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ドイツ連邦憲法裁判所は29日、ドイツの気候変動法の一部を違憲とする決定を下した。2030年以降の温室効果ガス削減に関する内容が十分でないとして、これを「未来世代の基本権侵害」と判断したのだ。

2021-05-03 | 資本主義という体制そのものが問われている

ドイツ憲法裁

「温室効果ガス削減の負担、未来世代に持ち越すのは違憲」

登録:2021-05-01 03:58 修正:2021-05-01 09:36
 
「気候変動法の2030年以降の削減計画は不十分 
未来世代に過度な負担与えるため、基本権侵害」 
韓国の青少年たち、韓国の訴訟に影響を及ぼす可能性に注目
 
青少年気候行動が昨年3月13日午前、憲法裁判所前で記者会見を行っている。彼らは、温室効果ガス削減目標を消極的に規定した現行法令は、青少年の基本権を侵害するとして、低炭素グリーン成長基本法などの違憲確認を求める憲法訴願審判を請求した=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 「自由の機会は世代ごとに比例して分かち合われなければならない。温室効果ガス削減の負担は、未来世代に一方的に移転されてはならない」

 ドイツ連邦憲法裁判所は29日(現地時間)、ドイツの気候変動法の一部を違憲とする決定を下した。2030年以降の温室効果ガス削減に関する内容が十分でないとして、これを「未来世代の基本権侵害」と判断したのだ。この判決は、ドイツの環境保護団体ブント(BUND)、未来のための金曜日、グリーンピースなどが起こした違憲訴訟で下された。彼らの主張は、韓国政府の不十分な気候変動対策を問題視して違憲訴訟を起こした韓国の青少年の主張に似ている。国際的に判例が少ない中、今回のドイツ連邦憲法裁判所の決定は、韓国の憲法裁判所の判断にも影響を及ぼし得ると評価される。

 ドイツの気候変動法は、国の温室効果ガス排出量を2030年までに1990年に比べ55%削減し、この目標に合わせて各部門に年間排出量を割り当てることを規定している。これについてドイツ憲法裁は「(2050年の)カーボン・ニュートラル(炭素中立)を達成するには不十分。パリ協定で定められた気候変動抑制目標を達成するには、2030年以降に、より急激に温室効果ガスを削減しなければならなくなる」と判断した。そしてドイツ連邦議会に「2030年以降の温室ガス削減をどうするのかを具体化した条項を、年末までに用意せよ」と注文した。

 ドイツ憲法裁は今回の決定文で「基本法(ドイツ憲法)は、現世代が生命の自然的基礎を慎重に扱い、後の世代がそれを保存できない状況に置かれないようにしている」と述べた。憲法裁は説明資料で、「人間の生活のほとんどの側面が温室効果ガスの排出を含むため、排出量を減らすことはあらゆるタイプの自由に影響を与える。削減の負担を2030年以降に先送りすることは、若い世代の自由を侵害するもの」と述べた。2050年にカーボン・ニュートラルに到達するには、現在の2030年までの削減目標が低すぎるため、2030年以降の未来世代の負担が重くなり得るとの判断だ。

 訴訟を起こしたドイツの環境団体と法律専門家たちは「これまでのドイツの気候訴訟で前例のない歴史的判決だ。今回の判決は、気候変動への対応行動を大きく強化させるだろう」と歓迎した。未来のための金曜日の活動家としてこの訴訟に参加したルイザ・ノイアーバウアー氏は英国「ガーディアン」などの外国メディアに「想像できないほど、多くの人々にとってすばらしい日」と述べた。弁護団からは「憲法裁がドイツ政府の横っ面をぴしゃりとはたいた」という評価が出た。

 韓国の専門家の間でも、これまでの国外の気候関連の判決と比べて前進していると評価されている。オランダとアイルランドの最高裁判所、フランスの裁判所など、世界の主要国の司法機関は、気候変動は政治と政策の領域ではなく国民の基本権侵害にかかわる司法の領域であるとのコンセンサスを形成してきた。今回のドイツ憲法裁の判決は、国が現在の世代と未来の世代を気候変動から同様に保護できなければ基本権の侵害となることを認めたことが、特に新しい。

 そのため、今回の判決が韓国の気候訴訟にどのように影響するかも注目される。現在の世代が温室効果ガスを十分に減らさないことは未来世代の基本権の侵害となり得ると指摘したドイツ連邦憲法裁の論理は、昨年3月に同様の理由で訴訟を起こした韓国の青少年たちに前向きなシグナルとして受け止められている。青少年の法律代理人を務める気候ソリューションのユン・セジョン理事(弁護士)は「2050年カーボン・ニュートラルを宣言していながら、2030年の国の温室ガス削減目標を上げない韓国の状況は、ドイツと似ている。削減目標という具体的領域で憲法的審査を行ったということが、最も大きな進展」と評価した。青少年たちと韓国政府からそれぞれ意見書の提出を受けた憲法裁判所は、国内外の研究資料を収集するなど、審理を進めている。

