に、何よりも米国と国連の強力な対北朝鮮制裁が緩和されるか解除されない限り、北朝鮮への原発建設支援は夢想に過ぎず、不可能なプロジェクトだ。

1994年の「朝米枠組み合意書」に明示された原発計画

 まず「北朝鮮への軽水炉建設事業」は秘密プロジェクトではない。長い歴史を持つ公のプロジェクトだ。「北朝鮮が非核化の約束を実践すれば軽水炉を建設する」というのは国際社会の公式な約束だ。言葉だけではない。北朝鮮咸鏡南道新浦(シンポ)に「韓国型軽水炉」を搭載した原子力発電所建設工事を実際に行った。1994年10月21日に合意・発表された北朝鮮と米国の「枠組み合意意」がその根拠だ。同合意の第1条1項は「アメリカ合衆国は1994年10月20日付のアメリカ合衆国大統領からの担保書簡により、2003年まで計200万キロワットの発電能力の軽水炉発電所を朝鮮民主主義人民共和国に提供するための措置に責任を持って取り組む」と明示している。これにより米国、韓国、日本、欧州連合(EU)などが理事国として参加した「朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)」が構成され、北朝鮮の新浦に「韓国型軽水炉」を搭載した100万キロワット級の原子力発電所2基を建設する建設工事が、北朝鮮への原発建設疑惑を持ち上げた「国民の力」の前身である民主自由党が政権与党だった金泳三(キム・ヨンサム)政権時代に始まった。軽水炉を「韓国型」にする条件で、建設費用の70%は韓国が捻出することにした。「新浦軽水炉」は2002年8月7日、基礎コンクリート打設工事をしたが、同年10月以後、いわゆる「第2次北朝鮮核危機」の勃発とともに建設工事が中断された。

      

朝鮮半島非核化の青写真と呼ばれる2005年の6カ国協議共同声明の合意と採択の主役であるソン・ミンスン当時6カ国協議韓国首席代表(右から二番目)と北朝鮮のキム・ゲグァン団長(左から二番目)、米国のクリストファー・ヒル首席代表(左から一番目)が会話している/聯合ニュース資料写真

2005年の6カ国協議共同声明で、核エネルギーの平和利用に関する北朝鮮の権利認める

 「軽水炉建設事業」は2000年代半ば、6カ国協議を経て再び進められた。2005年9月19日の6カ国協議で合意・発表された共同声明は第1条で「朝鮮民主主義人民共和国は核エネルギーの平和的利用に関する権利を持っていると宣言した。その他の当事国はこれに対する尊重を示し、適切な時期に朝鮮民主主義人民共和国への軽水炉提供問題について協議することで同意した」と明示した。なお、第3条では「中華人民共和国、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国に対してエネルギー支援を提供する用意を表明した。大韓民国は朝鮮民主主義人民共和国に対する200万キロワットの電力供給に関する2005年7月12日付けの提案を再確認した」と明記した。「200万キロワットの対北朝鮮送電」は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が6カ国協議非核化合意の呼び水として2005年に提案した内容を再確認したものだが、2008年12月以降、6カ国協議の長期空転に伴い、実行に移されていない。

 北朝鮮と米国、または北朝鮮と国際社会の「非核化」関連合意に「軽水炉」または「エネルギー支援」が欠かさず登場するのは、北朝鮮がこの交渉を安全保障とともにエネルギー問題解消のテコとして活用してきた歴史と無関係ではない。そもそも北朝鮮への軽水炉建設支援の約束は、1985年12月、ゴルバチョフ政権のソ連が北朝鮮の相次ぐ要請を受け入れ、軽水炉4基を新浦に建設すると約束したことから始まった(もちろん、北朝鮮の核拡散禁止条約(NPT)への加盟が前提条件となった)。ゴルバチョフ書記長のこの約束はソ連連邦の解体によって実行に移されず、1990年代初めのいわゆる「第1次北朝鮮核危機」を経て、1994年朝米枠組み合意で「米国政府の軽水炉建設支援の約束」として復活した。軽水炉の建設地域として再三名指しされた新浦は、韓国人にとっては「北清(プクチョン)獅子舞」または「北清水売り」で有名なその北清の新しい行政区域名だ。

