安倍晋三の真実/谷口智彦著(悟空出版)
著者は安倍首相の外交スピーチライターの人らしい(だから英語の原稿を和訳して紹介したりしている)。はっきり言って安倍首相を支える側の人が、ほぼ側近の立場として書いているということわりは、最初にしておくべきかもしれない。そうするとその時点で、信用できない、となぜか考える人もいるかもしれないが、それはすでに何かに毒されている可能性がある。むしろそう考えてしまった人に、だまされたと思って手に取ってほしい内容かもしれない。疑いを持ったままで結構なので、読んでみることである。
あえてそのような前置きをしてしまうのは、やはり日頃の報道に、きわめて偏った安倍観を提示するメディアが多すぎるということがある。もちろん時の権力者に対して、厳しい監視の目を光らせるという役割が、メディアには求められている一面はあろう。だからと言って偏っていいとは言えないだけのことで、正直に安倍首相と向き合うことを、国民から奪ってはならない。そういう意味で、たいへんに意味のある内容にも思える。モリカケ問題が問題だと感じているような人には特に、この本が必要だろう。
実際に安倍さんがどんな人かなんて、僕には付き合いがあるわけじゃないから、知るはずはない。しかしながら、報道や雑誌などで知る安倍さんは、安倍さんの真実を何も語っていないということだけは、日頃から見て知っている。何故かというと、勝手に悪意が先走り、ゆがんだ顔の写真を多用し、内容を伝えようとしない内容に終止しているものが圧倒的に多いからだ。僕が知りたいことは、政策の内容だし、安倍さんの行動である。そうして意味を曲げないで伝える言動の内容である。そういうものは不思議なことに、ほとんど何も伝わってこない。そういうことには関心がわかないので、だんだんと見ないで過ごすことになってしまう。海外メディアの翻訳や、ふつうに伝わる背景から類推して、安倍さんを知るよりほかに日本では手立てがない。まったく妙な国に住んでいるものである。
まあしかし日本の首相は大変だな、と改めて思うのである。そういう立場になる人は、実に限られた人たちなのだが、その中でもとりわけて、歴代でもたいへんに苦労されている人とは誰だろう。僕としてはもう少し強引さが欲しいところではあるが、それも仕方がないところもあるのだろう。時代の中で、出来ることと出来ないことは限られてしまうのだろう。
そういうことはあるにせよ、実は予想通りの内容ではあったのである。知らないことだらけだったのに、おおかたそのようなことではなかったかとは思っていた。安倍さん以外に選択肢がない日本の現状には憂いはあるものの、やはり時代の中で信念があるかないかで、人が生まれているということはあるかもしれない。繰り返すが、疑いのあるのような人こそ、面白いので読んでみてください。そうして本当に政治に関心が持てるようになれば、何かが変わるかもしれませんよ。