カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

孤独な死は孤独に見送ろう   おみおくりの作法

2023-11-30 | 映画

おみおくりの作法/ウベルト・パゾリーニ監督

 孤独のうちに亡くなり、身寄りのはっきりしない遺体の家族を探して、何とか葬儀に立ち会ってくれるように交渉する役人がいた。なかなかに難しい仕事のようで、遺品の中から手掛かりを探して、家族と思われる人に連絡をするというものである。何故孤独死したのかは分からないけれど、孤独になってしまった人の生前つながりのあった人々は、その孤独な人との良好な関係にあったとは思えない人々なのである。だからほとんどの人は、この誘いに応じることは無い。それでも何とかつながりのある人で、葬儀に来てくれる人がいるはずだと信じているのか、役人は淡々と仕事をして孤独死関連の人々を探すのである。
 仕事については丁寧にやるために、いささか効率は悪いのかもしれない。若いやり手らしい上司が現れ、仕事の効率化のためにこの部署は統合され、そして男は解雇される運命と宣言される。仕事に生きがいを感じていた様子の男は、実際激しく失望するが、気を取り直して最後の仕事は、さらに丁寧にやり遂げようと、残された家族を探す旅に出るのだった……。
 演じている俳優さんも独特の雰囲気のある個性派のようで、静かに無表情である場面が多いが、しかし時には激しい感情も見て取れる。毎日同じようなことの繰り返しをしているように見えて、わずかな違いを楽しんでいるということも言えるかもしれない。似たような恰好をして似たようなものを食べ、似たような場所を往復する。しかしそれらは、一種の彼の信念でもあり、死んでしまった孤独な人間への、愛だったのかもしれない。
 それなりに変な映画ではあるにせよ、やっぱり日本の「おくりびと」とは、かなりちがった話になるものだな、と思った。日本にもこんな人はたくさんいそうだが、映画にするとなると、それなりに味付けは変わってしまうだろう。そもそも死んだ人間に対して、なんだかあちらの人々は、ちょっとドライな対応をする。そうして人間づきあいとして理解できると、その人のために、つまりこの役人のためにやってもいい、という感じになっているようにも見える。例えば、幼い頃に分かれてしまった暴力的な父親のことなんて、実のところやはりそんなに興味の無いことかもしれない。ああ、やっぱり孤独で死んだのか。それで自分は葬儀に出るなんて、言われないと行かないよな。という感じか。まあ、僕も間違いなくそう思うはずなんだけれど、現実はそうじゃないのでわかりません。
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