カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

偉大なダーウィンの犬になろう   ダーウィンの夢

2019-08-25 | 読書

ダーウィンの夢/渡辺政隆著(光文社新書)

 ダーウィンの進化論は、今や猫でも知っている理屈だろう。しかしながらあんがい理屈自体は、誤解している人も多いのではないかと思われる。たとえば人間はサルから進化したと考えている人もいるかもしれない。サルと言ってもいろいろあるが、チンパンジーは、きわめて人間に近い種である。しかしながらチンパンジーが進化していくと人間になるのか? おそらくならない。サルと人間は進化の途上で枝分かれした違う種だからである。サルと人間の共通の先祖がいるわけで、きわめてそれはサルらしいのかもしれないが、ちょっと違うのかもしれない。また、犬と猫はかなり近い種であると言えば、これまた意外に思う人もいるかもしれない。しかし人間とサルのように、共通の先祖であるというのは、考えてみると当たり前ではないか。
 著者は大変に文章が上手いだけでなく、その構成も素晴らしい。いつの間にか読まされるように読んでいって、驚くべき進化の歴史を具体的に理解することができるだろう。そういう意味でお得な本なのである。そうしておそらくだけど、僕らはダーウィンの信者になるのではなかろうか。
 進化論が実感として分かりにくいとすれば、それは時間の問題かもしれない。人間の寿命というサイクルで考えると、例えば2000年前のキリストの時代の人間と我々は、進化の途上で何の変化もないように見られる。時代背景はまったく違うが、生物としての人間としての比較は、何の違いも見つけられないのではないか。しかしながら、数百万年という時間軸に置き換えていくと、人類は間違いなく大きな進化を遂げているはずなのだ。それを裏付ける化石が見つかり、考察は進んでいる。
 さらに人間は、その進化の理由を手っ取り早く理解しようとする。キリンの首が長いのは、より高い枝の葉を食べたいという思いがそうさせたと考えるように。しかし実際にはそのようなキリンの意思のようなもので首が長くなったわけでは無く、まさにたまたま首の長いものが生きながらえて淘汰されてきた結果が現在そう見えるだけの事である。そういうあたりが進化論の誤解を大きくしている。
 そういうことで、進化論は有名であるばかりでなく誤解だらけの理論である。専門家であっても、ダーウィンの進化論とたもとを分かつ議論が現在にもある。それくらい進化という考え方のバリエーションも多いわけで、科学として実証のむつかしい時間を論じているせいなのではなかろうか。
 ダーウィンを知るということと、この生物進化を知る術として、これ以上に有用な入門書、読み物はそう多いものではない。いや、世間には多すぎる解説書は既に存在しているのだが、あえてこれは貴重なのである。まあ、面白いので読んで得というのが一番であろうけれど。

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