カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

今年読んだお勧め本

2007-12-25 | 読書
 基本的に良書は紹介した。紹介漏れの中から選んでみる。
 
 紹介しそびれた絶対お勧め良書から紹介する。
※ぜひ読むべし
 といいながら、最初は人を選ぶかも。「虹滅記/足立巻一著(朝日文庫)」厳密にいうと、これは僕が感心したということに過ぎないのかもしれない。お墓でいろんなことが分かるんだなあ、と著者のしつこさに感心してしまう。長崎の風俗が分かるので、そういう興味も満たされる。著者の爺さんという偉大ではないが面白い人物の伝記がこんなに面白いとは恐れ入りました。これが読書の醍醐味というような時間を過ごせた。
 さて、これはかなり評判がよかったのであえて紹介しそびれてしまったが、「生物と無生物のあいだ/福岡伸一著(講談社現代新書)」は読んでおいて損はないと思う。いや、小説のように読める詩的な科学の本である。この人は本当に将来小説でも書くんじゃなかろうか。ブリオンの解説なんかでも有名な人だけれど、文章家として大成しそうだ。

 さて、そういうお勧めでも特に分類すると
※考え方の方法
 という紹介の仕方ができるかもしれない。まずは「論より詭弁 反論理的思考のすすめ/香西秀信著(光文社新書)」を推す。正しいよりテクニックというのがレトリックである。だから僕は信用していなかったのだが、知らないでいいということにはならない。知らないと騙されるだけである。僕が正しくても受け入れられない状況があったのだということもよく理解できた。例えばタバコを吸いながらポイ捨てを注意しても、正しいことを言っているにもかかわらず恐らくそれは聞き入れられない。人はいくら正しいことを言われても状況で判断するということなのである。
 これは未来を考える上で必読書だ。「過剰と破壊の経済学「ムーアの法則」で何が変わるのか?/池田信夫著(アスキー新書)」論客としてかなり注目を集める著者の主な主張が凝縮されている。日本の閉鎖性と先見性のなさにかなり精神的にがっくりしてしまうけれど、池田信夫の歯切れの良い文章はなかなか快感である。
 歴史観というのも信用ならんとおもっていたが、「司馬史観と太平洋戦争/潮匡人著(PHP新書)」を読んでみると、少し落ち着いた。それにしても司馬遼太郎が悪かったとは一昔前なら誰も言わなかったと思う。別段偏ったことをいっているわけでもなく、右も左もばっさり切っているという感じで容赦がないのである。
 読んで得するという類の代表的な本で「プロ弁護士の思考術/矢部正秋著(PHP新書)」をお勧めする。合理的思考とはなんなのかということが良く分かる。今年読んだ新書で、もっともコストパフォーマンスが高いと感じるほどお得感のあった本だった。