キム・ジョンス、チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国社会の慢性的問題は韓国国内に来ている海外コリアンに対する嫌悪という感情を生む。だが、これらの問題はかつて、韓国人を真っ先に不幸にしてきた社会的病弊だったことを忘れてはならないだろう。

2021-04-29 | 資本主義という体制そのものが問われている

[朴露子の韓国・内と外]“同胞”たちを差別する国

登録:2021-04-27 21:05 修正:2021-04-28 10:14
 
「母国」に帰還して、罪もないのに拷問室に連行された在日同胞が耐えた苦痛は筆舌に尽くしがたいものだった。ところが“カネ”がすべての価値の基準になる新自由主義時代、そして米中が尖鋭に対立する中で、韓国の世論が米国に傾倒する地政学的葛藤の時代に、もう一つの「国民的他者」になったのは、低賃金地域である延辺から来た中国国籍の同胞たちだ。最も激しい差別を日常的に体験するマイノリティ集団として、障がい者、性的マイノリティ、セトミン(脱北住民)と共に、「朝鮮族」と呼ばれる中国同胞が浮上したのだ。
 
 
                                        イラストレーション=キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 20年余り前、私は韓国のある私立大学でロシア語講師として働いていた。ロシア語科で私は唯一の外国人だったが、同じ大学の英文科にはネイティブスピーカーの教授が10人余りいた。彼らの中に黒人は1人もおらず、私の知る限り、その当時は他の大学にも黒人出身のネイティブスピーカーの教授はほとんどいなかった。米国社会の人種差別パターンを、韓国の大学でもそのまま見習った結果でなかったかと思う。ネイティブスピーカーの教授の大多数は中産層の白人であり、幾人かは二世の在米同胞出身だった。米国で生まれ育った彼らの英語は、白人ネイティブスピーカーの教授と何の違いもなかった。ところが、彼らと話してみると、彼らによって「両親の故郷」である韓国で就職することがどれほど大変だったのかがよく分かった。大学や塾で在米同胞が白人ネイティブスピーカーに比べて“劣等な”存在として扱われていた。彼らと話を交わして、韓国で最も差別を受ける外国人の範ちゅうに在外同胞が属するという事実を初めて知った時、大きなショックを受けた。その当時も「民族」のような用語は広く使われていたが、実際は海外の韓民族こそが韓国国内で冷遇されがちだったのだ。

 近代に入って朝鮮半島は「離散」の地になった。植民地時代の抑圧、そしてその後の深刻な貧困は、本国の総人口に比べて東アジアで最も多いディアスポラを産んだ。海外に暮らすコリアンは、朝鮮半島の総人口の約10%に達するが、それは中国の総人口に対する海外華僑の割合や日本の総人口に対する日系人の割合(それぞれ約3%)、海外で暮らすベトナム人の割合(約4.4%)よりはるかに高い。東アジアではコリアンこそが「離散の民族」になった。ところが、「離散したコリアン」に対する朝鮮半島の二つの国家の態度はいつも好意的であるとばかりは言えなかった。彼らは一方では経済次元として切実に必要な「資源」だったが、もう一方では、南北いずれにもみられる総動員式の兵営秩序に合わない「異質分子」だった。その結果、朝鮮半島の二つの国家との関係において彼らがこうむった被害は少なくなかった。

 6・25戦争(朝鮮戦争)以後に労働力と外貨を切実に必要とした北朝鮮は、1959年から在日朝鮮人を受け入れ始めた。1980年代中盤までに9万3300人を超える在日同胞が北朝鮮に渡った。一方では、彼らにとって北への送還は日本社会での深刻な差別から抜け出す道だった。しかし他方では、異質な社会で生きて来た彼らをまともに受け入れるほど北朝鮮社会の寛容度は高くなかった。適応に失敗した事例が相次ぎ、不平・不満を露骨に吐露する人々には弾圧が加えられた。ところが、同じ時期の韓国でも在日同胞が体験した受難は決して少なくなかった。根本的な理由はまったく同じだった。はるかに自由な異質世界で生きて来た人々を、一つの大きな兵営のような韓国社会がまともに包容するわけがなかった。同胞企業のロッテグループのような会社が1960~70年代に韓国に進出した時には、朴正煕(パク・チョンヒ)政権から全幅の支援を受けたが、多くの在日同胞の「母国帰還」は悲劇で終わった。1970~80年代、母国留学生など韓国に滞在した在日同胞がかかわった各種の「スパイ事件」は319件も発生したが、多くの場合は拷問による自白強要のようなねつ造された事件だった。「母国」に帰還して、罪もないのに拷問室に連行された在日同胞が耐えた苦痛は筆舌に尽くしがたいものだった。

