<2月上旬。在りし日の“天幕”>
<同じ場所から、在りし日をしのぶ。>
明け方、強風で鳴る“虎落笛(もがりぶえ)”で目が覚めた。そういえば、ここ最近は虎やライオンの朝の咆哮が聴こえなくなった。木下大サーカスの興行がこの18日に終わり、どこかへ行ってしまったからだ。興行は確か11月からだったから約3ヶ月間、聞いていたわけだ。
“咆哮”が聴こえている時は、
故郷のアフリカと気候・風土が違って哀しいのか。
餌さの待遇が悪くて咆えているのか。
などと想像して楽しむ反面、檻を破って逃げ出して路上でバッタリあったら、どうしよう、などと不安もよぎったりしていた。“咆哮”が聞こえなくなると、それはそれでなんとなく淋しいものである。
2月2日に観客として、観に行ってからは、なおさら、あの虎やライオンたちに愛着を覚えたものだ。
ああ、あいつらが今朝も咆えてやがる、と。
赤い大きな天幕があった場所は、また元の空き地(駐車場)に戻っている。在りし日に撮った“天幕”と同じ位置に立って撮ってみると、当たり前だが、何もない。この空間で動物の曲芸や空中ブランコなどを連日やっていたのだ。
空間を眺めていると、“夢の跡”という言葉がふと浮かんだ。