日本人の名前のルーツを探る、というたぐいのテレビ番組や、その手の本というのは、それなりに繰り返しこれまでも取り上げられている様子である。日本人の名前というのは、それだけ多種多様で、面白い分野であるといえる。何しろ一国の名前(苗字)としては、もっとも多様で数が多いとも言われている。もともと江戸時代までは限られた人しか苗字を持たなかったが、明治になって皆が苗字を持つようにということになった。それで多くの人が、自分の住んでいる地名や、自分の先祖が住んでいた地名をもとに姓を名乗ったとされている。そもそも地名というのが多種多様で、歴史の変遷で様々な地名が生まれたと考えられている。古来原住の民の言葉を漢字にあてたものもあるだろうし、新たな文化から命名されたものもあるだろう。要するにそのような地名をもとに名前をこしらえたものだから、膨大な数の苗字を生むことになったという。実際に調査したものもたくさんあるのだが、いまだに発見される苗字もあるという。その総数は、おそらく30万種ほどであると考えられているらしい。
それでその種の名前を収めた本があるはずだと思って探してみると、それらを集めたとされる辞典自体も、たくさんあるようである。大変な労力をもって調べられたものらしく、また出版社の事情などもあるのか、30万すべてを収めたとされるものは、なかなか見つからない。さらにこの30万という数の根拠になっていると考えられる芳文館から出ている日本苗字大辞典というのがあって、これが全三巻で、定価がなんと346,500円であった。ただし収められている数は29万なのだという。欲しいと思わないではないが、ちょっと簡単には手が出ない。さらにあと1万がなんとなく惜しい。それくらい名前の集大成というのは、難しい事業なのであろう。