ビッグ・バンド:クインシー・ジョーンズの「ボサ・ノヴァ」(1962 Mercury)。
ビック・バンドによるジャズは、ほとんど聞かない。
ジャズには、プレイする人の思いが如何なるかを求めるからだ。
ビック・バンドから発せられるのは、多くの人の平均値であり、不特定多数の人たちの耳への心地よさ。
ボサ・ノヴァ集と言うことで、季節柄、聞いてみようと思った。
キース・ジャレット・クァルテットの「マイ・ソング:MY SONG」(ECM 1977)。
1.クウェスター
キース・ジャレットのピアノの音、いつも同じ高さにとどまり、色を変えているだけのような感じ。
ヤン・ガルバレクのソプラノ・サックスの音も同じ印象だ。
どうして、そんな感じがするのだろう。
2.マイ・ソング
ちょっと抒情的だ。
眺望のすてきな丘にいるような。
3.タバルカ
ソプラノ・サックスの音には、何故か違和感がある。
フワフワしていると言うのか、ツルツルしてると言うのか。
まぎれもないキース・ジャレットの曲と感じる。
4.カントリー
5.マンダラ
6.ザ・ジャニー・ホーム
スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトによる「GETS/GILERTO」(VERVE 1963)は、ボサ・ノヴァを広く世に知らしめることになったアルバムだ。
特に、「イパネマの娘」が、シングルで大ヒットした。
僕が、ボサ・ノヴァに接したのは、このあたりだったと思う。
「イパネマの娘」でヴォーカルに加わったジョアン・ジルベルトの奥さんであるアストラッド・ジルベルトが、絶大な人気を博すことになる。
歌のうまい、下手は、二の次であった。
ジルベルトと言うと、アストラッド・ジルベルトと言うように。
もともとは、ボサ・ノヴァと言えばジョアン・ジルベルトだったのに。
スタン・ゲッツは、このボサ・ノヴァの流行で、改めて表舞台に出るようになる。
夕方、ビールが飲みたいなと言う季節になると、このアルバムの出番である。
この前、「the ossa style」と言うアルバムで、ジョアン・ジルベルトの「3月の水」と言う曲を聞いた。単調だけど、それがいい。
これぞ、ボサ・ノヴァと言う感じだった。
Wear the Willow
その意味は、「失恋する」。
「柳を身につける」とは「失恋」のこと。
どうして、そうなったかは、よく知らないが、古くから、そのように使われる。
ジャズのスタンダード・ナンバー「Willow Weep For Me」は、失恋の歌。
「柳よ泣いておくれ」と訳されている。
先日、マル・ウォルドロンのピアノで聞いた。
今日は、ビリー・ホリデイのヴォーカルで。
日本では、「ビリー・ホリデイ物語《奇妙な果実》」(ヴァーブ 1956)と名づけられたアルバムに収録されている。
英語では、「LADY SINGS THE BLUES」と、彼女の自叙伝と同じタイトルである。
その本の出版を記念してのアルバムなのだ。
マル・ウォルドロンには、ピアノソロの「オール・アローン」よりずっと前に、ピアノ・トリオで演奏した同曲「クワイエット・テンプル」が録音されたアルバムがあるようだ。
新宿のディスク・ユニオンで、LPがないか、何度かさがしたが、見つからなかった。確かヨーロッパのレーベルからで、そんなに出ていないのかも知れない。おそらく、CD化はされていない。
だいたい、「オール・アローン」のCDも見かけない。これもないのだろうか。
バルネ・ウィランのアルバム「ふらんす物語」で、何度も「クワイエット・テンプル」を聞いている。静かで、落ち着く曲だから。この演奏でのピアノは、マル・ウォルドロン。
昨日とりあげた「ジェリー・マリガン・クインテット feuturing チェット・ベイカー」(ファンタジー)のレコーディングは、1952年9月と1953年1月。
