カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

会社の正義は社会の利益か  七つの会議

2020-04-09 | 映画

七つの会議/福沢克維監督

 鬼のような部長から叱責される上に無理やりノルマをあげさせられて苦しむ営業二課長の姿で始まる。いじめ体質の会社(今はパワハラというのだったか)なのである。だったが、隣の営業成績の良い営業一課にろくに仕事をしないお荷物先輩社員とやり手課長がぶつかってしまい、社内の大きなパワハラ問題へと発展していく。背景に強大な権力を持つ部長がいたにもかかわらず、皆の予想に反して(またこのような会社でありがちなはずなのに、ぐうたら社員はおとがめなしで)やり手だった課長はこの事件であっさり飛ばされてしまう。もともとノルマに苦しんでいた二課の課長が後任の一課に回されたものの、さらなるノルマのきつさにつぶれそうになりながら、このぐうたらな社員の背景にある事件性に、段々とかかわりを持つようになっていくのだった。
 おそらくテレビ番組かなんかの映画化らしく、キャストは豪華ではあるが、皆オーバーアクトでちょっと疲れる。顔がプルプルふるえて怒っていたり、つばが飛んだり涙が出たり、目つきが悪かったり髪をかき上げたり、怒鳴ったり呻いたり、殴りまでしないが、転んだり吐いたり物を投げたり飛び散ったりする。日常にそういうことは皆無までとは言わないまでも、そうそうは現実社会では無いことが、この映画では満載にてんこ盛りだ。何か裏があることは見て取れて、各課の思惑や権力争いの中で繰り広げられる感情がぶつかり合って、会社という生物が、あたかも意思を持つように動いているという感じかもしれない。
 正直言って皆怖いので、こういう環境で生きていける自信はない。いや、4日くらいで僕なら退職していることだろう(要らないといわれるだろうし)。
 もちろんデフォルメした日本の会社環境を描いているというのは分かる。これを作っているテレビ局だって似たようなところがあるんだろう。まさか、というくらい誇張しているだけのことで、なんとなく共感さえ持って制作されたのではないか。まあ、多少は面白がっているというのはあるだろうが。
 謎解きの方は重層的で、ドラマを追うだけでもそれなりに面白い。実は小さい人間関係や、何かが行われているはずの大きな人間関係が、複雑怪奇に絡んでいる様子だ。そうしてそのことの原因というのが、今をさかのぼる20年前からのことを根本にして、連綿と続いていたということのようだった。
 面白いが疲れるし、ちょっと斜に構えて考えさせられることにもなる。こういうのは日本の会社の問題なのか、ともちょっとは思う。改竄などは欧米でもしょっちゅうやっているわけで、それは確かによくはないものの、やはり程度問題という気はする。おおむね真面目に回りながら、その中に何かが混ざり取り出せなくなっている問題というのは、たくさんあることだろう。純粋に取り出すことだけが、今となっては正義とは言えない状況にすらなっているのではなかろうか。隠蔽などはもってのほかとは言いながら、もはやどこをそうしていいのか分からないくらいの状況にある会社は、少なからず存在して当たり前だという気がする。いい加減を容認しているのではなく、それをトレードしながら使いこなすしかないのであろう。
 それにしても野村萬斎、凄いですね。あの香川さんと渡り合えるだけでも凄すぎるなあ、という映画でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする