恋のドッグファイト/ナンシー・サヴォカ監督
ひとに勧められてみた作品。リバー・フェニックス主演の青春映画である。
海兵隊の悪ふざけで、一番笑える不細工な女の子をナンパしてパーティに連れてきた人が勝ち、というゲーム(それをドッグファイトと読んでいるらしい)をやっている。そういう下品な遊びとは知らず、ナンパされる女の子はたまったものではない。特にリバー・フェニックス役の男がナンパした相手は、個性的で内気な女の子だったから、いわゆるハメられたような格好で連れてこられたことを知り、激しくショックを受けて帰ってしまう(当然だ)。さすがに悪いと感じて、言い訳のために再度食事に誘って一晩一緒に過ごすことから、不思議な感じのラブストーリーが生まれる、というお話。
監督さんが女性だということが、僕のような男の目からはよく分かる作品だ。男たちのくだらない下品さがあることを理解したうえで、それでも恋に落ちていくあらがえない女心をうまく表現している。また、馬鹿げた悪い男の子であるが、女の子に対しては、純粋な心を残しているという設定の青年像が、また見事にあらわされている。なるほど、こういう男なら、女の子は憧れるのだ、ということと、許せるのだ、ということがよく分かる。若い人の恋の在り方の、見本のような作品ではあるまいか。また、ベトナム戦争の時代もうまく表現されているので、そういう世論のようなものも実に勉強になる。小品だが、なかなかに捨てがたい作品ではないだろうか。
この作品を見て感じることは、基本的には、アメリカ人も日本人も、相手を好ましいと思う感情や、見栄を張ったり、臆病だったりすることはおんなじなんだということだ。当たり前といえばそうかもしれないが、僕はどこかアメリカ人の方が、積極的で、性的にもおおらかな印象を持っているのだが、基本的な恥じらいなどの感情に、そう大した違いは無いのではないかと思わされるのである。映画というのは、それなりにデフォルメされて、現実のものとは乖離があるとは考えていいが、この映画では、ファンタジーとはいえ、感情の素直なものを、見事に演出できていると思う。そういうしっかりとしたリアリティのようなものがあるからこそ、ファンタジーは生きてくるのだ。まるっきりの嘘っぱちばかりだと、訴えかけるものなんてなくなってしまう。そういうものを受け止められる映画こそ、いい映画といえるのである。青春はこうでなくちゃいけないのである。