その期日が気になって、油井正一著「ジャズの歴史物語」(角川ソフィア文庫)を開いてみた。
「ジェリー・マリガンがウエストに来たのは五二年九月のことである」との記述がある。
何かおかしいと思って、広く知られたアルバムである「GERRY MULLIGAN QUARTET」(パシフィック)のライナーノーツをみた。
ウエスト・コースト・ジャズの代表的アルバムで、当然、ウエストで録音されている。
レコーデイングは、1952年~1953年である。
期日として、以下の記録が載っていた。
1952年6月10日:数曲録音。
7月9日:2曲録音。
8月16日:2曲「バーニーズ・チューン」、「木の葉の子守歌」録音
そうなのだ。ジェリー・マリガンは、9月前に、ウエストにいたのである。
マイルス・ディビスの「クールの誕生」の録音に、1949年、1950年と加わり、そのあと、どれくらいあとか分からぬが、ニューヨークからカリフォルニアへと向かったようなのだ。
そして、ウエストで、チェット・ベイカーに声をかけ、ピアノレス・カルテットでの演奏をやりだしたのだ。
ジェリー・マリガンとチェット・ベイカー、この二人は、人として相性がいいように感じる。
そんなに歳は離れていないはずだが、ジェリー・マリガンが兄貴分だ。
兄は、何か危なっかしい弟を気遣っている感じだ。
「ジェリー・マリガン・クインテット feuturing チェット・ベイカー」(ファンタジー)と言うアルバムをたまたま見つけた。
ウエスト・コーストの頃の録音である。
クインテットの顔ぶれ
ジェリー・マリガン(bs)
チェット・ベイカー(tp)
カーソン・スミス(b)
チコ・ハミルトン(ds)
演奏曲は8曲
1.CARIOCA:カリオカ《ブラジルの踊り》
2.LINE FOR LYONS:ライン・フォア・リヨン(リヨンへの道)
3.MOONLIGHT IN VERMONT:ムーンライト・イン・バーモント(バーモントの月光)
4.BARK FOR BARKSDALE:バーク・フォア・バークスダル(ARKSDALEへの咆哮)
5.TURNSTILE:ターンスティル(回転扉)
6.THE LADY IS A TRAMP:ザ・レディ・イズ・ア・トランプ(彷徨えるレディ)
7.MY FANNY VALENTINE:マイ・ファニー・バレンタイン
8.LIMELIGHT:ライムライト(石灰光)
9.GERRY MULLIGAN SIGNING OFF:ジェリー・マリガン・サイニング・オフ
1,2,4,7が、1952年、サン・フランシスコでの録音。
3,5,6,8.9が、1953年、ハリウッドでの録音。
「カリオカ」から聞き始めて、その曲調のせいもあろうが、第一印象は、みんな楽しそうに演ってるなと言うこと。
「ムーンライト・イン・バーモント」のマリガンのソロ、いかしてる。
「BARK FOR BARKSDALE」のチコ・ハミルトンのドラム、いい。
「回転扉」、マリガンとベイカーの息が合っている。
「その淑女はさすらい者」、近寄りたくもあり、近寄り難くもあり。
「マイ・ファニー・バレンタイン」、チェット・ベイカーがしっとり奏でる。
なかなか聞かせるアルバムだ。
エドゥアール・モリナロ監督のサスペンス映画「彼奴を殺せ」サウンドトラック。
1959年、パリで録音されている。
バルネ・ウィラン(ts,as,comp)
ケニー・ドーハム(tp)
デューク・ジョーダン(p)
ポール・ロヴェール(b)
ケニー・クラーク(ds)
以上の、5名で演奏され、12曲にまとめられている。
曲という言い方が、いいのかと言うことはあるが。
作曲はバルネ・ウィラン。
なんだかワクワクさせられる音楽になっている。
映画は見ていないが、それぞれのシーンが思い浮かぶかのようである。
ボサノバ(ボッサノバ)とは。
手元のベネッセの辞書に、こうある。