 冷戦が終わってからは「総連系と関連があるかもしれない」という在日同胞に向けられた疑いのまなざしはある程度やわらいだ。現政権期には韓国国籍でない朝鮮籍の在日同胞の母国訪問も可能になるなど、種々の進展があった。ところが“カネ”がすべての価値の基準になる新自由主義時代、そして米中が尖鋭に対立する中で、韓国国内の世論が米国に傾倒する地政学的葛藤の時代に、もう一つの「国民的他者」になったのは、低賃金地域である延辺から来た中国国籍の同胞たちだ。大韓民国で今最も激しい差別を日常的に体験するマイノリティ集団として、障がい者、性的マイノリティ、セトミン(脱北住民)と共に、「朝鮮族」と呼ばれる中国同胞が浮上したのだ。

 1970~80年代の在日同胞に向けられた視線と同じように、中国同胞を凝視する韓国国家と多くの住民の視線は二重的であり自己矛盾的だ。一方では、1970~80年代の韓国経済にとって在日同胞の「財力」が必要だったように、今日の韓国経済にとって中国同胞の「労働力」は必須だ。帰化者などまで含めれば、現在韓国に滞在する中国同胞は約80万人、すなわち中国国内の朝鮮族コミュニティ全体の3分の1以上だ。ここまで多くの中国同胞が韓国に来ている理由は簡単だ。それだけ韓国人たちが回避しようとする職種で彼らの労働力が切実に要求されるためだ。しかしもう一方では、反共産主義の狂気の時代に母国に来た在日同胞がいともたやすく「朝総連系連座者」にされたように、多くの韓国人は朝鮮族を、「同盟国米国」の敵と認識される中国という「国家」の延長であり一部分であるとみなそうとする。結局、新冷戦の二本の軸の間に「挟まった」中間的存在になった朝鮮族は、極度に困難な境遇に置かれることになるわけだ。中国国内でも比較的貧しい地方である東北三省の出身である彼らは、韓国を経済的生存の次元で必要とするが、同時に多民族国家中国の少数者として当然「人民」共同体の一員として認められるために中国に対する帰属意識を表わさなければならない立場だ。“「民族」と「国家」が同一視される国で育った韓国人たちにとっては、帝国型国家において一つの少数民族が政治・文化的に生存するために行わなければならない苦闘とはどんなものなのか、理解するのが難しいかもしれないが、理解しようとする努力さえみられないことが問題だ。

 理解しようと努力する代わりに、むしろ露骨な差別が幅をはびこる。この差別は文化的側面と階級的側面を兼ね備えている。画一主義指向が強い兵営型国家である韓国では、韓国的「標準」と異なる朝鮮族の言語や日常的行動が異質視される一方で、特に韓国内でも主に低賃金下層労働階級を連想させる喫煙や大声で歌を歌うなどは蔑視的凝視の対象になる。結局、「国家」と「個人」、ないし「マイノリティ集団」の間の識別の足りなさ、「違い」を受け入れようとする姿勢の欠如、そして階級的差別のパターンなど、韓国社会の慢性的問題は韓国国内に来ている海外コリアンに対する嫌悪という感情を生む。だが、これらの問題はかつて、韓国人を真っ先に不幸にしてきた社会的病弊だったことを忘れてはならないだろう。

 
//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大学教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

職場とは何だろうか。労働者が労働力を売り、労賃を受け取るところだ。平日8時間を勤めること以外は、労働時間の販売者である労働者には雇用主に対するいかなる義務も負わされない。

2021-02-20 | 資本主義という体制そのものが問われている
[朴露子の韓国・内と外]職場の会食文化、服従の儀礼
登録:2021-02-18 22:22 修正:2021-02-19 10:05

労働者をそれこそ機械のように「いつでも気安く」働かせられるようにするには、夜間や週末には「カカオトークでの業務指示」などにより彼らのプライベートタイムまで植民化して、労働時間と個人の時間の区分自体を不可能にさせる一方、上司が「温情的家父長」の役割を演出する会食という序列的服従儀礼を多くの職場で事実上必須化する。そうした会食の席が作り出す家父長的「疑似家庭」の雰囲気の下では、不法な超長時間労働の強要もはるかに易しい。

                     

イラストレーション キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 韓国の大学とノルウェーの大学には違いが多いが、その中でも最初に目につくのは大学付近の町の風景だ。韓国の大学のキャンパスはたいてい歓楽街に囲まれている。学生が行って食べる食堂や勉強ができるカフェも多いが、飲み屋・カラオケなども少なくない。北欧の大学では、構内に教職員・学生が割引で食事ができる空間は必ずあるが、外に出ればカフェの数カ所はあっても、韓国のような“歓楽街”はない。大学だけだろうか?ソウルの各種オフィスビルの“森”の下によく見られる歓楽街を、企業の本社や政府庁舎があるオスロ市内ではまったく見られない。遊興空間は当然あるが、事務職労働者の職場とはそれほど近くない。彼らは“労働”の延長線上で歓楽街に行くことが全くないからだ。

 ノルウェーでも酒を飲まないわけではない。もちろんノルウェー人の年平均酒量(7.7リットル)は、韓国人成人の酒量(12.3リットル)よりは少ないけれど、酒類の販売を国家が独占して酒代を高くしてきた過去一世紀の努力にもかかわらず、“酒文化”を根絶することはできていない。ところが、“職場”と“飲酒宴会”を結びつけられるという発想自体は、資本と労働の間でバランスが取れた社会では成立そのものが不可能だ。

