カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

坦々とナイーブな心を描いたドラマ   JIMI:栄光への軌跡

2017-11-01 | 映画

JIMI:栄光への軌跡/ジョン・リドリー監督

 ジミヘンが売れる前の二年間を描いた伝記映画。クラブで演奏しているところをキース・リチャーズの彼女に見いだされて、アニマルズのメンバーだったチャス・チャンドラーをマネージャーにつけて英国に渡る。そこでリンダ・キースは早々に見捨てて新しい彼女(キャシー・エッチンガム)に乗り換える。演奏は話題になるが、気難しい性格らしくちゃんと演奏しなかったりして簡単には芽が出ない。クラプトンと共に演奏しようとしたり、黒人として差別されたり、また黒人の活動家にあおられたりする。そういう苦悩はありながら、自分のスタイルに忠実であろうとする姿が描かれている。
 どのくらい史実に忠実かは分かり得ないが、それらしい感じはする。ナイーブで気難しく、ちょっと謎めいたところがあり、女にだらしない。それは家庭環境の影響があるらしく、ドラッグも弱いながら常用している。キース・リチャーズのギター(白いストラトキャスター)が印象的に用いられる。昔の女との関係を象徴しているということだろう。
 長い会話が中心になっていて、いつもなんだか不真面目な様子が分かる。いろいろと考えるところはあるらしいが、自分なりに自由にふるまいたいが、時代がそれを許さないところに苛立ちがあったのかもしれない。黒人であることで社会の圧力があるが、同時におしゃれな存在として白人女性にはモテモテということなんだろう。実際にジミヘンは白人社会で絶大な人気を博すことになる訳で、黒人と白人の対立軸の中で何かを主張するような人物では無かったのだろう。それはブルースを基本とした音楽ながら、そういう枠を軽々と超えた自由なギタープレイにも表れていたと思われる。粗っぽく必ずしも正確無比な演奏スタイルでは無いにもかかわらず、超人的とも言っていいギターをかき鳴らす姿は劇中でも素晴らしい。そうしてその演奏で観衆の心を鷲掴みにして、そういう興奮する観衆をみて改めて自分でも楽しんでいる様子が描かれている。
 基本的には恋愛を中心とした人間ドラマになっている。ジミヘンの役をしているアウトキャストのアンドレ・ベンジャミンが好演している。ぎっちょのギタープレイも素晴らしい。当時の演奏の場面は一切なく、全部現代のミュージシャンや俳優が演奏しているようで、それが実にそれらしく素晴らしい。音楽場面は案外少ないが、そういう面でも楽しめる映画である。まあ、盛り上がる類のドラマでは無いので、人を選ぶかもしれないけれど…。
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