恋愛小説家/ジェームズ・L・ブルックス監督
多くの女性の心をときめかせている恋愛小説家のメルビンは、実は毒舌家で友達もなく、潔癖症の変人男で、まち中の人々から嫌悪の的である。彼の安住のひと時は、頻繁に通っているレストランで、優しく接してくれるウェイトレスのキャロルといる時だった。彼は店の中でも蛮行を繰り返しているので、オーナーがいる時は食事ができない。しかし問題が起きてもキャロルなら、なんとかメルビンをあしらいながら料理を持って来るのだった。
メルビンの隣人には同性愛の芸術家が住んでいて、さまざまな騒動を起こす。しかしそのサイモンの家に強盗が入り、彼は瀕死の重傷を負う。成り行きでサイモンの飼っている犬をメルビンが預かることになるが、実はなかなかに相性が良く、懐いてきて可愛くなる。一方ウェイトレスのキャロルには息子がいるが、保険に入っていないために十分な治療を受けることができず、仕事が休みがちになり、結果メルビンは十分な食事をとることもできなくなってしまうのだった。
なかなかに気の利いた会話劇になっていて、普通ではこうはならない展開も相まって、都会的な恋愛劇に仕上がっている。もっとも時代背景が今とは違うので、ゲイの描かれ方もやや形骸的である。もうこんな感じの表現だと、今では難しいかもしれない。
しかしながら僕の本心の感想を言ってしまうと、これは西洋ではよく見られるいわゆる「クリスマス・キャロル」のスクルージがモデルになっているはずである。彼らは宗教的な問題なのか、このような変人が心を開いて皆に施しをすることに、異常に感動する人種なのだ。要するに金持ちが皆に金を配るべきだという美徳があって、それを守らない人に警告を発しているのだ。誰もが皆裕福ではない。しかしながらほんの少しの慈悲があれば、それらの困りごとは簡単に解決にいたる。金持ちたるもの、たとえちょっと変人であろうとも、心を開いて本当にいい人になろうではないか。
というような物語なのであって、これは主人公がある程度の金を持っていないことには、絶対に成り立たない。皆金に目がくらんだ人々に過ぎないのである。はい、解説おしまい。