 職場とは何だろうか。労働者が労働力を売り、労賃を受け取るところだ。平日8時間を勤めること以外は、労働時間の販売者である労働者には雇用主に対するいかなる義務も負わされない。スーパーで私たちに食糧を売る店長が顧客と一緒に酒を飲む義務がないように、労働時間の販売者が職場管理者の指示によって連れて行かれて酒を飲むのは、法的には話にもならないことだ。実際、正常な社会では勤務時間以外に管理者が労働者に業務上の連絡をすることも訴訟ものだ。韓国はどうだろうか。求人求職マッチングプラットホーム「サラムイン」が一昨年、会社員456人に質問した「モバイル・メッセンジャー業務処理現況」では、10人中7人(68.2%)が勤務時間外にメッセンジャーで業務の指示を受けたというが、それこそ韓国の労務管理の慣行が“正常”とはほど遠いという事実を如実に見せる。

 勤務時間外の業務指示と共に、事実上の会食参加の準強要は、まだ韓国の職場管理者の多くが“正常”と勘違いしている人権侵害の代表的事例だ。もちろん、人権に対する感受性が成長するにつれ、会食参加の強要強度は大きく緩和された。私が韓国の職場に通い韓国の“職場文化”を体験した1990年代末だったら、企業や大学街で会食参加の回避は欠勤以上の“罪”と認識された職場も珍しくなかった。会食への参加を遠慮なく拒否するということは、重武装した戦闘警察が鎮圧するデモに参加する以上の勇気を要したし、単純な回避もほとんどは“上司の権威に対する挑戦”と見なされることが多かった。今はどうだろうか。就職ポータル「ジョブコリア」が昨年、会社員659人を対象に会食の現況を調査した結果によると、45%が「自由に選択できる」と答えた反面、何と41%が「顔色を伺う」と答えた。複数応答が可能なこの調査では、13%が「会食出席は無条件」と答えた。すなわち、改善されつつはあるものの、「強要された集団遊興」は依然として多くの韓国の会社員が直面している“ヘル朝鮮”の一側面だ。

 コロナで非常事態となり、当局が人々の集まりを避けるよう懇々と呼びかける状況なのに、何と22%が「会食が相変らず進行中」と答えたことから見て、会食とは単に「一緒にご飯を食べて酒を飲み歌を歌う席」というよりは、むしろ“会社”という疑似“王国”の欠かせない重要な“儀礼”に近い。“儀礼”とは、社会的関係を再確認し強化する、象徴性の高い手続きだが、会食という儀礼は果たしてどんな関係を再確認するのだろうか。職場の管理者は、会食の含意について「一体感・団結力を培う」というだろうが、典型的な会食を人類学者の目で参加し観察してみるならば、何よりもまず“序列関係”が再確認される席であることを容易に知ることができる。会食に参加するということ自体が、上司の“見えざる”命令に服従する意味が濃厚であり、会食の席で部下が上司に酒を注ぐことは確かに減ったようだが、しばし観察しただけでも誰が上司で誰が部下かはすぐ分かる。会食という(非公式的)“行事”の進行を総括する上司は、部下の困りごとや要望を聞き、部下には(暗黙的に持続的服従をその見返りとして要求する)各種の約束をする(ただし、部下職員を相手にオンライン・リサーチ企業「エムブレーン」が4年前に調査した結果によれば、「上司の酒席での約束」の履行率は19%にとどまるという) 。職員が懸命にいやな表情を隠し、上司が熱心に“温情”を装わなければならないのは、おそらく最も典型的な“会食風景”であろう。

 “酔った勢いで”からかい、暴言、暴行のようなあらゆる不法行為がたびたび起き、部下にとっては地獄のように苦しくて、そのうえ上司にとってもいくらでも負担になるであろうこの会食という儀礼を、それでも継続している理由はいったい何だろうか。それは、韓国企業の利潤受取戦略と関連していると見られる。「先進国になった」というものの、韓国の労働生産性は今もなおノルウェーの45%程度にしかならない。それでも利潤を最大化するために、多くの企業は相対的に低い効率を“無制限長時間労働”の強要で相殺する。政府が52時間制を実施すると言っても、特に製造業や建設部門の現場ではこの52時間制が有名無実であり、実質的な週当り労働時間が相変らず60時間程度になるということは、多くの労組の組合員調査で簡単に知ることが出来る。労働者を、それこそ機械のように「いつでも気安く」働かせられるようにするには、夜間や週末には「カカオトークでの業務指示」などにより彼らのプライベートタイムまで植民化し、労働時間と個人の時間の区分自体を不可能にさせる一方、上司が「温情的家父長」の役割を演出する会食という序列的服従儀礼を、多くの職場で事実上必須化する。そうした会食の席が作り出す家父長的「疑似家庭」の雰囲気の下では、不法な超長時間労働の強要もはるかに易しい。

