デトロイト/キャサリン・ビグロー監督
多くの黒人住民が警察の捜査に不満を爆発させ暴動が勃発する。まちは暴動の民衆と警察や軍が入り混じって、大変な喧噪となる。すでに死傷者が多数出ている様子で、ピリピリした空気が町中に蔓延している。そういう中で街から少し離れたモーテルから、ふざけて玩具の拳銃を発砲した黒人の若者がいた。警察と軍はスナイパー(といっても犠牲者は当然なく、音を聞いただけのこと)を捕らえるためにモーテルを銃撃し包囲する。そうしてモーテルに泊まっていた黒人を集めて、スナイパーを特定するためとして、激しく拷問し、黒人青年たちを追い込んでいく。
延々と暴力といじめを続ける映像が続く。黒人差別のために、黒人を苛め抜くことに快感をともなっているらしい白人警察が、いつまでもいつまでも苛め抜いて、そうして実際に3人を殺してしまう。黒人にも人権はあると、心の片隅にくらいは考えのある白人たちであったが、実際には黒人がどうなってもあまり関心がないのだった。そうして、このような残酷極まりない犠牲があったにも関わず、白人の権利を守るためだろう、罪を犯した白人達は、なんと裁判の末に無罪になってしまう。二重の拷問を受けたと同じようなショックを、黒人たちは味わうわけである。
という実話を映画化したものである。ドキュメンタリーではないので、当事者の証言をもとに再現したドラマであるらしい。
とにかく見るのもつらくなるほどの、緊迫したいじめが繰り返し続く。精神的にどうにかなりそうなくらいのマゾ映画である。これで白人を憎まない人間がいるのか、と思うほどのひどい迫害である。そうしたことを目的に作られていることは分かるが、そうして事実はもっと残酷だったのかもしれないが、かなり食傷ぎみになる。ほんと、観なければよかった。
映画としては優れてはいるのだろう。もうトラウマになりかねないほど、気分が悪くなる。そうしてアメリカ社会というのは、本当に恐ろしいという感情が植えつけられることだろう。さらにこれでは、社会の融和なんてことは、起こりえないことも理解できるのではないか。特にこの事件にかかわった者たちは、このことを忘れはしないだろうし、心の傷が癒されることは無いだろう。差別意識というのは、このように人間をずたずたにしてしまうものだ。そうしてそれは、現代にも生き残っているはずなのである。
ということで、もう社会派映画しばらく観たくもなくなってしまった。ビグロー作品も、しばらくは観なくていいような気もする。いったい誰が悪いのだろうか。