本
の帯の言葉に惹かれました。
50億の中でただ一人「おい」と呼べる妻へ――
愛惜の回想記
「癌とわかった妻。
私は言葉が出なかった。
かわりに両腕をひろげ、その中へ飛びこんできた容子を抱きしめた。
『大丈夫だ、大丈夫。おれがついてる。』」
それから題名の『そうか、もう君はいないのか』
突然愛する人を亡くしてしまったどうしようもない想いが感じられます。
昨年他界した城山さんが、7年前に亡くなった妻の容子さんを偲んだ遺稿です。
他界後、書斎に点在していた未完、欠落、バラバラの原稿を
編集部がまとめたものです。
城山さんは経済小説の大作家として硬質な作品をたくさん書いています。
直木賞受賞作の『総会屋錦城』、吉川英治文学賞受賞作の『落日燃ゆ』、
最近映画化された『硫黄島に死す』、『男子の本懐』『黄金の日々』etc・・・
これらの作品とは全く異なるこの遺稿。
容子さんとの出会いから悲しい別れまでを綴っています。
「天使」
「妖精」
と表現され、こんなにも想われていた奥様は幸せです。
だからこそ、一人残されてしまった城山三郎は、
その後7年間を「半身を削がれたまま生きていた」のでしょう。
こんな指標があります。
この表はホームズ・ラエのストレス表といわれるものです。
心身のひずみの引き金となりやすい日常生活上の出来事を集め、
それがどの程度の強さ
があるかをまとめたものです。
人生の出来事のなかから「結婚」をマグニチュード50と定めて他の強さを計算しています。
配偶者の死はその倍の100であるというように、ストレスの強さを点数化したのです。
順位 出来事 生活変化単位値
1 配偶者の死 100
2 離婚 73
3 夫婦別居 65
4 刑務所入り 63
5 肉親の死 63
6 怪我や病気 53
7 結婚 50
8 解雇 47
9 夫婦和解調停45
10 退職 45
配偶者の死は人生の中で最もストレスになるものなのですね。
何十億分の1の確率で一緒にいる配偶者を大切に思わなくては。。。
この本を読み終えて最後の見返しのページを読むと、
「2007年3月22日没 享年79」
とありました。
なんという偶然
城山さんの命日に私はこの本を読み終えたのです。