 労働者が8時間仕事をして、夜間、週末、休暇時には職場の存在自体をすっかり忘れられる国こそが労働者に良い国だ。大韓民国がそうなるためには、会食強要に対する処罰が強化される一方、「会食のない会社こそが優良会社」という意識をまず広げなければならない。
//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) |ノルウェー、オスロ国立大学教授・韓国学(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/983174.html
韓国語原文入力:2021-02-17 02:39
訳J.S

「くらしSOS #困ったときは共産党に相談しようオンライン」と企画は盛りだくさん。

2020-12-28 | 資本主義という体制そのものが問われている


2020年12月28日(月)
新しい日本 みんなの力で
JCPサポーターまつり開催
オンラインで多彩に交流


 コロナ禍で国民の苦難軽減に動いてきた日本共産党とサポーターが企画し、市民とインターネット上で交流する初の催し「JCPサポーターまつりオンライン」が27日夜開かれました。2018年10月に東京都内の会場で行った「まつり」に続くもの。1年の活動を振り返り、来年行われる総選挙の勝利を誓い合う場となりました。

      

(写真)訴える志位和夫委員長

      

(写真)「Live 激論!夜まで生テレビ」に出演する(左から)古賀茂明、小池晃、朝岡晶子、ダースレイダー、香山リカの各氏=27日、党本部

 志位和夫委員長は「コロナを乗り越えた先に、すべての人々が安心し希望をもって暮らせる新しい日本をみんなの力を合わせてつくろう」とビデオメッセージ。総選挙に向けた「五つの提案」を掲げ、1万2千人のサポーターのみなさんに「主権者である一人ひとりの国民が手をつなげば政治は変えられる。あなたの力をお貸しください」と力を込めて呼びかけました。

 小池晃書記局長とシンガー・ソングライターの高橋ナナコさん、山添拓参院議員が司会進行を務めました。小池さんは精神科医の香山リカさん、元経産省官僚の古賀茂明さん、ラッパーのダースレイダーさんと生討論する「激論!夜まで生テレビ」、同じ子年(ねずみどし)生まれの立憲民主党の辻元清美衆院議員との対談「全員チューもーく!子年トーク」に出演しました。

 山下芳生副委員長がカメラに向けて政治談議をしながらおいしそうな料理を作る「よしキッチン」、サポーターが党事務所を突撃取材する「日本共産党の事務所に行ってみた」、サポーターらが田村智子副委員長と語り合う「タムトモだち―気ままにトーク」、国会議員・候補者が市民からの相談にこたえる「くらしSOS #困ったときは共産党に相談しようオンライン」と企画は盛りだくさん。午後6時すぎの時点で約4千人のサポーターらが視聴し、「手作り感満載で見ていてほほえましい」「ゆるく政治の話をすると関心を持ちやすいかな」「政治と暮らしを近づけてほしい」などの反響のコメントが寄せられました。

「自助、共助、公助」「まずは自分でできることは自分で」などと自己責任を強調しました。行き詰まった安倍政治の全面継承しか選択肢がないのは二重の行き詰まりで、自民党の劣化を示すものです。

2020-09-15 | 資本主義という体制そのものが問われている
菅氏 自民新総裁に選出
安倍政治の継承鮮明に
改憲に執念・疑惑の再調査否定


 自民党は14日、東京都内のホテルで両院議員総会を開き、総裁選挙の投開票を行い、菅義偉官房長官を新総裁に選出しました。党内7派閥のうち5派や無派閥グループの支援を受け、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長を大差で破りました。

 新総裁に選出された後、菅氏はあいさつで「安倍総理が進めてきた取り組みを継承し進めていかなければならない。私にはその使命がある」と述べ、安倍政治の継承を改めて表明。目指す社会像について「自助、共助、公助」「まずは自分でできることは自分で」などと自己責任を強調しました。行き詰まった安倍政治の全面継承しか選択肢がないのは二重の行き詰まりで、自民党の劣化を示すものです。

 安倍晋三首相の辞任表明を受けて行われた総裁選は自民党国会議員(394票)と47都道府県連代表(各3票、計141票=地方票)の計535票で争われました。この日の投票総数は534票で、菅氏が377票を獲得して当選。岸田氏は89票で、石破氏は68票でした。

 新総裁の任期は安倍首相の残りの任期を引き継ぎ、来年9月末までです。

 新総裁として会見した菅氏は、改憲について「まず憲法審査会を動かしていくことが大事。そこで議論して(改憲に向けて)国民の雰囲気を高めていくことも大事だ」と改めて改憲推進の立場を示しました。解散・総選挙の条件について「いまはコロナ感染者が毎日出ている状況だ」「専門家の先生の見方が『完全に(感染拡大が)下火になってきた』とならなければなかなか難しいと思っている」と語りました。

