ブレット・トレイン/デビット・リーチ監督
伊坂幸太郎原作の小説を、あちらの人々で解釈し直して映画化したもの。新幹線内での殺し屋・ヤクザ・マフィアなどの激しい抗争を描いたものだが、はっきり言ってバイオレンス・コメディである。とにかく連続した派手なアクションとギャグで、物語を繋いでいる。しかしながら原作もそうなのだが、複雑なプロット展開があって、さらに緻密な伏線が至る所に張ってあり、時間の経過とともにそれらが明らかになる仕組みである。そういうものを楽しむ作品であるが、日本人である僕らは、この日本での出来事でありながら、その荒唐無稽さとド派手なぶっ飛び方に、唖然とするよりない。銃もふんだんに乱射されるが、これだけのことが起こってお話が収斂されるはずが無いじゃないか。
でもまあ、そういう変なところばかりを見ているだけでも、なるほど、外国人が思っている日本的なものってこんな感じなのか、という比較文化的な面白さも無いではない。ひどい勘違いの連続で、実際の新幹線とはずいぶん違うのだが、ほとんど外国人ばかりだし、日本人も日本人らしくさえない。真田広之だけが、ちょっとだけ日本的なのだが(当たり前だ)、考え方は日本的では無い。何を言っているかわかりにくいことだろうが、とにかく混乱しているので、そんなに正確に何かをわかる必要などないかもしれない。
運の悪い殺し屋をブラピが演じているわけだが、彼は運が悪いというよりも、ものすごく強運を持っていることが分かる。本人の単なる勘違いなのである。そこが笑いどころのはずなのだが、なんとなく笑えないのは、ブラピ自身がそんな役になり切れていないからだろう。彼の醸し出すオーラのようなものがあって、最初から彼は死なないだろうことが分かっている。それではこの物語において、面白くないのではなかろうか。他のこともそうなんだけど。
要するに何かが滑っていて、それが修復されないで進んでしまう。そういう映画なんだからそれでいいはずなんだが、なんだかなあ、という気分があるのかもしれない。面白いところがたくさんありながら、ノレない自分が置いてけぼりにされているような気分になるのかもしれない。これはもう仕方ないことなのだけれど……。