 遠くは1985年、短くは1994年から続いた「北朝鮮への軽水炉建設支援プロジェクト」は2019年2月、ハノイの朝米首脳会談決裂以降中止された核交渉が再開されれば、再び北朝鮮の意味ある非核化実践を導く“補償策”として論議される可能性が非常に高い。

 このように「北朝鮮への軽水炉建設支援」案は1990年代以降、韓国と米国を含む北東アジア当事国とEUの「北朝鮮の非核化補償策」として多国間プロジェクトで検討され進められただけでなく、実行されてきたが、南北当局レベルの協力事業としては協議されたことがない。歴代の韓国政府は、1982年2月1日、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権のソン・ジェシク国土統一院長官が「20の南北協力モデル実践事業」を提案して以来、これまで道路や鉄道の連結、自然資源の共同開発などは論議・実践したが、原子力発電所建設は両者レベルで取り上げたことがない。こうした歴史は、「非核化」問題が決定的なヤマ場を越えない限り、変わらないだろう。

米国の協力なしには事実上不可能な北朝鮮への原発建設支援

 何よりも今は、米国と国連の強力な対北朝鮮制裁が、北朝鮮との協力事業を徹底的に遮断している。新型コロナウイルスを含む感染病の予防と妊婦・乳幼児栄養支援など国際社会の対北朝鮮人道支援事業さえも、国連安全保障理事会傘下の北朝鮮制裁委員会(1718委員会)の「制裁免除」などの承認を受けなければならない。

 技術的側面から見ても、1994年の朝米ジュネーブ基本合意に基づき建設事業がしばらく進められた「韓国型軽水炉」も、その基本技術は米国が持っており、たとえ北朝鮮への制裁が緩和・解除されても米国の同意と協力なしには韓国政府が単独で進められる事案ではない。

 このような状況にもかかわらず、「韓国政府が軽水炉建設事業を秘密裏に推進する」というのは実体のない荒唐無稽な主張だ。「核武装した北朝鮮に核発電所を?衝撃的な北朝鮮原発ゲート」という野党「国民の力」の認識と主張に対し、笑うべきなのか泣くべきなのか分からないほどだ。
イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

キム大使の登板により、バイデン政権は北朝鮮核問題について急いで解決策を用意しなければならない外交課題だと判断しており、政策見直しの速度も速まるだろうという予測が可能になったわけだ。

2021-01-25 | 韓国の民主化は進んでいく。
北朝鮮核問題に精通したソン・キム氏、バイデン政権で再抜擢された理由は
登録:2021-01-25 06:09 修正:2021-01-25 07:07


オバマ・トランプ両政権で北朝鮮核交渉の第一線にいたソン・キム氏 
米国務省東アジア太平洋次官補代行に電撃抜擢

      

マイク・ポンペオ米国務長官が2018年7月7日、平壌で北朝鮮と高官級協議を始めるために会議場に入っている。後方に今回新たに米国務省東アジア太平洋担当次官補代行に任命されたソン・キム氏(当時駐フィリピン米国大使)の姿が見える=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 米国務省がジョー・バイデン政権発足初日の20日、北朝鮮核問題に精通するソン・キム駐インドネシア米国大使を、東アジア問題全般を担当する東アジア太平洋担当次官補代行に任命したことが確認され、その背景と影響に関心が集まっている。キム大使はトランプ政権が情熱的に推進していた北朝鮮の核交渉にも深く関与していただけに、バイデン政権が公に明らかにした北朝鮮核問題の政策検討過程に一層はずみがつくものだと見られる。

 バイデン政権の主要な関係者らは、米国の外交の“最大の難問”の一つである北朝鮮核問題をどう解決していくのかについて、「過去の政策に対する見直しを行うだろう」という原則のみを公開しただけで、具体的な言及は控えている。国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏は19日の上院承認公聴会で「韓国や日本などの同盟国とすべての案を検討するだろう」と明らかにし、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官も22日の会見で「私たちは、米国人と私たちの同盟を安全に守るために新たな戦略を取り入れる。そのアプローチは、韓国や日本と相談し、徹底的な政策の見直しを行うことから始まるだろう」と述べた。問題は見直しの“速度”と“方向”だ。

      