 菅氏は7年8カ月の第2次安倍政権で発足当初から官房長官を務めてきました。総裁選では、安倍政権の経済政策(アベノミクス)や外交・安保政策の継承を強く打ち出し、安倍首相が狙った改憲に「引き続き挑戦していきたい」と述べてきました。また、森友学園、加計学園、「桜を見る会」疑惑の対応について、再調査を否定する姿勢を示し続けました。

 「政府も都も危ない、危ないと言うだけで、どう感染拡大を抑えていくのか示すことができていない。こんなに感染が広がっているのに、Go To キャンペーンで・・・

2020-07-26 | 資本主義という体制そのものが問われている
「政府・都は何もしていない」
コロナ再拡大 街の声
東京・新宿


 東京都内で新型コロナウイルスの新規感染者が連日急増する中、「いつまで続くのか」「政府や東京都は何もしてくれない」などの不安や怒りが広がっています。連休半ばを過ぎた25日、新宿駅周辺で街の声を聞きました。(井上拓大、岡素晴)

       

(写真)日本有数の歓楽街・歌舞伎町を歩く若者たち=25日、東京都新宿区

 「Go To トラベルなんかやっている場合ではない」。新宿区に住む女性は、PCR検査体制を拡充し、誰でも検査を受けることができる体制の確立が最優先だと話しました。

 「検査体制を、例えばニューヨークのレベルに日本も強化すべきです。政権は感染が以前よりひどくなっているのに何もしていない」

 妻の買い物に同行し、百貨店前のベンチで新聞を読んでいた会社員の男性(61)=杉並区=も、政府などの対応に失望を募らせていました。感染拡大で医療体制がひっ迫する懸念は、この間ずっと指摘されてきたにもかかわらず、「よくなっているとは思えない」と感じるといいます。

 「政府も都も危ない、危ないと言うだけで、どう感染拡大を抑えていくのか示すことができていない。こんなに感染が広がっているのに、Go To キャンペーンで旅行を推奨するなんて、いくら何でもダメだと思う」

 名古屋市から来たという女性(25)は、都内での感染拡大に強い危機感があるといいます。「愛知県でも感染が広がっていて心配。家族に持病のある人がいるので、手洗いやマスク着用の徹底など感染対策には特に力を入れています。都はこれから何か対策をするんだろうかと考えている」

 雨天も重なり、休日にもかかわらず、人通りがぐっと減ってしまった街並み。飲食業も苦境が続いています。

 喫茶チェーン店で働くフリーターの男性(22)は、緊急事態宣言の解除後に客数が若干、持ち直していたものの、再び大きく落ち込んでいると語りました。

 「コロナ前と比べると7割減。僕個人としても生活がかかっている中、早く感染が落ち着いてほしいという気持ちだけです。政治は何も対応してくれないと感じています」

 夜の飲食提供が中心の「新宿ゴールデン街」。昼間も営業するいくつかの店はあるものの、閑古鳥が鳴いていました。夜の営業だけでは経営が成り立たず、日中は軽食・喫茶サービスを始めたバーの女性従業員は「全然、人が戻らない。他の店も会員制に切り替えて、何とかやっていますが」と話し、先が見えない状況を嘆きました。

新型コロナ危機が、世界でも日本でも、社会の脆弱(ぜいじゃく)さや矛盾を明るみに出し、危機を体験して新しい社会への模索が起きていると指摘。

2020-07-16 | 資本主義という体制そのものが問われている
2020年7月16日(木) しんぶん赤旗より
日本共産党創立98周年記念講演会
コロナ危機をのりこえ、新しい日本と世界を――改定綱領を指針に
志位委員長が講演


 日本共産党は党創立記念日の15日、党本部で党創立98周年記念講演会を開き、オンライン中継しました。志位和夫委員長が「コロナ危機をのりこえ、新しい日本と世界を――改定綱領を指針に」と題して講演。コロナ危機の体験を通じて、国民意識の中に前向きの大きな変化が生まれているとして、「改定した綱領を羅針盤に、危機と激動の時代、歴史を前に進めるために、ともに歩もう」と呼びかけました。

 同志社大学教授の岡野八代さん、翻訳家の池田香代子さん、憲法学者の小林節さん、政治学者の白井聡さんのビデオメッセージが紹介されました。(メッセージ)
新自由主義の転換旗印に、野党連合政権への道を
四つの角度

一、新自由主義の破綻――自己責任の押し付けでなく、連帯の力で未来を開こう

二、資本主義という体制そのものが問われている

三、国際社会の対応力が試されている――諸政府と市民社会の連帯で危機の克服を

四、人類史のなかでパンデミックを考える

     

(写真)党創立98周年記念講演会オンラインで講演する志位和夫委員長=15日、党本部

 新型コロナ感染症のパンデミック(世界的大流行)のさなかに迎えた党創立98周年の記念日。志位氏は日本と世界の現局面を概括するとともに、国民の苦難軽減という「立党の精神」に立って、国民の命とくらしを守りぬくため全力をつくすと表明しました。

