飽かで別れし桜なれば

2008-07-13 | 【樹木】ETC
 【新古今和歌集】
 桜麻のをふの下草茂れただあかで分かれし花の名なれば(待賢門院安芸)
 いささか意味をとりにくい歌のように思う。五・七・五・七・七に区切ってみる。
桜麻の/をふの下草/茂れただ/あかで別れし/花の名なれば
 「をふ」は、「麻生」と書き、麻の生えているところ、人の手が加わっていれば、麻畑というところか。
 麻は、アサ科アサ属の草本。日本では、アマ科の亜麻(あま)、イラクサ科の芋麻(からむし)も麻と呼ばれたりするようだ。
 「桜麻の」というのは、「をふ」にかかる枕詞。よって、「桜麻(さくらを)のをふの下草」は、「桜」が名にある麻が生えたところの下草というような意味になる。
 「茂れただ」は、ひたすら茂ってくれというようなところ。
「あかで別し」の「あかで」は、漢字では書けば、「飽かで」で、飽きないで、飽かにうちに、満足しないうちにというような意となる。
 「花の名なれば」の「花」は、「桜」で、ここを理解するには、桜にまつわるイメージ、思いと不可分で、それがあってこそとなる。生きながらに別れ別れになった「桜子」のことなど思い浮かべた方がいいか。
 それで、歌全体をまとめると、こんなものか。
 麻の畑の下草よ。
 すくすくと育ち茂っておくれ。
 だっておまえとは、愛おしむ間もなく別れてしまった。
 おまえはなつかしい「桜」を名につけているんだもの。

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