2018年7月7日、平壌での朝米高官級会議。ソン・キム駐フィリピン大使、アレックス・ウォン東アジア太平洋副次官補、アンドリュー・キムCIAコリアミッションセンター長、アリソン・フッカーNSC朝鮮半島担当補佐官らがポンペオ長官を補佐した=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 そのような意味でソン・キム大使の抜擢は、バイデン政権の北朝鮮に対する動きに関連し、相当な含みを持つものだとみられる。ソン・キム大使は、オバマ政権時代には北朝鮮核問題担当特使と6カ国協議首席代表を歴任した北朝鮮核問題の専門家であるうえ、しばらく公職から外れていたブリンケン国務長官指名者やウェンディ・シャーマン副長官指名者、カート・キャンベル国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官らと異なり、トランプ政権時代も北朝鮮核問題の交渉の真っただ中にいた。特に、2018年6月12日にシンガポールで開かれた第1回朝米首脳会談の議題を論議するための5月末の板門店(パンムンジョム)実務者協議で、“鉄壁”のチェ・ソンヒ北朝鮮外務省副局長を相手にし、“歴史的”なシンガポール会談の際も現場を見守った。

 以後、キム大使はマイク・ポンペオ前国務長官の7月6~7日の第3回訪朝時も平壌に同行し、キム・ヨンチョル労働党副委員長兼統一戦線部長(当時)と朝米高官級協議に臨んだ。当時、非核化の第一歩として核施設などの「申告」を要求するポンペオ氏に対し、キム・ヨンチョル氏は携帯電話を投げつけ、「トランプに電話しろ。トランプならそのように言わないだろう」と声を張りあげたと伝えられている。ポンペオ氏らが平壌を去った直後、北朝鮮外務省報道官は朝鮮中央通信を通じ、ポンペオ氏が「強盗のような非核化要求だけを持ってきた」と宣言した。

 キム大使は8月にスティーブン・ビーガン氏が対北朝鮮政策特別代表に任命された後、北朝鮮との実務交渉から外されるが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が朝米対話の出発点にすれば良いと明らかにした「シンガポール共同宣言」については交渉実務者だっただけに、ソ・フン大統領府国家安保室長やチョン・ウィヨン外交部長官候補者などの韓国の主要関係者らと同じぐらい、その意味と限界を深く理解しているものだとみられる。すなわち、キム大使の登板により、バイデン政権は北朝鮮核問題について急いで解決策を用意しなければならない外交課題だと判断しており、政策見直しの速度も速まるだろうという予測が可能になったわけだ。さらに、韓国系であるキム大使は韓国語を母国語のように使うことができ、韓国と深みのある意思疎通が可能だ。しかし、キム大使が「代行」の札をはずし、正式に東アジア太平洋次官補として実際の政策を執行するようになるかは、もう少し見守らなければならない。

 問題は、バイデン政権の対北朝鮮政策の“方向”が、文在寅大統領の考えとどの程度一致するかだ。果敢に「朝鮮半島平和プロセス」を再稼動し、目に見える成果を出そうとする“任期末”の文在寅政権と異なり、バイデン政権は過去のオバマ・トランプ両政権で度重なった失敗を繰り返さないために、極めて慎重にアプローチするものだとみられるからだ。特に、米国の外交官としてシンガポール会談の直後に平壌で「朝鮮半島非核化」に対する北朝鮮の独特なアプローチを直接確認したキム大使の考えは、韓国側の関係者と異ならざるをえない。場合によっては、最高の世話役になってくれることを期待した人物が、最悪の障害物になることもありうる。
キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

「文在寅大統領は、セウォル号惨事の真実をきちんと解明することができる新たな捜査、責任を持って大統領府・情報機関・軍などの権力機関が制限なく調査と捜査に取り組むよう指示すること・・・

2021-01-24 | 韓国の民主化は進んでいく。
「セウォル号事件関連疑惑『嫌疑なし』許せぬ、大統領は取り組みを」…
遺族が剃髪

登録:2021-01-23 02:27 修正:2021-01-23 07:14

光化門から大統領府までプラカード手にデモ

      

セウォル号惨事の遺族とチェ・ホングク牧師が22日、大統領府の噴水前で行われた剃髪式に参加した=4・16連帯提供//ハンギョレ新聞社

 ファン・ギョアン法務部長官(当時)による捜査外圧疑惑など、セウォル号事件関連疑惑を捜査していたセウォル号惨事特別捜査団(イム・グァンヒョク団長、以下「特捜団」)が「嫌疑なし」とした処分に、遺族らは強く反発し、22日に剃髪式を行った。遺族は、特捜団による捜査結果について「セウォル号惨事の責任者たちに免罪符を与えた」と述べ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に真相究明を求めた。