 あえて分類すると
※ビジネス書
 ということになるのだろうか。まあ当たり前のことがかいてあるが、「脳が冴える15の習慣/築山節著(生活人新書)」もお得な本だと思う。是非ともこの本に倣って生活習慣を改善してみよう。あなたのライフスタイルが根本的に変わるかも。と爺さんくさく納得した。
 普段はこの手の本は信用していなくて、パラパラ見るつもりでけっこう感心してしまったのは、岡本史郎だった。「お金の現実/岡本史郎著(ダイヤモンド社)」ひとことで言うと当たり前のことしか書いてない。しかしそこが肝というか衝撃的なところで、手品師がタネを披露しているということなのかもしれない。改めてみて見ると、なーんだということでもあるし、そうだったんだ、ということでもあるわけだ。結局知っていても実行している人はあんがい少ないので、まだまだいけるかもしれないという希望も湧く。経済は確かにそういう側面があって、多くの場合エモーショナルなだけでロジカルな人は少ないのである。しかしロジカルで割り切れないものもあって、いけにえが必要だという話では目から鱗が落ちた。基本的には焼き増しだが、「裏・お金の現実/岡本史郎著(ビジネスサポートあうん)」までは読んでもいいと思う。岡本の他の類書は、少し雑になってしまうので、後はお好みでどうぞ。
 これはキーワードだけ拾って考えるだけでも有用だ。「やる気が出る脳の作り方/佐々木正吾著(ソーテック社)」やる気は「社会的評価・緊急性・見通し」があれば湧いてくるものだという指摘に、素直に納得した。精神論でなく方法に落とし込む考え方も共感できる。「やる気」という精神論の分野を、いわゆる普遍性がある方法論で考えることに面白さと将来性を見た。ブログも面白い。
 題名はべたべたで手に取るのが恥ずかしいが「無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法/勝間和代著(ディスカバー)」というのもそういう方法論に特化しているところがいいと思う。気力より仕組みを整えることと、結局目標が大切という小学生でも習うことが有効であるという当たり前の力強さを説いている。そうして実行できる素直さがあれば、彼女のように成功してしまうのだろう。
 類書が続いて申し訳ないが「すごい実行力/石田淳著(三笠書房)」も読みやすくて理解しやすい。やりたくないことから先にやることで自分のご褒美になる、という考え方も面白いと思った。
 実をいうとこういうビジネス書の言葉を借りて、月に最低3回はある監事講評のネタに使ったことを白状します。他人に伝わりやすく理解されやすいと思われるキーワードをメモして覚えておいて、場面場面で使えると思われるものを話の中に盛り込んだりした。また、自分で言葉にして他人に伝えることで、さらに自分自身が納得を深めるということもあったので、大変に勉強させてもらったと思っている。
 岡本の影響があったせいかどうか分からないが、「私の財産告白/本多静六著(実業之日本社)」が復刻されたことは大きいと思う。一連のビジネス書のマイブームは、実はこの本の存在から始まっている。しかし教えを守って貯蓄できていない現実が、僕の限界かもしれないとも反省している。だから僕は資産家になれないということなのであろう。しかし、本多静六の言葉はなかなかかっこいいので、ぜひ読んでみてください。

※命を考える
 「ワールド・イズ・マイン/新井英樹著(小学館)」圧倒的な暴力描写であるが、道徳の本らしい。別に皮肉でもなんでもなく、素直に読んでそうだろう。くさくはないが、お説教の一種として受け止めることはできる。実際に多くの人は、この説教を肯定できるであろう。そういう意味では実に見事である。絵は非常に上手いのだが、激しくて時にはなんだか分からない。少なくとも漫画の文法に慣れていない僕には、わけが分からない。唾がいっぱい出たりするのはギャグなんだろうか。それすらよく分からない。いろいろと気持ち悪かったり汚かったりするが、命ということは尊ぶだけでは本当には理解できないのではないだろうか。
 日頃僕らは如何に現実を見ていないかということを突きつけられる「アニマル黙示録/宮崎学著(講談社)」も手にとってはどうだろう。写真集だから時間もとらせない。これは人間という他人がしたことではなく、私という人間の属性なのだと思う。
 
※冒険記
 さて、冒険記といっても歴史書ではない。現代にも冒険があるという素直な発見が、僕には面白かった。ちょっと無謀すぎるとは感じるが「ぼくはアメリカを学んだ/鎌田遵著(岩波ジュニア新書)」はすごい冒険である。というかもの「すごい行動力」というべきか。 これほどまでに先住民に惹かれるのはどうしてだろう。そして著者は、あえて金持ちになる道を拒んでいるように見える。それはそれで潔く、冒険というのは正義感なのかもしれないとも思った。そして小田実ともちょっと違う影響力があるだろうとも思った。この人は将来カリスマになれるだろうか。少なくとも僕にはすごい人だと思えるが…。
 これは面白い読み物だと思う。ちょっと変わったところはあるにはあるが、これは現代の普通の日本人の感覚でもあるだろう。「アフリカにょろり旅/青山潤著(講談社)」はゲラゲラ笑いながら読みすすんで、文化についていつの間にか考えることになると思う。過酷な状況におかれた精神の状態も理解できる。自分自身がどんどん追い込まれていく不安と、他人がどのように考えているかのギャップが大きくて可笑しい。アフリカではないが、僕もこのような旅行をしていたというような懐かしさもあった。あれはもうやらなくてもいいなあと思う。若い無謀さに敬意を表したい。

