カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

悪くても生き残ってやろうじゃないか   疑惑

2024-03-10 | 映画

疑惑/野村芳太郎監督

 松本清張原作のヒット作であり、古典的な名作サスペンス。映画だけでなくなんどもドラマ化されているという。観終わってみて、なんとなく知っていると感じたのはそのせいかもしれない。しかしながら桃井かおり演じる悪女の代表格である球磨子であるとか、女弁護士を演じる岩下志麻の魅力が、まさに炸裂した作品だと言える。あまりに漫画的なのだが、これがキメられる女優は、そうそういる筈が無い。特に岩下志麻のラスト近くの演技では、僕は思わず泣いてしまった。これだけクールな悲しみを演じられるキャラクターって、やっぱりそう簡単には生まれないのではないか。演技がうまいとかどうとかいう事を、越えていると思う。
 猛スピードで埠頭から海に車が落ちる。乗っていた女はたいした傷も負わず生き残るが、男の方は死亡。亡くなった男は富山の富豪で、しかも多額の保険金が掛けられていた。生き残った球磨子は前科もあり素行も悪く、殺人が疑われ逮捕される。逮捕後も厚かましい態度は変わらず、当初の弁護士は弁護を辞退して逃げてしまう。そこに国選弁護人として殺人などはやったことが無い女弁護士の佐原が、あてがわれることになるのだったが……。
 法廷では、どう見ても悪女でどうしようもない女である球磨子に不利な証言をしようと、皆が寄ってたかってうその証言も厭わず、球磨子を窮地に陥れる。しかしながら証言は嘘なので、女弁護士が細かくそれを覆すことになる。そうして事件の真相が、最後には大どんでん返しで明かされることになるのだが……。
 しかしながらどう考えてもウブな地方の金持ちボンボン上がりの中年男を、たぶらかして金銭を巻き上げようとしている球磨子が悪いのである。そうなのだがそんな女を、ボンボン中年男は愛しているのである。これはもう抗いようが無いのである。しかしこれはお家にとっても困ったことで、家族からは総スカンを喰らい、地元は荒れに荒れて、球磨子も暴れるばかりである。そうして事件は起こってしまう。
 まあ、なんというか、凄い物語である。悪いものをちゃんと悪く描き、しかし薄っぺらい正義感は、ちゃんと退けられる。妙な展開なのだが、これはこれで人という生き方の、まっとうさもあるということなのだろうか。だから、そんなに、後味が悪くも無いのだった。悲しい、というのはあるのだが。
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