 4・16セウォル号惨事家族協議会、4・16連帯、4・16市民同胞は22日午後、大統領府の噴水前で記者会見と剃髪式を行い、「文在寅大統領は、セウォル号惨事の真実をきちんと解明することができる新たな捜査、責任を持って大統領府・情報機関・軍などの権力機関が制限なく調査と捜査に取り組むよう指示することを約束しなければならない」と訴えた。

 これらの団体は特捜団の捜査結果について「国民がセウォル号惨事に対して抱いている主要な疑惑について全く捜査していない」とし「結局、過去の検察の手抜き捜査とセウォル号惨事の責任者たちに免罪符を与えたも同然だ」と批判した。2019年11月に発足した特捜団は17の事件を捜査し、ファン元長官による検察捜査への外圧疑惑、旧国軍機務司令部(現軍事安保支援司令部)と国家情報院による遺族査察疑惑などの12の事件に嫌疑なしの処分を下した。

 記者会見に先立って行われた剃髪式には、4・16セウォル号惨事家族協議会の執行委員長で故ユ・イェウンさんの父であるユ・ギョングンさんを含む遺族5人とチェ・ホングク牧師が参加した。ユさんは剃髪式を前に「剃髪そのものは恐れることもなく、事実たいしたこともないが、剃髪してでも私たちの声を伝えざるを得ない状況に腹も立つし、怖い」と述べ、「文在寅政権と民主党は、セウォル号惨事の真相究明と責任者処罰、安全な大韓民国作りのために、あらゆる権限を使用すべき」と訴えた。

 4・16セウォル号惨事家族協議会、4・16連帯、4・16市民同胞は23日に、光化門から大統領府までプラカードを掲げてデモを行うなど、セウォル号惨事7周年まで共同行動に取り組む方針だ。
チャン・ピルス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

「報道官談話」でさらに政府は「この判決が外交関係に及ぼす影響を綿密に検討し、日韓両国の建設的かつ未来志向的な協力が続くよう、あらゆる努力を傾けていく」と結論付けています。

2021-01-20 | 韓国の民主化は進んでいく。
「慰安婦」判決で韓日関係が破局?大げさに騒ぐのはやめよう
登録:2021-01-20 02:55 修正:2021-01-20 07:25


政治BAR_ キル・ユンヒョンのそこが知りたい

      

自ら日本軍「慰安婦」被害者だったことを最初に公表したキム・ハクスンさん=資料写真//ハンギョレ新聞社

 8日に韓国の裁判所が国際慣習法上の主権免除(国家免除)の原則を破り、日本政府に日本軍「慰安婦」被害者への賠償を命ずる判決を下してからというもの、韓日両国で同判決の影響を懸念する声が出ています。でも、少しじっくり考えてみましょう。問いたいのは、この判決が本当に韓日関係を2019年の秋のような激しい衝突へと追い込むのだろうか、ということです。

 まず、日本の動きを見てみましょう。外務省の秋葉剛男事務次官は判決当日、ナム・グァンピョ駐日韓国大使を呼び、「極めて遺憾であり、日本政府として(判決は)断じて受け入れられない」という強い抗議の意を伝えました。続いて午後には菅義偉首相が記者団に対し、「我が国としては、このような判決が出されることは断じて受け入れることはできない」との意向を改めて明らかにします。翌日9日、日本のメディアは政府当局者の話として、「日本政府が国際司法裁判所(ICJ)への提訴を検討している」と報じ、自民党外交部会は15日の会議で、政府に対抗措置を取るよう求める決議文を採択しました。