 その上で新型コロナ危機が、世界でも日本でも、社会の脆弱(ぜいじゃく)さや矛盾を明るみに出し、危機を体験して新しい社会への模索が起きていると指摘。「コロナ危機をのりこえてどういう社会をつくるか」を、日本共産党第28回大会で一部改定した綱領を指針に、四つの角度から語りました。
明らかになった新自由主義の破綻

 第1の角度は、新自由主義の破綻が明らかになったことです。

 志位氏は、「すべてを市場原理にゆだね、あらゆる規制を取り払い、資本の目先の利潤を最大化していく。社会保障をはじめ公的サービスを切り捨て、自己責任を押し付ける。米国を震源地としながら、この40年あまりに新自由主義という“疫病”が世界にまん延しました」と述べ、「それが社会全体をもろく、弱いものにしてしまった」と告発しました。

 多くの犠牲者を出している先進各国からは新自由主義の破綻が共通して見られると述べ、「全くの過ち」「失敗に終わった処方箋」などの批判や自己否定が相次いでいると指摘。新自由主義の元祖・サッチャー元英首相の言葉を真っ向から否定したジョンソン英首相の言葉を示し、「コロナ危機を経験して、新自由主義の居場所は、もはや世界のどこにも残されていないことを象徴的に語っています」と述べました。

 日本の実態はどうか。志位氏は、「1980年代以降、日本に輸入された新自由主義の路線が、社会のあらゆる分野から『ゆとり』を奪い、脆弱にしてしまった」と述べ、医療と公衆衛生の面から指摘しました。

 医療では4~5月、首都圏など各地で「医療崩壊の瀬戸際」との訴えが相次いだ背景に、欧州に比べてICU(集中治療室)も、医師数も極めて少ない実態があると指摘。「1980年代の『臨調行革』を起点として、長年にわたって医療費削減を強引に進めてきた結果にほかなりません」と強調しました。

 公衆衛生では、保健所が深刻な疲弊状態に陥ったのも、リストラが及んだ結果だと指摘。「業務効率化」や「地方分権改革」により全国の保健所数は1990年の850カ所から、2019年の472カ所へと激減したと批判し、保健所体制の抜本的強化は急務だと力説しました。

 志位氏は、5月のオンラインイベントで、立憲民主党の枝野幸男代表と対談した際、枝野氏が新自由主義を強く批判し、「自己責任から抜け出し、人々が支え合い、適切な再配分を行う社会と政治のあり方が必要です」と述べたことを紹介。「新自由主義に反対し、連帯の力で未来を開くという方向での一致が得られたことは重要な前進です。新自由主義からの転換という旗印を、市民と野党の共闘の旗印に掲げ、共闘をさらに豊かに力強く発展させ、野党連合政権への道を開こう」と呼びかけました。

 その上で、「コロナ危機を克服して、どういう日本をつくるか」として、(1)ケアに手厚い社会をつくる(2)人間らしく働ける労働のルールをつくる(3)一人ひとりの学びを保障する社会をつくる(4)危機にゆとりをもって対応できる強い経済をつくる(5)科学を尊重し、国民に信頼される政治をつくる(6)文化・芸術を大切にする国をつくる(7)ジェンダー平等社会をつくる―という七つの提案を行いました。

 志位氏は「この提案を貫く考え方は、経済効率最優先から、人間が生きていくために必要不可欠なものを最優先にする政治に切り替え、自己責任の押し付けでなく、人々が支え合う社会、連帯を大切にする社会をつくろうということです。こうした方向を、市民と野党の共闘が共有し、みんなが希望をもって生きることができる新しい日本をつくろうではありませんか」と訴えました。

 また七つの提案は「財界中心」「米国言いなり」という日本の政治の二つのゆがみと深い関わりがあると強調。日本政治の根本的変革に向かって進むことを呼びかけました。
資本主義の体制そのものが問われている

         

         (写真)記念講演する志位和夫委員長=15日、党本部

 第2の角度は、世界資本主義の矛盾です。

 志位氏は、改定綱領で、世界資本主義の矛盾の集中点として、「貧富の格差の世界的規模での空前の拡大」「地球的規模でさまざまな災厄をもたらしつつある気候変動」の二つを特記したことを紹介。「この二つの矛盾がいかに深刻かが明らかになり、資本主義を続けていいのかという重大な問いを、人類に突きつけている」と語りました。

 「格差拡大は、パンデミックのもとで急速に加速しています」と語った志位氏は、「一番犠牲となっているのは、貧困のもとに置かれている人々です」と指摘。世界で問題となっている「命の格差」を告発するとともに、日本でも、ネットカフェ難民を路上生活に追い出し、非正規雇用やフリーランスで働く人、ひとり親世帯から仕事と収入を奪っていると語りました。他方で、資産10億ドル以上の億万長者の資産が4カ月で2・2兆ドル=約230兆円も増えており、「富裕層はあっという間に資産を急増させ、打撃を回復した」と告発しました。