サンバにモダンジャズのリズムをとり入れた音楽。1960年代にブラジルで生まれた。
岩浪洋三の「モダン・ジャズ入門」(荒地出版社 1978年)のジャズ用語のページに、「ボサ・ノヴァ」として、もう少し詳しい説明が載っていた。
同じ荒地出版社の1967年の同名の油井正一の本にも、ジャズ用語集というページがあるが、そこには載っていなかった。
油井正一の1972年の「ジャズの歴史物語」(スイング・ジャーナル社)には、ほんの少しだが、記述がある。
そうなんだ。
僕の子どもの頃には、なかった音楽ジャンルなのだ。
「ザ・ボサ・スタイル:the bossa style」(マーキュリー 1998年プレス)は、ボサノバの名曲18曲を集めたアルバム。
タンバ・トリオによる「マシュ・ケ・ナーダ」ではじまる。
ジョアン・ジルベルトの「3月の水」、いろんな単語を脈絡なくならべたような歌詞。
とてもいい。時に、「ちょっと孤独」なんて入る。
マルコス・ヴァーリとアウロ・セルジオ・ヴァーリのよく耳にする「サマー・サンバ」、いい気分になれるね。
ボサノバのいいところ。
のびのびとすなおな心性がベースにあるところ。
世のしきたりやこだわりから離れた位置にあること。
もっともらしさにこだわっていないところ。
息をつめるような緊張がないところ。
シルヴィア・テリスのおなじみの「カルナヴァルの朝」、「黒いオルフェ」のテーマ。
ジャズ感の強いボッサ・トレスの「ボトルス」、タンバ・トリオの「ジャズの影響」。
日曜の夕方、外の用事を済ませ、家に帰り、くつろげるかなと思って、久し振りに、マッコイ・タイナー。
「ナイト・オブ・バラード&ブルース」(インパルス 1963)、ピアノ・トリオでの演奏である。
遠くで雷の音がして、風が出だしたなと思ったら、雨がパラパラときた。
でも、窓から見える空は明るい。
このあたりは、本降りにはならないだろうな。
「サテン・ドール」から「ウィル・ビィ・トゥゲザー・アゲイン」。
そして、「ラウンド・ミッドナイト」。
続いて、「フォー・ヘブンズ・セイク(お願いだから)」、「スター・アイズ」。
モンクのもの、もう一曲「ブルー・モンク」。
「グルーブ・ワルツ」、「デイズ・オブ・ワイン・アンド・ローズ(酒とバラの日々)」。
スタンダードばかり8曲。
聞きなれた曲というのは、落ち着けるものだ。
ちょっと、気分転換になったかな。
まだ、雷の音。
雨、パラパラでお終いみたいだ。
JACKIE McLEAN / LET FREEDOM RING / BLUE NOTE / 1962
JACKIE McLEAN(alto sax)
WALTER DAVIS,JR (piano)
HERBIE LEWIS (Bass)
BILLY HIGGINS(drums)
1.MELODY FOR MELONAE
2.I'LL KEEP LOVING YOU
3.RENE
4.OMEGA
以上が、「レット・フリーダム・リング」のパーソネルと収録曲。
ELONAE(メロネエ)は、ジャッキー・マクリーンの娘、RENE(ルネ)は、メロネエの兄。
このアルバム、なんとなく期待していたものと違ってた。
マル・ウォルドロンのアルバム、知っているものをあげてみた。
1963年録音の「クワイエット・テンプル」は、聞いたことがない。
聞いてみたいと思っている。
■MAL-1/MAL WALDERON QUINTET/Prestige/1956
マル・シリーズ4枚のトップ、初リーダー盤。イエスタデイズ他
■LEFT ALONE/The Mal Waldron Trio Featuring Jackie McLean/Bethlehem/1960
ビリー・ホリディの追悼。レフト・アローン他。
■QUIET TEMPLES:Les Nuits De La Negritude/Trio/Freedom(power Tree)/1963