 この判決に対する韓国政府の立場も、判決当日の8日の「外交通商部報道官談話」で公式化されます。その冒頭で政府は「裁判所の判断を尊重して、慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するために韓国政府がなしうるあらゆる努力を行っていく」という原則論的な立場を伝えた後、続いて「2015年12月の韓日政府間の慰安婦合意(以下『12・28合意』)が両国政府の公式な合意であることを想起する」という表現を用います。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2017年12月28日の12・28合意を再検討する調査報告書が公開された後に、「この合意によって慰安婦問題が解決されたとは言えない」という立場を明らかにしています。もちろん、当時も「合意が政府間の公式の合意であることは否定できない」と言及してはいますが、その後「和解・癒し財団」が解散するなど、合意を無力化する作業を続けてきたことも事実です。そのようなことから、政府談話に12・28合意に対する言及が再登場したということは、慰安婦問題に対する政府の立場が強硬な「原則論」から「現実論」へと旋回したことを示すものだと評することができます。これを証明するように、「報道官談話」でさらに政府は「この判決が外交関係に及ぼす影響を綿密に検討し、日韓両国の建設的かつ未来志向的な協力が続くよう、あらゆる努力を傾けていく」と結論付けています。

 文在寅政権は、昨年9月の菅政権発足以降、今年7月に予定される東京五輪を朝鮮半島平和プロセスを再稼働させる「平和五輪」として活用するため、韓日関係の改善を試みてきました。文在寅大統領が14日に新任のカン・チャンイル駐日韓国大使に伝えた「時に問題が生じるとしても、その問題によって未来志向的に発展すべき両国関係全体が足を引っ張られてはならない」との言葉や、18日の新年の記者会見で述べた、この判決に「率直に行って少し困惑したのは事実」との発言は、このような基調を再確認するものです。

 それではまた上の問いに戻ってみましょう。慰安婦判決は、強制動員被害者への賠償を命じた2018年10月の判決のように、韓日関係を破綻へと追い込むことになるのでしょうか。結論から言えば、そんなことにはならないだろうと予測することができます。韓国内の多くの専門家が、韓日の摩擦を避けるために国際司法裁判所の紛争解決手続きに従おうと言ったり、「くみしやすい日本を相手に行くところまで行きついた韓国司法の冒険主義は、完全に別の次元に踏み込んでいる」(「朝鮮日報」のソン・ウジョン副局長)との懸念の声をあげたりしています。しかし、本判決を支持する「正義の視点」ではなく、「現実外交的視点」に立つとしても、本判決について我々が大きな過ちを犯したかのように、過度に大げさに騒ぎ立てたり姿勢を低くしたりする必要はないと私は判断します。

      

強制徴用損害賠償訴訟の原告代理人と韓日の市民団体の活動家が2018年11月12日、被害者の写真を抱いて東京の新日鉄住金本社に向かっている。4人の原告のうちイ・チュンシクさん(94)を除く3人は、最高裁判決を待たずに亡くなった=資料写真//ハンギョレ新聞社

 どうしてそう思うのか、ですって?

 韓日関係を荒波の中へと追い込んだ最高裁判決以降の状況を振り返ってみましょう。韓国の最高裁は2018年10月、日本製鉄などの日本企業に対し、過去の植民地時代に強制労働をさせた韓国人被害者への、1人当たり1億ウォン(約943万円)の賠償を命ずる判決を下します。その際も日本政府は判決を強く非難し、決して受け入れられない旨の談話を発表します。しかし、日本政府がこれに対して具体的な報復措置をとったのは、それから実に8カ月もたった2019年7月でした。今もみなさんの記憶に生々しい、半導体の生産に欠かせないフッ化水素などの3つの物質の輸出規制などの措置でした。

 日本政府はなぜ、すぐに報復に出ずに8カ月も待ったのでしょうか。この判決は、強制動員の被害者たちが、自分たちの若い時代に耐え忍ばねばならなかった厳しい労働に対して、具体的な賠償と補償を命ずることを内容とするものでした。このとき重要だったのは、被害者原告が「実際に賠償を受けること」でした。そのため原告団は日本企業の韓国内資産を差し押さえ、これらの資産を売却する、いわゆる「強制執行手続き」に取り掛かります。日本政府としては、自らが「受け入れられない」と判断した裁判の結果として、日本企業に「実際の被害」が生じたのです。日本政府はこのような状況を避けるため、韓日請求権協定3条1項に基づき、2019年1月9日に「外交協議」を要請し、続いて5月20日に、今度は3条2項に基づき「仲裁」を要請します。しかし当時、朝米核協議にあらゆる外交力を集中していた文在寅政権は、日本政府の要請を無視します。その結果発生したのが2019年7月の報復です。つまり、日本政府が報復措置を取ったのは、判決そのもののためではなく、原告が進めた強制執行と韓国政府の「意図的無視」のためだったのです。

