真夜中の虹/アキ・カウリスマキ監督
自殺した父からオープンカーのキャディラックをもらう。幌の閉め方が分からず、真冬でもオープンカーのままで疾走する。とにかく寒そう。お金は強盗に取られ無一文であるが、ある時車を止めている場所に戻ると、駐車違反で自分の車がキップを切られているところだった。取り締まりをやっている係員の女(婦人警官ではなさそう)をそのままくどいて難を逃れるが、彼女には子供がいて、(彼が言うには)手間が省けて家族になる。ある時、いつぞやの強盗を見つけて殴りかかると、それが通報されて警察に捕まってしまう。仕方なく脱獄し、せっかく逃げるので国外逃亡することにするのだったが。
まあ、そういう話なんだが、奇想天外だけど、それなりにスジが通っているとはいえる。いや、そうなのかは意外なはずなんだが、そうなってしまうので面白くていいのである。幌が閉まらない車だと、北欧の冬には都合が悪い。しかしかっこいい車だし、乗ることに執着してしまうわけだ。もともとそういう不合理がありながら、彼はそういうことに自ら付き合うことで、波乱の人生を楽しんでいるかのようだ。しかしながら、これが後半のしょうもないギャグの布石にもなっているわけで、思わず呆れて笑ってしまう。本当に笑ってしまう人生そのものの象徴である。バカらしくて泣けてくるくらいだ。
これだけ変な話をこしらえてしまうと、日本だと単に馬鹿にされるだけだろう。しかしこの監督作品は違う。何か不格好だけどおしゃれであり、洗練とは真逆の珍道中が、気が利いているのである。それにちゃんと面白い。いわゆるハマる要素がたくさんある。世界的にヒットするのはそのためである。