※再発見
 比較文化という手法が手っ取り早く自分の理解につながることは確かだ。英国的な西洋文化の単純さと東洋の混沌を理解しだした個人の葛藤の記録でもある。「「ニッポン社会」入門-英国人記者の抱腹レポート/コリン・ジョイス著(NHK出版・新書)」はしかし、改めていろんな違いがわかって面白かった。英国が紳士の国だと思っている日本社会も単純だと思う。つまり、理解の程度はそんなものなのだろう。僕は改めて日本の再発見は面白いと思った。あたかも外国人のように日本を楽しむことも可能ではないか。
 「アースダイバー/中沢新一著(講談社)」中沢新一については懐疑的な意見があることは知っている。まあ、言説に責任は取っていないのかもしれない。学問というより、少し詩的だとも感じる。しかし東京に出張した折には、この本のことを思い出した。そしてこの本の視点でこの都市を眺める楽しさも感じた。確かにいろいろなものが見えてくるわけで、中沢が多くの人を捉える力のある論客だということは間違いあるまいと思った。

※小説
 紹介した「恋愛中毒/山本文緒著(角川文庫)」は改めてお勧めだが、その前に「恋/小池真理子著(早川書房)」も読んでいたことを思い出した。僕は女という考え方がほとんど分からないが、これももちろん理解できない。理解できないといいながらこのようになるのが分かるのが小説の凄さだろうと思う。そしてゾクッと来るように面白い。
 ゾクッと来るような面白さというより、たたみ掛ける恐ろしさの連続がしつこい「真景累ヶ淵/三遊亭円朝作(岩波文庫)」もどうだろう。日本のホラー小説というか、この話を実際に演じたものだろうか。いろいろ理屈はあるが、因縁という理屈は恐ろしく気持ちが悪い。そしてそれなりのカタルシスもあって、よく出来たお話、いや、人間の本性であると思った。

※言葉と文化
 なんだか不思議と魅力的な入門書だと思った。「演劇入門/平田オリザ著(講談社現代新書)」はしかし、僕としては関係ないから勉強になったのかもしれない。脚本というものを今後書く機会があるとも思えないのだが、この考え方は生活の上で役に立つかもしれないとも思うのだ。状況を追い込んで考え込んでゆくという手法で、いろんな謎が解けてゆくかもしれない。つまり自分がどこまで考えることができるのか。実際の平田の演劇が面白いかどうかはともかく、考え方は面白いと思った。
 奇をてらった言い方なのではない。「日本語は天才である/柳瀬直樹著(新潮社)」読んでみると日本語は天才であったのだと、ちゃんと理解できるはずだ。こんなにしつこい人には誰もがなれるわけではないが、読むことならできる。日本語もすごいが柳瀬直樹もすごい人だよ。
 すごい人といえば白川静も凄いような気がする。あんまりすごいんで、どれぐらいすごいか良く分からないのだが…。しかし「漢字/白川静著(岩波新書)」は読んでおいたほうがいいような気がする。たぶん多くの人は漢字の事をこのようには理解していなかったはずだ。誰もが忘れていたことを丁寧に暴き出して、以前の人間の思考をも表面に出してしまうのだから、本当に凄まじい。
 これはのっけから目から鱗が落ちる。「日本思想の原型-民俗学の視覚/高取正男著(平凡社)」である。本当に読むべき本というのはそう多くはないのかもしれない。時々すごい本に出会ってしまうと、そう思う。これだけのものがそう多く世にでているなんて思えない。また、そういう発見や出会いということを考えると、人間が知ることの出来る物事というのは、やはり限りがありそうである。そうなったらある程度は選択することも必要かもしれない。出来る限り精度の高いものを吸収する必要がある。そしてそういう良書が確実に自分の血となり肉となるよう内容を反芻して考えなければならない。日本の個人主義が西洋より厳格かもしれないというようなことを知るだけでも、世の中の常識の危うさを覆す、自分の目で見る力をつけさせる武器になるだろうと思うのだ。
 これは今年のお勧めという枠を超えた、日本人の必読書だろう。
コメント
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