 本当か、ですって? 日本政府が仲裁を要請した翌日、2019年5月21日の河野太郎外相の記者会見の内容を見てみましょう。

 「1月9日に、韓国に対して請求権協定に関する協議の申し入れをした。韓国側ではイ・ナギョン総理がこの問題の対応のとりまとめ役を行われているということなので、日本側としてはイ・ナギョンさんの対応のとりまとめを、ある面、支える意味で少し抑制的な対応をしてきたつもり。多少時間がかかるだろうということは覚悟していたし、しばらく、4か月以上待ったが、先日そのイ・ナギョン総理が『韓国政府ができることには限界がある』というような発言をされた。それを聞くと、我が方としてもこれ以上待つわけにもいかないということから、仲裁手続き、仲裁付託ということを通告するに至った。(中略)万が一、日本企業に実害が及ぶようなことがあれば、日本政府として必要な措置をとることになろうと思う」

 つまり、日本政府が動いたのは、判決そのもののためではなく、韓国政府の無対応と日本企業に実際の被害が及ぶのではないかという懸念のためだったということです。

 今回の慰安婦判決はどうでしょうか。強制動員訴訟とは異なり、今回の慰安婦訴訟は、被害者たちが日本政府から金を受け取るために始めたのではありません。被害女性たちは長きにわたる水曜集会の歴史の中で、自らが長い闘争に立ち上がったのは「金のためではない」と強調してきました。日本政府が8日の判決の趣旨を受け入れ、慰安婦制度が「日本が組織的かつ計画的に運営した国家犯罪」であるという事実を認めれば、その時点で全ての対立は解消され得ます。つまり、被害者やその遺族には、日本政府の財産を実際に探し出して、差押え・売却などの強制執行手続きを開始する意志はないのです。被害女性たちが願うのは金ではなく、歴史的な正義だからです。

 そう言ってるだけじゃないのか、ですって? 現在進行中の慰安婦裁判は2件です。8日に判決が出た第1次訴訟の原告(遺族含む)は12人、3月24日に弁論期日が延期された第2次訴訟の原告は20人です。この32人のうち、かなりの人が、12・28合意によって作られた和解・癒し財団から1億ウォンを受領しています。普段から歴史的な正義を強調してきた被害女性たちが、財団からも支援金を受け取りつつ、この判決で金を受け取るために「他国の国家財産に対する強制執行」という無謀な行いをするとは考えにくいのです。実際にイ・ヨンスさんは16日付の「朝鮮日報」のインタビューで、「日本の首相が公開の場に出て来て、世界中がみな聞くようにして被害者に直接謝罪すべきです。そのようにさえすれば、私は何も必要ありません。金の話はしたこともありません。今からでも謝るのであれば裁判(損害賠償訴訟)も取り下げるつもり」と述べています。第2次訴訟の原告代理人であるイ・サンヒ弁護士も「日本政府が判決の趣旨を受け入れればよい。被害女性たちがほしがっているのは金ではなく歴史の正義」と述べています。

      

水原平和ナビの会員をはじめとする市民が、2020年6月24日にソウル鍾路区の旧在韓日本大使館前で「日本軍慰安婦問題の解決を求める水曜集会」を行っている=資料写真//ハンギョレ新聞社

 それでは、日本政府の立場はどうでしょうか。原告が強制執行を行わないのに、むやみに韓国に対する報復措置を取るでしょうか。それはありません。今月15日の茂木敏充外相の記者会見の内容を見てみましょう。

 「今般の対日訴訟判決については、先日も申し上げたとおり、国際法上も二国間関係上も、到底考えられない、異常な事態が発生したと極めて遺憾に捉えている。このことについては、9日、私からカン・ギョンファ韓国外交部長官に対し直接電話をして、強く抗議をした。そして抗議だけではなくて、日本政府としては、韓国が国家として、国際法違反を是正するために適切な措置を早急に講じることを強く求めたところで、引き続きあらゆる選択肢を視野に入れて、毅然として対応していきたい。

 (質問:「あらゆる選択肢」というのは、いわゆる報復措置も含めていると認識してもよろしいでしょうか。)