クワイエット・テンプル(オール・アローン)他。
■ALL ALONE/solo/G.T.A./1966
全曲オリジナル、ピアノ・ソロ。オール・アローン(映画「マンハッタンの哀愁」)。
■FREE AT LAST/MAL WALDRON TRIO/ECM/1969
ECMレーベルの第1号盤。
■MAL WALDRON QUINTET WITH STEVE LACY/ENJA/1977
ウィズ・スティーブ・レイシー。
ECMの「フリー・アット・ラスト」を聞く。
メンバーは、マル・ウォルドロン(p)、イエス・エッキンガー(b)、ウラレンス・ベクトン(ds)の3人。
1.ラット・ナウ
2.バラディナ
3.1-3-234
4.ロック・マイ・ソウル
5.ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー
6.ブー
「ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー:Willow Eeep For Me:柳よ泣いておくれ」は、スタンダード・ナンバー、失恋のバラード。
マルのピアノは静かに奏でられる。
「ラット・ナウ」は、速い。
マル・ウォルドロンの「オール・アロン」を聞いて、もっとと思って、「フリー・アット・ラスト」を聞いた。
マルの強く、重い音。
ジャズの魅力は、プレイヤーの心情をも感じるところにある。
マル・ウォルドロンは、その感を強く抱かせてくれる。
ジャッキー・マクリーンの「ジャッキーズ・バッグ:Jackie's Bag」。
1959,60年の録音、ブルー・ノートからのリーダー盤。
ジャッキー・マクリーンが、それなりのプレイヤーとして世に認められだした頃のアルバムである。
演奏メンバーも錚々たる顔ぶれ。
収録曲は、以下の6曲。
1.クァドラングル
2.ブルース・イン
3.フィデル
4.アポイントメント・イン・ガーナ
5.ア・バラッド・フォー・ドール
6.ジャワ島
1~3が、1959年の録音、4~6が、翌1960年の録音で、演奏の顔ぶれが違っている。
みんな、いきいきと演っている感じが気持ちいい。
ジャッキー・マクリーンのは、哀感ただようものであっても、総じて、いきいきしているのである。
根に音楽を愛し、人生を大切にしようという姿勢が感じられるのだ。
「クァドラングル」には、フリー・ジャズかと思わせる部分もある。
エウミール・デオダードの「ツァラトゥストラはかく語りき」(1972 CTI)。
フュージョンがひろがり、ジャズ・シーンが変わっていくかつて、注目された盤だ。
エウミール・デオダードは、ブラジルの生まれ。
リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」やクロード・ドビュッシーの管弦楽曲「牧神の午後への前奏曲」のジャズ化で注目された。
ジャズ化と言うけど、フュージョンと行った方がいいかな。
エウミール・デオダードの編曲・指揮のもと、演奏には、エレクトリック・ピアノ、ベース、ギター等が使われている。
パーカッションが、ラテンのムードをつくっていく。
収録曲
A面 1.ツァラトゥストラはかく語りき
2.スピリット・オブ・サマー
3.カーリー&キャロル
B面 1.輝く腕輪とビーズ玉
2.牧神の午後への前奏曲
3.セプテンバー13
B面の「輝く腕輪とビーズ玉」は、ただひたすら、聞きやすく楽しい。
チャカポカ・・・。
こう言うの毒にも薬にもならない。
「牧神の午後への前奏曲」聞いているうちに、眠くなる。
氷上英廣訳の「ツァラトゥストラはこう言った」(岩波文庫)を手に取る。
ページのはしが折られていたところを開く。
「いちじくの実が木から落ちる。甘い豊かな実だ。落ちながら、その赤い皮は裂ける。わたしは熟れたいちじくの実を落とす爽かな北風だ。」