 もう一つが、地球規模での環境破壊です。

 この30年間に少なくとも30の感染症が新たに出現。NGO・世界自然保護基金(WWF)の「報告書」で、動物由来感染症の主要な要因として、(1)森林破壊などにより生じた新たな病原体との接触(2)自然との調和を欠いた農業や畜産の拡大(3)病原体を拡散させる野生生物の取引――を挙げていることを紹介し、「ここには、最大の利潤を得るためには生態系の破壊もためらわない資本主義という体制そのものの矛盾が深刻な形であらわれているではありませんか」と述べました。

 その一方で、志位氏は「資本主義の限界」が語られ、この制度をのりこえた社会主義への希望が語られていると指摘。京大総長・山極寿一氏が「誰もが資本主義は限界だと感じているのではないか」と述べ、『フォーブス』が、米国の若者層の意識が変化し、「47%が社会主義に賛成し、46%が資本主義に賛成した」と、社会主義賛成がついに多数になったと報じたことを紹介。「この二つの大問題は、資本主義の枠内でも解決のための最大の努力を注がなければなりません。同時に、資本主義をのりこえた未来社会――社会主義・共産主義に進むことにこそ、問題の根本的解決の展望がある。この希望を大いに語り広げよう」と述べました。
国際社会の対応力が試されている

     

     (写真)志位和夫委員長の講演を聞く人たち=15日、党本部

 第3の角度は、新型コロナ・パンデミックに国際社会がどう対応するかという問題です。志位氏は、「いま重大なのは、パンデミックのなかで、米国と中国の体制的な矛盾が噴き出し、両者の対立が深刻になっていることです」と語りました。

 米国では、トランプ政権が「自国第一主義」でパンデミック克服の国際協力に背を向け、WHO(世界保健機関)からの脱退を通知したと批判。さらに構造的な黒人差別が、コロナ危機のもとで重大問題となっていると述べました。

 他方で、中国は人権侵害と覇権主義という体制的問題点が、パンデミックを通じてむき出しになっていると指摘。コロナ対応の初動の遅れが、人権の欠如という体制の問題点と深く結びついていること、「香港国家安全維持法」の強行が国際協力に障害を持ち込んでいることを詳しく述べました。

 志位氏は、米中による障害のもとでも「パンデミック収束にむけた国際社会の連帯と協力は、一歩一歩、前進しています」と強調。4月2日の国連総会決議、5月19日のWHO総会の決議、7月1日の国連安全保障理事会の決議などを具体的に紹介しました。

 その上で(1)医療・保健における大規模で包括的な協力(2)途上国に対する国際的支援(3)世界の紛争地での即時停戦、核兵器廃絶をはじめ軍縮を行い、コロナ対策に力を集中すること(4)富裕層などへの課税でコロナ対策の財源をつくるなど、より公正な世界をめざすこと―の四つの方向で、国際社会の協調した取り組みの前進を呼びかけました。

 志位氏は、国際社会が政治的立場の違いを超えて、感染症対策に国際協調で取り組んできた歴史があることを具体的に紹介しながら、「世界の多くの国ぐにの政府と市民社会の協力を発展させることを心から訴えたい」と強調しました。
人類史の中でパンデミックを考える

 第4の角度は、人類史の中でパンデミックを考えることです。志位氏は、多くの感染症のパンデミックに遭遇するなかで、「社会の矛盾を顕在化・激化させ、時として、歴史を変える契機になりうる」と指摘しました。

 その一つとして、14世紀のペスト(黒死病)のパンデミックを一つの契機として、農奴の自由農民化が進行し、農奴制が没落した歴史を紹介。またマルクスが『資本論』で、ペストによる人口激減のもとで、農業労働者の賃金高騰を抑えるための「労働者規制法」(1349年)が、「資本家と労働者の数世紀にわたる闘争」の結果、労働者自らの権利を守る立法へと転化したことを克明に描いたことを語りました。

 歴史を変える契機という点では、米国で起きた警官によるジョージ・フロイド氏の暴行死事件への抗議行動が全米、欧州、世界へと広がり、「抗議の内容が、植民地主義、奴隷制度、奴隷取引に対する歴史的抗議、歴史的見直しを迫るものに発展している」と述べ、この背景にパンデミックによる共通の体験があると指摘。ベルギーでは国王が過去の植民地支配の反省を行うなどパンデミックが歴史を変える契機となり、進歩が加速していると述べました。

 最後に「日本もまた、歴史の大きな転機のなかにあります」と述べた志位氏。「コロナ危機の体験をつうじて、国民の意識のなかに、前向きの大きな変化――一過性でない、深いうねりのような変化が生まれているのではないでしょうか。そうした前向きの変化を一つに集め、人々の連帯の力で、コロナ危機をのりこえた先には、新しい日本と世界をつくろうではありませんか」と呼びかけました。

 その取り組みを進めるうえで、改定した日本共産党綱領は、確かな羅針盤になると強調。日本共産党への入党を心から訴えるとともに、「危機と激動の時代、歴史を前に進めるために、ともに歩もうではありませんか」と呼びかけると、拍手に包まれました。