 多分、報復措置と言うと、日本が何かやられていることに対して対抗措置を取るということだが、(今言っているのは)決してそういうことではなく、今、韓国が国際法違反の状態を起こしている、それに対して是正を促すということであり、それを報復とは言わない」

 茂木外相は、報復措置は日本が「やられた場合」、つまり直接的被害を受けた場合に取るもので、そうでない以上は行う意思はない、と答えています。原告団が強制執行手続きを行わない限り、日本が先に動くことはないでしょう。そして、原告に強制執行を行う意思はありません。

 結局、今月8日の判決による韓日の対立は、「静かな対峙」として長期化する可能性が高いのです。韓国の原告はこの判決により、1991年8月のキム・ハクスンさんの初の証言から30年にわたる長い闘争の末、日本政府に「法的責任」があったことが韓国の裁判所から認められました。そのような意味において、この判決は、長い慰安婦闘争の最後を飾る「象徴的な判決」と言えます。日本政府も、本人たちが「最終的かつ不可逆的に解決された」と主張してきた慰安婦問題の解決に向けて、国際司法裁判所に持ち込むという無茶はしないでしょう。
キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

文在寅大統領が最終候補を指名し、人事聴聞要請案を国会に提出すれば、国会は提出日から20日以内に聴聞会を終えなければならない。

2021-01-02 | 韓国の民主化は進んでいく。
高位公職者犯罪捜査処、新年早々の発足に目途…
文大統領が処長候補を指名

登録:2020-12-29 02:24 修正:2020-12-31 08:46


処長にキム・ジヌク憲法裁判所先任研究官を指名

          

チョ・ジェヨン委員長が28日、ソウル汝矣島の国会で開かれた「高位公職者犯罪捜査処長候補推薦委員会」の第6回会議を主宰している/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が30日、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)処長候補としてキム・ジヌク憲法裁判所先任研究官をを指名した。キム研究官は判事出身で、大韓弁護士協会が推薦した候補だ。

 処長候補が指名されたことで、公捜処の1月発足は現実味を帯びてきた。文在寅大統領が最終候補を指名し、人事聴聞要請案を国会に提出すれば、国会は提出日から20日以内に聴聞会を終えなければならない。聴聞会を経た後、文大統領が指名者を処長に任命すれば、公捜処発足のための「8合目」は越えることになる。

 その後、処長は公捜処の組織編成に入る。公捜処には次長、捜査処検事、捜査処捜査官などが必要だ。次長は処長の推薦により大統領が任命する。
高位公職者犯罪捜査処処長に指名されたキム・ジヌク候補

 公捜処の核となる捜査処検事は、7名で構成される人事委員会の推薦により大統領が任命する。人事委員会は処長、次長、処長が委嘱した1名、与党推薦委員2名、野党推薦委員2名で構成される。委員会は過半数の賛成で捜査処検事候補を選ぶことになる。捜査処検事の任期は3年だ。在任は3回まで可能で、最長9年。

 公捜処の捜査対象は大統領▽国会議員▽最高裁長官および最高裁判事▽憲法裁判所長官および憲法裁判官▽大統領秘書室・国家安保室・大統領警護処・国家情報院の3級以上の公務員▽判事・検事▽警務官以上の警察官などで、規模は全体で7000人あまりに達する。捜査対象となる高位公務員の配偶者と直系尊卑属まで含めれば、規模はさらに大きくなる。最大65人の公捜処が担当するには大きすぎる。初期には、検事の不正容疑についての捜査に集中するものと見られる。

 公捜処の捜査対象には「検察総長」も明示されている。法務部が捜査依頼したユン・ソクヨル検察総長の職権乱用容疑(「裁判所の政治傾向分析文書」作成指示)事件は現在、ソウル高等検察庁が担当しているが、公捜処が望むならこの事件を担当することもできる。ただしその場合は、再び公捜処の政治的中立性をめぐって問題が提起される可能性がある。

 野党側の推薦委員は、候補議決の過程に対する行政訴訟に乗り出すことを明らかにした。国民の力が推薦したイ・ホン弁護士は本紙に「ソウル行政裁判所で議決無効確認の行政訴訟を起こすとともに、議決に対する執行停止の仮処分を申請する。また、改正公捜処法に対しても違憲法律審判を求める」と明かした。
キム・ウォンチョル、キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )