探偵はBARにいる/橋本一監督
ハードボイルドとコメディは、観る人の気分によって、もともと紙一重になるということはある。しかしながらこの映画は、最初からハードボイルド・コメディである。
これはしかし考えようによってはそれなりに難しくて、コメディが強いとハードボイルドが決まらないし、ハードボイルドに浸り過ぎるとコメディが笑えない。恐らくキャラクターの所為だと思うが、そういう面白可笑しく時には決めても良い人が、大泉洋という感じかもしれない。
だから比較していうと、何となく重要な西田敏行などはちょっと浮いてしまっている。本当はいい人ではこれは難しい。せっかくだからいい人が悪いなら意外性ということでいい。その逆も可である。しかし両方を欲張っていると、何となく疲れてしまうのかもしれない。そんな気がした。
小雪の怪しさも同時にあんまり活きていない。だからこの映画自体はやはりむつかしい綱引きの渦中の中で葛藤しているような印象もある。しかしそれでももっとハチャメチャでいいかというと、それではやはりハードボイルド的に破壊されてしまう。どこかそういう感じが残ってないと、この不条理が上手く処理できない。北海道にあるらしい、哀愁が消えてしまうのだ。
ミステリーとしても、最初の仕掛けは良い。しかしそのまま謎が活きるのかというと、そこのところは少し消化不良だったかもしれない。いろいろ小道具があって、いい感じにはなるけれど、例えば高島の役どころとか相棒の松田もいいのであるけれど、最後まで活きるかと期待して、しかしまあ、終わったな、という感じかもしれない。この映画はヒットして続編があるというから、そういう部分は続き向けということにはなるかもしれない。ああそうか、映画よりもドラマのシリーズの方がいいのかもしれない。
僕の中では多少辛口になるけれど、楽しめる映画ではあるだろう。
そういえば10年程度前になると思うけど、はじめて札幌に出張した時に、この大泉洋という人が矢鱈に看板やらテレビCMなどに出ていて驚いたことがある。聞くところによると既にその頃には全国的にも有名になっていたそうなのだが、僕は初めて彼の姿を見た訳だ。なんというか上手く言えないが、ものすごく二枚目という感じではないし、コメディアンでも無いようだ。そういう人がなんでそうなのか、はじめて見る僕にはさっぱり分からなかった訳だ。しかしながらこの映画を改めて見ると、やはり力のある人なんだというのは分かる。演技が取り立てて優れているということもないが、その引っかかり方がなんとも独特なのだろう。ローカル・ヒーローだけど、そういう枠では無い。なるほどな~、ということで、この映画は尽きるのかもしれない。